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17話

リルフェアに呼ばれて小一時間。

ラティリーズが起きないのでいろいろと話をしていた。

六災竜の話、大陸を守った竜の話。

この世界の知識を色々とだ。


そして、俺達の状況も正直に話した。

・・・この人なら、信頼できると思った。


「・・・別の世界から来た?」


「ああ」


その話をするとリルフェアは顎に手を置き、何か考えている。

流石に突飛すぎる話か?

まあ、普通に考えれば信用されない話ではある。


「なるほど、竜騎士が急に現れた・・・それが転移してきたという事なら、辻褄が合うわね」


だが、信じてくれたようだ。

こちらとしても、助かる。


「前の世界でも竜騎士だったの?」


「ああ。だが・・・竜騎士だからって、こっちの世界と同じ竜騎士とは限らない。

 名前が一緒なだけで、同じ存在だとは言えないはずだ」


生まれた根本が違う。

同じ竜騎士という名前なだけだ。


「そうね・・・でも、貴方から感じる、その力は間違いなく竜騎士よ?

 竜の血族である、私には分かる」


「・・・そうか」


こっちの世界でも俺は竜騎士、という事なのだろう。

まあ・・・過去に存在した竜騎士とは、違う可能性は高いが。


だが、苦労してなった職業だ。

この世界でもその職だと聞けたのは嬉しかった。


――――――――――――――――――――


・・・こっちに来てから色々起こりすぎだ。

転移してから1日と経っていないというのに。


外を見ると、夕方近くになっていた。

そう言えば・・・腹が減ったな。

この話が終わり次第、八霧(やぎり)神威(かむい)を連れて、何か食べに行こう。


そう考えていると、リルフェアがベッドから立ち上がる。

そして、俺の前まで歩く。


「これから・・・娘をお願いね」


「ああ・・・口調は直した方がいいか?」


さっきから思っていたが、この人は元とは言え神様のようなものだ。

・・・他の人から見たら、無礼極まりないだろう。


「いいえ、そのままでいいわ。・・・堅苦しいのは苦手なのよ」


そういうと、窓から外を見た。

その目は少しさびしそうに見える


「世界は広いというのに、私達はこんな場所でしか暮らせない。

 もちろん、自分がこう生まれたという事は理解している覚悟も出来ている。

 けど・・・せめて、一緒に暮らしている人とは、仲良くしたいじゃない?」


それは、確かに。


ここにいる騎士も兵士も。

彼女らを神と思い、そう接している。

・・・リルフェアからすると、それはとても息苦しいのだろう。


「ああ、分かった。これから・・・よろしく」


そう言って、手を差しだした。

一瞬、リルフェアはポカンとした顔をしたが。


「ええ」


微笑むと、手を握り返し、握手してくる。

思った以上にフレンドリーな人物で良かった、そう思う。


――――――――――――――――――――


「・・・んぅ・・・?」


ベッドの上から声がする。

・・・どうやら、ラティリーズが起きたようだ。


眠気眼をこすり、こちらの顔とリルフェアを交互に見るラティリーズ。

そして、俺の顔をじっと見ると・・・はっとした顔をする。


「あ、ご・・・ごめんな、さい」


そして、そう言って頭を下げられた。

・・・なんで俺は謝られてるんだ?


「・・・自分のせいで倒れたと、そう思っているのラティ?」


「私の、誓約が下手だったから、迷惑を・・・」


そう言って、うつむいている。

・・・リルフェアと顔を合わせて苦笑いをする。


「身体は大丈夫か?」


出来るだけ、優しい声を出したつもりだったが。


「え、あ・・・はい!」


俺がそう声を掛けると、背筋を伸ばしてそう答えた。

顔は緊張しているようにも・・・怖がっているようにも見える。


「ふふ・・・大丈夫よラティ。

 彼は怒ってここまで来たわけじゃないわ、ね?」


・・・俺は目の前にリルフェアに呼ばれただけなんだが。

だが、そう取られてもおかしくない・・・か?


「ああ。俺は・・・呼ばれてきただけだ」


「そう、私に呼ばれてね。・・・まあ、思った以上の収穫だったわ」


そう言うと、満足そうに俺を見て頷いていた。

収穫・・・か。


それにしても、こう見ると。

本当にまだ若い、ただの少女に見える。

特別に生まれたとか、そう言う風には見えないな。


「そう、だったんですね・・・」


ほっとしたように胸を撫でおろしている。

・・・俺、そんな怖い顔に見えるのか?


「・・・それで、トーマさん。あなたはラティに仕えるの?」


そうだ、その話があったな。

気絶した一件ですっかり頭から離れていた。


「そのつもりだが・・・何か問題でもあったか?」


その一件で、白紙になったという可能性も無くはないだろう。

そうなったら、別の就職口を見つけて、日銭を稼ぐしかなくなるが。


「いいえ、ただ・・・」


「ただ?」


「貴方を、ラティ専属の騎士にしようかと思ってね」


・・・専属の騎士?

普通の騎士と何か違うのだろうか。


「見て、聞いて分かったと思うけど。

 聖堂騎士は全員、私達を神のように崇めているわ。

 ・・・それは国民も同じね」


「ああ」


俺は頷いた。


リーゼニアも、他の騎士も同様の態度だった。

ラティリーズは神だと。

唯一無二の存在だと。


「だから、貴方には・・・ラティの相談役になって欲しいのよ。

 この国の価値観に染まっていない貴方なら・・・心身ともに支えてくれるはず」


そう言うと、ラティリーズの頭を撫でる。


「・・・お母様?」


「それに、竜騎士である貴方が専属の騎士になれば、ラティにもいい影響があるはずよ。

 だから・・・頼まれてくれないかしら?」


そう言うと、俺に対して頭を下げてきた。


・・・女性が俺に頭を下げている。

ここで受けないのは、男が廃るというもの。


「・・・頭を上げてくれないか?」


そう言って、リルフェアの肩を叩いた。


「そこまでして頼まれるからには、俺も受けるつもりだ。

 だけど、すまないが・・・二つほど条件を飲んでくれないか?」


「条件?」


少々図々しいとも思ったが、あまり迷惑を掛ける内容でもない。

そう思い、条件を提示した。



一つはギルド仲間の情報。

ただ、捜索隊を編成するほどの事はしないで欲しいと言っておいた。

・・・さすがに、今のこの国の状況じゃ、捜索隊を編成してもらうのは気が引けた。


もう一つは俺を中心とした、ギルド設立の許可。

まだ、八霧(やぎり)神威(かむい)しかいないが、それでも・・・。

古参勢のための、受け皿を作っておきたかった。

この世界に来ているかもしれない、あいつらのための。



「・・・それは騎士団を作りたいという事?」


「いや、そこまで規模は大きくない。

 ・・・さっきも言った通り、離れ離れになったギルド員を迎える場所を作りたい」


リルフェアは少し考える。


「分かったわ。・・・予算は回せないけど、それでも大丈夫かしら?」


「ああ、それはこっちで何とかする」


隠し財産も、この袋に入っている。

まあ、何とかなるだろう。


最悪、八霧の錬金術でEOSの金貨を溶かして、金にして売る手もある。

・・・だが、EOSの金貨も有限。

非常用の手段として最後まで取っておきたいが。


「まあ、それくらいなら大丈夫よ。

 情報が集まり次第、貴方に渡すし、ギルドの方も問題ないでしょう」


「すまない・・・助かる」


そう言って頭を下げた。


「いいのよ、貴方という戦力は、とても頼りになるからね。

 ・・・それで、いいかしら、貴方を専属の騎士としても?」


「・・・」


俺に異存はない。

ラティリーズとリルフェアの前に片膝をついた。

そして頭を下げる。


「いい、ラティ?」


「は、はい・・・あの」


そう言えば・・・自己紹介をお互いにしていなかった。


「トーマ・・・と申します、ラティリーズ様」


「あ・・・ラティリーズです・・・ラティリーズ・リュージュ」


―――――――――――――――――――――


ベッドから立ち上がる音が聞こえる。

誰かの手が、俺の肩に触れる。


「私の騎士として・・・」


次に冷たい感触が肩に当たる。

短剣を、肩に当てたようだ。


「・・・どうか、私をお守りください・・・トーマ様」


・・・俺は。

目の前の、竜の少女を守る竜騎士となった。








読んで下さり、ありがとうございました。

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