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364話


「随分な騒ぎになっちゃった、かも」


人が多く集まれば集まるほど活気が増えて経済が盛り上がる。

同時に些細な悪事や問題ごとも増えるとは教えてもらっていた。

今目の前で起きたのはその問題ごとの一つ、かな。


「は、早く衛兵を呼びに行こう」


「ちょ、ちょっと待っててください」


店員たちが何か言っているようだが、その必要は無い。

多分一瞬で終わるだろうし・・・。

実際外で相対している感じになってはいるけど、

見る人によっては既に結果は分かり切ったもの。


武器を構えて威嚇する男に対して相対する人物は構えすら見せていない。

相手も只者じゃないという事自体は分かってるみたいだけど、

戦力差を実感できるほどには自分を鍛えていないみたい。

ああいうのを、無謀っていうのよね、うん。


あ、早速一人が仕掛けた・・・と思ったら腕を捻られて地面に転がされた。

そのまま顔を踏みつけられて気絶させられている。


「この様子だと、手伝う必要も無いか」


仕方ない、先に注文を済ませておこう。

ついでにトーマさんの分も頼んでおいた方がいいかな?


――――――――――――――――――――


結局リーダー格の男だけが最後まで残った。

いや・・・正確には最後まで仕掛けてこなかっただけだが。


「くそ、なんて奴だ・・・」


地面に転がっている仲間を助け起こしながら男はぼやく様に言う。

全員の無事を確かめると、こちらに顔を向けた。


「降参だ・・・」


「なら店に謝って来い、これだけの騒ぎを起こしたんだからな」


男は渋々ながらも店に戻っていった。

一応解決と見ていいか、しかし。


(腹減ったな)


食膳の運動はともかく昼はまだなのだ。

物事はあったがこれでようやく食事に戻れるというも―――


「領主様!」


「・・・」


ああ、厄介なのに見つかった。

見れば書記長が道のど真ん中に立っている。


「食事は終わったのか?」


「まだです・・・って、そうではなく!

 物音がすると思えば喧嘩、その中心が貴方とはどういうことですか!?」


「いやいや、俺は店で騒ごうとする奴らをだな」


何とかなだめすかそうとするが、この状況では言い訳にしか聞こえないか。

それに人も集まり始めている、顔がばれて大騒ぎになる可能性もある。


「二人共、食事が届きましたよ!」


「え?」


書記長の顔が声のした方向へと向く。

そこにはリサが立っていた、なるほどそれはいい考えだ。


「ほら、書記長も一緒に食事するぞ」


「え?あ、いや、ええと?」


怒ろうとしたところ、予想外の提案を受けた。

そのせいで混乱しているみたいだが、ここは押し切った方が早い。


「ほらほら、リサも待ってるから」


背中を押しながら店の中へと入っていく。

・・・これで、一応混乱は収まるはず。

火さえ消せば煙は立たなくなるからな。


――――――――――――――――――――


「はぁ、なるほど」


書記長は渋々ながらも状況を了承してくれた。

目の前に並べられた色とりどりの料理を口に運びながら、だが。


「人が集まればそれだけこういう事が増える。

 店にとっては当たり前かもしれないが、国にとっては些事と投げられないぞ」


こういう事が年に何度も起きればそれだけ損失が重なっていくもの。

確かに一度一度は小さい被害しか出ないだろうが、振り返れば相当になることもある。


「そうですね・・・ですが、領主様。あなたが解決する必要はあったのですか?」


睨まれながらそう言われる。

まあ、正直に言えば俺でなくとも何とかなったような気はするが。


「結果的に店に損害無しだから問題ない、それでいい」


先ほどの騒ぎの熱は少しだけ残っているようだが、

概ねいつも通りといった空気に戻った店内。

全く、昼時だというのに騒がれたら店の迷惑になるというものなのにな。


「しかし、あの者たちは逃がしてよろしかったのでしょうか?」


「今回の件で反省すれば良し、再犯するなら罰するだけの事。

 気の迷いなんてこともあるだろうから今回はこれで手打ちだ」


ああいう手合いは再犯するに決まっているが、

正直被害が出てない分そこまでする必要は無いと思ったまで。

それに次やるときは恐らく自業自得の結果になるだろうさ。

どこでも構わず喧嘩を吹っ掛ける奴の末路なんかそんなものだろう。


「領主様も若くないのですからあまり無茶はなさらぬようお願いしますよ。

 後継者たるリギラ様も今外部で勉強中なのですから」


「まあ、そう言うなって。デスクワークばかりじゃ却って身体に悪い。

 手段はともかくとして運動することはいい事だと思うが」


「・・・そう言われて、冒険者などになられでもしたら困りますが。

 第一冒険者として未だ協会に登録されているそうじゃないですか」


そういや、そうだった。

あのままほったらかしのままになってたな・・・。


「一部部下達の中に引退後は冒険者にでもなるつもりか、などという者もいます。

 まあ、領主様の強さは私も分かっていますからあり得ない話では」


「だよね」


リサもその話には同意していた。

しかし、引退したらの話か。

リギラに権利を全部譲った後の事は一切考えていなかったな。


「まあ、確かにあり得ない話ではないか」


ここでの仕事が終わったら、冒険者として過ごすもの悪くはない。

悠々自適、とまでは行かないまでも新しい体験をしながら過ごせそうだ。


「一応言っておきますが、引退後も働いてもらわねば困りますよ?

 引継ぎや後見としての仕事もありますので」


「・・・だよなぁ」


だろうと思ったがやっぱりな。

まあ・・・しばらくは羽を休めれそうにないか。

それにいきなり変わってはいそうですかと明日から働けるわけがない。

慣れてもらうまでは今まで通り働くこととなりそうだな。


「ところで書記長さんも後継者見つけないといけないんじゃない?」


「・・・」


「・・・」


リサのその言葉に俺は言葉を無くし、書記長も唖然としていた。

ああ・・・そうだな、年齢的にまだ先とは思ってはいるが。

だが見つけておかないといけない歳くらいにはなっている、か?


「ごほん・・・!この話はここまでにしておきましょう。

 それより、この店の料理は中々のものですね」


話しをあからさまに逸らしたな・・・まあ、いい。


「ゼロームでも腕利きを雇い入れた甲斐があったってことだな」


食事の質は仕事に関わる。

旨いものを食えばそれだけ活力につながるというもの。

細かい所だろうが、こういう所が後世に繋がっていくものだ。


「しかも安いと来てますね」


「高いと一部のお客さんにしか振舞えないですからね」


「こういう店が一件でもあれば、それを目当てに集まる人も出て来る。

 結果、繁盛と同時に街が賑わうというわけだ」


――――――――――――――――――――


出された品を全て平らげ、帰路に付こうと立った時の事。

勘定を済ませようと財布を探り、丁度その代金を店員に渡したその時だった。


「・・・ん?」


背後に気配を感じ、振り向くと目の前に手斧が迫っていた。

ああ、なるほどもう来やがったか。

飛んでくるそれを払いのけるようにいなし、地面に叩き落とす。


「ひぃ・・・!お、お客様!?」


「馬鹿がもう一度来ただけだ、騒ぎにならない様にする」


落とした手斧を拾い、歩いて外へと出ていく。

やっぱりというかなんというか、さっきの奴らが立っていた。


「このままじゃ落とし前っていうのがつかねえ。

 恥をかいた分は取り戻させてもらうぜ」


「そうか・・・ん?ああ、そうか。

 だが、俺が相手するまでもなさそうだな」


ちらりと、男たちの後ろの切れ間に見えたその姿。

・・・いつの間に帰って来てたんだ、あいつ。

帰るときは一報を寄こせと言っておいたはずなんだが。


まあ、それはいいとして。

俺がこいつらの相手をする必要はなさそうだ。

・・・こちらへ向かって走ってくるそいつを見てそう思い、心の中で苦笑した。

読んで下さり、ありがとうございました。

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