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327話

男の身体が消えていく・・・満足そうな顔と共に。

その存在は塵となり徐々に消え、下半身のほとんどが失われつつあった。


「トーマ、最後に問いたい。

 お前が命を懸けるほどこの世界に価値はあるか?」


身体の半分が無くなっているというのに、男の声ははっきりとしている。

・・・価値、か。


「分からん・・・だが、仲間のいる世界を壊すというのなら俺はそれを止める。

 ただ、それだけの話だ」


「そうか」


その問いにあまり大きい意味は無かったのだろう。

男の顔は一切変わりない。


「災竜」


「ラティリーズか、思えばお前の一族とは永い因果となった」


「安らかに、眠ってください。死に往く貴方を責める気はありません」


「・・・」


安らかにと言われ、男は困った顔を少し見せた。

恨み言を言われても仕方が無い事ばかりしたのだ、反応としては当然か。


「何故だ」


「最期の貴方にそこまでの邪悪さを感じなかったからです。

 許されぬことはしましたが、それも過ぎたこと。

 今いる貴方は死を前にした生き物の一人だと私はそう思ったのです」


「・・・そうか」


苦笑にも似た顔を見せ、男は目を瞑った。


「そういうお前自身は言い残すことは無いか?」


「ああ・・・?いや、そうだな。

 もし、神が世界に戻ることがあれば伝えてほしい」


「なんだ?」


一つ、ふっと笑って見せると。


「やることはやった、と」


・・・。


「分かった、伝えておこう。生きている内に伝えられるかは分からないけどな」


それでいい、と男は小声で呟く。

いや・・・声にすらなっていなかった。

既に顔半分まで消えていたのだ。


そのまま男だったものは光の粒のようなものとなり、

空へ消えていくように昇っていく。

残った身体の一部も地面に溶けるように無くなっていっている。


・・・終わった、これで全てが。

そう思うと共に急に体がふらついた。


「流石に・・・無理を通し過ぎたな」


プリラの回復魔法でも完全ではなかった。

流し過ぎた血は意識を奪うには十分な量を失っていたようだ。

視界が霞んで、ぼやけていく。


「トーマさん!」


「担架を持ってきて!急いで!」


最後に見えたのは駆け寄ってくるプリラと仲間たちだった。


――――――――――――――――――――


・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。


気絶して起きた時には一週間以上経っていた。


目を覚まして初めに視界に飛び込んできたのは涙ぐんでいるセニアと、

その隣で本を読んでいた神威だった。


それから気絶していた間の事を詳しく聞かされた。


災竜亡き後すぐに政府再興が始まったらしい。

らしい、というのは俺が気絶してから一週間ほどたってしまったからだ。

・・・身体のダメージがかなり深刻だったらしく、

命自体にそこまでの心配はなかったそうだが後遺症の心配があったとのこと。


命あっての物種とはいうが、まさにその通りだ。

身体の節々が未だ痛むが・・・生きているだけましというものだろう。


「それで、リルフェアはどうするって言っているんだ?」


ベッドの上、運び込まれた病院の一室。

見舞いに来た八霧とエリサはある報告をしに来ていた。


「うん、ヘルザード暫定政府が承認されて正式な政府に。

 バルクは・・・首脳陣が全員いなくなったから事実上崩壊したよ」


「それで、バルク側の国民や兵士達はゼローム側が吸収するんだって。

 地域的には自治領としてゼロームの一部になるって話だけど」


「・・・なるほど、元の鞘に収まるってことか」


元々分裂していた同士だ。

それが一つに収まるだけの事か。


「エリサの言った通り、バルクという自治領にして管理するって話だし。

 ゼロームとヘルザード政府の間で同盟交渉も始めているらしいから。

 これで大陸ほぼ全てが一つの集まりになるってことだね」


「・・・そうか」


災竜、あの男の行動によって長きに渡る三国による睨み合いが終わったことになる。

一つは滅び、一つは半壊し、一つは身を削って国を救った。

・・・残った結果は三方全てに大ダメージを残しながらの辛勝。

戦う力も失い、お互いに手を取り合うことで生き残ることを選んだその道だ。


「シャルードはどうなった?他の入院患者の話だとヘルザードに戻るって話だが」


「影響力はまだ持っているから、一応観察付で戻るって話だね。

 本人はもう政治に関わる気はないらしいし、隠居するような口ぶりだったらしいけど」


「若いんですけどね・・・でも、隠居って言うんですよねこれ」


まあ、そうだな。

一応は王族だ、彼の影響力はまだ残っていると見ていい。

これ以上国に火種を落とさないためにも、処刑等の過激な行動は控えるべきだろうさ。

当人が政治にかかわらないという限りは、という話だが。


「そうそう、リルフェアさんの話なんだけど。

 全権限をラティリーズさんに譲って自分は後見に入るって言ってたよ」


「そっちも隠居か・・・しかしこの状況でか?

 もう少し指揮を執っていた方が良かったんじゃないのか」


国を立て直すにしてもリーダーシップに優れる人物が必要だ。

表でも、裏でも。

そう考えればリルフェアは引退するには早いと思うのだが。

別にラティにそう言う力が無いといは言ってはいないが、

実績などを見ればリルフェアが直接指揮を執った方がいいと思うのだが・・・。


「表向きにはラティリーズさんが指揮を取らせて、

 自分は完全に裏方として参加するって話だったね」


「裏方の方が動きやすいのかも知れないな。

 まあ当人同士の考えがあるのだろうさ、俺達が口を出すことでもないか」


病院で目覚めて数日。

こうやってメンバーたちが入れ替わりで来てくれている。

それは嬉しいのだが、それ以上に身体を動かしたいという気持ちが強くなる。

さっさと治して自分の足で地面に立ちたいものだ。


「そう言えば八霧、正式に国から薬品管理者の許可を貰ったんだろ?

 念願だった店を開けるじゃないか」


「あー・・・まあ、そうだけどね・・・ちょっといろいろあってそれどころじゃ」


「トーマさん、実は災竜が死んだあの場所でちょっとしたことがあったの」


「ん?」


エリサの話によればあいつの身体の一部が大地に吸収された。

それが地を汚染して緑を枯らしつつあるらしい。


それも急速な速さで広まっているらしく、対策を講じていたらしいが。

そのため、あるものを使って浄化しているそうだが・・・。


「あの時の、毒か?」


手段の一つとして取っておいたあの毒、再生力を阻害する特効毒。

それが浄化にかなり役に立っているらしい。

本番で使わず、その後に役に立つとは・・・何が効するか分からないな。


「その量産のために工房をフル稼働させてる状態でさ。

 何分プリラさんが特注で作ったものだから解析も難しくて」


「しばらくはそれにかかりっきりか、大変だな」


調合になれた八霧でさえ手こずっているということは相当なものということ。

睡眠時間すら削ってそれに当てている可能性もある。


「エリサ、八霧の事よく見てやっておいてくれよ。

 こいつは放っておくといくらでも無理をするからな」


「分かってます」


頷いて返すエリサには笑顔と共に苦笑も見えた。

・・・ああ、これは間違いなく睡眠を削ってんな。


「まあ、無理はするなよ」


ベッドのそばに置いてある水を飲む。

それと同時に窓から暖かい風と光が差し込んできた。


「いい天気だな、散歩でもしたいが」


「ドクターストップ中だから駄目だよ」


腹の傷も何も完治しているらしいが、体内を巡る魔力に不調があるらしい。

お陰でまだベッドの上というわけだ・・・それもあと一週間ほどだがな。


「復帰後はどうするの?リルフェアさんの話だと将軍職に就かせる気もあるって」


「・・・あまり乗り気じゃないな。

 それに将軍職ならゼフィラスの方が適任だろ?」


・・・正直言えばめんどくさいと思う部分もある。

とは言え、ここまでの事をやって全部断るということも出来ないとも思っているが。


「でもこれだけのことをやって全部辞退、って通らないと思う」


八霧もそう思っていたようでそれを口に出した。


「だよなぁ」


活躍した奴を表彰し、褒美を与えるのは国としての義務のようなもの。

しなければ国民から不満を買うことは目に見えているし、示しがつかなくなる。


どうするか、ここを退院するまでに折衷案を考えておかなければいけないな。


読んで下さり、ありがとうございました。

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