41話
昼休憩に入るとの、審判の声が響く。
周りを見ると、食事を始めている者もいる。
控室で食べるのが大多数のようだが、俺はどうするか。
「トーマさん、セニアが弁当を作るって言ってたけど。
どうなってるのかな?」
八霧がそう聞いてくる。
届けに来る可能性もある。
何も食べずに、待っていた方がいいだろうな。
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控室で八霧と話していると、神威とセニアが、
大きなバスケットを持って、控室に入ってきた。
「トーマ様、八霧さん。お昼御飯持ってきました」
「皆で、食べる」
待ってましたと、八霧は立ち上がった。
腹が減っていたようだし、楽しみだったのだろう。
俺も立ち上がり、二人の元に向かう。
丁度いい場所を探していると、カテドラルから少し離れた場所に公園を見つけた。
どうやら、カテドラルの敷地の範囲内にあるらしく、
唯一、許可の無い部外者が入れる敷地らしい。
とはいえ敷地内にあるので、聖堂騎士がたまに見回りには来るが。
公園のベンチに腰掛け、八霧が左隣に座る。
右隣にはセニアが座り、神威は八霧の横だ。
鎧を脱ぎ、足元に置く。
鎧を見てみると、少し汚れていた。
後で、手入れをしておかないとな・・・。
「はい、トーマ様」
「ああ、ありがとう」
セニアがサンドイッチとカップに入ったお茶を渡してくれる。
サンドイッチの中身は、たまごサンドか。
「あの、神威。僕・・・生のタマネギは食べられないんだけど」
「セニアの料理・・・食べられないの?」
神威がすごい形相で八霧を睨んでいた。
・・・女の子がする顔じゃないぞ、神威。
「まあ、生のタマネギがダメな奴は多いからな」
そう言いながら、俺はたまごサンドを口に放り込む。
うん、美味い。
セニアの料理スキルが高いというのが頷ける味だ。
シンプルな分、たまごサンドは作る人の腕で千差万別に変わる。
その点では、セニアは料理が上手いと言っていいだろう。
「美味いな、さすがセニアだ。うちのギルドの料理担当でもするか?」
冗談交じりにそう言ったのだが。
セニアは顔を輝かせて。
「え?いいんですか!?」
嬉しそうに、そう言った。
「・・・僕も賛成だよ。タマネギは苦手だけど、これなら食べられるね」
苦手といいつつも、刻んだ生のタマネギが入ったサンドイッチを食べる八霧。
苦手な物を食べる顔じゃない、美味しいのだろう。
「セニアが、料理当番なら・・・毎日、困らない」
そう言う神威も、セニアが作ったジャムサンドを食べていた。
異論は無さそうだ。
「よし、そう言う訳で・・・セニア、料理当番を頼むぞ。
材料とかは、俺達が調達しておくからな」
「はい!お任せください!」
満面の笑みで、そう答えるセニア。
「・・・嬉しそうだな、そんなに料理が好きなのか?」
それを聞いたセニアは、少し顔を曇らせた。
「その、私もギルドの一員だって、そう実感できたというか。
私は・・・ドールなので、そこのところ曖昧かなって、ずっと・・・」
なるほど、そうか。
確かに、セニアは神威のドール。
正式にギルドの一員だとは、誰も言っていなかった。
セニアの為にも、ここで正式に仲間だという事を言っておいた方がいいだろう。
曖昧なのは、人によってはとても苦痛だからな。
「セニア、お前はギルドの一員だ、だから」
そう言って、俺は道具袋に手を入れる。
ギルドメンバーの証である『紋章』入りの何かを渡そうと。
ギルドの紋章は、メンバーによって様々な箇所に付けられている。
八霧の場合は、錬金術師の帽子に。
神威の場合は、髪留め。
俺の場合は、鎧の肩とマントに入れてある。
いずれも、セラエーノが入れてくれたものだ。
そこで、セニアにも紋章入りの何かを渡そうとしたのだが。
紋章入りの物となると、数が少ない。
多少不安が頭をよぎったが、道具袋の中を確認し始めた。
紋章入りの物をいくつか見つけるが・・・。
マントは、セニアにはデカすぎる。
鎧は・・・重すぎて着れない、軽装鎧でもセニアには重いだろう。
かと言って、『これ』を渡すわけにもいかないだろう。
青い宝石に、ヘルフレイムの紋章が入った指輪だ。
昔は誰でも装備できるという事で、指輪にギルドの紋章を入れていた。
だが、それだと紋章が目立たないと一部のギルド員が文句を言い、
今のように目立つところにギルドの紋章を入れるようになった。
しかし、これだとこっちの世界で俺達が仲間だと、誰が見ても分かるな。
騎士団だと誤解を招く可能性もあるだろう。
・・・後でリルフェアとラティリーズに紋章の認可を貰った方がいいな。
「トーマ様?」
首を傾げて俺を見るセニア。
今はセニアの事が優先だ、それは後で考えるとしよう。
先ほどの指輪はテネスからの預かりものだ、渡せないよな。
・・・だが、指輪はもう一つある。
俺が付けている、この指輪だ。
『ヘルフレイム』創立時に宵闇さんとGさんと一緒に、同じ指輪を作った。
それがこれ・・・ではなく、本物は大切に保管している。
今付けているのは、その指輪のレプリカだ。
食堂の際のセラエーノ製の指輪とは違い、この指輪にはそこまで強い効果は無い。
強いてあげれば、『HPアップ小』が付いている位だ。
レプリカである指輪を外す。
銀色の指輪に、ギルドの紋章が彫ってある簡素な指輪。
「あの・・・?」
セニアがそう聞いてくる。
「セニアがギルドの一員だと、証明するものだ。
これを受け取ってくれ」
そう言って、外した指輪を手渡した。
「・・・トーマさん、いいの?」
「ん?」
「だって、それ」
レプリカとは言え、最初に作ったギルド員の証だ。
軽々しく渡せるものではない。
八霧もそう言いたかったのだろう。
「いいんだ、八霧。セニアも、俺達の『家族』なんだからな」
目の前で困惑する、セニアの手にしっかりと握らせる。
「大事にしてくれ、お前がギルドの一員だと示す大切なものだからな」
「は・・・はい!」
困惑した顔に、花が咲いたかのように、ぱあっと明るくなるセニアの顔。
何処からか紐のようなものを取り出すと指輪をひっかけて、首に下げた。
そして、首に下がった指輪を、大事そうに触るセニア。
「大切にします、トーマ様」
「ああ」
嬉しそうに微笑んでいるセニアを見ていると、こちらも嬉しくなってくる。
八霧も神威も、その様子を見てにこやかに笑っていた。
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食事も終わる頃。
セニアが俺に話しかけてきた
「次はトーマ様ですよね?」
「ああ、そうだな」
腰を上げる。
そろそろ、準備運動をしておこう。
相手はハインツだ、気を引きしめてかかろう。
「では、私は戻りますね」
一礼すると、バスケットを持ってカテドラルに向かうセニア。
この後、ある事件に巻き込まれるとも知らずに。
セニアは上機嫌で拠点に戻っていった。
読んで下さり、ありがとうございました。




