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263話

グスタフとゼフィラスの二人は一人の影、敵に対して波状攻撃を仕掛けていた。


「むぅん!!」


グスタフが斬りかかると、影はそれを手にする槍で弾く。

弾かれ体勢を崩しつつあるグスタフに攻撃を見舞おうとするが、

それを阻止するようにゼフィラスが斬りかかっていく。


「っち」


槍を回し、迫る剣を弾く。

そして二人は間合いの外へと引き下がる。


「・・・小癪な事するね」


「ふ、小癪か」


二人は武器を構えながら互いに寄り添う。

相手はこちらと比べてもかなりの実力者。

生半可に攻め入っては負けるだろう。


「テネス殿かプリラ殿の救援を待つのも手だぞ?」


「・・・煩わせるまでもないだろう、なあグスタフ」


「そうだな」


敵の方が強いが、それは圧倒的な差ではない。

我々二人が息を合わせて戦えば活路は開ける。


「行くぞ、災竜!」


――――――――――――――――――――


「あらあら」


影とプリラはある程度までは一定の距離を保っていたが。

何に怒髪を覚えたか急にラッシュのような攻撃を繰り出す影。

それを見切っているかのように紙一重ですべて交わしていくプリラだったが、

流石に攻撃の手数が多いか数発の攻撃が掠るようになってきていた。


「倒れろぉ!」


「祈りは口に出しちゃだめよ」


かわすだけでなく、メイスで攻撃を弾き始める。

何度も致命傷を狙い攻撃を繰り返すが、その度に攻撃は明後日の方向へと流される。


「ちぃ・・・!貴様!何故攻撃をしない」


「戦略」


一歩後ろへ飛び退くプリラ。

構えていたメイスを下げると、目の前の影を見やる。


「短時間で強烈な攻撃を繰り返せばそれだけスタミナを使う。

 どんなに強者であろうと、化け物であろうとね」


「何・・・?」


気づけば肩で息をしている自身がいた。

敵に攻撃することに夢中でスタミナの配分など一切考えていなかった。


故に、今ここにいるのは。

疲れ果てた自分と涼しい顔をしている敵のみ。


「謀ったな!」


「自分で勝手に疲れただけでしょう?私は攻撃をかわしただけよ」


肩をすくめて見せるプリラ。

その姿に影は再び激怒の表情を見せる。


「この女ぁ!!」


先ほどと同じ攻撃を繰り返そうとする影。

だが、精彩の欠く攻撃を何度も繰り返すだけだった。


「・・・」


そしてプリラは狙っていた。

下手に体力を残したまま止めを刺そうとすれば逃げられるか、

或いは自分以外の兵や将を狙う可能性があると。

だからこそ、疲れはて逃げる力すら失いつつある今を待っていた。


何度目かの攻撃を回避する。

すると疲れからか踏ん張りがきかないのか、影がよろけた。


「じゃあ、貰うわ」


メイスを振りかぶると、そのままよろけた背中に叩きつけた。


「ぐ・・・ぉぉ!?」


一瞬耐えるそうなそぶりを見せたが、

メイスと共に地面へと擦り付けられる影。

多少の振動と共に、土煙を上げて大地へとキスをした。


「・・・」


動かなくなった影を注意深く見ながらプリラはその場で待機した。

あれほどの攻撃を繰り返せるのだから、この一発で倒せたとは思えない。

少なくとも体力を奪っておいたのは正解だろう。

・・・再起したとしても戦力として使い物には―――。


「?」


倒れる黒い塊が少し動いた。

もう立ち上がるのかと警戒するが、それは杞憂だった。


先ほどまで戦っていた相手は手と足の先端から砂のように崩れ、

やがて全て砂のようになり風と共に散っていった。


「倒した、でいいわね」


さて、ともすれば他の人の援護に向かわなければ。

とりあえずは直近のゼフィラス達を援護するべきだろう。


「・・・少し気にかかる部分はあるけど、ね」


あっさり過ぎて逆に何か引っかかる部分はあるが。

身体が消えた以上、この場にとどまる理由は無いだろう。


――――――――――――――――――――


テネスは追ってくる影を綺麗にかわしながら地面を何度も触る。


「貴様、ふざけているのか?」


「どうでしょうね?」


面と向かって戦おうとしないこちらに対して、

相手はいらだっているように見える。

まあ・・・それも含めて。


「そろそろいいでしょうか」


「何?」


罠は仕掛けた。

その第一段階を発動させる。


指を鳴らすと地面から複数の壁がせりあがる。

壁は鉄製の物、簡単に破壊できないよう細工もしてある。


「これは・・・」


最後の一枚が出ると、二人を囲むような構造となった。

まるで闘技場のような形に。


「自ら退路を塞ぐか、人間とは馬鹿な考えを持つものだな」


「馬鹿かどうかは戦ってみればわかるのでは?

 それに・・・何も考えずにこんなことをすると思っているのですか?」


「ふん、ならばそうさせてもらおう!」


影が武器を構えると、一瞬にして間合いを詰めてくる。

普段なら回避するところだがもう策はなっている。


「壁生成」


一歩引くと同時にギミックの一つを解除する。

自分のいたその場所から、生えるように壁がそそり立った。


「何!?ぐぉ!」


急にせりあがってくる壁に顎を打ち付ける影。

そのままアッパーされたかの如く宙を一度舞って地面に倒れた。


「く・・・小細工を」


ダメージはそれほどではなかったらしくすぐに立ち上がってきた。

まあ、そもそも攻撃用の仕掛けではない。


「既にこの場は私のテリトリーです、下手に仕掛ければそうなりますよ」


この場所はこちらが作った舞台。

ここにいる限りはこちらに有利が回る。


「人間の小細工など通じると思うな」


影が手を振るうと、石の床がめくれ上がる。

同時にそこに仕掛けてあった罠が飛び出し宙に舞った。


「ですから、下手に仕掛けない方が」


飛び出した罠に続くように黒い球体が宙に舞う。

一瞬その場に制止すると、キリキリと音を立て始める。


「なんだ?」


ピィィィンと金属が音を響かせると同時に黒い塊は爆ぜた。

爆音と風圧をばらまきながら。


「それは、第二次世界大戦にあった跳躍地雷を再現した兵器で・・・。

 説明したところで分かりませんか」


爆炎と煙に包まれる影。

切れ間に見える姿にはダメージはさほどなさそうに見える。


「ふむ、威力的に言えばそこそこのものなのですが。

 喰らってないところを見るともう少し強化が必要ですね」


「貴様・・・いい加減に」


冷静を装っていた彼のそれがはがれ始める。

まあ、それはこちらに有利に働くのだが。


「思うところがあるのなら掛かって来ればいいではないですか?

 私はここにいますし」


肩をすくめながら軽く煽ってみる。

すると、額に青筋を立てこちらを睨んで返してきた。


「下等種族が、調子に・・・!!」


挑発に乗って一歩足を踏み出すが、ハッと何かに気づいたような顔をした。

そして得意げに一つ笑って見せる。


「その手には乗らんぞ、人間」


「・・・まあ、動いても動かなくとも結果は変わりませんよ」


テネスは片足を少しだけ上げ、踏み抜くように床を強く踏みつける、

ガコンという音と共に壁がめくれ、地面からは様々な武器や飛び道具がせり出す。


「さあ、どこからでもどうぞ」


影の周りに現れた数多のトラップ。

それは彼の逃げ場と行く手を完全にふさいでいた。



読んで下さり、ありがとうございました。

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