表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
299/381

299話

諸事情で一日投稿が遅れました。


「すまん、トーマ」


「熱くなるのも大概だぞGさん」


八霧から回復ポーションを受け取ったGはそれを飲みながら謝意を示していた。

熱くなるのは昔からだ、それに・・・結果的に助かった部分もある。


魔獣は先ほどからこちらへと何度か威嚇をするが、

一歩踏み出すと退くを繰り返していた。


・・・先ほどのGさんの魔法、その威力を見たからだろう。

自分を殺しうる魔法を放つ者がいるのだ、警戒して当然といった所か。


「しかし私の全力でもこの程度とはな。

 ダメージ自体もすぐに回復したと見える」


既に魔獣の身体の出血は止まり、傷も塞がって見える。

動き自体も先ほどまでと変わらない・・・痛みも回復しているなこれは。


「だが・・・まあ、やれないことは無いな」


「ああ」


少なくとも殺せる可能性は見えた。

後はそれを効果的に使えるかどうかの戦いになる。

光明が見える、そう言うことだ。


「?」


威嚇を繰り返していた魔獣は、急に体勢を低くすると嘶き始める。

すると大地が揺れ奴を中心に吸い込むような風が起こり始めた。


「なんだ!?」


「これは、魔力が・・・吸われているのか」


自身の手を見てGはそう呟く。

見れば、Gさんのオーラのようなものが魔獣へと流れて行っているように見えた。


「そういうことか!奴め、失った魔力を取り戻そうと。

 全員攻撃しろ!!完全再生されては意味がなくなる!!」


Gのその一言を皮切りに全ての動ける味方が攻撃を仕掛けに行く。


「はあああ!」


数名の兵士が槍を手に突き刺そうと構えるが、

皮膚や毛に接触した時点で穂先が折れる。


「くそ、まだだ!」


槍を投げ捨て腰に下げた剣で斬りかかるが、

やはり槍と同様に先が砕け使い物にならなくなった。


「一般の武器じゃ何ともならないよな・・・!」


八霧のポーションを懐から取り出し、魔獣の足元へと投げる。

兵士を攻撃しようと振りかぶったであろう足、

その付近で瓶が割れて煙幕のような煙を巻き上げた。


寸前で煙が兵士を包み、足は彼らの目の前を通り過ぎていく。


「はああ!」


そのまま煙に突入、視界を遮りながら肉薄した。

煙の切れ間に奴の尻尾が見える。


「っ」


咄嗟に屈み横一閃に薙ぎ払う尻尾を回避、

そのままの姿勢で下から上へと槍を突き出す。

先端が奴の首元を掠め、多少の血飛沫が空間に舞う。


(チャージ中でそれほど回避できないか、これはチャンスだ)


自分が出来る一番でかいダメージを叩きだす大技。

それで奴を殺す・・・までいかなくとも怯ませて行動をキャンセルさせる。

それくらいはできるはずだ。


槍投げ競技のように構え、その姿勢のままで全身に力を籠める。


「・・・おお、それかトーマ。

 普段なら悪手だが、今ならば最大限に生かせるというものだ」


予備動作が長いせいで人間相手、特にPVPなどでは一切使えない技だが・・・。

隙を晒し続けている魔獣相手には最大限の威力を出せるというもの。


「はぁぁぁぁぁ」


全身全霊の力を籠める。

踏みしめた地面にひびが入るほど、体中の力が解放されていく。


「筋力増強、それとスピードアップ・・・これだ、ドーピング式配合薬!」


八霧がポーション瓶を放り投げてくる。

脇腹辺りに命中したそれは、更に全身の力を滾らせた。


「喰らえ!」


先ほど投げた槍よりも初速の付いたそれが一直線に魔獣へと放たれる。

風どころか、空間を切り裂くような歪な音を立てながら真っすぐに。


「!」


低く唸っていた魔獣はそれを脅威と感じ、バリアのような薄い膜を目の前に張った。

吸収していた魔力を一部防御に転換したのだろう、薄いとはいえ強力そうに見える。


投げた槍の先がバリアに触れると、突き刺さるように膜を押しのけていく。

眼前にまで迫ったそれは防がれながらも徐々に直進していった。


「貫けぇ!」


「行け!そのまま奴を殺してしまえ!」


だが、世の中そううまくはいかないものとよく言われるものだ。

唸りを叫びに変えた魔獣、

その瞬間に突き刺さっていく槍はその矛先を真上に変えられた。


弾かれた、完全に。


「な・・・」


「ちぃ、そう簡単にはいかないよな」


天高く弾かれた槍に手を向けると、手元に戻るように槍が移動する。

駄目だったか、行けると思った・・・が。


「だが、状況は好転だ・・・奴の行動を阻害する事は出来たぞ」


見れば吸収する動作を完全に止めていた。

こちらを警戒しながら唸り、攻撃する動作すら見せている。


「チャージすればマズイ、そう思わせただけいいか?」


「そういうことだ」


つまり、こちらが相当の被害を受けない限りは魔力を吸うという行為自体控える。

我々が攻撃できる状態ならば奴もチャージできないということになるか。


「とにかく攻撃を続けて弱らせるぞ」


「もちろんだ、援護は任せろ」


――――――――――――――――――――


魔物の群れを止めていた部隊は再編と全滅を繰り返しつつも、

戦う相手である魔物の数を激減させていた。


グスタフは全身を血で真っ赤に染めながらも自身の足で立っていた。

地面に刺した剣を杖代わりに、だが。


「終わりか・・・!終わりだな!?」


元はあの魔獣が死体から生み出した存在達。

生み出すことを止めた今ではその数に限りがあった。

結果、この場にいる魔物はほぼ全て全滅させられたということだ。


「た、隊長・・・終わり、ですよね?」


「流石に疲れたぁ、うん」


セラエーノは大の字で地面に寝そべった。

プリラは顔色自体は変わっていないが、それでもうっすらの汗を掻いていた。


「残ったのは、これだけか」


最期の攻撃に出た生き残り達を見る。

そのほとんどがやられ、残ったのは1割にも満たない状態だった。


「国家群の総力を挙げて集めた兵力がこれか。

 もう、戦争するにも何も残ってはいないな」


「いいんじゃない?この戦い終わったら戦う理由も無くなるしさ」


戦う理由、セラエーノの言ったその一言にグスタフは思案する。

確かにゼロームとヘルザード間の戦争は起こらないだろう。

火種の一つであったバルクも壊滅状態、政権の再編を余儀なくされる。

つまり三国間での戦争は少なくともしばらくは起こらない、はず。


起こそうにもその戦力は無く、戦いにすらならない状況と化すだろう。


「いっそのこと一つにまとまってしまえば早いんじゃない?

 ヘルザードは暫定政府で何とかなるか分からないし、

 バルクは首脳陣も戦力も壊滅的、再編するのも難しいと思うしね」


「一つに・・・か、ははそうだな。

 そうなればこの大陸も平和になるというものだが」


戦いが終わったのを見計らったのか、後方で待機していた衛生兵達が走ってくる。

最終的に何人助かったのかは分からない、だが。


(何とか、防ぎとめることには成功したな)


衛生兵が治療を開始し始めたのを見て、

グスタフは緊張の糸が解けたのかその場に膝をついた。

流石に疲れが身体を蝕み、想像以上の疲労が彼に蓄積している。


だが、ここで休んではいられない。

そう思いなおしたグスタフは再び二本の足で大地に立った。


読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ