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268話


「間に合いましたね」


「テネス殿・・・この壁は」


ようやく嵐のような風の壁を抜けてきたと思えば、

目の前にいたのはこちらへと走ってくるリザードマン達。


風が彼らを襲っているように見えたので咄嗟に壁を張って防御したのだが・・・。

どうやらあの風の威力は相当なものだ。


風が衝突し壁には鋭い切り裂き傷が走っている。

防壁用ではないにせよ最高ランクの建築スキルが生み出した防壁を傷つけた。

威力は無視できない程高いと見ていいだろう。


「ゼフィラス殿とグスタフ様が影を倒そうと向かっております。

 ・・・我々はそのために奴の目を引こうと」


他の場所を走って逃げていたリザードマンも続々と壁の後ろへと隠れていく。

息も絶え絶えで体中は無数の切り傷でおおわれている。

随分頑張っていたようだ・・・想像は難しくない。


「テネス、私たちはどうする?」


「助けましょう、間に合えばいいのですが」


頭の中で建造するべき建物を思案する。

風を避けて尚且つ長距離を移動できるものは・・・。


「換気口を応用しましょう」


「へ?」


リザードマンの一人が間抜けな声を漏らす。

換気口と言えば家の中にある空気を通すための穴の事。

それの名前を出されたのだから、彼にとっては意外な言葉だったのだろう。


――――――――――――――――――――


「く・・・どこだ!」


風が吹き荒れ、前がほとんど見えない状態で影を探す二人。

事実風によって土が巻き上げられているため見通しがかなり悪い。


気持ちが焦り始める。

我々を援護するために多数の兵士が囮になってくれているのだ。

急がなければ全滅してもおかしくない。


「風が吹く位置を・・・位置を」


焦り、辺りを無造作に探すグスタフ。

その横で目を瞑って風の動きを感じているゼフィラス。


「・・・!」


急に眼を見開くと腰に装着していたナイフを頭上へと投げる。

刹那、キィンと甲高い音を立てて投げたそれは弾かれていた。


「見つけるとはね」


「風に中心があるとすればお前のいるところだ!」


「やれやれ、魔法に集中していて気づかなかったよ。

 足元にまで走ってきているとは」


悪態とも何とも付けないような声で影はゆっくりと空から降りてくる。

禍々しいオーラを身に纏い、その顔は既に人間には見えない。


「僕以外の二人はやられたようだね・・・まあいい」


一つ息を吸う影。

すると、黒い影が彼の周りを回る。

それは、どこかで見た表情をした二つの顔の形をした魂のような物。


「させるか!」


見過ごすわけにはいかない、そう直感したゼフィラスが斬りかかる。

無防備に構えるその身体に深く剣が突き刺さるが。

一向に構わないとばかりに影は息を吸い続けている。


「っく・・・今のうちに叩く!!」


グスタフも加わり二人は怒涛の連撃を影の身体へと叩きこんでいく。

しかし、全く聞いていないとばかりに影は動じない。


何度目かの攻撃の後、渾身の力を籠めてグスタフは大剣を振り下ろす。

肩口から入った剣はそのまま腹まで切り裂いたが、

致命傷になっていないことは切ったグスタフ自身が直感していた。


「ふふ、無駄だ」


唖然とするグスタフに人差し指を向ける影。

その指をゆっくりと振ると、グスタフの身体が真後ろへと吹き飛ばされていた。


「さあ、僕の身体にはいるんだ二人とも」


自身を切り裂いた大剣をそのままに、影が怪しく微笑む。

周りを回っていた魂のような何かはその呼びかけに応じるように彼の身体へと入っていった。

すると、今まで吹き荒れていた風が一瞬にして止み静寂が辺りを包んだ。


「グスタフ」


「ああ・・・まずいなこれは」


武器を手放し吹き飛ばされたグスタフはよろよろと立ち上がる。

近くまで走ってきていたゼフィラスに寄り掛かって体勢を直した。


「武器を回収せねば・・・ん!?」


風を切るような音が聞こえたので咄嗟に身体を動かすと、

何かが真横を通り過ぎていった。

音を立てて地面に突き刺さったそれは、間違いなくグスタフの大剣だった。


「それは君のだろう」


首の骨を鳴らしながら影が近づいてくる。

先ほど付けた傷、裂傷は既に塞がっているように見えた。


「なるほど、二人分の力を蓄えて強くなったということか。

 回復力も上がっているか・・・」


「くそ、絶望的だな」


大剣を地面から引き抜きグスタフは剣先を向けた。


「だがやる他に道は無い!」


――――――――――――――――――――


「風が・・・?」


建築スキルの一つである換気口作成。

それを地面に這わせて二人の元に向かおうとしていたテネス達は、

風が止んだことに気づいて手を止めていた。


「どうしたのかしら?」


「・・・」


思案顔のテネス。

様々な条件、今の立ち位置などを考える。


風が止んだということは影が倒されたという可能性もある。

いや、敵の強さを思えば早すぎるか。

接敵してからあまり時間が経っていないとすればまだ戦闘中だろう。


だとすれば他に・・・。


「急ぎましょう!嫌な予感がします」


中途半端に伸びた換気口へと兵士達を押し込んでいく。


「どうしたの、テネス?」


「次に風が吹くとすれば・・・兵士達は全滅しますよ」


――――――――――――――――――――


相手の身体に変化はない。

だが、何故だ。

身体が何かに縛られているかのように動けなくなった。


「どうした人間、顔色が悪いじゃないか」


顔が完全に黒い何かで覆われ、既に人間には見えない。

いや・・・元から人間ではないか。

不気味な顔のない何かがこちらを見ている状態だ。


その不気味さで恐怖し動けないわけではない。

まるで蛇に睨まれた蛙のように、奴の殺気のせいで身体が動かないのだ。


一歩でも動けば死にかかわる何かが起こる。

それは隣に立っているグスタフも感じていたようだ。


「来ないなら・・・こちらから行く」


ゆらり、そう影が揺れる。


「ゼフィラス、最初の攻撃は俺が受けきる。

 その間に渾身の一撃を奴に見舞ってくれ」


「何!?」


あえて身を晒しながら影へと近づくグスタフ。

まるで何の策も無いかのように無防備に。


「お望みなら、先に」


風に乗るかの如く、影は滑るようにグスタフの前まで詰め寄る。

そして風を纏わせた右手で手刀を作ると、そのまま突きを見舞った。


「ぬぅ・・・!」


グスタフの身体に刺さり、背中に貫通した指が見える。


「?」


確かな攻撃を与えたはずなのに影は首を傾げた。


「おかしいな、致命傷のはずだけど」


「ふん・・・!甘く見るな」


突き入れた腕を掴み、がっちりと押さえる。


「今だ・・・ゼフィラス!」


ゼフィラスは既に空中へと飛びあがっていた。

剣を振りかぶり、真一文字に下ろす構えで。


「受けろ、最大の一撃を!『極大の衝撃(ギガインパクト)』!!」


構えた剣が淡い光を帯びる。

同時に振動し始め、持ち手に強い衝撃が届く。


「ぐ・・・!だがぁぁ!!」


振り下ろせばこちらの勝ちだ。

普段ならば当たらないほど隙の大きい技だが、動けない今ならばこの攻撃が通る。


「ふぅん、そう」


興味なさげにそれを見る影。

焦る様子も無く、その一撃が来るのを待っていた。


読んで下さり、ありがとうございました。

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