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222話

ヘルザードで暫定政府が発足したことがゼロームに伝えられた。

それから数日してのゼロームに物語の舞台は移る。


――――――――――――――――――――


西側からの圧力が無くなったと見たリルフェアはバルクとの決戦を決意。

その決戦部隊の先遣を国境沿いに送っていた。


国境警備部隊と合流したゼロームの本隊の先遣部隊。

その中にトーマと八霧の姿が混じり、先頭を歩いていた。


「小康状態、お互いに様子見ってところだね」


「ああ・・・だが随分疲れているように見えるな、こいつは」


馬に乗ったまま国境沿いに建てられた要塞に入ったが、

ほとんどの兵士が傷つき治療を受けていた。


「バルクの波状攻撃を受けて精神的にも疲労している、かな」


兵士の一人がこちらを見ると、一瞬呆けたような顔をした。

だが、顔に生気が戻ったように明るくなる。


「おお、援軍か!有難い」


「・・・戦況は?」


馬から降りつつ、八霧は兵士にそう聞く。


「悪くなる一方だ・・・何とか防衛しているが何時まで持つか」


兵士が空を見上げる。

すると、どこからともなく鐘の音が高く響き渡った。


「またか・・・!っち、早いな」


「敵襲か」


「ええ、恐らく休憩を邪魔するための小規模部隊でしょうが」


小規模か、様子を見に行ってみるか。

それにこの要塞には休憩が必要だろう。


「八霧、少し様子を見てくるが着いてくるか?」


「・・・僕は要塞の様子をもう少し見てくるよ。

 あまり暴れないようにね?」


――――――――――――――――――――


様子を見るために先行して俺たちは国境まで来ていたが。

状況は芳しくないことは分かった。

・・・まあ、少しくらい彼らにも休憩は必要だろう。

ここは俺が働いておこう。


平原を挟んで数十名の兵士がこちらへと走ってきているのが見える。

見たところ前衛に兵士、後衛には魔法使いらしきローブを着た女性陣が控えていた。


「迎撃に出てきたか、動きが速いな」


「だが見ろよ・・・たった一人だぜ?」


こちらを発見した兵士たちが前方に広がり、後方へと一部の兵士が回り込んできた。

一瞬にして囲まれる態勢にはなったが。


(むしろ壁が薄くなるから悪手、特に小規模部隊なら尚更だ)


「ゼロームの騎士様か?たった一人で迎撃とは」


銀色の鎧を見たからそう思ったのか、

一人の兵士が馬鹿にするような口調と語気で口を開いた。


「なんかの懲罰だろ?じゃなきゃたった一人で出てこないだろ?」


「へへ、違いねえ」


・・・なんだ、こいつらは。

正規兵とは思えない程に口が悪いしべらべら喋る。

規律が全く感じられない。


「敵兵と話す余裕なんかあるのか?さっさと事を済ませたらどうだ」


「あ?てめぇ・・・この状況がわかってん―――」


そうイキった兵士めがけてナイフを投げる。


兵士が持っていた槍に命中すると、

手から弾き飛ばし背後にある木に縫い付けるように張り付いた。


「うおぉ!?」


「何?貴様・・・!皆油断するな!」


隊長らしき男が檄を飛ばしながらこちらへの警戒を強める。

だが、その行動で彼が司令塔だということがわかってしまった。


「お前が隊長か」


一歩、足を踏み入れると同時に彼の目の前まで跳躍した。


「ぬぅ!?」


瞬時に防御態勢を取り盾を構える。

が、それは読み通りの行動だ。


そのまま盾を掴み、引きはがすように彼から奪う。


「な、このぉ!」


引きはがされた衝撃で体勢を崩すものの、その姿勢のままで剣を振りぬいた。

だが姿勢が崩れた力の抜けた攻撃はむしろ死に体をさらしているに近い。

軽く回避し彼の腕を捻り上げる。


「ぐ・・・な、何をする」


そのまま彼を盾にするように構えた。


「リーダーはこっちが確保した、どうする?」


一瞬その場に沈黙が訪れる。

どうするかと思考しているものだと思っていたのだが。

・・・どうやら違ったようだ。


「・・・それがなんだ?」


嘲笑するかのように一人の兵士が笑うと、その背後いた影が動く。

その影は魔法使いで、既に手に持っている杖が光り始めていた。


それが見えると同時に隊長に向かって魔法らしきものが放たれる。

それが隊長の胸に直撃し、全身を電撃が包んだ。


「ぐぁぁ!」


「おいおい!」


咄嗟に手を放し、開放する。

解放された彼は地面にもんどりを打ちながら悶え、そのまま絶命した。


「味方だろうが・・・お前ら何を考えてるんだ」


「敵に拘束される役立たずなどこの部隊には不要だ」


魔法使いに指令を出した兵士がニヤリと笑いながらそう言う。

ただ、魔法を放った魔法使いは気まずそうな顔をしているが。


人質がいなくなったためか、更に兵士たちはこちらへと詰め寄ってくる。

・・・こいつら邪魔なら味方を簡単に殺すのか。

だが、それなら手加減してやる事も無い。


「掛かれぇ!!」


兵士が一斉にこちらに走る。

武器を構え八方向からの一斉襲撃。


「・・・」


背中に背負っていた槍を手に持ち、タイミングを計る。


意識を集中させると周りの時間がゆっくりに感じ取れ、

こちらに向かってくる兵士達の速度も大分緩慢にみえる。


(一、二・・・)


一人の兵士がある一線を越える。


「はあぁ!」


体を捩じり、片手に握った槍ごと回転する。

風切り音を立てながら槍は水平に一回転、風を巻き起こした。


「・・・な、何してんだ?」


その行動は兵士の射程外の行動だった。

つまり目の前を槍が通り過ぎたに過ぎない。


「っけ、こけおどしかよ・・・って」


一人の兵士が体の異変に気付く。

それと同時に彼の装備していた鎧がはじけ飛んだ。

鎧の下の腹がへこむほどの強い衝撃が彼を襲う。


「な!?ごふぁ!?」


その兵士が後方へと吹き飛ぶと同時に、他の兵士も同様に吹き飛ぶか地面に転げた。


「何が起きた!?」


「普段なら牽制程度に使う技だがな、お前たち程度なら致死のダメージになる」


既に衝撃波に巻き込まれた数人兵士は地面に転がって動かない。

範囲外で助かった兵士達はその様子に戦々恐々となっていたが、

一人の兵士がこちらへの敵意を再度向ける。


「魔法部隊!一気に攻撃しろ、その間に仕掛ける!」


魔法か、確かに重装備相手ならば有効だろう。

回避能力は低く見えるだろうし、魔法は鎧を貫通するものが多い。


魔法使いたちの杖が一斉に光る。

こちらも盾を構えてある動作を取り、構えた。


「遠距離攻撃は重武装の近接にとってのアンチ、天敵。

 だからこそ対策を講じるのが必須になる」


後はタイミングを合わせるだけだ。


「一斉射、撃て!」


――――――――――――――――――――


目の前には重装備の男一人。

近づいた仲間を一撃で葬り去ったが、まあもう関係ない話だ。


魔法はどんな重装備でも関係なくダメージを与えられる。

魔法防御力を上げている可能性はあるが、

それだとしてもこれだけの攻撃魔法を耐えられるはずがない。


色とりどりの魔法の光が男に向かっていく。

魔法同士が干渉する火花のような光を上げ、その男に直撃していく。


「ははは!やっぱり回避できないよなぁ!」


目の前で魔法による爆炎が上がる。

それによって土が巻き上げられ、土煙となって周囲を包んだ。


「・・・どうでしょうか?」


「やったに決まってるだろ」


不安そうな魔法使いの一人を尻目に、兵士は強気にそう返した。

まだ晴れない煙を前にニヤニヤと見つめている。


「・・・魔法っていうのはな」


「!?」


煙の中から声が響く。

それと同時に煙が晴れていった。


目の前には盾を構えた男が無傷で立っている。

その盾と男の周辺は淡く光り、無数の光の玉のような物が浮いていた。


「・・・っち、魔法防御も高いってわけかよ」


しかし、何か様子がおかしい。

淡く光っているそれに魔法使いたちがおびえるような表情を見せていた。


「あ、あれはまさか」


その魔法使いの様子に兵士が動揺したように聞き返す。


「なんだ?何が起きてる?」


「に、逃げた方が!」


急ぎ踵を返し、魔法使いたちはその場から逃げようとするが。


「遅かったな」


男が盾を振るうと同時に、その淡く光っていたものが空中に霧散する。

霧散した光は空中で玉と混じり合い、再凝縮し槍の形となって空中に浮いていた。


「タンクが遠距離魔法へのカウンターとして使う、一種のカウンターだ」


無数に空中に浮いていた光の槍は。

魔法を放った者目掛けて飛んで行った。


「なんで騎士風情があんな上級魔法を!」


「知らないわよ!早く逃げな・・・きゃあ!」


槍が魔法使いたちを貫いていく。


「くそ、撤退だ!撤退するぞ!」


兵士がそういうと、残る動ける者たちが魔法使いに肩を貸して撤退を始めた。


「やれやれ、あの程度なら問題はないんだがな」


盾をひと撫でする。


集団戦法で大事なのは連携、個々に戦っては本領は発揮できない。

隊長を無駄に犠牲にしたあいつらには勝ち筋なんてなかっただろう。

読んで下さり、ありがとうございました。

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