242話
「え・・・?そんな」
八霧を始め今この場にいるギルドメンバー全員にある事を話した。
ギルダーが災竜の正体だったこと、いや正確には身体がそうだということだが。
その事実を知った皆の顔が多少曇る。
「あいつが世界を壊そうってしてるってこと?」
多少怒気を孕んだ声を上げるセラエーノ。
「いや・・・あいつの意志じゃないだろう、死にたがっていたからな」
「じゃあ災竜って奴が悪者ってことでいいのね?」
「多分な」
確証はないが、恐らくそうだろう。
奴を倒せばこの戦争は終わる・・・いや。
大陸に厄を振りまく存在が消えることで、永い平和が手に入るかもしれないな。
まあ、何より。
ギルダーを放っておくことは出来ない。
「トーマさん、次に戦うときは決戦になるはず。
準備をきちんとして備えないとね」
「ああ」
戦争に大きくメンバーが関わっていた。
ならば、その行為を止めるのもギルドメンバーとしての務めだろう。
少なくとも宵闇さんならばそうしていた、
俺もギルダーの意志が本物ならばそれを尊重しよう。
・・・たとえ、命を奪うことになったとしても。
苦しみ続けるよりはましだろう。
――――――――――――――――――――
翌日には国境沿いで小競り合いをしていた全てのバルク兵は撤退していた。
そして本土の奥にそびえ立つバルク最大級の要塞、
『アトラム城塞』にその戦力を集中させ始めている。
「決戦の様相を呈しましたな」
「・・・災竜」
今まで報告に上がっていた災竜の動きを再度見直したリルフェアは、
その行動に対していささかの疑問を覚えていた。
(今まで、表に出ることなく裏から大陸を火の海に飲ませようとしていた。
なのに今になって決戦を急ぐような真似を何故・・・?)
「リルフェア様?」
隣に立つ参謀が心配そうな顔でこちらの顔を覗いていた。
・・・どうやら、考え事のせいで顔がこわばっていたらしい。
頬をさすり一度咳を切った。
「大丈夫よ、それより報告は?」
「ええ・・・先ほど声明が届きました。
何でも、挑むつもりならば全力で来いと」
「決戦ね、その一文だと」
罠という可能性がある、いやそれしか考えられないというのが、
会議室での話の流れだった。
実際に私もそうだと思っているし、何か仕掛けてくるのは間違いない。
と、先ほどまでは思っていた。
今報告に来てくれたドール達の話を聞くまでは。
(トーマが目当て・・・災竜は精神体に近い何か。
だとすれば、この戦争の本当の目的は・・・?
完全復活すること?それとも、自分を殺せる者の排除が目的?)
どちらにせよ、災竜がこの世界を壊そうと暗躍していたことは事実。
彼の考えがどうであれ、この戦いには負けられないのだ。
「全軍を持ってこの戦争を終わらせるわ。
バルク側に流れたシャルードの事も気がかりだけど・・・。
戦火をこれ以上広がらせないためにもここで決着をつける」
「は!」
参謀を含めた側近たちが力強く頷き肯定を示した。
――――――――――――――――――――
数日後。
バルク各地から収集された全軍に近い兵士と魔獣がアトラム城塞へと集結。
総勢十数万となった一軍で、城塞を防備していた。
対するゼロームとヘルザード暫定政府側も集められるだけの兵をかき集めていた。
・・・のだが。
度重なる両者同士の戦いにより、動員できる人員がかなり限られていた。
その中でのとある前線基地の話。
「なに!?十万にも届かないのか!?」
「は、はい・・・ヘルザード側は暫定政府に従わない者もおり、
その対処に全ての兵を割くわけにはいかないと」
「我が国は?」
兵士長で、人員管理を行っていた老兵が頭を抱えながら聞き返す。
眉間辺りにしわを寄せながら。
「西側と東側に分かれた戦いにより、各地で疲弊が重なり。
盗賊や強盗、そのほか民を脅かす魔物の対処で兵を割かれております」
「ぬうう・・・二国が協力し強大な軍が出来ると思えば・・・。
これでは張子の虎もいいところではないか」
攻撃側と防御側の兵が同数ならば、苦戦するは攻撃側。
防衛に回る方はそれだけ地の利が得られる。
つまり・・・。
「足りぬ・・・あまりにも兵が」
「しかし、現状で集められるだけの正規兵です。
他にあてなど・・・どこにも」
どこもかしこも出せるだけの戦力を抽出してくれている。
これ以上出せと言っても、兵を出せる場所などないのだ。
「強制徴兵してでも増やすほか無いか・・・。
だれか、妙案があるものがいれば名乗り出てくれ!」
周りにいる兵士に聞こえるような声を上げるが。
その答えを持っている者はいなかった。
ただ一人を除いては。
「金があるなら何とかなるかも知れないぜ」
「何!?いや・・・待て、貴様は誰だ?
見たところ兵士では」
軽装の鎧から覗かせる布の服。
兵士のような鎧ではなくまるで巷にいる冒険者に見える。
「俺はラクリア、って言えばわかってもらえるかな?」
「ラクリア・・・おお!御前試合の出場者か!」
「まあな」
照れくさそうに頭を掻くラクリア。
「決戦するって話を聞いて参加しようと来たんだけどな。
・・・そんなに戦力が足りないのか?」
「うむ・・・攻めるには足りな過ぎるのだ」
「それで、ラクリアさん。何とかなるとは?」
話が逸れそうになったのを、隣の兵士が止めた。
ああそうだったと呟いたラクリアは、本題を話し始める。
「正規兵のみならそれだけだろうけど、傭兵や冒険者。
その他騎士団崩れの連中や自警団もいる。
それらを集めればもう少しは戦力が増えるんじゃないか?」
その言葉を聞いて、老兵と兵士が顔を見合わせる。
そして同時にラクリアを見た。
「国の一大事だというのに、正規戦力以外を入れよと?
冗談ではない!これは戦争なのだぞ!」
「だから、持てる者はすべて使うんだろ?
・・・あんたら正規兵がどれだけえらいかはわからないけどさ。
ちっぽけなプライドで勝つ手段を断とうって言うならそれこそ馬鹿の所業だろ」
馬鹿、と言われ二人の顔が怒りで赤くなるが。
怒鳴る前に老兵がハッと気づいたような顔をした。
「く・・・そうだな、今は正規だなんだと言っている場合ではない。
使えるならばすべて使わなければいけない時だ」
「隊長?」
一つ大きなため息を吐く。
そしてラクリアを再度見ると深く頭を下げた。
「頼む、紹介してくれ。その戦力とやらを」
「・・・」
一瞬呆けた顔をしたラクリアだったが。
ニヤリと笑うと、一つガッツポーズを見せた。
「ああ、任せてくれ!ちょっと待ってな」
そういうとラクリアはその場を去っていった。
完全に後ろ姿が消えると同時に、兵士が口を開いた。
「よろしいのですか?」
「ちっぽけなプライドで全滅してはそれこそ馬鹿だろう。
・・・底知れぬ相手と戦おうというのだ、なんでも使うさ」
勝たなければ明日は無い。
バルクとの戦いは何度も経験してきたが、
今回の決戦は今までのそれとはまったく違う気がする。
負ければ確実に滅ぶ、そんな焦燥感が老兵の心を包んでいた。
「まさに総力戦となるだろう・・・」
ゼロームとヘルザード、全てを掛けた戦争に。
読んで下さり、ありがとうございました。




