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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
ゼローム皇国の騎士編-御前試合ー
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26話

専属騎士の仕事は、ラティリーズとリルフェアの身辺警護が主な任務だ。

ゆえに、ラティリーズとリルフェアの私室への入室を許可されている。

つまり、彼女らがカテドラル外へ訪問する際に帯同して近辺を警護する重要な役職だ。

それは外に限らず、カテドラル内での謁見の際も、身辺を警護する。

その性質上、ラティリーズとリルフェアの近くにいることが多くなる。


・・・仕事の内容をリルフェアに確認していたのだが。

途中でリルフェアの顔が、少し険しくなる。


「だけど、明日の御前試合の結果次第では・・・ね?」


俺が無様に負ければ、専属騎士として不適格であるので降ろせ、という口実になる。

推薦したリルフェア自身にも恥をかかせることに繋がるだろう。


「まあ、貴方なら負けないとは思うけど」


険しくなっていた表情は元に戻っていた。


「・・・どうしてそこまで、俺を買っているんだ?」


人づてで話を聞いただけだし、俺の実力を見たわけでもない。

なのに、リルフェアは俺を信頼してくれている。

竜騎士と言うだけで信頼されているのだろうか?


「言っておくけど竜騎士だから信頼している、という訳ではないわよ?

 貴方だから信頼しているの」


「俺だから?」


「いくら伝説の存在でも、性格に難があれば信頼なんてしないわ。

 でも、貴方は自分が悪いと思ったら謝れる人だし、

 仲間思いな人だという事も分かる」


・・・。


「だから、貴方を信頼してるの。

 御前試合だって貴方なら優勝出来る、そんな気がするわ」


「・・・買ってくれるのは嬉しいが、勝負はやってみないと分からないぞ?」


「そうね、ゴルムが指名したのは、あのゼフィラスだからね」


ゼフィラス。

初めて聞く名前だ。

だがゴルムが指名したと言う事は・・・彼が俺の対抗馬になるのか。


「聖堂騎士でも一部の強者に与えられる称号、『聖騎士』を関する男よ」


「なるほど、聖堂騎士でも一番強い奴を出してきたって事か」


「そうね、ゴルムらしい・・・」


・・・リルフェアはゴルムが嫌いなのか、顔をしかめていた。

まあ、普段から二面性の態度を面に出しているんだ。

好きという奴の方が珍しいだろう。


「いっそ、イグニスを団長にした方がいいんでしょうけど」


そういって、リルフェアは新しい紅茶をカップに注ぎ始める。


「あなたも飲む?」


「いや・・・この後予選会だ、遠慮させてもらうよ」


「そう」


残念そうにそう呟く。

ラティリーズの分も追加で注ぐと、リルフェアは俺に顔を向けた。


「ゴルムの父親の功績は非常に大きいわ。

 烏合の衆と化した聖堂騎士団を立て直し、国随一の騎士団にしたのも彼。

 彼が亡くなった後、ゴルムが世襲で入団したけど・・・まあ、わかるわよね?」


新しく注いだ紅茶を一口飲むリルフェア。


「正直に言って、ゴルムを罷免したいけど。

 ・・・外面のいい彼を罷免するような材料も無いしね」


そう言って、手に持ったカップを置いた。


「まあ、貴方に言ってもしょうがない話ね、忘れて。

 でも・・・彼が代理で立てたゼフィラスは強敵よ、こっちは覚えておいてね」


「ああ・・・わかった。

 それと、拠点の件は本当に感謝している、ありがとう」


俺は踵を返した。

すると、後ろからラティリーズが話しかけてくる。


「トーマ様、どうか、怪我の無いように・・・頑張ってください」


ラティリーズのその言葉に、俺は体勢を返しラティリーズと向き合う。


「ああ、もちろんだ」


そう返し、俺は部屋を後にした。


――――――――――――――――――――


「律儀な人ね、わざわざお礼を言いに来るなんて」


「・・・そう言う人だから、専属騎士にしたんですよね?」


「まあ、そうね」


三杯目の紅茶を注ぐリルフェア。


「東側の茶葉、今年は良い出来ね」 


「でも、苦味が強いんじゃ・・・?」


「大人になれば分かるわ、その良さも」


そう言って、自分の娘の頭を撫でるリルフェア。


「今年の御前試合は、楽しくなりそうね」


「・・・はい、トーマ様が怪我をしなければいいのですが」


――――――――――――――――――――


もう一度、予選会場に向かうと6回戦が始まっていた。

円形闘技場の真ん中で、10人近い男女が睨みあっている。


「サバイバル・・・か」


あの中で一人だけが、本戦に出場できるのだろう。

闘技場を眺めていると、上の観覧席でその様子を見ている八霧(やぎり)を見つけた。


八霧の傍まで歩くと、隣の席に座る。


「どうだ?」


「うん、見た感じは・・・そうだね」


メモを取っていたらしく、それを見返している。


「今の所、目立った選手はいないかな?

 11回戦の、ゼフィラスっていう人が注目されてるけどね」


ゼフィラス・・・聖堂騎士の聖騎士か。


「・・・知ってるの?」


俺の顔の変化を呼んだのか、八霧がそう聞いてくる。


「名前だけは聞いた」


「そうなんだ、優勝候補って聞いたけど、どうなんだろうね?」


俺達の周りに座っていた貴族や戦士から歓声が上がる。

目線を闘技場に戻すと、6回戦の勝者が決まったらしい。

斧を持った男が、自身の武器を高々と振り上げている。


救護班らしき神官(プリースト)達が走り寄り、魔法の光が見えた。

怪我をする可能性はあるとは聞いていたが、アフターフォローは万全みたいだな。

倒れている人たちを回復して周っている。


「勝った人は狂戦士(バーサーカー)の『レンドガ』って人だね」


「有名なのか?」


「・・・ええと、各地の魔物討伐やバルク国との小競り合いで活躍した人らしいよ」


目の前で勝利の雄たけびを上げている大男を見る。

獣の皮を加工したような鎧、バイキングヘルムを被った風貌。

顔も体も傷跡だらけで、立派な髭を蓄えている。

まさにバイキングの戦士といった風貌に見える。


「八霧、まさかと思うが・・・1回戦から見ているのか?」


「うん、色々情報が集まるし、有意義だよ」


そう言うと、メモ帳を見せてくる。

1回戦からの戦闘の内容と勝者が書かれている。


「じゃあ、気になる人をピックアップしてみるよ」


そう言うと、メモ帳を捲る八霧。

結構な量を書きこんでいるようだな・・・。


「1回戦の勝者『ラクリア』。傭兵騎士として、名を馳せてるらしいね。

 レイピアと長剣の二刀流で、相手を翻弄していたよ」


珍しい二刀流だな。

EOSだと同じ武器の二刀流や、長剣と短剣の二刀流なら見た。


同じ武器を二つなら、防御は出来なくなるが手数が増える。

長剣とダガーみたいに極端にリーチの違うものにも意味がある。

短剣で受け流す事(パリィ)も出来るし、

振りの速さで長剣での攻撃の隙を埋めるという事も出来る。


なら、レイピアと長剣の組み合わせは?


「長剣で揺さぶって、レイピアで止めか」


「うん、正解」


長剣で相手の回避を誘い、回避した後の身体にレイピアを刺す。


ボクサーのような奴という事か。

片手のジャブやフックで相手の回避を誘い、

温存したもう片方の手のストレートで止めを刺す。

気を付けるべきは、レイピアを構えた時、だな。


「それに、4回戦目の赤い魔女『ソフィア』。

 鞭使いの、設置系魔法使い・・・かな?」


「ん?罠士(トラッパー)という事か?」


「ちょっと違うかな。彼女の場合は鞭で相手を追いやって、

 仕掛けた魔法におびき寄せるって感じ」


「なるほど、職業は魔法使い・・・で、武器で相手の行動を抑制するタイプか」


EOSでもいたな。

ただ、そいつは生粋のトラッパーだったが。


「最後に5回戦の『ランキ』。大きな棍棒を担いだオーガだよ」


「オーガ?」


「うん、ゼローム皇国は人間が8割程・・・異種族も住んでいるって聞いたよ?」


そうか、てっきり人間しかいないと思っていたが。

じゃあ、エルフやゴブリンも暮らしているのかもしれないな。


「って、聞いた?」


誰から、と聞く前に八霧は答えてくれた。


「受付の人から色々。話しかけたら、結構教えてくれたよ?」


あの入り口の女性か。

お堅い印象を受けたが、結構フレンドリーなのかも知れない。


しかし、多種多様な種族もこの予選会に集まるのか。

・・・この試合、一筋縄ではなさそうだ。



読んで下さり、ありがとうございました。

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