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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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38話

第2回戦のカードはドノヴァとジーラス。

お互いに傭兵騎士として戦場にまで名が轟く、存在らしい。

ドノヴァは『味方殺しの獣』と呼ばれるほど、殺戮を繰り返した傭兵騎士。

対するジーラスは『不殺』のジーラスと呼ばれる、武器破壊のスペシャリスト。

数多くの戦いで


お互いにライバルと認め合う者同士が、2回戦で激突することになる。


控室で自身の武器を研ぐドノヴァ。

彼の武器は大型のフランベルジュだ。

炎のような形状をしたその剣は、鈍く輝いている。


被っているフードで彼の顔は見えなかった。

・・・身にまとう赤い鎧も、何か違和感のある色だ。


「返り血で、あいつの鎧は変色しているらしいぜ?」


「・・・そうなのか」


ラクリアがそう教えてくれた。

返り血で、彼の鎧は赤黒く変色したという事か・・・。

一体、何人分の血を吸った鎧なのだろうか。


「やあ、ドノヴァ。君と戦うのは久しぶりだね」


ドノヴァに話しかける、長い剣を背中に背負った男。

そしてその男は、ドノヴァと同じ形の鎧を着ている。

色は違うが、彼の着ている鈍色の鎧の方が元の色なのだろう。

ヘルムは着用しておらず、革製のヘッドギアを着けている。

そこから覗く顔は、若い男性だ。


「・・・ジーラス、貴様とは・・・今回こそ、決着を」


「ああ、負けないつもりだ。全力で来いよ、ドノヴァ」


そう言うと、ジーラスも武器の手入れし始める

・・・ドノヴァの隣で。

次の対戦相手の隣で、武器の手入れか。

仲がいいようにも、悪いようにも見える二人だな・・・。


「ドノヴァとジーラスは大抵、敵味方で分かれる二人なんだが。

 決着は未だつかず、この御前試合で雌雄が決するかもな」


「あの二人は、仲がいいのか?」


「ん?ああ・・・友情に近いものを感じ合ってるんじゃないか?

 まあその友情は、歪んでいるとも言えるけどな」


ラクリアはそう言うと、二人を見る。

そして、一回ため息をつくと再び俺に話しかけてきた。


「斬り合う度に友情を深めるというのも変だよな?」


「・・・まあ、友情の示しあいは人それぞれだからな」


――――――――――――――――――――


2回戦の開始の合図前。


ドノヴァとジーラスが闘技場内に入り、お互いに武器を引き抜いた。

ツヴァイヘンダーを両手で構えるジーラス。

フランベルジュを右手に持ちながら、左手を刀身に添えているドノヴァ。


先ほどと違い、何故か観客の声が少ない。

どころか、歓声も無い・・・とても静かだ。


「それでは・・・第2試合・・・開始!」


審判がそう叫ぶが。

ドノヴァとジーラス、どちらも動かない。

そして、それを見る観客たちも、ほとんど声を上げていなかった。


「無理もないさ。観客も、あの二人の空気に飲まれてるんだ」


睨みあったまま、動かないドノヴァとジーラス。


ドノヴァが一歩、踏み込もうとしては、ジーラスが間合いを取る。

片方が左に動けば、もう片方も左に動く。


「読み合いだな・・・」


俺がそう言うと、ラクリアが俺を見た。


「ああ、その通り」


ドノヴァはフランベルジュから左手を離すと、下段に構える。

フランベルジュの先端が地面をこする。


「始まるぞ」


瞬間、ドノヴァの剣が動く。


フランベルジュをこすった地面から振り上げると同時に、

剣に乗せた土をジーラスに飛ばす。


「っ!」


目元付近に飛んだ土に一瞬気を取られるジーラス。

その間にドノヴァのフランベルジュは彼の頭を狙い、振り下ろされた。


「はあぁ!」


目を瞑りながらジーラスはツヴァイヘンダーで、

振り下ろされるフランベルジュを受け止めた。


そのままの体勢で、二人が鍔迫り合いを始める。


「やるな・・・ジーラス」


「お前こそ、戦場の沙汰だな・・・ドノヴァ!」


力任せにツヴァイヘンダーを振ると、フランベルジュを弾き返した。

弾かれたフランベルジュを構え直し、間合いを取るドノヴァ。


目に入ったごみを拭ったジーラスは、片手でツヴァイヘンダーを構えた。

対するドノヴァはフランベルジュを片手に、

特異な形をした何かを懐から取り出した。


「あれは・・・?」


蝋燭を立てるようにな燭台に見える、二又に分かれた鉄の何か。

音叉のような形とも言えるが。

まさか、あれは・・・。



片手で構えたツヴァイヘンダーを横薙ぎに振るうジーラス。

すると、ドノヴァはかわしもせずに、ツヴァイヘンダーにその『何か』を向かわせた。

キィィンと甲高い音を立てて、ぶつかるツヴァイヘンダーと何か。

ツヴァイヘンダーの刀身は、それの間に挟まれていた。


「・・・受け止めるための、武器か」


十手に近い何かだ。


ドノヴァはツヴァイヘンダーを挟んだまま、それを逆手に持つと、

フランベルジュをツヴァイヘンダーに叩き下ろした。


鉄の砕ける音と、ツヴァイヘンダーの刀身が地面に落ちる音が響く。


「・・・ドノヴァ、お前・・・!」


折れたツヴァイヘンダーを捨て、ドノヴァと間合いを取るジーラス。


「『武器破壊』が得意な・・・貴様の・・・武器を壊したぞ・・・」


「ふ、ふふ・・・そうだな、想定外だったよ」


そう言って笑うジーラス。

そのジーラスに向かって、フランベルジュを振るうドノヴァ。

彼の身体を捉えたフランベルジュは彼の腹を割いた・・・はずだったが。


「!」


脇腹に触れる直前に、フランベルジュは止まっていた。

ジーラスの手に握られていたのは彼のツヴァイヘンダーを壊した、

原因になったものと同じ形状のもの。


「はあぁぁっ!!」


止まったフランベルジュを懐から取り出した鉄製の棍棒で叩く。

ツヴァイヘンダーと同様に、フランベルジュも砕け、地面に転がった。


「・・・流石だ、ジーラス」


今度はドノヴァが間合いを取った。

これで、互いにメイン武器が無くなった。


ドノヴァとジーラスは示し合わせたかのようにお互いの武器を捨てる。

そして、お互いに鎧まで脱ぎ捨てた。

ドノヴァとジーラスの鍛え上げられた、傷だらけの身体が露になる。

・・・ドノヴァは顔に、フードを被ったままだったが。


「行くぞ・・・!ジーラス!」


「ああ、来い!ドノヴァァァ!!」


二人が拳を握りあうと、殴り合いを始めた。


顔を殴っては顔を殴り。

ボディブローにはボディブローで返す。

目の前で行われているのは、ただの喧嘩に見える。

だが、当人同士はボロボロになりながらも、全力で相手の攻撃に受け答えしている。


その様子を見ていた観客たちは、熱くなり始めたのか声援を送っていた。

先ほどまでの静寂が嘘のような、その賑わい。


次第に二人の攻勢の勢いが落ちてくる。

そして、それが好機と見た両者が、ほぼ同時に殴りに行った。


「おらぁ!!」

「むん!」


ジーラスの渾身の右ストレートが、ドノヴァの顎を打ち抜く。

だが、ドノヴァの右フックも、ジーラスの顎を捉えていた。

その一瞬、静寂が起こった。


先に倒れたのはドノヴァだった。

膝を崩してその場に倒れる。


地面に伏したドノヴァを見やるジーラスだったが。

彼も、相当のダメージを負ったせいか、フラフラとドノヴァの横に倒れた。


審判が彼らの近くによると、二人の様子を見る。


「・・・お互いに気絶していますが。

 ドノヴァが先に気絶したとみなし、ジーラスの勝利とします!」


勝利宣言をすると、会場からは歓声が上がった。


――――――――――――――――――――


全身ボロボロになった、ドノヴァとジーラスが控室に運ばれてきた。


そして、八霧に近づいてくるプリースト。


「ポーションでしょ、はい」


察したのか、二本のポーションを渡す八霧。

それを受け取ると、礼を言うプリースト。

しかし、気絶しているせいですぐには飲ませられないらしい。


「なるほど、怪我人も出るから今日と明日の二部構成になっているのか」


疲労を取るのと、怪我を治す時間を合わせての2日間か。

何故分けるのかとも思ったが、怪我人が出るなら当然か。

ポーションは便利だが、万能ではないし。

回復魔法だって、完全復帰させるのは多少の時間がかかる。


近くに座っていた八霧(やぎり)が腰を上げる。


「次は・・・僕だね」


そう言って立ち上がると、屈伸を何回か行い準備運動を始めた。


「あら、やる気ね」


「負けないよ、ソフィアさん」


「ふふ、期待してるわよ。私も、全力で行かなくちゃね」


そう言うと、ソフィアも準備運動を始めていた。

次は八霧か、頑張れよ。


言葉には出さなかったが、その後ろ姿を応援した。


読んで下さり、ありがとうございました。

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