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341話

あれこれと用意して配置して、人材を動かしていった。

気づいたときには夕方近く、既に日が落ちかけてくる。


「どうかしら・・・?」


プリラが心配そうに進捗を聞いてくる。

それに対して頷いて見せた。


「大丈夫だ」


残るはデザート周りだけ、それは開催中に作ればなんとかなる。

改めて広間を見る。

うず高く積まれた料理の数、そして大量の椅子とテーブル群。

正に大宴会場といった所だ。


「主賓が働くのも変だけどね」


「そういうな八霧、この状況を見て手伝わない方が居心地が悪いだろ」


「貴重な体験でしたね、改めて食仕事の修羅場というものを感じましたよ」


この場合は式場などの準備をする仕事も混じっている感じがするが。

まあ、それはいいとにかく間に合ったのだ。


「でも、本当に平等でやるつもりなんだね。

 大貴族と目される人たちの席だって決まってないみたいだし」


そのせいか、一部の貴族は参加に反対したらしい。

リルフェアは仕方ないと言っていたが。


「・・・国民と一緒に歩めない存在は消えていくだろうさ。

 貴族も平民も行き付くところは同じ人間なんだからな」


下級市民とは同席出来ないとでも言いたいのだろう。

ならばそれで良し、いずれそれが自らの首を絞めることになるだろうさ。


――――――――――――――――――――


そろそろ正面のドアを開ける時間になった頃。

試しに二階から正面を覗いたのだが、結構な数が待機していた。

整列しているところを見ると、外の奴らの仕事はうまくいっているようだ。


「マスター!整列終わりましたよ」


「お疲れ、セニア」


どうやら誘導にはドール達も参加していたようだ。

しかし、見事なほどに綺麗に整列させたな・・・上から見ても乱れが見えない。

軍隊かと思うほどの整列っぷりだった。


「久しぶりだなセニア」


「お久しぶりです!」


元気そうで何よりだ。

オリビアもどこかにいるのだろう、ここでは見えないが。


「あ、マスター。実は今の人数だと入れない可能性がありますが」


「そう・・・じゃあ、いくつかに分けるか外の会場に案内して」


「了解しました、それじゃ!後で会いましょうねトーマ様!」


「ああ」


一つ敬礼して見せると、セニアはその場から下へと飛び降りた。

下に広がる岩の床に音もなく綺麗に着地し、そのまま走っていく。


「俺がやったら床を壊しそうだな」


少なくとも鎧を着ていれば必ずひび位入れることになる。


案の定、下ではその行動で少し騒ぎになっていた。

セニアの事知っている奴も少ないだろうに。


「外の会場も合わせても全員入るか?」


「・・・まあ、大丈夫かな」


目測で八霧もそういう。

それだけの人が見えているだけでも集まっている。

整列しているだけに、その多さも分かるというものだ。


「貴族連中の姿も見えないが、もう来ているはずだよな」


時間通りに来ているならだが。

別の場所で待機している可能性もあるが、果たして。

そもそもこの祭典自体否定的に見ている奴らだっているのだ、

来ていないとしてもおかしくはないが。


「来てないなら、それでこちらに有利に働きますよ。

 引退されて身を引いたとはいえ、リルフェア様の誘いを無下に断った。

 その事実は彼らの立場を危うくしてもおかしくないと思いますが?」


「テネス?」


「この一件、色々な策謀がかかっているような気もしますよ。

 少なくともこの国をよくするための考えが、ね」


テネスは意味深な事を言いながら、その顔をこちらに向けてくる。

その表情は何とも言えないものに見えた。


――――――――――――――――――――


正面のドアが開き、大した問題も無く入場が進んでいった。

貴族たちもちらほらと見えたが不満そうに顔をしかめる者や、

逆に嬉しそうに入っていく者も見える。

一概に貴族と言っても色々いる、それが表情でありありと見えた。


で、俺達はというと。

先に入って既に席についていた。

特等席に近い場所であり、広間の奥でラティやリルフェアの席にかなり近い。


それに後ろは大きなガラス張りの窓になっており、外の様子がよく見える。

同時に外側に用意していたテーブルや椅子も見えた。

・・・外で食事をする人たちにもリルフェア達の様子を見せようと、

こういう配置にしたのだろうか?


「主賓とは言え、これは見世物になりそうですね」


「今更だな」


どうせそうなると想像はしている。

テネスだってそれは分かっているはずだが。


「俺達はそれだけのことをしているんだ、見世物になっても仕方ないだろ」


「そうなんですけどね・・・」


苦笑いを見せ、テネスは頬を掻く。


「まあまあ、おいしい料理タダで食べられるんだから役得でしょ」


セラエーノはそう言いながら目の前の料理の数々を眺めていた。


「食べ過ぎは駄目よ」


「分かってるってプリラさん。そのためにも今日まで食事制限したんだから」


ここで食べるために食事制限してたのか?

そう聞こうとしたが、やめておく。


「いつもは簡単な食事しか食べれないから、こういう時に一気に食べるの!」


「・・・好きにしてくれ」


それだけ楽しみにしていた、という事だろう。

そう言うことにしておこう、うん。


――――――――――――――――――――


暫くメンバー達と話をしていると、いつの間にか大勢の市民が場に集まっていた。

格好は様々で仕事着のままであろう商人や、軽装備の戦士。

ギルドの役員らしき服の者もいれば、正装で来ている者もいる。

服装指定はしていなかったし、それはそれでいいのだが。


「随分、カオスな光景だなぁ・・・これは」


貴族もいれば平民もいる。

商人もいれば冒険者たちも列を同じくして座っているのだ。


「皆、復興のために骨を折ってくれた人たちよ」


「リルフェア」


いつの間にか正装に着替え、すました表情のリルフェアが自分の席に座っていた。

隣にはラティも座っている、同じように正装で。


「主賓は全員揃ったな」


「準備もオッケーだし、後は開始の合図だけだね」


「ええ、ラティ開始の合図を」


「はい、お母様」


一際豪勢な椅子・・・いや玉座のような椅子に座っていたラティが立ち上がる。

それを見た周りの護衛達が一斉に配置についた。

同時に管理を担当している役員たちが慌てて開始の準備を始めていた。


丁度この広間の中央辺りに台が設置されている。

始めは何に使うか分からなかったのだが・・・まあ、実際使う場面を見れば納得だ。


ラティが台に足を掛ける。

その様子に、その場に集まった全員の視線が一つに纏まる。


「んん・・・ええと」


先ほどまで聞こえていた全ての会話、囁き声さえ消える。

発言を全員が待つように辺りは静寂に包まれた。

一種異様な空気とも言えるほどだ、

これだけの人間がいて一切の騒音がしないのは。


「皆さま本日はこの喜ばしき催しへとご足労頂き誠に感謝いたします。

 この国の代表としてこれほどの規模での催しを行えることは喜ばしく、

 そしてゼロームという国家が苦難より脱しつつあると改めて理解しました」


ラティの声が会場とその外にいる奴らにも響いている。

中には泣いている奴らも見えるが。


「我々は一度、滅びを前にしてただ待つことしか出来ない状況まで追いやられました。

 しかし今こうして復興を祝えるのは、

 我々がその滅びを乗り越えたという事でもあります」


ギルダーや災竜、そしてそれに乗じた奴らも。

色んなやつがいたが結局最後に残ったのは俺達だった。

死にかけはした、がまだこうやって生きている。

それはこの場に集まった奴らも同じだ。


「まだ復興は途上、これからもゼロームはその傷を癒す必要があります。

 ・・・しかし、今宵ばかりはどうかその手を休めてこの場をお楽しみください。

 この催しはゼロームの為ではなく、ゼロームに生きている貴方達のものなのですから」


ラティが言い切ると、会場は静寂に包まれる。

誰も何も言わず、ただ何かを待つようにじっとしていた。


「私も完全に引退して大丈夫そうね」


「そう言いながら引退しないだろ?」


「ふふ」


娘の晴れ舞台を見て満足そうに微笑んでいるリルフェア。

・・・そんな表情をする人物が引退するとは思えないんだが。


「さあ、皆!今日は祝いの席なんだから派手に騒いで頂戴!」


リルフェアがそう言うと、周りは一瞬だけ反応が遅れるが。

次の瞬間にはそれにこたえるように歓声が巻き起こった。


読んで下さり、ありがとうございました。

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