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14話

ゲートを潜ると、眩い光が目を襲った。

思わず目を瞑る。

だが、その光も一瞬で、次に目を開けた時には。


目の前の風景はガラリと変わっていた。


――――――――――――――――――――


大聖堂(カテドラル)

そう聞いていた場所が、前に広がっている。


目の前に広がっている、その構造物。

大きさは見上げると首が痛くなるほどの大型の教会・・・。

周りにはステンドグラスが張られ、

巨大な十字架が教会の一番高い部分にそびえ立っている。


だが、一番気になったのは、教会のあちこちに設置されている、竜の石像だ。

なぜ、教会に竜が・・・?


「ここはゼローム皇国の聖地「リウ・ジィ・アン」。

 今目の前にあるカテドラルを中心に栄えた、場所です。

 首都の一部になっていますが・・・首都以上に発展しています」


リーゼニアがそう説明してくれる。


「カテドラルを中心に、八方向に大型の道が作られ、

 その周りに、住居や商店などが点在していますね」


「本当に、街の中心なんだな」


「ええ、普段なら、聖堂騎士か王族、関係者しかここまで近づけません」


そういうと、リーゼニアがある場所を指さす。

この場所を囲む様に背の低い壁のようなものが張り巡らされいた。

それに、その周りには聖堂騎士が等間隔で並んでいた。


「あの壁から内部は立ち入り禁止です。

 このゲートだって、聖堂騎士専用のものですし」


「だから、そのまま入れたんだ」


八霧(やぎり)がそう言うと、隣の聖堂騎士が頷いた。


「ああ、通常の転移魔法では弾かれるよう、妨害している。

 それでも・・・それを掻い潜り侵入する者がいる」


それを聞いて一つ思う。


・・・ここは、守りには適さない場所だ。

四方を街に囲まれている。

スパイや間者が入り込みやすいだろうし隠れやすい。


「・・・守りたいのなら、もっと、堅固な場所にすべきじゃないのか?」


「カテドラルは我々にとっての聖地。聖地から神が去れば、国の崩壊を意味する」


「ゆえに・・・早々と居を変えることが出来ない。・・・分かってくれ」


・・・なるほど、そう言う事情があるか。

つまり、ここからの移動は不可能。


だが、それは・・・ここから出られないという事か?

その、ラティリーズいう人は・・・。


「籠の中の鳥・・・」


ここに捕らえられているという事に近い。

・・・そう考えると、神というものは・・・息苦しそうだ。


「これから、ラティリーズ様に会いに行ってもらう・・・謁見に近い。

 まあ、新任する者は皆、通る道だ・・・粗相のないようにな」


「あ、ああ・・・」


謁見・・・か。

人生で初めての出来事だ。

粗相がないように、気を付けないとな。


――――――――――――――――――――


「・・・トーマ様、ここまでですね」


「リーゼニア姫?」


リーゼニアと、騎士アレン、助けた兵士がこちらを見ている。


「助けていただき、ありがとうございました」


「貴方には、助けられてばかりだったな・・・礼を言う」


「と、トーマ様!御恩は一生忘れません!」


三者三様のお礼の言葉を言われた。


「あ、ああ・・・だが、ここまで?」


言って気づいた。

無事だったから、その報告に行くのか。


じゃあ・・・俺たちとはここまでか。

もう、会うことも無いかもしれないな・・・相手は王族だ。


「ああ・・・また会う事があれば・・・その時はよろしくな」


アレンと握手する。

兵士にも。

そして、最後にリーゼニアと握手をする。


「・・・トーマ様、どうかラティリーズ様をお願いします。

 貴方たちなら・・・必ず役に立てると、そう思います」


「出来るだけはする、八霧も神威もそのつもりだ」


後ろの二人が頷く。


「・・・はい、トーマ様もお元気で」


「ああ」


3人は、複数の聖堂騎士と共に、カテドラルから離れて行った。

王城に向かうのだろう。


「・・・王族か、もう会わないかもね?」


「俺もそう思う」


・・・まあ、せっかく知り合えたのに、会えなくなるのは寂しいが。

それも、めぐり合わせ、か。


――――――――――――――――――――


謁見に向かうため、カテドラルの正面扉から内部へと入る。

中は・・・思ったような教会とは違う形になっていた。


要塞のような面持ちだ。

壁は鉄で補強されているし、扉も鉄門。

・・・外からステンドグラスに見えた場所にも、魔法で結界を張っているようだ。


「・・・凄いね」


「ああ、まるで要塞・・・テネスに見せたら喜びそうな建造物だな」


テネスは、変わった建造物が好きだった。

ギルド拠点の構造も彼が考えたものだ。

お陰で、迷子になるメンバーが続出した。

セラエーノなんて、迷子になってテネスに食いかかった記憶がある。

懐かしい・・・もう、何年も前の話だ。


謁見の間に到着するまで、5つほどの門をくぐる。

その際にも、傍らには聖堂騎士が左右に立って警備していた。

そして、最後と思わしき・・・赤い竜の装飾が施された門が開かれる。


――――――――――――――――――――


赤い扉の先には、足元の絨毯が一つの椅子まで続いている広い広間。

装飾された赤い椅子が一つ。

竜をかたどった、肘掛け。

長く上に伸びた背もたれの上にも、一匹の竜がこちらを覗くように彫刻されている。

玉座だろうか・・・?

そして、それを守るように聖堂騎士が左右に5人ずつ、

鞘に入れたままの剣を両手で地面に立てていた。


そしてそれに座る人物。

白い豪奢な祭服を着て、頭にはミトラを被っている。

・・・法王みたいな恰好、といえばわかりやすいか。


しかし、気になったのはその格好じゃない。

そこに座る女性・・・いや、女の子だ。


青白く長い髪をミトラから覗かせる目の前の少女。

顔からは幼さが抜けきっていない・・・神威と同じくらいの年齢に見える。

驚きのあまり、少女の顔をぼーっと見ていると。


「ラティリーズ様の御前である、頭が高い!」


少女の傍に立つ聖堂騎士・・・ラティリーズの隣に立っていた赤髪の女性が俺にそう言い放った。

彼女の鎧は他の聖堂騎士とは違い、装飾が施されている。

兜も付けていない・・・恐らく上級騎士か周りに

立っている聖堂騎士の隊長だろうか?


「・・・」


頭を下げ、片膝をつく。

それに続くように、後ろの八霧と神威(かむい)も頭を下げながら片膝をついた。

7号もその様子を見て、多少慌てて同じ動作をした。


赤髪の騎士はそれを見て頷く。


「・・・ラティリーズ様、新任の者たちです。忠誠宣言を」


「・・・ん」


コクリと頷き、立ち上がる。

その様子を全員が顔を上げて見ていた。

立ち上がったその姿は、やはり神威と同年代位の少女に見える。


「・・・聖堂、騎士として・・・」


祈るようなポーズで、こちらに近づいて来る。

そして、合わせた両手から放たれる光。


「国に・・・天子に、忠誠を誓う・・・ことを」


光が強くなると、少女の身体は目の前まで近づいていた。

その身体は、とても・・・儚く見えた。

その少女は、光る手を俺の目の前に差し出す。


「・・・手を・・・」


多少躊躇ったが、俺は右手を差し出す。


その手が、少女の手を触れた。

その瞬間、俺の目の前で何かが弾けた。


彼女の記憶が頭に流れてくる。

なんだ・・・これは・・・?

彼女の半生が、走馬灯のように頭を駆け巡る。


目の前の彼女も、驚いたような表情で俺の顔を見ていた。

だが・・・次の瞬間には。

・・・彼女は俺に抱きついて来て・・・そのまま目を閉じていた。


「・・・トーマさん?・・・トーマさん!?」


八霧の声が遠く聞こえる。

遠く・・・近い・・・のにか?

そういえば・・・意識が・・・。




スキル・・・『竜騎士』発ど―――。


薄れゆく意識の中で、機械音のような女性の声が頭に響いた・・・気がした。

だが、完全に聞こえる前に、俺の意識がプツリと途絶えた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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