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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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29話

何の考えも無く、目の前に向かってくる戦士たち。

数で押せば、勝てるというその・・・考え。

とても浅はかだ。


「ゼフィラス!覚悟しやがれ!!」


数人の斧を持った蛮族のような男達が走ってくる。

その後ろには、魔法を詠唱している女性が見える。


「・・・聖騎士さんよ、俺は魔法使い共を相手するぜ」


隣の傭兵騎士が男達の隙間を抜けるように走る。

彼は囮になるつもりなのだろう、あの装備で・・・魔法使いは天敵のはず。


止める間もなく、彼の身体が遠ざかる。

・・・彼の考えを尊重しよう。

私は・・・眼前の敵を倒す。


――――――――――――――――――――


その様子を、観覧席で見ていた俺と7号。


「どちらが・・・有利なんですか?」


そう聞いてくる7号。

その目は心配そうにゼフィラスを見ている。


「ゼフィラスだ」


男達は間合いを取りながらゼフィラスを囲んでいる。

しかし、一人が斬りかかりに行った。


ゼフィラスは剣を引き抜くと同時に、男の剣を自分の剣の柄頭で受け止めた。

そのまま剣を引き抜き男の剣を押しやると、

手首を回転させ、男の腹部を切り裂いた。

血を流し、倒れる男。


その様子を見た他の男が持っていた棍棒を構えるが。

構えた瞬間には、ゼフィラスの剣が彼の身体を襲っていた。


一方的だ、全員を相手にしてもゼフィラスの方が強い。

彼を囲んでいた男達は既に彼に切り伏せられた。

大した抵抗も出来ずに。


「すごいですね・・・」


「そうだな」


だが、彼も本気ではないだろう。

背中の大剣には手も掛けていない。


そして、奥では魔法使い達と傭兵騎士が戦っていた。


――――――――――――――――――――


俺は、色々な戦場を渡り歩いた。

この御前試合に参加したのは腕試しの為だ。

傭兵としてやってきた俺が、実際にどれだけ出来るのか試しに来た。


御前試合は、純粋な腕試し会場。

策謀を巡らせるような場所じゃない。

だから、俺は事前の申し合わせを断った。

『ゼフィラスを狙う』という、その作戦を。



体中に痛みが走る。

全身に生えるように突き刺さる魔法の槍。

俺が近づくと同時に、全員が俺の身体に魔法の槍を投擲してきた。

何本かは手に持ったハルバードで弾いた。

しかし、断続的に投げられる槍の前に・・・蜂の巣にされたという訳だ。


「しぶといのね・・・」


魔法使いの一人が呟く。


「・・・さっさと始末しよう、足止めがやられてしまう」


足止め・・・さっきの男達の事か。

ふん、組んだ相手を足止め扱いとは。


「そうね、こんな馬鹿に関わっている時間はないわ」


そう吐き捨てると、魔法使いの女たちが詠唱を始める。

宙に浮かぶ半透明の槍状の塊・・・魔法の槍だ。


「馬鹿・・・か。そうだな、俺は馬鹿だ」


痛む体に力を入れ、ハルバードを構える。

魔法防御なんて考えても無い鎧だ、ダメージはほぼ貫通する。

端から見れば、馬鹿の所業だろう。

魔法に弱い重武装の騎士が、魔法使いに挑んでいるのだからな。


「だがな、俺は卑怯者にはなりたくないぜ?」


せめて一人、退場させてやる。

そう思い、走り出す。


身体を刺す魔法の槍の感触。

新しい槍が体中に刺さるか、身体を掠める。

後少し・・・後少しで。

脇に構えたハルバードを強く握り、振りかざす。


「取った―――」


間合いに入った魔法使いに向けて、ハルバードを振るう。

だが、ハルバードが当たるよりも早く、俺の身体は後ろへ吹き飛ばされていた。

目の前の女の手が光っている。


・・・ああ、『衝撃波(インパクトウェーブ)』か。

そう思った瞬間には、地面に体を叩きつけられた。


「ぐふ・・・!」


地面に叩きつけられた衝撃と、我慢していた痛みが全身に突き刺さる。

魔法の槍が、更に深く刺さったようだ。


「やっぱり・・・騎士は馬鹿ね」


「ええ、止めを刺しましょうか」


魔法の詠唱が、遠くなり始める耳に聞こえる。


「さあ、これで・・・終わりよ」


魔法の槍を詠唱していた女の身体が吹き飛ばされた。

俺の目に映るその影・・・ゼフィラスだ。


「そんな、ゼフィラス・・・!もうあいつらの片付けたの!?」


焦った女の声が聞こえる。

『聖騎士』の名前は伊達じゃない・・・か。



試合終了の合図と共に、俺に駆け寄ってくる救護班の女性。

心配そうに俺を見るが、言葉を返すとほっとしたように治療を開始した。


「・・・助かったよ、傭兵騎士殿」


「俺なんて・・・いなくても一緒だったんじゃないのか?」


冗談交じりにそう言う。

ゼフィラスはその言葉を聞くと笑い。


「そんなことはない、私も魔法は痛いからな」


そう言って、俺に手を差し伸べてきた。


「ああ」


力の入る、右手を差し出し、握手を交わす。

聖騎士は・・・人格も出来ていると聞いたが。

その言葉に偽りはないようだ。


――――――――――――――――――――


一方的な試合内容だった。

ゼフィラスの圧勝だ。

向かってきた男達を一気に片付け、

後方で彼を攻撃しようとした魔法使いを一瞬で切り伏せた。


魔法使いの攻撃を一手に引き受けた傭兵騎士は、救護班の治療を受けていた。

命に別状はなかったようで、救護班と、近づいてきたゼフィラスと話している。


治療を受けている彼の顔は明るい。

負けた悔しさも、後悔も無い顔で二人と話をしている。

だが傷が痛むようで、たまに顔をしかめている。

プリラがいれば・・・あっという間に治してしまうんだろうな。


その傭兵騎士の様子を見た7号は俺の顔を見てくる。


「・・・トーマ様、頑張り過ぎないで下さいね」


そう言うと、7号は俺の手に触ってきた。

7号の手は暖かかった、人形とは思えないほど。


「怪我したら、怒りますよ?」


「あ、ああ」


「あんな、重武装な人でも怪我するんですから・・・約束ですよ?」


心配そうに俺の顔を覗くその顔に、不覚ながらもドキッとした。


「分かった・・・約束する」


そう返すと、7号は微笑んでくれた。

心配性だな・・・。

だが、約束した以上は心配させない様に頑張らないとな。


―――――――――――――――――――――


12回戦の準備中。

僕は準備運動をしていた。


そして、自身の武器の手入れ。

僕の武器は『棒』だ。

正確には棒と薬剤。

この棒は打撃用の武器じゃない、薬剤の補助のために装備している。


棒に薬剤を塗る事で、毒を付加したり、麻痺させる事が出来る。


また、棒の両端から液体を封入できるようになっており、

反対の端から、霧のように噴霧できるように作られている。

要するに霧吹き、セラエーノさんに作ってもらった武器だ。

これのお陰で広範囲に指向性を持って、薬剤を噴霧できる。


元々、錬金術師は戦闘に向いた職じゃない。

戦うとしても薬剤・・・錬金薬を利用した戦術が主だ。


麻痺の薬を使用して、相手の行動を阻害したり。

毒の薬を地面にばら撒いて、相手の移動を制限したり。

回復役としては、プリーストに劣るので使用されることはまずない。

まあ・・・応急薬程度の扱いなら、あったりするけど。


錬金術師の立ち回りは、相手の行動を邪魔するのが仕事だ。

あるいは、能力向上(バフ)能力低下(デバフ)のポーションを敵味方に使う補助役。

うまい立ち回りの人は、どちらかの戦法か、その複合戦法を使っていた。


ただ、錬金術師はギルドで足りなくなったポーションの作成や、

フィールドの材料から薬品を作るのが主な仕事。

要は、クラフト系職業・・・戦う職とは言いづらい。

僕もそのつもりで、スキルを組んでいた。



だけど、この世界に来て。

自分で戦う場面も必ず出てくる。

だからこそ・・・今のうちに自分がどれだけできるかやってみたい。


それに、自分の成長をトーマさんにも見て欲しい。

僕が、ただ守られるだけの存在じゃないと、示したい。


足手まといには、なりたくない。

僕だって、支えられるくらいの実力はあると、見てもらおう。


読んで下さり、ありがとうございました。

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