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161話

久しぶりに帰ってきた拠点。

そこは・・・前に見たものとは全く違う様相になっていた。


「・・・これ、本当に書庫だったの?」


リーゼニアがそう呟く。

確かに。


外壁は焦げ茶色、ゴーレムの皮膚のような岩で包まれている。

扉も機械式のように見えるごつい扉に変えられていた。


「認識、トーマ様本人と確認します」


「喋った!?」


リーゼニアとアルフォンが驚いている。

・・・いや、この時代背景で喋る扉は驚くだろうに。


「お帰りなさいませ」


扉は自動で開かれていく。

自動扉とは、今では懐かしい響きだな。


――――――――――――――――――――


八霧とリルフェア、ラティリーズは留守のようだった。

コンドアの街にて、大貴族の夫人と会談を行っているとの事だ。


「はぁー・・・」


胸をなでおろすティアマ。


「どうした?」


「いえ、いざお姉ちゃんに会うと思うと緊張したから。

 なんだか、緊張の糸が切れちゃって」


ああ、そうか。

そうだな緊張して当然か。


「リルフェア様もラティリーズ様もおられぬとは・・・」


アルフォンは至極残念そうにため息をついていた。


「陛下、残念なのは分かりますが。

 多くの兵の前でため息をつかれるのはおやめください」


イグニスがそう言うと、アルフォンは分かったと小声で言った。


「しかし、トーマ。

 あなたには驚かされてばかりだ」


「ん?」


「陛下に姫様、それにまさかティアマまで連れてくるとはな?」


あー・・・。

そうだな。


イグニスも怒っているようではないようだが、驚いているのだろう。

敵国の国王を連れてきたんだからな。


見れば他の聖堂騎士達もティアマを警戒するようにこちらを見ている。

しょうがないこととは言え、ティアマに同情する。


「とりあえず、待たせてもらうわ」


そんな事気にしないとばかりにティアマは拠点の脇にある椅子に座った。

動向を見ていた聖堂騎士達も、しばらくすると各々の仕事へと戻っていった。


しかし、このままだとティアマは浮いた存在になるな。

さっさとリルフェアと合わせて、彼女もここに打ち解けられるといいんだが。


――――――――――――――――――――


人が増えたことで拠点には様々な問題点が出ていた。

まず、寝る場所が殆ど確保できておらずほとんどの聖堂騎士は簡易ベッドで寝ていた。

それも床に大量に並べた状態で。


「神威、増築しないのか?」


「まだ手が回ってないだけ・・・拠点防衛が先だったから」


「なるほど」


後回しにした結果か。


「騎士の部屋も必要になってくる。

 この様子だと、リルフェアとラティの私室もなさそうだしな」


「あ・・・それは」


少し気まずそうにする神威。


「ごめんなさい、トーマの部屋を二人の部屋にしてた」


「俺の?」


まあ、別に構わないが・・・。

余ってた部屋もあったはずだが、そっちはどうしたのだろうか?


「他の部屋は倉庫になってる。

 トーマが帰ってくる予定が分からなかったから、その。

 仮の部屋として使って貰ってた」


「そうか」


倉庫にしてたか。

なら、しょうがないか。


これだけの聖堂騎士がいる、そいつらの食料や備品だけでも結構な量だ。

俺達の道具袋にしまっておくという事も方法としてはあっただろうが。

・・・それだと、いちいち取り出さなければいけないし面倒だ。


なにより、備品なんかは倉庫に保管しておいた方が誰でも持ちだせる。

個人で預かるより、そちらの方が利便性がいいだろう。


「じゃあ、俺は何処で寝ればいい?」


「・・・」


少し考えるそぶりを見せる神威。

すると、何かを閃いたように手を打った。


「私の部屋、使う?」


「・・・女の子の部屋には流石に泊まれんぞ?

 それに、神威の寝る場所が無くなるじゃないか」


それなら俺は野宿でも構わない。

神威を変な場所で眠らせるくらいなら、俺が寝た方がいい。


「一緒に寝る」


「・・・神威も女の子なんだからそう言う発言はしない方がいいぞ」


仕方ない、八霧の部屋を勝手に借りるか。

後で説明すれば怒りはしないだろう。


ああ、あとティアマの部屋はどうするか。

流石に聖堂騎士達と一緒に寝かせるわけにはいかないだろう。

あっちも気を遣ってしまうだろうし。


「まあ、ティアマは俺の部屋でいいか」


リルフェアとラティも出かけているし、今は人がいない。

敵国の王とはいえ、リルフェアの妹なんだ。

同じ部屋に泊まらせても問題はない、だろう。


――――――――――――――――――――


「しっかし、凄いなこりゃ」


ラクリアはライ、キーナと共に拠点を見学していた。

至る所に置いてあるゴーレム、掃除や食事の準備をするドールメイド。

ゴーレムは拠点防衛のために置いてあるようで、完全武装で端に並んでいた。


「あの神威という少女が全て作ったのか?」


遠くでトーマと話している小柄な少女を見るライ。


「御前試合出場者を軽くあしらうドールを作る少女、か」


俺を見ながらそう言うライ。

なんだ、喧嘩売ってんのか?


「油断しただけだ・・・って言いたいけどよ。

 あの強さは本物だぜ、間違いない」


下手を撃てば重傷、死んでいた可能性もある。

それくらい彼女たちは強かった。

あれで、試作型・・・未完成品だというのだ。

話にあったオリビアというドールはとんでもない強さなのだろうな。


「なあなあ、神威ちゃん。

 なんであんなに強いドールを配備してたんだ?」


「?」


「ラクリア、聞くならもっと正確に聞け」


「ああ、悪い」


俺に向かって謝ると、ラクリアは一息つき。


「別に怒ってるとかそう言う訳じゃなくてな。

 なんで不完全な試作品を警備に置いたのかなって。

 ああ、いや!ホントに襲われたことを怒ってるんじゃないからな!?」


慌てたようにそうフォローするラクリア。


「・・・ごめんなさい、ここにあるドールやゴーレムは拠点警備用に作ったものなの。

 あれは外部警備のために新造したものだから」


「もしかして、ぶっつけ本番で出したのか?」


俺がそう聞くと、首を横に振った。


「試運転はした、けど。

 実際に敵に会った時の挙動までは考慮してなかった」


「・・・いきなり襲われたのは俺達がそこそこの強さを持ってたからか?」


民間人や狩人程度には反応しないとも先ほど聞いていたが。


「なら、そこそこやる冒険者には反応しそうだな、それ」


「・・・反省してる、ごめんなさい」


調整の詰めが甘かったと謝る神威。

・・・被害が出ていないとはいえ、一歩間違えば大問題になり得ることだ。


「だが、神威がそういう点で抜けてるのは意外だ。

 いつもなら完全な状態で作るじゃないか?」


トーマがそう神威に声を掛けていた。


「全域警備にはドールの数が足りな過ぎて。

 今回の子達は、結構急いで作ったものだから」


「そうか、まあ・・・次が無ければいい。

 他の地域に出している奴らも呼び戻して調整しておいた方がいいんじゃないか?」


「うん、一度呼び戻して調整し直す」


「ならいい。ラクリア、ライ、それと後ろにいるキーナ。

 今回の件は神威に代わって俺が謝る、悪かったな」


「いいって、別に」


「トーマも言ったけど、次が無ければそれでいいわ・・・」


キーナもそう言っている。


「俺も、別に怒る事でもないと思う。

 驚きはしたが、珍しい体験だったからな」


「すまないな・・・3人とも」


トーマはそう言って、俺達に向かって一礼した。


読んで下さり、ありがとうございました。

今現在、現実の仕事が忙しくなりつつあるので、今後更新のペースが落ちるかも知れません。

出来るだけ更新は急ごうとは思いますが、ご了承ください。

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