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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
52/381

52話

トーマ達が風呂に入っているその時間。

リルフェアは自室にいた。


リルフェアの部屋は、ラティリーズの部屋の隣にある。

一人で過ごすには広すぎる程のスペースと、豪奢なベッドや机。

そして、祖先のリウ・ジィとその相棒の竜騎士を描いた大きな肖像画が飾ってある。


既に夜に差し掛かっていたが、リルフェアは起きていた。

自分で淹れた紅茶を飲みながら、リルフェアはカテドラル周辺の地図を眺めている。


「ゴルム・・・何処に隠したのかしら」


ゼフィラスの妹を攫ったという話は、トーマから初めて聞いた。

ゴルムが捕まったという事実だけは聞いていたけど、まさかそんな話だったとは。


紅茶を片手に、机の上に広げた地図を指でなぞる。

トーマの言う通り、ゼフィラスの妹を魔法で転送させた可能性は低い。

カテドラル内で転送すれば、確実に反応がある。


「別の可能性があるとすれば・・・そうね」


カテドラルのゴミや不用品を捨てる際は馬車による搬出を行う。

その馬車に、押し込んで出したという可能性もあるけど。


「門番がきちんと確認するから、それも無いわね」


門番が、ゴルムの手先ならその可能性は否定できないが。

そもそも、午前中の早い段階で搬出は完了する。

時間的に合わないだろう。


「となれば・・・ここ、『カテドラル』の中なんだけど」


机に広げた地図を捲ると、下からカテドラルの見取り図が現れた。


団長室周辺は、もう調べ終わったと見ていいだろう。

トーマの部下が頭が切れる事は知っている、その彼が見落とすとは思えない。

となれば・・・。


「『秘密の地下』かしらね」


団長室からそう離れていない、何もない空間に丸を付ける。


「・・・でも、ゴルムも知らないはずなんだけど」


そう、一人呟く。

丸印を付けた場所には、元宝物庫がある。

宝物庫として使わなくなった今では、扉に封印を施して封鎖しているはずだが。


「まあ、調べてみる必要はあるわね」


トーマには任せると言ったけど。

・・・少しは、私も働かないとね。


――――――――――――――――――――


朝方。

目覚めはばっちりだったが、寝癖が酷いと直感した。

寝癖を直しつつ、今日の予定を考える。


まずは、御前試合だ。

次に、ゼフィラスの妹の件。

・・・リルフェアやイグニスにも話は通したが、あちらに進展はあっただろうか。


寝癖を直していると、個室のドアが叩かれた。


「起きていらっしゃいますか、トーマ様」


オリビアの声だ。

ドール達の声は製作者である神威(かむい)にそっくりだったのだが。

自分で行動をし始めてからは・・・その声にも多少変化があった。

似ているのだが、抑揚や声のトーンが少し違う。

判別可能なくらいには、特徴が付いている。


「ああ、入っても大丈夫だぞ」


寝癖を直しきり、そう答えた。


「失礼します」


ドアを開けると、オリビアが一礼した。

頭を上げると、オリビアと目が合う。


「お早いですね」


「元社会人なんて、そんなもんだよ・・・で、何か用事か?」


「いえ、その・・・起きていらっしゃるのなら、部屋の掃除をと」


・・・掃除か。


「分かった、あまり念入りじゃなくていいからな?」


「了解しました、ベッドの下は探りませんので」


「・・・何も出ないから安心しろ」


そんな本、この世界にあると思うか?

あったとしても、近くの女性が住んでいるのだ。

分かる場所に置くわけがない・・・。


「そうですか、では・・・掃除を開始しますね」


そう言うと、オリビアは掃除を始めた。

セニアにも言えることだが、元ドールの彼女らの手際は見事だ。

全く無駄のない動きで、部屋の掃除をしている。


・・・俺も邪魔になるな、部屋から出るか。


――――――――――――――――――――


拠点の広間では、八霧(やぎり)が準備運動をしていた。

その横では、神威がその様子を見守っていた。


「もう起きてたのか」


「オリビアに起こされた・・・」


眠そうに答える神威。


「早いよね、オリビア」


そう言う八霧は身体を伸ばして、屈伸を開始した。

その八霧の様子を見て、今日の御前試合の事を考える。


「・・・神威、俺と八霧は御前試合でほとんど動けなくなる。

 その間、ゼフィラスの妹の件は任せても大丈夫か?」


「うん、オリビアとセニアもいるし、大丈夫」


そうか、そうだな・・・もう、任せても大丈夫だろう。

前までなら多少の不安もあったが、今の神威なら大丈夫だ。

俺達は心置きなく、戦いに集中するとしよう。


「トーマさん!」


八霧は元気よく俺に話しかけてきた。

いつもとは違う、はきはきとした様子だ。


「昨日はありがとう、僕、頑張るよ」


昨日の、薬剤師の件だろうか。


「ああ、そうしてくれ」


「でも・・・戦いとなれば話は別だよ。お互いに、全力で戦おうね?」


「もちろんだ。恩があるからと手を抜いたら、一瞬で倒すからな」


それを聞いて、苦笑する八霧。


「一瞬か・・・あり得るから困るね」


――――――――――――――――――――


闘技場、控室内。


「うむ」


勝ち残った8人が、控室に集まった。

各々が、武器を片手に持ちながら。

武器を持つように言われたが、果たして何をするのやら・・・。


審判長の壮年の男性は満足気に一つ頷く。


「よくぞ勝ち残った、勇士達よ。

 この中で、一人だけが勝ち残るというのが実に惜しい話でもあるが・・・」


片手に持っていた、宝石の散りばめられた杖を振りかざす。


「しかし!御前試合の勝者は一人のみ!

 各々方、決して手を抜くことなく、最後まで全力で戦っていただきたい」


審判長がそう言い切ると、他の審判たちが審判長の前まで大きな石像を運んできた。

長身の男性が、片膝をついた格好の石像。


過去にいたとされる竜騎士を模して造られた石像らしい。

足元に彫られた文字には『竜騎士』と彫られている。


凛々しく掘られた顔と、たくましい肉体。

そして着飾る鎧には、ゼローム皇国の紋章が彫られていた。


「では、決闘の宣誓を」


宣誓?

審判長のその言葉が理解できなかったが。


一番初めに並んでいたラクリアがレイピアを竜騎士の石像の肩に当て。


「ラクリア、このレイピアと自身の名誉に賭け誓います」


そう言うと、レイピアを下げて石像に一礼した。

後ろに並んでいた、ジーラスも同様に自身の剣を置こうとするが。


「ドノヴァに壊されてしまってね・・・代用で申し訳ないが」


前回使用していた武器とは違う、銀色に輝く長剣を石像の肩に乗せる。


「ジーラス、この剣にかけて誓います」


ラクリアと同様に、一礼するジーラス。

次は3回戦の、八霧の番だ。


「ええと・・・」


一瞬戸惑ったが、自身の武器である棒を石像の肩に置き。


「八霧、この武器にかけ、正々堂々戦うと誓います・・・」


そう言って、棒を下ろして一礼する。

その行為が、次々と続いていく。


そして、俺の番だ。

握る槍を見て、目の前の石像を見る。


「トーマ、この槍に誓い堂々と戦うと宣言する」


そう言って、竜騎士の石像の肩に槍を置く。


目の前の竜騎士は何も言わぬ石像だが。

なんだろうか、まるでこの大会を見守るかのような目をしている・・・気がした。


俺の後にも数人が宣誓を行っていたが。

中でも気になったのは、ゼフィラスの態度だ。


石像に剣を置いた瞬間、彼の顔が曇ったような気がする。


「ゼフィラス、剣に誓い・・・正々堂々戦うと宣言する」


そうは言うが、声には力が感じられない。

ゼフィラスは剣を下ろし、石像に一礼する。


その様子は・・・とても誓っているようには見えない。

むしろ、宣誓に対する後ろめたさが出ているような感じだ。


――――――――――――――――――――


石像への宣誓が行われている時。

神威はオリビアとセニアに言って、情報を収集させていた。


神威自身は、拠点に残り情報の整理をしていた。

昨日、オリビアとセニアが集めた情報と現状を合わせて紙に書いていく。


「多分、見落としがあるはず・・・」


「そうね」


オリビアとセニア以外の声が、拠点の広間に響いた。

この拠点にいるのは、自分だけのはずと・・・そう思う神威。


だが、聞き覚えのある声だったので、神威は警戒もせずに振り向く。

目に入ったその姿は、リルフェアその人だった。


「トーマに用があったんだけど・・・その様子だと、貴方に話した方がよさそうね」


机の上を見て、そう判断するリルフェア。


「なんで、しょうか?」


あまりしゃべったことのない人物なので、多少緊張が入る神威。

その様子を見たリルフェアは少し苦笑する。


「大丈夫よ、取って食わないから。それに、私は『新しい情報』を持ってきたのよ」


そう言うと、リルフェアはメモを乗せていた机の上に地図を広げた。


「本当は王族か、関係者しか見ちゃいけないんだけど・・・神威さんは口が堅い?」


「ん・・・自信ある」


「そう、偉い子ね」


そう言って、神威の頭を撫でるリルフェア。


「んぅ、それで・・・?」


くすぐったそうに目を細めるが、話の核心を聞こうとする神威。


「そうだったわね・・・ええと」


リルフェアが地図を細い指でなぞる。

そして、ある地点で指を止めた。


「ここよ、元『宝物庫』の秘密地下室」


リルフェアはそう言うと、その地下室への入り口を指で指した。


「・・・団長室の、横・・・?」


読んで下さり、ありがとうございました。

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