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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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51話

久しぶりのお風呂。

しかも、オリビアとセニアと一緒。


「ふぅ・・・」


湯船に浸かり、一息つく。

こっちに来て、色々あった。


目の前では、オリビアが椅子に座るセニアの背中を洗っている。

こう見ると、本当に姉妹に見え・・・あ、姉妹か。


二人をじっと見ていると、オリビアが私を見てきた。

視線に気づいたのだろう。


「・・・あの、マスター?さっきからじっと見ていますが、何かありましたか?」


オリビアがそう聞いてくる。


「ううん・・・仲良くね」


「それはもちろんです」


そう言うと、オリビアはセニアの髪を洗い始めた。


「姉さん、自分で出来ますって」


「いいの、今日くらいは洗わせて」


「もう・・・いいですけど」


不機嫌そうに頬を膨らませるが、上機嫌な顔だ。


・・・オリビアは最初に生まれた、ドール。

ドール全員のお姉さんだ。

最初に作ったという事もあって、材料集めには苦労した思い出がある。

希少な材料は・・・メンバーにも手伝ってもらった。


特に、ドールのコアである『魔石の純結晶』は、トーマにほとんど集めてもらった。

そういう意味では、オリビアのお父さんはトーマになるかも知れない。

それだけ、魔石の純結晶は・・・貴重で手に入りにくいものだ。

もう少し集めるのが簡単なら、ドールを増やしていた・・・んだけど。


セニアの髪を洗うオリビアを見ていた。

そうだ、自分も髪を洗おう。

浴槽の脇に置いてあったシャンプーを取る。

湯船から頭を乗り出し、シャンプーを頭につけて髪を洗おうとするが。


「マスター、行儀が悪いです。髪を洗う際は湯船から出てください。

 トーマ様と八霧様も後で入浴されるんですから」


オリビアにそう叱られる。


「ん」


湯船から出て、椅子に座る。

目の前の大きな鏡に、自身の全身が映る。

その後ろには、オリビアとセニアも見える。


「髪型を変えるだけでも・・・結構雰囲気変わりますよね?」


一人だけ短い髪のセニアが自分の髪をいじりながらそう言う。


「そうね・・・マスターも、髪型を変えてみませんか?」


「・・・却下」


そう言われて、少し悩んだ。

自分にとって、ツインテールが絶対というのは変わらないが。

・・・この二人を見ていると、それ以外もいいかな、と思い始めている。


「そうですか」


オリビアは少し残念そうに呟くと、私の髪を洗い始めた。

その手は心地よかった。


「ところで、マスター」


「んぅ・・・?」


「私はこれから、どうすればいいでしょうか?」


オリビアの、今後?

何の、話だろう・・・?


「セニアは料理係です。私にも、何か役職は無いでしょうか?」


「・・・それは、トーマが決める事。私は・・・」


私は、トーマの部下みたいなのものだから。

だから判断は全部、任せる。


「マスター、失礼かと思いますが・・・言わせていただきます」


「?」


「トーマ様に甘え過ぎですよ」


甘え過ぎ・・・?

オリビアにそう言われ、ちょっと考えてみる。

こっちに来てからの事・・・自分の行動。


今のこの拠点も、このお風呂も。

全部、トーマが用意してくれたものだ。

食事が出来るのも、トーマが聖堂騎士になって、私を従者にしてくれたからだ。


「マスターも、ギルドの一員なのですから。

 どうか、私達の為にも・・・自分で考え、行動するようにしてください」


そう言うオリビアの目は、こちらを心配するかのような目だ。


言われたことだけをやり、自分の意思を見せない。

・・・まるで人形、蓋のされた私の人形たちと一緒だ。

それに、今のままだと・・・ただ、トーマに迷惑を掛けているだけだ。


私も、何か役に立ちたい・・・。


「うん・・・私もギルドの一員。ギルドのために、働かないと」


「マスター・・・はい、それがいいと思いますよ」


そう答えた、オリビアの顔を見る。

とても嬉しそうに微笑んでいた。


「私達もマスターを全力でサポートします。ですから、頑張りましょうね?」


そう言ったオリビアの顔は、とてもにこやかな顔をしていた。

隣で話を聞いていたセニアも、にっこりと微笑んでいた。


――――――――――――――――――――


風呂場から声が聞こえる。

楽しそうな声だ。


「・・・しかし、女性の風呂は長いと聞くが」


八霧(やぎり)の直した本を一冊借りて読んでいたのだが。

のぼせないのか?と思うほどの時間になってきた。

・・・大丈夫だよな?


「まあ、三人で入っているし、大丈夫じゃない?」


そう言いながら、八霧は薬草を調合していた。

葉をすり潰し、混ぜ込んでいるのだが。

多少顔が汚れていた。


・・・次は八霧に入らせよう。


――――――――――――――――――――


「・・・オリビアの胸、大きくなってる」


「え?」


オリビアとセニアを交互に見比べる。

多少の変化だが、自分で作ったドールの体型を見間違えるはずが無い。


「私と、同サイズに作ったのに・・・おかしい」


ドールが自分の意思を持つようになって、体型にも変化が・・・?

心なしかオリビアの顔つきも、セニアと少し違って見える。

これは、興味深い現象・・・。


何かにメモ書きしたいところだったが・・・浴室にそんなものは無い。


「そう言えば・・・私よりも大きいですね」


そう言って、セニアはオリビアの後ろから胸を鷲掴みにした。


「きゃ・・・!セニア?」


「むぅ・・・私より大きいです」


「べ、別にいいじゃない」


「不公平です!」


目の前でじゃれ合っている二人を見る。

うん、姉妹にしか見えない。


「マスターも何か言ってください・・・きゃ、セニア!」


「姉さんばっかり、ずるいです」


まだ胸を鷲掴みにしたまま、セニアは頬を膨らませていた。

その様子を見て、少し笑う。


「マスター?」


不思議そうにこちらを見るセニア。

湯船から立ち上がり、二人を見る。


そろそろいい時間になってきたし、頭もぼーっとしてきた。


「ん・・・そろそろ上がる、よ?」


「あ、そうですね・・・トーマ様と八霧さんを待たせるわけには」


そう言うと、セニアはオリビアの胸から手を離した。


「もう、セニア・・・あなたね」


「オリビア、叱るのは後。お風呂は皆で楽しく、ね?」


「・・・マスターがそう仰るのなら」


不服そうなオリビアを連れて、浴室を出た。


――――――――――――――――――――


神威(かむい)達が上がってきたのは、大分経ってからだ。

のぼせなかったのが不思議なくらいの時間だ。


体中から湯気が出ている、寝間着姿の三人。


「すみません、先にいただいてしまって」


「いや、いい・・・大丈夫か?」


「・・・少し入り過ぎましたね」


そう言うオリビアの顔は結構赤くなっている。

時間を忘れて入った、という感じだな。


「でも、いいお風呂でしたよ、トーマ様」


セニアがそう言ってくれる。


「テネスに感謝してくれ、あいつの作品の一つだからな」


そう言って、俺は八霧を見た。


「次は八霧、お前の番だぞ」


「え?僕は最後でもいいけど」


「・・・鏡を見てから言え、薬草で顔が汚れだらけだ」


「え?」


自分の顔を触る八霧。

薬草をすり潰していた手で触ったので、更に顔が汚れた。

そして、鏡で自分の顔を見る八霧。


「あー・・・これは酷いね。じゃあ、先にお風呂貰うよ」


「ああ」


浴室の部屋を開けて、中に入っていく八霧。

アイツは、風呂が早そうだが・・・どうなんだろうか。


「トーマ」


「ん?」


神威が話しかけてきた。


「私も、何かできない・・・?」


何か・・・?

腕を組んで、神威を見る。


「それは、何かしたいって事か?」


「うん、八霧も自分で行動してるし、私も・・・何かしたい。

 このギルドのために」


「・・・神威」


そう思っていてくれたのか。

そうか・・・。


「分かった、そうだな」


神威に任せる仕事か。


拠点を見回す。

・・・この拠点の、管理でもさせてみるか。

掃除と大体の整理が終わったとはいえ、この拠点はまだまだ奥がある、と思う。

それに、神威にはドールもいる・・・掃除を含めた拠点の管理をしてもらうか。

もちろん、俺も出来るだけのサポートはしようと思う。


「この拠点の管理をしてくれ」


「管理・・・?」


「掃除、炊事・・・それに、この拠点の調査や警備だな」


「・・・なるほど」


少し考えるそぶりを見せて。


「オリビアとセニアに手伝ってもらっても、大丈夫?」


「もちろん、神威のドールなんだからな?」


「・・・わかった、やってみる」


そう言って、ガッツポーズを作る神威。

やる気はあるみたいだ。


「テネスが合流してくれれば、これ以上の拠点になる可能性もある。

 その場合は、神威にかかる負担も大きくなるが・・・それでもやるか?」


「大丈夫、人形師(ドールマスター)の・・・腕の見せ所」


そうか、なら・・・もう言う事は無い。


「拠点の事は頼むぞ」


「うん」


神威が自発的に何かするというのは珍しい事だ。

だが・・・嬉しい事でもある。


自分で動いてくれているという、その行動自体が。



読んで下さり、ありがとうございました。

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