4話
ギルドから退会することは決定した。
ここまでくれば、もう、未練も無い。
・・・あるとすれば、昔からの・・・奴らの今後だ。
エリサを含めて、俺が残っているから残ってくれていた奴も少なからずいる。
そいつらを誘って、ギルドを作ってみるか。
――――――――――――――――――――
その事を胸秘めつつ、ギルダーとの話を終わらせた。
その場から離れ、ピリピリしている場所に戻る。
『ヘルフレイム』と『白銀の大剣』が睨みあうその場所に。
エリサが、『白銀の大剣』のメンバーを前にして、怯えている。
・・・仕方ない、相手はGVG用にきちんと訓練されている精鋭のような連中だ。
「大丈夫か?」
肩を叩くと、こちらに気づいた。
「あ・・・はい、大丈夫・・・です」
「そうか・・・」
近くの石に座る。
正直・・・くたびれた。
「あの、トーマさん?」
参加しないのか、という顔でエリサがこちらを見る。
「・・・ああ、参加する意思は無い」
これが終われば、俺もギルドを抜けることになる。
・・・参加する義理も無いだろう。
大人げないが、多少のわがままくらいは許してほしいものだ。
「勝てるんですか、ヘルフレイムは?」
隣の石に座るエリサ。
彼女も、こっちに来る前は参戦する気の目をしていたが。
敵を目の前にして、しり込みしたようだ。
「どうだろうな・・・白銀の大剣の5人衆が目の前にいる状態だ」
Lv200越えの5人。
リーダーはシルハという男。
Lvは・・・218くらいだったはず。
大体の奴はLvを表示しているので分かるのだが、GVGとなるとLvを隠すギルドもいる。
そうすることで、戦力を隠すという意味もある。
目の前の彼らがそうだ。
・・・あくまで俺の知っているのは事前情報だし、古い可能性もある。
職業はうちのリーダーと同じ魔騎士。
ただし、装備と武器のランクはギルダーより一回り上だ。
恐らく、スキル構成も
後ろに並ぶ4人も、それぞれの職業を極めている。
魔法使いの装備も魔力特化型。
もう1人の魔法使いは完全ヒーラー用装備・・・即死耐性の指輪も嵌めている。
タンクもしっかりと、防御型特化の装備、ヒーラーと同じく即死耐性の指輪装着か。
最後のは・・・恐らく能力向上専門の魔法使いだ。
防御的には貧弱な装備構成・・・しかし、全て補助魔法強化の装備だ。
要するに、GVGの対策をしっかりとした、役割のできている布陣といえる。
対するヘルフレイムは。
Lv200越えは1人・・・ギルダーだ。
後ろの奴らは平均Lv160と言ったところ。
しかし、白銀の大剣との一番の違いは・・・
連携が一切取れていない所だ。
アタッカー・タンク・ヒーラー・サポート・・・等。
きちんと役を分け、お互いを補ってこそ、強いチームといえる。
・・・今のままでは、ワンサイドゲームになる。
勝負は始まる前に決まっているというが。
それを如実に表す戦いになりそうだ。
――――――――――――――――――――
開始時刻の10分前。
最終的に
『ヘルフレイム』―参加者25名
『白銀の大剣』―参加者12名
人数的には、ヘルフレイム有利に見えるが。
俺の見立てだと、Lv200以上を5人抱える白銀の大剣の圧倒的有利だろう。
その5人のチームでヘルフレイム24人全員相手に出来る編成になっている。
・・・しっかりパーティー編成をした、白銀の大剣に勝つことは不可能だろう。
――――――――――――――――――――
睨みあう二つのギルドを見守っていたら、横から声を掛けられた。
聞いたことのある、高い声。
「やあ、トーマさん・・・にエリサ」
「八霧!久しぶりだな」
Lv200の錬金術師が立っていた。
男キャラのはずなのだが、中性的な顔立ちと性格。
赤い髪を伸ばしてポニーテールに纏めている上にベレー帽・・・女にしか見えない。
ヘルフレイムのアイドルと呼ばれた時期もあった。
ちなみにEOS内でも屈指の幸運な男だ。
全身のガチャ限定装備がそれを物語っている。
俺なんて、高級外車買えるほどこのゲームにつぎ込んでるのに、
こいつの方が最上級武器を持っているくらいだ。
・・・何故か俺に懐いていて、一緒にいることが多かった人物でもある。
「うん、久しぶり・・・にログインしたら、GVG情報が流れてびっくりしたよ」
それはびっくりしただろうな。
「でも、トーマさんが出ないなら、負けだね」
「・・・」
俺一人で何とかなるとでも思っているのか?
戦いはそんなに甘くないぞ。
「トーマさんだったら、あの5人相手にしても勝てるだろうに」
そう言って、俺の顔を覗いてくる。
その顔はニヤニヤと笑っていた。
「やってもいないのに言い切れるのか?」
「うん」
言い切った、悩みもせずに。
・・・評価してくれるのは嬉しいが、贔屓目という奴だろう。
流石にLvカンストしているとはいえ、Lv200以上、しかも・・・
編成を練り合わせている彼らに勝つのは至難の業だろう。
だが、こいつの戦局眼はヘルフレイム1・・・いや。
EOSを通してもこいつ以上はなかなかいないだろう。
今のヘルフレイムを立て直せる軍師がいるとすれば、こいつだ。
「あ、あの・・・八霧くん」
ずっと隣の石に座っていたエリサが声を上げる。
「なに?」
「参加、しないの?」
それを聞いた八霧は、集まっているヘルフレイムの連中を見る。
そして、やれやれという感じで溜息を一つ。
「負ける戦いには参加しないことにしてるんだ」
そう言って、石に座る。
アバターを幼くしているせいか、石に座ると足が浮いている。
・・・というより、俺の股の間に座るな、男に座られても嬉しくないぞ。
「・・・あと、プリラさんと神威さんも来る予定。
それに、テネスさんと・・・セラエーノも来るよ」
俺を見上げてそう言う八霧。
全員・・・宵闇さんがいた頃からの古参だ。
というより、古参勢はこれで全員。
少なくなったもんだ・・・5年もたつと、
――――――――――――――――――――
プリラはLv180の『神官』。
上位職の上位神官になれる条件を満たしているのに、
神官の格好が可愛いという理由でそのまま職を続けている。
ある意味、最も神官を愛している女性といえる。
青髪の長髪をサイドテールにまとめた、胸のでかい・・・いや、豊満な身体の女性だ。
ちなみにヒーラーをしても非常に優秀・・・だが。
下位職であるため、実際のLvよりも能力が低い。
それも、神官への愛ゆえ・・・か。
神威はLv112の『人形師』、サブ職で『泥人形師』も修めている。
サブ職を取ると能力に制限がかかるため、
ガチ勢はサブ職を持っていないことが多い。
ギルドにいたゴーレムも彼女謹製。
・・・彼女が目指すのは、自分の意志を持った人形の作成。
NPCという枠を超えた、その先にあるものを作りだそうと躍起になっている。
そのため、よく変人扱いされるが、彼女の熱意は本物だ。
ちなみに、金髪ツインテールの幼女が好きらしく、
自分のアバターもロリっ子金髪ツインテール。
彼女の作る人形にもそれが色濃く出ている。
というより、自分そっくりに作るため知らない人が見ると誰が本人か分からない。
テネスはLv109の『建築家』。
サブ職『罠士』を取る、建築専門の男。
今の拠点の設計図を作ったのは彼である。
たまにギルド員を罠にかける悪戯をしたりしていたな・・・。
まあ、引っかかるのが悪いと言われるほどバレバレに設置していたが。
銀髪の優男風味のアバターが特徴で、クラフト専門のスキルばかり取っていたので、
彼の戦闘力はすこぶる低い・・・同レベル帯でも瞬殺されるだろう。
彼もそれは承知の上でキャラを製作していた。
というより、物を作るのが楽しくてクラフト要素満載なEOSを始めたらしい。
セラエーノはLv150の『熟練鍛冶師』。
ギルド員のほとんどの武器を作製、強化していた女性だ。
ただ、ギルダーが仕切るようになってからは、一切鍛冶仕事を止めていた。
理由は「ダサい武器だな」のギルダーの一言。
それ以来、一本もギルドの為には打っていない。
彼女ほど、鍛冶仕事が得意なメンバーはいなかったんだが・・・。
ちなみに、プリラよりも等身が低いが、胸はプリラと同じくらいにデカい。
貧乳にコンプレックスがあるって前に聞いたが・・・まあ、ゲームくらいは自由でいい。
――――――――――――――――――――
「古参勢、勢ぞろいか」
俺と八霧、プリラ、神威・・・テネスにセラエーノ。
そして、エリサ・・・は古参じゃないが、こっち側だろう。
古参のほとんどは、宵闇さんとGさんがいなくなってから抜けてしまった。
今のギルドメンバーは、ギルダーの友人か、俺たちか名前だけ残った奴ら。
白銀の大剣と戦おうとしている奴らは、ギルダーの友人ばかりだ。
「少なくなったね、古参勢」
「ああ・・・そうだな・・・」
3人でGVGが始まるその時を待った。
見学者として。
・・・これが終わったら、皆を誘って、新しいギルドを作ってみるか。
そう思いながら、戦いの始まりを待っていた。
見て下さり、ありがとうございます。
次回、異世界転移の前兆が始まります。