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18話

トーマが部屋を後にすると、二人が部屋に残った。

リルフェアは一息つくと。


「ふう・・・これで一安心ね。

 トーマさんが護衛なら、これ以上に安心できるものはないわ」


「あの、お母様。トーマ様は本当に・・・私の専属の騎士に?」


「ええ。もしかして、不満?」


首をブンブンと横に振るラティリーズ。

そんな娘の姿を見て、リルフェア笑っていた。


「ラティ、貴方。トーマさんが気に入ったのでしょう?」


「え?ええ・・・!?」


「隠さなくても分かるわ・・・貴方が抱き付くなんて、

 相当気に入っていないとしない行為だもの」


そういうと、リルフェアはラティリーズの頭を撫でた。

すると、ぽつぽつとだが、ラティリーズが語り始める。


「・・・私、あの人の・・・記憶を見たの。

 半分以上は、分からないことばかりだったけど・・・でも」


ラティリーズがリルフェアの顔を見る。


「・・・彼の周りは笑顔だったの。

 ・・・とても、温かい笑顔で、その人を見て。

 私も・・・それを感じたら・・・」


そう言う娘を見るリルフェアの顔は、にこやかだった。


「なるほどね・・・だから、抱きついたの?」


「う、うん・・・とても、安心できる人だな・・・って」


それを聞いたリルフェアはにやにやと笑っている。

リルフェアのその顔を見たラティリーズは顔を赤くしてうつむいた。

その頭を撫で続けるリルフェア。


「今まで、信頼できる人物なんて、ほとんどいなかったもんね」


私と、聖堂騎士のイグニス副団長以外とはほとんど会わないし、会話もしない。

そのイグニスも、畏まって話しており・・・友人とは言いづらい。

となると、彼女はたった一人で、友人も無く毎日を過ごしている。


それが生きづらいのは、私も知っている。

・・・私も、その当事者だからだ。


だから、この子に、信頼できる人物が出来たのはとてもうれしい。

彼の存在は、ラティリーズに必ずプラスになるだろう。


「さあ、正規の叙任式の準備をし直さないとね。

 さっきのは私的なものだから、今度はきちんとしないとね」


中断してしまった叙任式をしっかりとしておかないといけない。

騎士にとって叙任式は非常に重いものだ。

・・・きちんとしておかないと、彼にもマイナスになるだろう。


――――――――――――――――――――


部屋を出て、大広間に入ると・・・八霧(やぎり)神威(かむい)

後、7号が・・・7号?


「小さくなった・・・?」


20㎝前後まで縮んだ・・・神威によく似た短髪の人形が、神威に抱えられていた。


「ん・・・戻したら、こうなった」


ああ、そうだった。

ドールは、普段はあのサイズで格納されている。

神威が命令するか、力を入れることにより、神威と同サイズになる。

だが・・・。


「あ、トーマ様、どうでしたか?」


・・・縮んで、本当の人形のように見える7号が口を開いた。


「その状態でも喋れるのか・・・」


「うん、びっくり・・・」


当の神威も驚いていた。


「動けますし、喋れますよ」


そういうと、神威の手を離れ、自分でトコトコと歩き始めた。

しかし、人形が勝手に動いているように見えるので、

見る人によってはホラーか・・・俺は可愛いと思うが。


「ええと、トーマさん。話を戻すけど・・・どうだった?」


「ああ、そうだったな・・・実は」


――――――――――――――――――――


まず、聖堂騎士に叙任されたということ。

俺は、ラティリーズの専属騎士として周辺の警護をすることになる。


また、八霧と神威は俺の従者扱いで配属されるとのこと。

そうすることで、離れ離れになる心配は無くなると説明された。

・・・全員騎士扱いでは、何処に配属されるかも分からないとのことだった。


その事について、二人は頷いて了承した。

・・・よかった、俺に付いてきたくないと言われたらどうしようかと考えたが。


後は、ラティリーズの母リルフェアとの交渉で仲間の情報を手に入れられること。

そしてギルドの設立を許可されたことを話す。


「・・・え?ギルド?」


八霧がそう聞き返す。


「ああ、許可は取れたんだが・・・予算は出ないそうだ」


まあ、当然だろう。

正規に許可が下りただけ、有難いとは思うが。


「じゃあ、そのギルドの代表はトーマさん?」


「二人の異論がなければ、な」


八霧は一瞬動きが止まるが。


「うん!賛成だよ!それがいいよ」


そういって、諸手を上げて喜んでいた。

・・・そこまで喜ぶ事か?


「私も、賛成」


片手を上げてそう言う神威。

その顔は嬉しそうだった。


「うん、昔のヘルフレイムが帰ってくるってことだよね?」


「あの頃の・・・家族のような」


八霧と神威は手を取りあってそう言う。

本当にうれしそうだな・・・。


「・・・ああ、そうだな」


昔のヘルフレイムは・・・本当に家族同然のギルドだった。

それが、宵闇さんがいなくなると同時に・・・どんどん崩れて行った。

最後は名前ばかり残し、ノーマナーギルドにまで堕ちてしまった。

八霧と神威も・・・あの頃のギルドが大好きだったのだろう。

俺だってそうだ、本当の家族よりも、「家族」をしていたギルドだからな。


「戻そう、僕たちで」


そう言う八霧の目は、俺を見ていた。

その目は、輝いているようにも見える。

神威も同様に俺を見ていたが・・・。


・・・俺の考えは少し違った。


「戻すんじゃない・・・一から作るんだ、新しい、俺達のギルドを」


ヘルフレイムという名は捨てるつもりだ。


宵闇さんはもういない、だからこそ・・・作り直す。

一から俺達で作っていくんだ。

新しい、俺達のギルドを。


「・・・なるほど、それは面白そうだね!任せてよ、トーマさん」


「うん・・・皆で、また、作っていこう?」


二人とも、賛成してくれるようだ。

これ程嬉しい事も無い。


「それで・・・僕たちの拠点は何処になるの?」


ギルド拠点の事だろう。

・・・実はリルフェアから有難い話もあった。

予算は出せないが、その代わりに場所を提供するという話だ。

そして、その場所は・・・。


「このカテドラルの元・・・書庫だった場所だ」


――――――――――――――――――――


言われたとおりに、カテドラルを歩く。

入り口とはほぼ反対方向、カテドラルの奥の方。

近くには食堂があり、いい匂いが漂っている。

・・・そう言えば腹が減った、場所を確認したら食いに行くか。


食堂のを出てすぐ目の前の扉の前。

どうやらここが、その場所らしい。

木の板を金属で補強してある頑丈そうな扉・・・だが。

古びており、鉄の部分にも錆が目立つ。


鍵は掛かっていなかったが、長い間開けていないようだ。

取っ手にもうっすらと埃が積もっている。

手を掛けるが、開かない。


「・・・錆びついているか?」


こういう場合は、扉の上を下を何度か叩く。

扉に被っていた埃が宙に舞い、地面に錆が落ちた。


「げほ・・・んん・・・目に入った」


咳をすると、目をこする神威。


「悪い、大丈夫か?」


神威にハンカチを渡す。


「ん、無事・・・」


渡したハンカチで目元を拭っていた。

八霧は・・・腕で防御したみたいで、無事そうだ。


埃が落ち着くのを待って、扉の取っ手に手を掛ける。

今度は、開きそうだ。


ゴゴゴゴと、油をさしていない扉から音がする。

だが、ゆっくりと開きだした。

そして・・・目の前に広がる、光景。


「・・・こいつは」


開いた先の光景は。


・・・埃だらけの大図書館といった面持ちの広い空間だった。

これが。

こんなにでかい場所が・・・ギルド拠点になるのか?



読んで下さり、ありがとうございました。


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