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16話

ラティリーズの母、リルフェアに呼び出され。

赤髪の騎士に連れてこられた先。

その場所は、ラティリーズの寝室だった。


目の前で、安らかな寝息を立てている先ほどの少女。

その横に座り、様子を眺めている女性・・・。

白と黒のドレスを見に纏い、頭にはサークレットを付け、髪を留めている。

長く青白い髪は、ラティリーズとそっくりだ。


赤髪の騎士が片膝をつく。

俺も、釣られるように片膝をついた。


「・・・あら、貴方が噂の新米騎士ね?」


こちらを見る女性。

その瞳は、興味津々といった目だ。


「イグニス・モルダーン、ご命令通りトーマをお連れしました」


そういうと、赤髪の騎士が少し頭を下げる。


「ご苦労様」


「は・・・それでは、失礼いたします。

 ・・・粗相は起こすなよ?」


俺を一睨みすると、部屋を出て行った。


残った俺と、リルフェア。

こっちをじっと見ていたリルフェアは口を開いた。


「貴方、不思議な人ね」


「・・・?」


「その兜越しにでもわかる・・・貴方の目は、

 とても不思議な、そうね、竜の血族みたいな目かしら?」


「竜の血族・・・?」


自分の兜を取る。

・・・どういうことだ?


俺の職は竜騎士・・・竜と共に戦う職。

EOSでは死にスキルだった。


効果は。


・絆を結んだ竜が近くにいる場合、自分の全ステータス向上

・仲間の竜のステータス向上

・自分を中心とした範囲の仲間の竜のHP、MPの自動回復、状態異常付加確率軽減

・竜の仲間にしやすさ+


だが、EOSでは、仲間に出来る竜の仲間化の実装がまだだった。

要するに、竜が仲間に出来ない現状のEOSにとっては。

「竜騎士」は死にスキルである。


俺も実装を心待ちにしていた部分もあったが。

実装するといって、1年以上経つ。

半ばあきらめていた・・・が。


もしかして、この世界では有効になっているのか?

それが、竜の血族のように見えたと、そう言う話か?


「・・・あら」


俺の顔を見ると、傍に寄ってきて・・・頬に手が触れた。

冷たい感触が頬に伝わってくる。


「なるほど・・・貴方は竜騎士ね」


「!」


何故分かった?

いや、それよりも。

この世界には、竜騎士が存在しているのか?


「まさか、伝説の存在が目の前にいるとはね・・・」


「伝説?」


俺はそう聞き返していた。

伝説の存在?

一体・・・どういうことだ?


――――――――――――――――――――


「昔々、悪い竜と大陸を守ろうとした竜が・・・戦ったわ。

 結果は大陸を守った竜が勝ったけど、仲間の半数は失われた。

 そして、その生き残りの末裔が・・・私とラティリーズよ」


・・・じゃあ、目の前の彼女らは竜・・・なのか?


「そして、竜騎士はその戦いに参加した、人間の中の英雄達。

 その力で竜達を大いに助けたと伝わっているわ」


昔、この世界には竜騎士がいた、のか。

・・・だが、その語り方と先ほどの伝説という単語。

現在では、存在していないという言い方に聞こえる。


「これも・・・巡り合わせね」


そう言うと、ベッドに座っていたリルフェアが立ち上がる。

立っている俺を真っすぐに見つめて。


「貴方に触れた瞬間、竜騎士だとすぐに分かった。

 ラティリーズが倒れたのも、恐らく・・・それが原因ね」


「・・・そうなのか?」


「ええ」


頭を掻く。

俺のせいで倒れてしまったという事だ。

無意識とはいえ、してしまったのは事実。

自分の能力のせいで倒れたと聞いては、責任を取らないわけにはいかない。


そう思った俺は、その場に座り・・・土下座をした。


「すまなかった・・・!」


「え?なんで・・・謝るのかしら?」


「無意識とはいえ、俺のせいで娘さんを気絶させたのは事実だ」


それも女性、子供だ。

謝らなければ気が済まなかった。


「・・・そう、貴方は」


その声が聞こえると同時に、肩を叩かれた。


「娘は、貴方に抱きつきながら気絶していたと聞いたけど。

 ・・・その理由、分かった気がするわ」


そう言うと、俺の手を取って、立ち上がらせた。

俺を覗くその顔は、とても優しい顔をしていた。


「貴方が安心できる存在だと、そう感じたのね」


「俺を・・・?」


「触れた瞬間、竜としての本能で貴方が・・・竜騎士だと感じた。

 そして、ラティリーズ自身があなたを信頼できる存在だと、そう思ったんだわ」


そう言うと、寝ている自分の娘を見る。

その目は、母親の目・・・とでもいうような慈愛に満ちていた。


「・・・だが、俺とラティリーズは会ったばかりだぞ?抱きつかれるような・・・」


会話だってしていない。

ましてや抱き付かれるような仲ではない。


「そうね、それは多分・・・お互いが気絶した理由に繋がるわ」


そうだ、お互いに気絶した。

あの時は、何が起きたか分からなかった。


ラティリーズの記憶と感情が一気に流れ込んできた。

・・・今となっては、一瞬しか映らなかった光景なのでほとんど覚えていないが・・・。

リルフェアにはその理由が分かるのだろうか?


「恐らく、貴方とラティリーズは・・・「竜の誓い」を交わしたのだと思う」


「竜の、誓い?」


初めて聞く単語だった。


――――――――――――――――――――


リルフェアが語った、その「竜の誓い」。


昔、竜騎士と呼ばれていた人間は自分の主である竜を守ろうと、命を賭した。

その能力で主を助け、自らも六災竜と戦った。

だが、人間の中でも英雄と呼ばれる竜騎士でも・・・六災竜の前では無力に等しかった。


彼らは主たる竜から一時的に力を借り、彼らに対抗した。

だが、それは・・・彼らの命を削る諸刃の剣。

人間の体に竜の力を宿すという、過剰な力の奔流。

人体を破壊しながら、彼らは自らの腕を振るい続けた。


やがて竜騎士は一人、また一人と失われていった。


最終決戦の前には、たった一人になっていた竜騎士。

リウ・ジィの伴侶とも呼ばれたその男。

彼女は彼を失うことを恐れ、ある誓約を結ぶ。


それが「竜の誓い」。

竜の力を与えると言うところは、他の竜騎士と同じ。

だが、その力を制御できるよう、自らの知識・・・要するに記憶を同時に与えた。


人間に古代の竜の知識を与えるのはご法度・・・知識の悪用を防ぐためだ。

古来から、人間は知識を持つとろくなことをしない。

他の竜はそう考え、力を与えても、知識を与えることはしなかった。


彼女は彼を・・・隷属化することで、彼を守った。

自分のものにすることで、他の竜からの報復を防いだともいえる。


つまり、力と知識を与える代わりに・・・自身に隷属化させる。

それが「竜の誓い」という事だ。


――――――――――――――――――――


「ちょっと待て、その場合・・・

 俺はラティリーズの奴隷になったって事か?」


そんな実感はない。

俺の身体には何の異変も無い。

・・・力を貰った感覚も無いのだが。


「ええ、だから・・・中途半端に終わったと思うの」


「?」


中途半端?


「騎士の誓いをラティリーズは行おうとした。

 ・・・そして、竜騎士である貴方に、忠誠を誓わせようとした。

 つまり、竜騎士を()()()()()にしよう、そう聞こえないかしら?」


・・・確かに。

忠誠を誓わせようとするのは自分のものにするようなものだろう。


「ラティリーズはリウ・ジィの末裔。

 同じような行為をすれば、同じような状況になると思わないかしら?」


なるほど。

忠誠を誓う=隷属化と考えれば、その理屈も納得がいく。


知識を与えるというのは、記憶と感情が流れてきた・・・あれに繋がる。

ほとんど一瞬で、俺が記憶できなかったのは、中途半端な誓約だったから。

そう考えると納得も出来るな・・・。


「倒れる前に、貴方の記憶や感情も・・・恐らくこの子に流れた。

 だから、お互いに情報が中途半端に流れた結果・・・気絶した」


「なるほど、俺が気絶した理由は何となくわかった・・・」


急に色々な情報が頭を駆け巡った結果、頭がパンクする前に気絶したのだろう。

脳の保護機能とでもいうのだろうか?


「それに、貴方の事を・・・理解できたから。

 娘は抱き付いて気絶したんだと思うわ」


そういうと、寝ているラティリーズの頭を撫でた。


「この子・・・意外に抱きつき魔だからね」


抱きつき魔・・・。


「ええ、安心できる相手には、抱きつく癖があるわ

 貴方が信頼できる人間だという事は、話して分かったし。

 ふふ、ラティの見立てに間違いはないわね」


そう言って、微笑んで俺を見るリルフェア。

・・・信頼された、か。


読んで下さり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぶっちゃけ自分たちが雑魚で何もできず頼み事をする立場にありながら上から目線なのも、幾ら拠点や情報を欲し交渉もせず従う奴も胡散臭いよな。
2022/01/13 19:56 退会済み
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