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181話

このままヨハン達との戦闘を継続という可能性もあるが。

既に味方から攻撃されたあちら側の兵士の気力は皆無に等しかった。


「これじゃ戦闘にもならないと思うよ?」


八霧の意見に同意だ。

こちらとしても改めて戦闘開始という空気にもならない。


「・・・結果的に生き延びてしまったか」


抜いていた剣を地面に突き刺し、ヨハンは気力なくその場に立ち尽くす。

色々はあったが彼を殺す事態にならなくてほっとしている自分がいた。

彼にとっては不本意かも知れないが、な。


「ヨハンさん、降伏してくれるかな?」


「今更反抗しようとは考えない・・・兵士達の士気も既に無い」


私兵はともかく彼の親衛隊の士気も低い。

それだけ味方から攻撃を受けたという事がショックだったのだろう。


「ヨハンさんが捕虜になるなら親衛隊を含めた兵士は皆解放するよ」


「ああ・・・すまない」


武人と呼ばれたヨハンも流石に闘争心を挫かれたらしい。

覇気もなく八霧に連れられて行った。


「貴族の仲も複雑怪奇ってか」


「それだけ、内情が複雑なのですよトーマ様」


「うお!?」


横から声がしたと思ったらオリビアが立っていた。

気配もなく横に立っていたので驚いたぞ・・・。


「合流してからお話ししていませんでしたね」


「あ、ああ・・・そうだな」


色々と忙しくてセニアとオリビアとも話をしていなかったっけ。


「無事だったか?」


「ええ、情報収集も滞りなく。

 あの老人からもセニアが尋問していますので情報は後日」


「セニアで聞きだせるのか?」


拷問なんかはしないとは思っているが。

どちらかと言えばセニアは人から聞きだすような話術を持っているとは思えない。

むしろ八霧の方が適任じゃないか?


「トーマ様、セニアを見くびって貰っては困りますよ?

 ああ見えて強かな部分もあるんですから」


「ならいいんだが・・・あんまり想像できないな」


セニアの尋問姿は。

まあ、オリビアがそう言うのなら信じてみるか。


――――――――――――――――――――


攻略した要塞を後続の東側貴族に任せ、俺達は足早に次の防衛線へと目指す。

この行軍速度なら数日のうちに相手の第二防衛線まで迫れる計算だ。


その行軍中の馬車の一つにリルフェアは乗っていた。

その反対側の席にはヨハンが腰かけていた。


「・・・リルフェア様」


「まったく、生き方が下手だと苦労するわね?」


「申し訳ございません、その生き方しか知らぬので」


「・・・」


護衛としてリルフェアの隣にはシスとフィナが両隣に構えている。

トーマ達は外側の警護中、八霧は移動しながら次の攻略計画を練っていた。


「お見事な戦でした、リルフェア様」


「見事なのは八霧君よ、私は何も」


「・・・失礼ですが彼は一体?私が前に訪問した時にはおられなかった気がしたのですが」


ヨハンのその言葉を聞いて、リルフェアはああと頷いた。


「貴方の戦ったあの白銀の鎧を着た騎士の部下よ」


「竜騎士様、でいいのですか?彼は」


「本物のね」


ヨハンはそれを聞くと納得したように頷く。


「あの強さは本物でした、今なら彼が竜騎士と言われても納得します」


「そう」


ヨハンは少し考えるそぶりを見せると、自らの腰に下げていた剣に手を掛けた。

その様子を見たシスとフィナが構えるが。

鞘ごと腰から剣を外すと、リルフェアへと両手を使って差し出した。


「これより私はリルフェア様へと剣を捧げます」


「・・・」


無言のままリルフェアは剣を受け取る。

ここで剣を返せば騎士としての忠誠の儀は終わりなのだが。


「ヨハン、この剣・・・少し預けてくれないかしら?」


「え?」


鞘には貴族の紋章が彫られている。

このままでは、外身から見れば彼が西側貴族の関係者だと思われるだろう。


無論、その裏切ったという罪を背負いながら戦うというのも彼の考えだろうけど。

出来る事なら味方になったのだと思って欲しかった。


「腕のいい鍛冶師がいるの、鍛え直して返すわ」


――――――――――――――――――――


馬車の中には大型の馬車もある。

4匹の馬に引かれた、大型の客車を引っ張るものが。

その客車の内部には鍜治場が作られていた。


「え?剣を?」


セラエーノは先ほどまで作っていた剣の最終研磨を行っていた。

きめの細かいヤスリで剣先を研いでいたその手を止める。


「は、この剣を研いでほしいとのことで。

 後・・・鞘に彫られた紋章を変えて欲しいと」


「ふぅん、まあいいけど?」


兵士から剣を受け取るセラエーノ。

少しだけ鞘から剣を引き抜き刀身を見る。


「綺麗な剣ね、この世界で見た中だと結構な出来に入るわ。

 でも少しなまっているわね・・・使い過ぎかしら」


使い込んでいるのだろう。

研いだ跡も複数見れる、芯も多少だが痛んでいるし。


「本当に研いでいいの?これの持ち主結構大事にしてるみたいだけど」


「は・・・了承は取ったとのことです」


「ふぅん」


まあ・・・それならいいか。

下手にいじらないで基礎能力の強化と新品同様の仕上げ。

それに重心も変えておこう、減り具合を見ると体に合ってないみたいだし。


――――――――――――――――――――


次の拠点までは後一日と言ったところ。

既に我々が攻勢を仕掛けているという話は村々に伝わっていたようで。

リルフェアが姿を現すと村民は歓喜して我々を出迎えてくれた。


多少の食料や医療品、衣服を提供したいとの話もあったが。

元々その物資は僕達が全部持っている。

村の蓄えや状況を考えれば下手に貰うわけにもいかないだろう。


「八霧、偵察班の報告だぞ」


トーマさんが手に書類を持ってテントに入ってきた。

今は仮休憩中、流石に寝ないと身体は持たない。

ここの所全員が仮眠を取って先を急いでいたので、戦闘前の休憩と言ったところだ。


「どう?」


「大部隊で待ち構えている、訳じゃないな。

 最初と一緒で待ち構えているにしては数が少なすぎる」


「小を捨てて大を生かすつもりかな」


「決戦を覚悟して水際で防衛戦を仕掛ける、って事か?」


あり得る話ではあるけど。

だとしても、簡単に拠点を捨てすぎだ。


第一この先の拠点を奪還できれば首都はほぼ目の前。

最後の防衛線を張るとすれば首都にある防壁での戦闘になる。

・・・諸刃過ぎないか、余りにも。


「やっぱり違う、何か別の目的があるのかもしれない」


「別、か・・・例えばバルクとヘルザードの援軍が来るのが後少し。

 そのために時間稼ぎとして拠点に少数の兵を置いている、とかか?」


「それもあり得るけど、バルクもヘルザードも大した動きは見せてないし。

 そっちに関しては東側貴族たちが上手く押さえ込んでいてくれているから」


「そうか」


トーマさんの意見ももっともだ。

それに、援軍だからと大勢である必要はない。

・・・もしかしたら、まずい人物が既に援軍として到着しているかもしれない。


――――――――――――――――――――


ゼローム首都、防壁付近の兵の詰め所付近の広場。

夜だというのに松明の明かりのせいで全く暗くないその場所で。


顔に生気の無い私兵たちがユラリユラリと当てもなく歩いている。

その姿はまるでゾンビのようにも見える。


「やっぱり、大したことない器はこの程度か」


自身のロングヘアの先をくるくると弄りながら女は呟く。


「な、何をしたのですがティアマ殿」


「強化・・・だけど失敗、魔物の方がよっぽど頑丈だな。

 まあでも、普通の兵士よりは使えるか」


「は、はあ・・・?」


話しかけてきた警備隊長にベルのような物を渡す偽物のティアマ。

キョトンとする隊長。


「それを鳴らして命令すれば意のままに動く。

 死なずの兵が、敵陣に突入していく」


「え、えぇ?」


ふふ、と笑うと偽物のティアマはその場を去っていった。


「次はもっと頑丈な奴で実験しないとな」


不敵に笑いながら、夜の闇に消えていくその姿。

ベルを渡された男はただ立ち尽くすだけだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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