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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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48話

エッジの治療も終わり、彼は控室の隅にあるベッドで寝かされた。

会場の準備も完了し、8回戦の相手同士であるカロとレンドガが闘技場内に入る。


カロは、武士のような雰囲気の刀と脇差を刺した、

時代劇で見る様な素浪人の格好をしている男だ。

控室にいる間も、一言も喋らずに、隅で座禅を組んでいた。


レンドガはバイキング然とした大男。

持っている大斧で、近寄る敵をなぎ倒しながら予選会を勝ち残った。


「では、本日の最終試合。第8回戦・・・始め!」


開始と同時に、カロが居合斬りの構えを取る。

同時に、目を瞑っている。


「妙な野郎だ・・・だが!そんな細い剣で俺を倒せるか!」


レンドガが斧を構え、カロに向かって走る。


「一つ、二つ」


レンドガとの距離を測り、そう呟くカロ。

そして、ある距離を過ぎた瞬間。


「・・・一閃」


カロの腕が動くと同時に、その身体はレンドガの後ろまで移動していた。

ほぼ、一瞬で。


「何を・・・しやがった?」


レンドガが振り向くと、その鍛え上げられた腹部から、大量の血が噴き出した。


「な・・・?」


腹を押さえるレンドガ。

押さえても、止めどなく流れ、吹きだす血。

膝を崩してその場に倒れるレンドガ。


「鍛え上げて助かったな・・・レンドガ殿」


そう呟くと、カロは控室に向かっていった。


「カロさん!?」


審判がカロを追おうとするが。

倒れるレンドガに心配するように近づくと。


「レンドガさん・・・!?」


倒れ、気絶しているレンドガ。

彼を中心として、血が地面に広がり始めていた。


「しょ、勝者・・・カロ!」


目の前で倒れるレンドガを見て、審判はそう叫んだ。

同時に、救護班の名前も叫んでいた。


――――――――――――――――――――


一瞬、か。

だが、レンドガにも落ち度があった。

大斧という、重量武器を振りかぶって走っていた。

防御行動に出れない状況で、カロの刀の居合斬りをまともに受けた。


「見えた、トーマさん?」


「ああ・・・」


確かに速い攻撃だが。

・・・宵闇さんの居合斬りに比べれば、なんてことはない。

あの人の居合斬りは、Lv200以上の相手を三人同時に倒せるほどの威力だ。

俺の鎧にも、大きな傷をつけるくらいの、な。


「あの・・・八霧(やぎり)さん」


救護班のプリーストが近づいてきた。

八霧は何かを悟ったように懐に手を入れた。


「ポーションね、はいはい」


プリーストの言葉に、ポーションを渡そうとするが。


「いえ・・・その。彼の治療を手伝ってくれませんか?」


「え?」


治療用のベッドに寝かされているレンドガは、未だに血を流している。

その血はベッドにまで滴り、赤く染め始めている。

レンドガの顔色も悪くなり始め、青ざめ始めている。


「ポーションが飲めない状況なんです・・・!」


「・・・なるほど、分かった。手伝えるだけ手伝うよ」


そう言うと、レンドガの傍に寄る八霧。

俺も、それに続いて様子を見に行く。


八霧は懐から白いポーションを取り出し、蓋を開けて手に塗り始めた。

その手を、レンドガの傷口に当てる。


「結構深手だ・・・あのカロっていう人の居合斬り、結構な威力だね」


「ああ・・・何か手伝うか?」


「大丈夫だよ」


そういうと、レンドガの傷をなぞり始める八霧。

先ほどまで開いていた傷は、みるみるうちに塞がっていく。

血も、傷が塞がると同時に止まった。


いつもながら、すごいポーションだな・・・。

白いポーションは塗り薬としても使えたのは驚きだったが。


「うん、これでもう大丈夫」


そういって、レンドガの寝るベッドの傍に、一本のポーションを置く。


「起きたら、これを飲ませて。あと、しばらくは激しい運動は駄目」


「は、はい!ありがとうございます!」


プリースト達が何度も八霧に頭を下げる。

・・・医者も出来るかもな、八霧。


――――――――――――――――――――


こうして、本日の戦いは全て終わった。

控室から出る事も許されたのだが。

俺が気になったのは、ゼフィラスの妹の事だ。


八霧と神威(かむい)と一緒に拠点に戻ると、セニアが待っていた。


「トーマ様、お帰りなさい」


「ああ、それで・・・どうだった?」


そう聞くと、セニアは淡々と報告していく。


「まず、ゼフィラス様の妹は未だに見つかっていません。

 それと、ゴルム団長は現在取り調べのために、憲兵の詰め所に拘束されています」


「なるほど・・・」


「あ、話した民間人の方ですけど。

 ・・・どうやら、ゴルム団長が攫ってきた人みたいです」


・・・攫った?


「・・・こいつは、ゼフィラスの妹の事を抜きにしても。

 団長の、失脚に繋がるほどの大スキャンダルだな」


リルフェアも面と向かって罷免を言い渡せるほどの交渉材料になる。

・・・いっそのことリルフェアに話を通して、大々的にゼフィラスの妹を探すか?


いや、駄目だな、それじゃ妹の安全を脅かす可能性がある。

最悪人質として取られる可能性が高い。


だが・・・話だけは通しておいた方がいいだろう。

後々になって報告すると禍根が残る場合もある。


転移装置である、竜の像に触れる。

すると、リルフェアとラティリーズの声が頭に響いた。

これは、もしかして。


「リルフェア?」


像に話しかけると、向こうの部屋から動く音が聞こえる。


「あら、トーマ。帰ったのね?」


「ああ・・・こうやって話せるとは思わなかったが」


「便利でしょ?」


顔は見えないが自慢げな顔をしてそうな声色だ。


「・・・それで、何か用があって話しかけたのよね?」


「ああ、それなんだが・・・」


事情をかいつまんで話した。


――――――――――――――――――――


「なるほどね・・・ゴルム、舐めた真似をするわね」


「そっちには、話は行ってなかったか?」


「ええ」


嫌疑が掛かっているというだけだ。

精査するまでは、上にも話さないつもりだったのだろう。

だが・・・人を拉致している時点で、既にアウトな気がするが。


「なんにせよ、これでゴルムは団長から降格・・・いえ、聖堂騎士団追放ね」


「後任は、イグニスか?」


赤い髪のイグニスが頭に浮かぶ。

あいつしか、後任はいなそうだが・・・副団長だし。


「そうなるわね、これで・・・少しは清浄化するといいけど」


清浄化、か。


「まあ、なんにせよ・・・ゼフィラスの妹を救助しないことには始まらないわね。

 目星はついているの?」


「トリスに探ってもらっている、八霧の考えた場所をな」


「そう、なら・・・任せても大丈夫ね」


「いいのか?」


「ええ、私達が動くと、非常に面倒なことになりそうだからね。

 大々的に動けば、ゼフィラスの妹の身が危険になるかも知れないわ」


俺もそう考えていた。

とにかく妹を見つけない限りは、大々的に動くのは止めた方がいいだろう。


「知らせてくれてありがとうね、トーマ」


「いや・・・」


「あと、見事な勝ちっぷりだったわよ、明日も頑張りなさいね?」


「ああ」


像から手を離すと、声は聞こえなくなった。

周りを見ると、八霧とセニアが俺を不思議そうに見ていた。


「独り言・・・かな?」


「あ、これはな・・・」


説明すると、納得してもらえたが。

・・・確かに、端から見ると像に話しかけているだけに見えるな。


――――――――――――――――――――


二人に、電話のようなものだと言うと納得してくれた。

まあ、直通の電話だが・・・な。


「なるほど、リルフェアさんはそう言ったのか・・・うん、正しいと思う」


「ああ、大々的に動けば動くほど・・・ゴルムの仲間が焦る可能性が高い」


最悪、妹を殺してしまう可能性もあるだろう。


「でも・・・トーマ様。その、こう言っては何なんですけど・・・」


「なんだ?」


「どうして、ゼフィラス様の妹に関して、そこまで手を尽くすのでしょうか?」


セニアにそう聞かれた。


・・・そうだな、確かに。

他人事と言えばそこまでだ。

他人から見れば、おせっかいにも見えるかもしれないが。


「セニア、ゼフィラスも聖堂騎士団の一員だ。

 つまり・・・俺とは同じ場所に勤める仲間、しかも礼儀正しい奴。

 そんな奴が困っているんだ、仲間として助けるのは当然だろ?」


そう言うと、セニアは一瞬考えるように俯くが。

俺に一礼すると。


「ごめんなさい、そこまで、考えが至りませんでした!」


「いや、いい・・・おせっかいだと思っているのは俺もそうだからな」


そのお節介のせいで、トリスが危険な目にあった。

これは、俺のミスだ。


「それにな、俺は全力のゼフィラスと戦いたい。

 何かに焦り、追い詰められた男と全力の戦いは出来ないだろう?」


そう言って俺は立ち上がり、拠点の窓から外を見る。

そこからでも見える、御前試合の会場を見る。


「そうだね・・・僕も、トーマさんとは全力で戦いたいからね」


「決勝まで残れよ、八霧」


「トーマさんこそ」


読んで下さり、ありがとうございました。



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