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150話

トーマによって痛手を受けた炎の剣の会。

そして屋敷を襲おうとし、首領を失った盗賊団。

その二組は手を組みコンドアの外れで、窃盗行為や強盗を繰り返していた。


「・・・どうだ?」


偵察から戻ってきたごろつきがバンドックの前で頭を一度下げる。


「へい、確かに・・・金を持ってそうな女が馬車に乗ってましたぜ」


「そうか」


バンドックが剣を拾い上げる。


「大きく稼げそうな奴が来たな」


「・・・本当に襲うのか?護衛も付いているぞ」


「五月蠅い!明日生きるために金が必要なんだよ!」


「十分稼いだだろう、ここらで幕を引いた方がいい。

 さっさと拠点を移して足取りを消さなければ」


興奮するバンドックに対して、男は冷静にそう返した。

彼は参謀役として盗賊団を導いていた。


「足りないんだよ、全然」


「欲を掻けば痛手を負うぞ」


ただでさえ、目立つ行為を繰り返している。

コンドアの街からも目を付けられ始めているし、ここらで切り上げないと。


「俺に指図するな!ボロボロだったお前らを拾ってやったのは俺だぞ!」


「だからこそ、こうやって諫めて―――」


バンドックの剣が男の横を通り過ぎた。

そして、拠点の壁に突き刺さる。


「・・・もう一度言うぞ、指図するんじゃねぇ!!」


「ぐ・・・この」


思わず拳を握るが。

目の前にいる男は、この団の団長。

部下である自分が強く言える立場にはない。


「さっさと支度しろ、いいな!」


そういうと、バンドックは不機嫌そうに奥の部屋へと消えて行った。

・・・いつもこうだ。

強盗や盗賊行為に走る時は、ヒステリーを起こしたのかと思うほど声を荒らげる。


「・・・勘当されたことが、そこまでショックだったのか」


その憂さを晴らすようにこんな犯罪行為を繰り返している。

・・・それに便乗する我々も同罪だがな。


――――――――――――――――――――


彼らの狙う馬車は豪華に飾られた貴族用ともとれる馬車。

その馬車が街の外れまで移動したその時。


「・・・待て」


護衛の隊長が片手を上げ、馬車を止めるように促す。

御者がそれに答え馬車を制止させると。

辺りはしんと、静まり返った。


周りにいる兵士も、何かを感じたのか辺りを警戒している。


「・・・」


耳を澄ませ、辺りを警戒する隊長。

近くには複数の廃墟が点在しているが、そこからは人の気配は無い。


「どうしたのですか、隊長?」


馬車の中から壮年の女性の顔が外を覗く。

隊長は数度首を横に振る。


「気のせい、です」


「・・・そうかしらね、あなたの勘は当たるから」


女性がそう言うと同時に。

廃墟であるはずの家から、火の手が上がり始めた。


「何・・・?」


一瞬で燃え盛る家々。

ただの火事じゃない、これは。


「ひゃっはぁ!!」


男の野太い声がそう響く。

炎の中から複数の男の影が真っすぐに馬車目掛けて飛び出して来た。


「金目の物を置いてけやぁ!!」


「強盗か!」


斧を振りかぶったごろつきをレイピアで突く隊長。


「ぐぇ・・・」


潰れたカエルのような声を響かせて、その場に崩れる男。


「っち、賊共が」


隊長が周りを見ると、既に護衛の兵士がごろつきと交戦を始めていた。

馬車の中で警備をしていた副隊長の女性も外に飛び出した。


「後方に馬車を移動させて、なんとしてもフレイア様をお守りするのよ」


「は!」


近づくごろつきを斬りながら、一部の兵士と副隊長がゆっくりと後ろへ後退していく。

馬車もそれに続くように後退を始めた。


――――――――――――――――――――


馬車が燃え盛る家々を離れ、広間まで後退したその時。

見計らったように、藪の中から男達が飛び出して来た。


「貰ったぁ!!」


斧や棍棒を振りかぶった男達が一斉に飛び出してくるが。

馬車にたどり着く前に、何者かによってその男達が吹き飛ばされた。


「ぐぁぁ!?」


「なんだぁ!?」


何者かが変形させた腕を戻す。

一瞬のうちに鞭に変形させ、攻撃が終わると同時に腕を戻した。

相手からすれば、何が起きたか分からない状態だろう。


「ひ、ひぃぃ!」


目の前で仲間が一瞬にして全滅した。

後方にいた男達は怖気づいて、それ以上前進するのを止めた。


そして、自分の目の前に立っている二人組を見た。

・・・それはメイドの格好をした、少女だった。


――――――――――――――――――――


目の前に起きた事に男達はただただ茫然と突っ立っていたが。


「・・・来ないの?」


シスがそう聞くと、隣にいたフィナが痺れを切らしたのか。


「なら、私から行くよ?」


そう言って、男達へと走っていく。


フィナが軽い足取りで男達の方へと跳躍する。

腕をボウガンに変形させるが。

その身体を何かが捉えて地面へと叩き落した。


「?」


綺麗に受け身を取ると、フィナは上を見上げた。

自分を叩き落した何かを。


「っち、無傷かよ」


槍らしきものが、フィナの近くに転がる。

どうやら投擲用の槍を体に当ててきたらしい。

その衝撃で、身体を落としたようだ。


「まあいい、次は殺す」


片手に槍を持ち、フィナに照準を定める男。

他の奴と違い鎧は豪華な装飾を施され、

下げている剣も立派な物だ。


「戦場でメイドとはな・・・部下は油断してやられたようだが。

 俺は全力でお前を倒させ―――」


瞬間・・・男、バンドックの身体が後方へと吹き飛んだ。

藪の中へと吹き飛ぶと、地面にバウンドして後方の木へとぶつかった。


「ごふ・・・!?」


「フィナに怪我させようとした、許さない」


顔に表情は現れないが、その声は怒気をはらんでいた。

シスは指を鳴らしながらバンドックに詰め寄っていく。


「な、なんだ、この光景は」


呆気に取られている副隊長がそう呟く。

目の前で、たった二人のメイド服姿の女性が大の男達を蹂躙しているのだ。

当然といえば当然の反応だった。


「副隊長、どうしましょうか・・・?」


不安そうな兵士がそう聞いてくる。


「・・・静観するほかない、この状況では」


次々と襲い掛かろうとするごろつきと炎の剣の会の騎士をなぎ倒すメイド。

二人の連携は見事なもので、死角を埋め合いながら戦っていた。


「全滅するぞ・・・これは」


副隊長が呟く通り。

炎の剣の会と盗賊団の生き残りは、1時間としないうちに殲滅された。


―――――――――――――――――――――


燃えた家が放つ焦げた臭いが辺りを包む。

戦いが終わり、護衛達が消火活動を終えたが。

残ったのは、灰と煤だけ、郊外とは言え結構な被害だろう。


「首領はどうなりました?」


壮年の女性が馬車の中からそう聞く。


「それが・・・逃げられました」


ごたごたの内に逃げ出したようだ・・・逃げ足が速い。

とりあえず生き残ったごろつきと騎士達を縛り上げて、

壮年の女性の前へと連行した。


流石にあきらめたのか、

或いは二人組のメイドに完膚なきまで叩きのめされたためか。

男達は神妙な面持ちで女性の声を待っていた。


「・・・お前達、この人が誰か分かって襲ったのか?」


「・・・」


「分からんだろうな・・・じゃなきゃ襲いはしない」


隊長は、一つ言葉を区切ると男達を眺めた。


「この方はフォークス卿の御夫人、フレイア・マクナー様だ!

 フォークス卿はお前達も知っているだろう、この地を収める大貴族の一人だ!」


壮年の女性はフォークス卿の夫人。

コンドアの街へは、ガイゼンに会いに出向いていた所だった。


出向く理由は、リルフェアとの会談の件で。

事の次第を聞きに来たところを襲われたのだった。



読んで下さり、ありがとうございました。

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