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377話

歳の言った一行が始めた冒険者グループ。

しかも片田舎で著名な冒険者が一人もいない、そんな場所からデビューしたのだ。

誰も見向きなんてしなかったのは当然というものだろう。

いや、始まりたてで他のパーティーと組んだ時も色々と言われたもんだ。


老人がこんな仕事できるのか?とか。

引退間近で現場に出て来るな、だとか。

足引っ張る位ならいない方がまし、とかな。


だが、そんな言葉は数か月で消えていくことになる。


「トーマさん、こっちは終わったよ」


「ああ・・・次は西の拠点だな」


現在街から多少離れた樹海内でゴブリンの掃討を行っていた。

ギルドの方もゴブリンだからと放っておいたせいか、

その数が数百以上・・・いや千に届くかという位の大規模に発展。

更に樹海奥の魔物までも自勢力に取り込んで肥大化、今や一大勢力だ。


故に俺達含めて複数の冒険者による大掃討作戦が決行。

現在その端っこから攻めているところというわけだ。


「今の所は主戦力と遭遇して無いですね?」


「一番外枠の防衛線に戦力を置くわけはない。

 次から手ごわくなっていくぞ」


他の冒険者たちの位置を確認する。

魔法の地図の上で複数の駒が動いていくが、どうやら一番槍は俺達のようだ。


「よし、このまま本拠点、西側中枢へと向かっていくぞ」


―――――――――――――――――――――


道中、向かってくるゴブリンを蹴散らしつつ前進を続けていた。

オーガやオークに群れが雇った傭兵だろうか、

ミノタウロスも混じっていたが特に問題は無く前進を続けていたが。


「おっと」


そのミノタウロスが振り下ろした斧を回避し、

隙だらけになった顎を打ち抜くように殴る。

首辺りから骨の折れる音が聞こえる、追撃はしなくていいか。


「数だけは多いね」


「敵にはならないがな」


倒れ伏し、死体となったミノタウロスを跨いで先へと進む。

大した相手はいないがこうも多いと厄介だな。


「ちなみに、報奨金はどれくらいになってる?」


「これくらい」


ミノタウロスから倒した証である角を回収していた八霧が、メモを投げてきた。

・・・なるほど、向こう数年は安心して暮らせるくらいにはたまったな。


むしろそれだけの数を捌いてきたという事になるが、

これは放っておいたにしても多すぎだ。

被害件数が少なかったのが驚きなくらいに。


「随分放っておいたみたいだな、この様子だと」


拠点を超えて要塞化を始めている場所に火を放ちながら呟く。

このまま放置していたら一体どうなっていたやら・・・。


「しょうがないさ、ここは小領土の一つ。

 領主だって大々的に冒険者を複数雇えるほどの金銭は持ってないし。

 こうやってギルド主体で討伐でもしないと」


「近隣の村々に被害が出ているのを放置してそれだからな?

 もっとやりようがあるだろう・・・に!」


藪から奇襲してきたゴブリンの頭を掴んでぶん投げる。

燃やした拠点に突っ込んでいくと悲鳴を上げながら火だるまになっていく。


「あれじゃ回収できないかもね」


「・・・悪いな」


まあ、十分元手は取れている。

一匹くらいなんてことは・・・。


「こちらも終わりましたよ」


テネスとセラエーノも合流、肩に討伐の証を縄を使って大量にぶら下げていた。


「あとは神威達か・・・」


「どうします?根拠地に先に殴り込みますか?」


そうだな、後で合流してもらえばいいか。


「一応聞いておくが、全員疲れてないか?」


その言葉に手を上げる者はいなかった。

歳食ってるのに元気な事だ・・・それは俺もか。


「よし、攻め入るか」


魔法の地図を確認し、他の冒険者たちの位置を見る。

ようやく中頃まで迫っているようで、この調子だとここに来るにはまだかかる距離。

俺達が大方終わらせた頃に合流するくらいだろうか。


「で、どう攻め入るのさ?」


「頭を使う必要がある相手とは思えませんね。

 真正面から攻撃していぶりだし、一気に殲滅するだけでよろしいかと」


「ああ、らしくいこうじゃないか」


――――――――――――――――――――


大規模な群れにはそれ相応のボスが備わるもの。

ここも例外ではなく、ゴブリンを率いているシャーマンがいた。

通常ゴブリンシャーマンというのは魔法が使える程度で、

多少のリーダーシップを発揮するくらい・・・つまり毛が生えた程度の強さなのだが。

ここのリーダーは毛色が赤く変色しており、より上位へと変異したと見える。


「まあ、敵ではありませんがね」


敵根拠地に対して正面切って攻撃、入り口付近で戦闘を開始した。

無論相手もここまで攻め入ってくる事自体は予測しており、

迎撃用の部隊を迅速には展開してきた。

骨と動物の皮で作られた鎧を着たゴブリン達がぞろぞろと目の前に現れる。

それらに担がれるようにそのシャーマンも姿を現していた。


「さながら将軍と親衛隊といった所か」


神輿のようなものに乗っていたシャーマンはふてぶてしそうに降りると、

こちらの全員を睨みつけながら、何やら奇声を上げ始める。

それに呼応するように周りの親衛隊が怒声を上げた。


「今までのよりはましみたいですね」


「ああ、少しは運動になりそうだ」


指をポキポキと鳴らしながら歩く。

さっきよりはいい運動が出来ればいいがな。


その様子を見て挑発と感じたか、最前列のゴブリンが一斉に走り出す。

ああ、いいぞいいぞ、殺気を出して掛かって来い。

これでこそ、戦場というものだ。


一番槍を決めようと突出したゴブリンの腕を掴み、

そいつを振り回して周り全員を巻き込んでいく。

先陣を切ろうとした連中全員、軽く地面に転がる結果となった。


「なんだ、拍子抜けだな」


「まあ、トーマさんとは実力差が開きすぎてますからね」


この様子を見て動いていないゴブリンたちの顔が暗く曇る。

相手の実力を見て多少の怯えが出たと見えるが、それは戦場ではご法度だ。


「さっさと片付けて街に帰るぞ!」


この機を逃さないとばかりに全員で一斉に攻めかかった。

・・・この集団が瓦解するまでそう時間は掛かるまい。


――――――――――――――――――――


決まり手はセラエーノの投げたハンマー、それがシャーマンの脳天に直撃して死亡。

庇いに入った親衛隊を貫きながら勢いよくターゲットごとあの世に送った。

戦闘開始から数分としない内に勝利が決したと言っていい。


頭目を失った群れは散り散りに逃げ去っていったが、そのほとんどが討たれた。

多くは冒険者たちの金稼ぎの餌食になったというわけだ。

近隣の村々に迷惑を掛けた付けが回ったと思えば当然の結果だな。


「ええと、その・・・これが、ですか?」


冒険者ギルドの受付、その横にある回収受付に取ってきた証を全て提出する。

山盛りとはこのことで、受付前のテーブルに収まるか心配なほどだった。


「ああ、確認してくれ。一応不正が無いように処理してあるが」


ゴブリンは右耳、ミノタウロスは角、という感じで。

ギルドが指名している場所以外でも通るときはあるが、

たまに誤魔化す奴がいるので審査が滞る場合もあるのだ。

例えば右耳と左耳を別の報酬として受け取るとかな。

最悪確認作業がおざなりだとそのまま通してしまう事も多い。


「・・・確認してきますので少々お待ちを」


提出はしたので、これからは自由時間だ。

・・・この様子だと夕方くらいに来れば丁度いいか。


ギルドの奥、待機場所で待っている全員の所に向かう。

久しぶりに結構な運動をしたせいか、全員の顔に疲労が見えた。


「いやー、楽しかった」


「テネスさんも、流石に疲れたみたいだね?」


「ええ・・・年甲斐もなく動きすぎました」


こちらを見たプリラは一つ微笑んで見せると。


「お疲れ様」


「いい稼ぎになったな、これで拠点も少しは豪勢になるってもんだ」


その一言に、全員が笑って見せてくれた。

全員の顔には老いが見えるが、それでも。


久しぶりに、ヘルフレイムというチームをやってる。

そう感じる一瞬だった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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