表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
44/381

44話

トリスの話が終わります。



「団長、こいつらが話にあった『スパイ』か?」


憲兵と思わしき二人が、僕たちを見てそう言った。


「ああ、バルクからの回し者だ!俺の部屋を覗いていやがった」


ゴルム団長がそう言うと、二人の憲兵がこちらを睨む。

その二人を見たイチゴウさんはふっ、と笑う。


「・・・貴方たちも、彼の手駒なんでしょう?」


「手駒?」


二人が顔を見合わせる。


「何の話だ?」


「この部屋には、ゼフィラス様の妹が監禁されているはず。

 貴方たちは、それをどう思うの?」


・・・。

一瞬、沈黙が流れた。


「ゴルム団長、彼女の話は本当か?」


「何を言うか・・・そんな者、どこに居るというのだ!?」


部屋中を指さすゴルム。

確かに、部屋には彼女の姿は見えない。


「それに、スパイの言葉を信じるのか?憲兵の面々が」


ゴルム団長がそう言うと、憲兵の二人は団長を睨んだ。


「・・・あなたにも色々と嫌疑が掛かっている、色々とな」


二人の目が、団長室の奥の部屋に向く。


「・・・隣の部屋、調べさせてもらうぞ、団長殿」


「ふん!調べたくば調べるがいい!」


二人の聖堂騎士と共に、部屋の奥にある団長の寝室に向かう。


――――――――――――――――――――


扉を開けると、そこには・・・。

大きいベッドと、机の上に置かれた酒。

そして、身支度用の三面鏡があるだけだった。


「・・・誰もいないぞ」


「騙したのか、貴様」


イチゴウさんを睨む二人。


「で、でも、僕は確かに・・・ゼフィラス様の妹さんがここにいると!」


僕は必死になって、聞いた事実を言おうとしたが。


「いい訳無用・・・!」


その言葉は空しく、二人は臨戦態勢に入った。

剣を引き抜く二人。


その様子を見て、僕は一歩後ずさった。

しかし、イチゴウさんは何か考えているようで、

二人の行動を意に介していなかった。


「・・・おかしい、この部屋」


そう一言呟く。

周りを見渡し、ベッド付近を触る。


「汚いですね・・・ベッドメイクも半端」


ぶつぶつと文句を言いながら、ベッドの枕辺りを調べた。

枕辺りを探ると、何かを見つけたようだ。


「やはり・・・ありました」


枕の近く、枕に隠されたようなそこには、レバーがあった。

それを勢いよく下に下げるイチゴウさん。

すると、部屋の端にあった本棚が動き始めた。


ここに隠していたのか、とゴルム団長を見る僕とイチゴウさん。

焦るだろうと、そう見ていたのだが。

だが・・・その顔は余裕に満ちていた。

何か、おかしい・・・。


ゴゴゴ、と鳴るわけでもなく、油をきちんとさしたドアのように音もなく動く本棚。

ドアのように開閉すると、その中には・・・。


「女性・・・!?しかも、民間人か?」


民間人の服を着た、綺麗な女性が・・・本棚の後ろの小さなスペースに入っていた。

その隙間は、人が座れるほどの広さも無く、押し込められているように立っていたが。

本棚が開いたと同時に、女性は床に倒れた。


もう一度、ゴルム団長の顔を見る僕。

・・・その顔は、驚愕に満ちていた。


「しまった、そいつは隠し忘れ―――」


そこまで言うと、自分の口をふさぐゴルム団長。


「ゴルム団長、どういう事だ?」


二人の疑惑が、ゴルム団長に向いた。


「ぐ・・・こ、これは」


睨まれ、後ろに下がりだすゴルム団長。


「話を聞かせてもらうぞ、団長」


二人がゴルムの腕を取ると、引きずるように団長室を出て行く。


「くそ!放せ!」


じたばたする音がしばらく聞こえたが、やがて聞こえなくなった。


「・・・解決でしょうか?」


そう言うイチゴウさん。


だけど、僕は。

女性の顔をしっかり見た瞬間。

・・・あることに気づいた。


「この人・・・ゼフィラス様の妹さんじゃないです!」


「?」


「知らない、誰かです」


――――――――――――――――――――


床に倒れた女性を介抱する。

気絶しているだけのようで、外傷はない。


「別人、ですか」


「はい・・・僕は一度、妹さんを見た事がありますけど。

 この人とは、髪の色も、顔も違います」


それを聞き、顎に手を当てて何か考えているイチゴウさん。


「・・・なるほど、先ほどゴルムと呼ばれた男性が呟いた一言。

 『そいつは、隠し忘れた』、に繋がりますね」


「え?」


「つまり、妹は別のどこかに隠した。だけどこの人は忘れていて、

 『隠し忘れた』と呟いた・・・そう考えられませんか?」


なるほど・・・確かに。

隠し忘れた、という一言にも合点がいく。


「・・・この一件、まだ解決していませんね。

 トーマ様と八霧(やぎり)様にも、相談する必要がありそうです」


――――――――――――――――――――


「そうか」


トーマ様に、あったことをすべて話した。

内容を聞き、理解したのか何度か頷いた。


「1号、トリス、ご苦労だったな」


「いえ、当然の行為です。他者の妹とは言え、妹。

 妹を大事にするのが、姉の務めかと」


「・・・は?1号、まさかお前」


イチゴウさんに近づくと、その頬を触るトーマ様。


「トーマ様?何か・・・?」


少し顔が赤くなっているイチゴウさん。


「お前・・・感情が。そうか、蓋が取れたんだな」


そう言うと、トーマ様はイチゴウさんの頭を撫で始めた。


「妹が、大事か」


「はい。妹は、大事ですから」


すまし顔でそう言うイチゴウさんだったが。

撫でられて、少し上機嫌そうだ。


神威(かむい)も喜ぶな」


トーマ様も嬉しそうだ。


「それで、どうしましょうかトーマ様」


撫でられながらそう言うイチゴウさん。

そうだ、本題はそれだった。


「ああ・・・ゴルムが捕まったのは、いい時間稼ぎになるだろう。

 だが、ゼフィラスの妹の安否が確認できない以上、派手には動けない」


「どうしてでしょうか?」


僕がそう聞く。


「ゴルムにも協力者か仲間がいるはずだ。

 最悪、そいつが妹を身柄を拘束している可能性がある」


「なるほど、では・・・どうしましょうか?」


「ゴルムを見張ってくれ、恐らく・・・牢屋か何かに一時的に拘束されてるはずだ。

 仲間に命令するとしても、牢獄からだろうな」


「・・・了解しました」


一礼すると、イチゴウさんは歩き出した。


それを見送ったトーマ様は、僕を見た。

その顔は、申し訳なさそうにしていた。


「すまなかったな、セニアから話は聞いた」


「え?」


「死に掛けたと聞いた・・・痛かっただろう?」


「い、いえ・・・僕が不覚を取っただけで」


そう言って、僕はポケットから指輪を取り出した。

くすんだ赤い指輪を、トーマ様に返そうと。


「あの、これを」


「ああ、命の指輪か」


僕から受け取ると、小さい道具袋から光る粉を取り出すトーマ様。

それを、指輪に振りかけると、元の綺麗な赤い光を放つ指輪に戻った。


「・・・トリス、お前はこの後どうする?」


「え・・・そう、ですね」


まだ、ゼフィラス様の妹が見つかっていない。

探そうとも考えたけど、僕に出来る事は少ないだろう。

それに、イチゴウさんとセニアさんがいれば・・・僕は要らないだろう。

そう、要らないんだ。


「・・・やれやれ、そんな顔をするな。

 いいか、お前にはまだやって欲しいことがある」


「え?」


肩を叩かれ、下げていた目線を上にあげた。

すると、輝きを取り戻した指輪を手渡された。


「この周辺に詳しいのはお前だけだ。

 セニアと1号には牢屋周りの見張りを頼んでいるが・・・それ以外をやって欲しい」


「それ以外・・・?」


「うん、怪しい場所をピックアップしたから、そこを調べて欲しいんだ」


隣から声を掛けられた。

そちらを向くと、八霧(やぎり)さんが立っていた。


「八霧さん・・・?」


「横からずっと聞いてたけど。そんな短い時間で人間を遠くに逃がすのは無理だよ」


そう言うと、八霧さんは地図を取り出した。

カテドラル内の、見取り図のようだ。

その地図には、複数の丸が記載されていた。


「この丸が、怪しい場所。君にはここを調べて欲しい」


そう言うと、八霧さんは地図を手渡してきた。


「僕で、いいんですか?」


「お前にしか出来ないことだ。俺も、八霧もこの辺に詳しい訳じゃないからな」


僕は、まだ・・・役に立てるのだろうか?


「分かりました・・・僕、やります!」


地図を受け取り、脇に抱えた。


「ああ、頼むぞ」


そう言って、笑うトーマ様。


そう言えば・・・トーマ様の試合は終わったはずだ。

勝てたのだろうか?


「トーマ様、御前試合は・・・?」


「ああ、それなら・・・」



読んで下さり、ありがとうございました。


次回、多少時間が戻った所から始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ