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166話

軍団再編に関して、兵力については目途が立った。

全体を通してみればまだ足りないが、それでも十分に戦力は得たと見ていい。


「コンドアの冒険者が1000名弱、傭兵騎士が2000。

 残った聖堂騎士が200弱で・・・領主からの私兵で3000」


6000か、相当な数だ。

・・・だが。


(噂によれば、西側貴族の私兵の総数は3万以上と聞く。

 更に強引に徴兵でもすればそれ以上の数を用意してくる、か)


どちらにせよ戦力差は歴然だ。

質はともかくとして、数が足りないのは不安要素になるか。


そんな事を考えながら、俺は編成表を見ていた。

基本はそれぞれのグループの得意分野で纏められているようだな。


冒険者は偵察と邀撃部隊。

足の速さを利用してもらい、相手の情報収集とかく乱。

それに、適宜対応できるように指揮権を委任している。


聖堂騎士隊はリルフェアや将のような要人の警護と守備。

傭兵騎士はその周りを囲む様に編成。

これが主力部隊となる・・・が。


リルフェアらも戦場に出す気か?


「八霧、リルフェア達まで戦場に出すのか?

 しかも主力部隊といえば最前線で戦う可能性もあるだろ?」


「本人の意志だよ、自分達だけ後ろで構えていられないって。

 なにより・・・部隊数が少なすぎるからね、

 全戦力を投入しないと対抗すらできないし」


「リルフェアらを警護できる奴らもいなくなる、か。

 兵力差を考えればこれも当然か、やれやれ」


最低限警備の兵を残したとしても、裏を書かれて奇襲されれば最後だ。

ドール達で警護するという事も出来るが、確実に守れるというわけではない。


「まあ、手の内にいて貰った方が安全な場合もあるよ?

 なによりリルフェアさんを守るっていう事実が、

 兵士のやる気に直結すると思う」


「・・・緊張にならないといいがな」


大物を守るというのはそれだけでプレッシャーになる。

やる気やモチベーションに直結するだけならそれでいいのだが。


「だが、現状を考えれば手元にいてくれた方が安心なのも確かだ。

 下手に後方に残すよりは、一緒にいて貰った方が何かと都合がいいかもな」


「そうだね」


まあ、リルフェアの話はこれでいいとして。

もう一つ気がかりがある。


この資料には編成の事は載っているが、それを指揮する者の名前が載っていない。


「八霧、指揮官はどうするんだ?」


「あー・・・うん、一応色々考えてるんだけど。

 順当な所で行けば聖堂騎士ならイグニスさん、みたいに。

 元々リーダーをやっていた人をそれぞれの指揮官に置いておこうかと」


それには異論はない、むしろその方が色々と面倒が無くて済むだろう。


「・・・最高指揮官、つまり大将はどうするんだ?」


リルフェア、という事も考えられるが。

実際に統括して戦闘を指揮する奴は違う奴になるだろうな。


「それは考え中、下手な人には任せられないからね」


「確かに、そうだな」


順当ならイグニス辺りが有力か。

だが、聖堂騎士達の統括と二足の草鞋を履くことになるし、

出来れば他の人を立てておきたいが。


――――――――――――――――――――


仮だがまとめ上げた編成表をリルフェアに見せる。

玉座に座りながら、リルフェアはゆっくりと編成表を眺めている。


「なるほど、そうね」


顔色からすると納得しているように見えるが。

・・・何故俺を見てるんだ?


「トーマはどうするの?」


「「え?」」


俺と八霧の声が重なった。


「八霧君は参謀だから指揮官を兼務しないのは分かるけど、

 トーマは前線に出るでしょ?」


「いや、まあ・・・そのつもりだが」


「うっかりだったね、トーマさんを配属しておくべきだった」


そう言うと、八霧は編成表にペンで記入していく。

最上位の場所に。


「おい」


「大将、決定でいいんじゃない?」


「おいおい!?」


何故そうなる!?

普通、各々に確認してから代表者として大将を決めるべきだろ。

竜騎士と言うだけで軍を率いた実績は無い。


「なるほど・・・いい考えね八霧君」


何がいい考えなんだ、リルフェア・・・。

俺がそう思っていると、リルフェアは真面目な顔をしながら言葉を続けた。


「トーマ、竜騎士が軍の総大将になることは非常に重要な意味を持つわ。

 竜騎士がどういうものなのか知っているあなたなら察せるでしょうけど」


「いや、でもな・・・」


確かに、ゼロームからすれば竜騎士は特別な存在だ。

指揮官にでも置けば、士気は上がるだろうが。


「俺は軍を率いた事なんて無いぞ」


「別に指揮を執ってくれなんてことは言わないわ。

 貴方が総大将として・・・いえ、この軍団の団長として立って欲しいの」


「団長?」


大将、ではなくてか?


「竜騎士団、か」


八霧はそう呟いた。


――――――――――――――――――――


「かつて存在した竜騎士団は、竜騎士が率いた精鋭部隊。

 既に伝承でしか残っていない伝説の軍団よ」


リルフェアはそう語る。

伝説の軍団・・・。


「なるほど、過去にあったものにあやかると」


「ええ、こんな状況だもの。

 手駒があって使える策があるのなら、何でも使うわ」


「軍団の士気も上がるだろうし、異論はないよ僕は」


八霧も乗り気だが。

・・・軍の総大将に任命されそうな俺にとっては胃が痛い状況だ。


「・・・」


だが、無碍にも断れない状況。

俺も役に立ちたいという気持ちはあるし、切羽詰まっているのも知ってる。


だが、軍を指揮する自信が無い。

ならば参謀として有能な者が欲しいと思うのは当然だろう。


「その任命、受けてもいいが」


「本当?」


「八霧、お前が参謀役になれ。

 俺だけだと何かと不安だ」


俺よりも人を動かすことに関しては向いている。

それに、軍には参謀が必要だ。


「それは構わないよ、元々そのつもりだったからね」


そう言うと、八霧はリルフェアを見た。


「これで全部丸く収まった、かな?」


「そうね」


しかし・・・竜騎士団か。

名の通りなのだが、果たしてどう転ぶか。


――――――――――――――――――――


リルフェアが軍に関する責任者や指揮官を集めた。

先ほどの話をするために。


「皆、聞いて。

 今現在我々の置かれている状況はゼローム皇国の存亡に関わる、

 重大な局面に立たされている」


その言葉に、全員が静聴する。


「負ければ西側貴族がゼロームを掌握し、国自体が完全に変わってしまう。

 つまり我々が負ければ今まで積み上げてきたゼロームの歴史に終止符が打たれる」


貴族が国を乗っ取り、ゼロームという国自体の有り様が変わるという事だろう。

・・・やり方からして、その後のゼロームは滅びそうな気がするが。


「過去にも同じような事があったわ。

 ・・・そう、リウ・ジィの時代にあった、災竜によって滅ぼされそうになった過去。

 その時は竜騎士団の活躍によって数多の犠牲を払ってゼロームは存続した」


3000年以上前の話か。

その時に竜騎士団は活躍し・・・そして団が全滅するほどの犠牲を払い、

災竜達から勝利をもぎ取った。

文字通り、命を張って国を守ったという事だ。


「私はここで宣言するわ。

 竜騎士団の復活を」


その言葉を聞いた瞬間、場にどよめきが起こった。


「竜騎士団?」

「本当か?」

「俺達が竜騎士団になるって事か?」


ざわざわと、騒ぎ出す。

イグニスもその言葉を聞いて多少驚きの表情を見せていた。


「リルフェア様、本当ですか?

 伝説の軍団を復興すると?」


「ええ」


「・・・」


イグニスは目を瞑ると、何かを考えているように顔を伏せた。

すると、目を見開き軍の関係者各位を眺めながら。


「皆、よく聞いてくれ。

 竜騎士団は国を救うために過去に編成された軍団だ。

 つまり今我々が置かれている状況を打破するために、

 もう一度復活する・・・そう言う事ですよねリルフェア様」


そう言って、イグニスはちらりとリルフェアを見た。

見られたリルフェアは、コクリと頷く。


「ならば我々に断る選択肢は無いだろう?」


そう言いながら、関係者を見るイグニス。

しばらく沈黙が辺りを包んだが。

やがて一人、一人と静かに頷き始めた。


「そうだな・・・うん」


「俺達が竜騎士団の一員か」


「伝説の軍団に配属できるとはな」


・・・どうやら、反対の者はいないようだ。

これで俺が総大将になることはほぼ確定した。


胃が多少痛いが、まあ・・・するからには責任をもって努めよう。

どうなるかは、これから次第と言ったところだろう・・・な。


読んで下さり、ありがとうございました。

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