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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
33/381

33話

神威(かむい)にそっくりな少女が9人、列をなしてこちらに歩いてくる。

その行進は軍隊のように一切乱れていない。


「・・・なるほど、トリスが驚くわけね」


リルフェアの表情は変わっていなかったが、ラティリーズは驚いていた。

無理もない、同じ顔が神威含めて10人いるのだ。


「あの・・・か、神威(かむい)さん・・・?」


「・・・これが私の子達、です」


7号が合流し、合計10人が神威の後ろに整列する。

そして、丁寧に一礼をする。

・・・まだ、全員がメイド服を着ていたのは気になったが。


「・・・そっくりね、でも」


リルフェアが列の端・・・1号に近づく。

そして、その頬に触った。


「この子は、とても責任感がある目をしているわね。

 お姉さんだから、かしら?」


1号がピクリと動く。

無表情のまま、頬を触ったリルフェアを見る1号。


「なるほど、皆・・・トーマが言うように本当に人形なのね」


「7号以外、命令しか聞かない」


神威は残念そうにうつむく。

すると、リルフェアがドール達を見ながら、神威に()()提案をする。


「・・・髪型、変えてみたらどうかしら?」


突拍子もない事を言い出した。


「髪型・・・?」


神威がそう聞き返す。


ツインテールに異常なこだわりを見せている神威。

髪型を変えろと言うのは・・・必ず、一悶着がある。

そう考えた俺は身構えた。


「ええ、髪型も個性の一部だから・・・彼女達の髪を一度変えてみたらどうかしら?

 何か、いい刺激になるかもしれないわ」


その言葉を聞いた神威は、顎に手を当てて何か考えている。

・・・数秒、思案している神威。


誰に言われても、髪型を変えなかった神威だ。

おいそれと、了承するはずが無いとも思ったが。


自分のドールを見渡し、一度頷く。


「分かった・・・やってみる」


神威は1号に近づくと、その髪を丁寧に下ろした。

ストレートロングになる1号の髪。

・・・神威は、あっさりとリルフェアの意見を汲み取ったようだ。

俺も少し力が抜けた。


「似合ってるわね」


「ええ、とっても・・・似合ってます」


ラティリーズも髪を下ろした一号を見てそう言った。

俺も近づいて、その顔を覗く。


「・・・」


確かに似合っている。

神威も、ストレートヘアが似合うという事だ。


「後で、皆も色んな髪型にしてみる」


神威はそう呟くと、ドール達を見た。

その神威を見て、俺は疑問を投げかけた。


「・・・いいのか、神威?髪型にはこだわりがあったんじゃないか?」


あれほど、固執していた髪型だ。

もっと渋ると思っていたのだが。


「髪型は大事・・・だけど、それは・・・私のこだわりだから。

 ・・・髪型も個性なら、この子達をそれで束縛させる気は無い」


そう言うと、自身の子達というドール達を見る。


「いずれ、喋れるようになったら・・・自分で髪型を決めさせる」


そう言ってドール達を見る神威の目は、とても優しい目をしていた。


「神威も、たまには髪型を変えてみたらどうだ?」


「それは、無い」


俺の質問は即答で断られた。

まあ、それでこそ神威だ。


――――――――――――――――――――


神威とリルフェアがドール談義を続けている。

楽しそうなので、邪魔しないでおこう。


少し離れた場所で、俺と八霧(やぎり)が鍋を取り出していた。


「あの、トーマ様・・・それは?」


ラティリーズが横から顔を出すと、おずおずと声を掛けてくる。


「鍋だよ。カレーでも作ろうかと思ってな」


道具袋から食材を取り出し、用意した机の上に置いていく。


「カレーか・・・いいね」


「あの、かれー・・・とは?」


ラティリーズが首を傾げる


「ああ、こっちには無いのか・・・カレーはな」


簡単に説明するが・・・。

実際に食べてもらった方が早いだろう。


――――――――――――――――――――


野菜の下準備を始めた時に分かったのだが。

・・・八霧の手際、中々のものだ。


「僕が料理していることもあるからね」


「そうか、それは助かる」


ジャガイモと人参の皮をナイフで剥きつつ、八霧と話す。

先にタマネギを切っていた八霧は油を引いて炒め始めていた。


石材で作った簡素なコンロを広間の端、唯一本棚が無い場所に作った。

この辺りは、窓に近い・・・本の日焼けを防ぐために本棚を置いてなかったのだろう。

丁度良かったので、仮の炊事場にした。


簡易コンロの下に、ファイアの魔法を使っていたのだが。

魔法は便利だ、薪も何もなく燃え続けている。

俺はその隣の机で、まな板代わりの綺麗な板を置いて野菜を切っていた。


「肉は・・・そうだな、牛肉でいいか」


道具袋から取り出す、そこそこ大きいブロック状の肉。

空中高く放り投げ、ナイフを構える。


「よっ・・・!」


空中のブロック肉に狙いを定め、ナイフで何度か切り裂く。

まな板の上に落ちた肉は、小さいブロック状の肉に分かれ、まな板に広がった。


「わぁ・・・お見事」


ラティリーズがぱちぱちと拍手を鳴らす。

その音を聞いたリルフェアと神威も、こちらに寄ってきた。


「あら、料理してるの?」


「あっちの世界の料理だから、あまり期待しないでくれよ」


八霧が混ぜている鍋の様子を見る。

あめ色になり始めたタマネギを確認し、肉を追加する。


「そう言えば、カレー粉は?」


「ちょっと待て・・・ほら」


道具袋から取り出す。

EOSの食材の一つ『カレー粉』。

食材イベントの余りもので、これも大量にある。


しかし、EOSには味覚というものが無かった。

美味しいかどうかは、作ってみないと分からない・・・美味しいといいが。


野菜を切り、鍋に入れ・・・火が通った事を確認して水を入れる。

後は、少し煮立たせてカレー粉を入れたら出来上がり・・・だが。

その前に、米を一緒に炊いておこう。


飯盒代わりになりそうなものを探す。

土鍋ならあるが、これで炊けるか・・・?


土鍋で炊くのは難しいとも聞いたが。

まあ、やってみるだけやってみるか。

しかし、EOSで飾るためだけの家財がこうも役に立つとは。


米と水を入れ、土鍋の様子を見ながら炊く。

・・・その間、少し暇になったので、八霧に声を掛けた。


「八霧、エリサとはリアルの知り合い、なんだよな?」


「え?あ・・・うん、言ってなかったっけ?」


ああ、と頷いた。

転移する少し前に、エリサから聞いたぐらいだ。


「まあ、幼馴染だよ」


そう答える八霧の顔はにこやかだった。


「・・・お前の過去、知らないんだろ?」


エリサの態度を見るに、八霧の家庭事情は知らない可能性が高い。


八霧が少し黙る。

その顔は悩んでいるようにも見える。

少し経つと、あることを言い出した。


「僕だって、男だよ?」


「それは知っている、優しい奴だという事も」


「・・・ちょっと照れるね、でもさ。

 好きな子には、弱いところ見せたくないよね・・・男ってさ?」


「・・・」


俺の手が止まる。

八霧、お前・・・。


「だから、男は馬鹿だと言われるんだよね。ため込んだ結果、あの辻毒騒動なんだから」


自虐するようにそう言う。


「まあな・・・お前は馬鹿だ。だが、謝れる馬鹿は立派だ」


俺がそう言うと、隣で鍋を掻き回していた八霧が手を止めた。


「エリサ、無事だといいな」


「うん・・・そうだね」


しかし、八霧の奴。

エリサが好きだったのか。

エリサも、八霧に気がある反応があった。

両想い、か。


これは何としてもエリサを見つけなければ。

・・・この世界のどこかに、エリサも来ているはずだ。


土鍋の米がふっくらと炊きあがった頃、カレー粉を入れたカレーも完成した。


「わぁ・・・美味しそうですね」


ラティリーズがそう声を漏らす。

久しぶりに、カレーの匂いを嗅いだ気がする。

確かに、美味しそうな匂いだ。


「さあ、出来たね。神威、盛るの手伝って」


八霧がそう言うと、神威と7号が皿を用意する。

それぞれの皿に米とカレーを盛り始めた時に、一つ疑問が浮かぶ。


「リルフェア、そっちの食事まで用意したんだが・・・大丈夫か?」


既に用意されている可能性もある。


「心配いらないわ。転移実験をするから誰も近づくなと、事前に言ってあるから」


「それだと、イグニス辺りが心配して見に来そうだが・・・」


夕飯も取らないのかと、訪ねてくる可能性もあるだろう。


「その時はその時よ。それより・・・私達の分も作ってくれたのよね?

 それを食べない方が、失礼じゃない?」


・・・言ってくれるな。

そう言われると、こちらとしても食べてもらいたくなるというものだ。


「わかった、イグニスには後で怒られるとするよ」


そう言って、彼女らの分のカレーを配り始める。

気に入ってくれると嬉しいが。


カレーも配り終え、全員で食卓を囲む。

手を合わせて、いただきますと言う。


スプーンを手に取り、恐る恐る食べるラティリーズと。

スプーンを握ると同時に、恐れること無く口に入れるリルフェア・


「美味しいわね、辛いけど」


「は、はい・・・み、水を」


ラティリーズは水を欲しがり、リルフェアは美味しそうに二口目を口に運んでいた。

よかった、口には合ったようだ。

ラティリーズに水の入ったコップを渡しつつ、俺達も食事に入る。


多少辛いが、十分な出来だ。

米も、ちゃんと炊けている。


・・・エリサやテネス、セラエーノもプリラも。

腹を空かしていないだろうか。

ちゃんと、飯を食っているといいが・・・。



読んで下さり、ありがとうございました。

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