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244話


「ほうほう、兵士の数が足りないと」


一応、今の状況をレンドガさんに説明しておいた。


「ええ・・・国中、総力を挙げてかき集めているのですが」


「いかんせん正規兵の数が足りな過ぎましてな」


「ふむ」


レンドガは何かを考えるように蓄えた髭を手で擦っている。

すると何かを思いついたかのように一つ手を叩いた。


「よし!この場は俺に任せな。格安で受けさせてやるぜ」


「へ?」


言うが早いか、レンドガは騎士団への扉を開いた。

その後を急いで追う兵士二人。


「何をするのですか!?」


「まあ、見てろ」


――――――――――――――――――――


「これは、用心棒殿・・・む、貴様ら」


用心棒であるレンドガを見たときは上機嫌だったが、

こちらを見つけると急に不機嫌な顔に変わった。

・・・こちらとしてもすぐには会いたくはなかったが。


「団長殿、そろそろ給金が欲しいのだが」


「へ?あ・・・いや待て、来月の約束だったはずだ」


「そのセリフは四度目だ、いつまで先延ばしにする?」


「いや!待ってくれ!来月には金が入るんだ。

 それまで待ってくれるとこの前約束したじゃないか」


威厳のある顔つきがきゅうにしどろもどろになり、

落ち着きがない様子でレンドガの顔を見ていた。

どうやら相当な期間報酬を払っていないらしい。


「いいや、急に金が必要になったんでね。

 それにいつまでも待たせてるのはそっちだぞ、どうするんだ?」


巨躯をずいと団長に近づけ、圧迫するように詰めるレンドガ。


「な、無い袖は振れないぞ、流石に」


「なら、要求を聞け。そうすれば今回の件は流す」


「要求?」


助かったとばかりに顔が明るくなる団長。

さしもの団長もレンドガに対しては強気に出れないらしい。


「バルクとの決戦に付き合え」


「は?・・・え?」


こちらの顔を見る団長。

恐らく、俺たちが仕向けたとそう勘ぐったのだろう。


「貴様ら!貴様らが仕向けたのか!!」


壁に立てかけてあった斧を掴み、振りかぶろうとする団長。

だがその手は何かに弾かれ、掴んだ斧は壁に弾き飛ばされ突き刺さった。


「ぐ!?」


「俺の話がまだだろうが!付き合うのか付き合わんのかはっきりしろ」


弾いたのはレンドガの投げた手斧。

団長の構えていた斧ごと背後の壁に縫い付けるように刺さっていた。


「い、いや・・・だがこいつらの要求なのだろう!?」


「決戦に行くのは俺の意思だ、それに付き合えば流すって言ってんだろうが」


斧を弾き飛ばしたレンドガの得物が団長に近づく。


「それとも金があるのか?これに参加すりゃ俺に渡す金額くらい稼げると思わないか?」


「う、ううぅ・・・」


どんどん近づくレンドガの顔と武器。

それに気圧されたか、団長は項垂れながら首を縦に振った。


「分かった、分かった!」


進退窮まった団長は、レンドガの要求を呑む。

そうしなければ殺されるとでも思ったのだろう。


――――――――――――――――――――


「い、意外な結果に終わりましたね・・・」


「ああ・・・しかも大分格安で雇うことになるとは」


「あいつらにはそれが丁度いいだろ、それに弱みに付け込んで吹っ掛けるのは好かん。

 ・・・今回のは大きな戦いになるんだろ?」


帰りの道中、レンドガもどこかに用事があるとのことで。

途中まで一緒に帰っていたのだが。


「大きな戦い・・・そうだな、確かに」


「バルクとの決戦だ、いやぁ楽しみだ。

 なにより俺の勘が言ってるんだよ、この戦いは世界を一変させるものになるってな」


「一変、ですか」


「今まであった小競り合いや毎年行事になった戦いじゃない。

 これこそが大陸の行く末を決める決戦になるってな」


背負っていた得物の持ち手を触る。

レンドガはそのまま武器を手に持つと、夕日に目掛けて向けた。


「俺みたいな力が強いだけの馬鹿でも、この戦争は負けてならねえ。

 それだけはビンビンと感じてんだ」


「・・・そうですね、今回の戦いは今までと何かが違う。

 それこそ明日の行く末を決めてしまうような」


だからこそ、戦力の拡充を急ぎたい。

彼ら騎士団崩れを全て仲間としても足りないだろう。


――――――――――――――――――――


参戦勢力図がだいぶ色づいてきた。

ゼローム中、至る所に存在する戦力がかき集められている。

だが、それは上層部が予想するよりも早いものであった。


「・・・随分、あっさりと了承するものなのだな」


「我軍で最前線で戦う者の影響が強いかと」


「む?」


「御前試合優勝者、それに参加者が各地から決戦に集まっているとのこと。

 皆示し合わせたかのように、

 自分たちも立ち上がると呼応するものが多く出たとのことです」


「なるほど」


御前試合は有数の戦士が集まる大会。

その参加者ほぼ全てが決戦に参加する。

騎士団崩れや傭兵からすればこれほど腕を見せられる戦場はない。


それに、悪く考えれば強いものが自軍にいれば甘い蜜を吸えると考えた者もいるだろう。

・・・そうなれば軍の規律にかかわってくるが。


「隊長?」


「・・・一応、規律が乱れぬようにお目付け役を付けておけ。

 万が一でも賊のようになれば目も当てられない状況になるぞ」


規律どころの問題ではなくなる可能性だってある。

要は使いようなのだ。


――――――――――――――――――――


各地から参戦を希望した戦力は続々と国境沿いへと向かっていく。

装備もまばらな傭兵部隊、長だけは立派な身なりの騎士団。

村が自警のために組織した自警団、果ては修学中の騎士候補生や魔法使い。

そのごった煮になった一団は長い列を作りながら歩く。


「ははは!壮観だな・・・装備がバラバラでいまいち盛り上がりには欠けるが」


「総勢6万・・・使えるのが4万、後はまあ後方部隊として使いましょう」


騎士団崩れとは言え実戦経験は豊富だ。

傭兵も同じことが言えるだろう。

だが、学生たちは最前線に立たせるわけにはいかない。


「若い芽を摘んでしまっては後がなくなりますな」


「だが、志願してきたものを無下には扱えんだろう。

 ・・・国家を思い、命を賭してここまで来ているのだ」


「ふむ」


参謀役は掛けていた眼鏡のずれを直す。


「将軍はこの戦いどうみますか?」


「む?うーむ、そうだな。

 あまり実戦経験がない身からは強く言えんが・・・。

 背筋がたまに張るほど、身が引き締まる何かがあるな、この戦いは」


「左様で」


「・・・皆も言っているが今回の戦争。

 今までにあった何よりも動くものを感じる」


将軍と呼ばれた男は握り拳を作り、力強く拳を振るわせた。


「予備役で後方支援だとしてもこの震えは止まらん。

 戦好きというわけではないが、な」


「・・・私も、多少は興奮しております。

 同時に、漠然とした不安も同じくらいに感じておりますが」


「ほう」


「勝てればこれ以上の喜びはないでしょうが。

 負ければ全てどころか何も残らない気がしてならないのです。

 それこそ・・・大陸中のなにもかもが」


不安そうな顔を一瞬見せる参謀。

その様子と言葉に周りにいた警備兵の顔も曇る。

どうやら参謀と同じような感覚を持っていたようだ。


「戦いもせずに気落ちするな。

 そんな様子では負ける確率が上がるだけだぞ?」


「・・・ええ、そうですね」


首を軽く振った参謀。

そして自分の顔を何度か触るといつもの顔に戻った。


「勝ちましょう」


「ああ」


この部隊を含め、全戦力を賭すことになる。

参謀が言うように負ければ何も残らないというのは本当になるだろう。

だからこそ、戦い、勝つ以外に選べる選択肢などないのだ。


・・・斯様に敵が強大だったとしても、負けるわけには。


読んで下さり、ありがとうございました。

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