13話
まあ、魔王のことは置いておくとして。
要するに、ヘルザード帝国はラティリーズをお持ち帰りにしたいというのは分かった。
決戦で勝利した以上、その行動が激しくなるのは明白だ。
「・・・我々聖堂騎士団が前線に向かわねばならないことも、
君達を雇うことに関係している」
「つまり、ラティリーズ様の守りが手薄になるから、俺等で補填するって事か?」
ああ、と頷いた。
そうか・・・あれほど出所不明を疑わしく思ったのはそういう事か。
俺等がスパイなら、これほど恵まれた場所に配備されることはないだろう。
逆に疑ってかからない方が可笑しい。
「まあ・・・姫様がお前たちを信頼すると言ったのだ。
我らも、お前達を信じることにした」
聖堂騎士は全員頷いた。
・・・リーゼニアには感謝しないとな。
――――――――――――――――――――
「・・・ところで、君の顔を見せてもらえないか?」
聖堂騎士の一人が唐突にそう言った。
・・・俺の顔?
顔を触ろうとすると、兜に手が当たる。
そうか兜をつけっぱなしだから、素顔なんて見えないよな。
「これから一緒に、ラティリーズ様をお守りするのだ。
一度、顔を見ておきたいと思ってな」
そういうと、目の前の聖堂騎士もバケツのような兜を取った。
金髪、ベリーショートの男性だ。
俺も、その礼儀には答えないとな。
兜を外し、脇に抱える。
こっちに来てからは初めて取ったな・・・。
「これでいいか?」
「うむ・・・黒い髪・・・か、東の民族には多い髪色と聞くが」
「この付近では珍しい髪色だ・・・出身は何処だ?」
「あー・・・それはな」
何と言えばいいか。
素直に話しても、信じられない気がするな。
「僕たちは東の国・・・エオスから来ました」
そう考えていると、八霧が口を開いた
・・・正直に答えるのか。
「エオス?聞いたことが無いな・・・」
「それはそうですよ、東の・・・とても小さい国ですから」
八霧がそう言うと、聖堂騎士は何やら考えていたが。
「そうか、知らなくてすまない。・・・この場所には旅できたのか?」
「そんなところですね。何分小さい国ですので、諸国を回ってみようかと。
ね、トーマさん」
八霧がそう言って、俺にウインクを送る。
合わせろって事か。
「あ、ああ・・・そうだな」
「そうか・・・旅か、俺もしたいものだな・・・」
そういうと、納得してくれたようだ。
――――――――――――――――――――
「よく、誤魔化せたな?」
八霧に耳打ちをする。
それを聞いた八霧はにこりと笑うと。
「ねえ、トーマさん。南アラスっていうアフリカの国知ってる?」
「いや・・・知らん」
そんな国聞いたことは無いが。
・・・あるのか?
「そうだよね、無いんだから知らなくて当然だよ」
無い?
「・・・情報化社会って呼ばれてた時代のトーマさんだって、
そんな国ないだろ、なんて言わなかったでしょ?」
「ああ」
「世界中を探してみれば、そんな国があるかもしれない。
自分が知らないだけかもしれない・・・そう思うと、強く否定できないよね?」
なるほど、考えたな・・・。
「その中に、僕らの故郷の「エオス」があると言うだけ。
誰も知らない、とても小さな国がね?」
・・・ニヤリと笑うと、親指を立てた。
策士だな、本当に。
だが、助かった。
答えられなかったら、また疑われていた可能性がある。
・・・そうなったら堂々巡りだ。
「ああ、助かったよ八霧」
俺は頭を掻いた。
こいつは本当に頭が切れる。
・・・俺よりも、回転が速いな。
「だが、なんでエオスだ?」
「EOS、エオス・・・とも呼べるよね?僕は嘘は言ったつもりはないよ」
・・・なるほど。
確かに嘘ではないな。
「小さい国ではなかったけどな」
それを聞いた八霧は笑っていた。
――――――――――――――――――――
「ところでさ・・・そっちにいる、黒いマントの子は?」
俺の後ろについてきていた黒いマントの少女。
フードをしっかり被っているので、顔も見えない。
・・・そういえば、まだ説明していなかったな。
「・・・神威、こっちに来てくれ」
一連の話に興味が無かったのか、神威は近くの木に寄りかかっていた。
手招きすると、こちらに走り寄ってきた。
「トーマさん、何?」
「7号の件だ」
「7号・・・!どこに、いるの?」
思い出したかのように、辺りを見渡す。
そして、黒いマントの子に目が止まる。
「・・・7号?」
その子に近づくと、黒いフードを外す神威。
そのフードの中には、短髪になった7号の姿が見えた。
「あ・・・あの、マスター」
おどおどと、話す7号。
それを聞いた神威は。
驚きのあまり、固まっていた。
しかし、はっと気づくと。
「・・・7号、自分で・・・喋った?」
「は、はい・・・自分で、話せるようになりました」
・・・神威は7号の手を両手で握る。
そして、強く握りしめた。
「私の夢・・・遂に」
手を離すと、抱きしめた。
「・・・夢・・・?」
「そう、夢。自分で考え行動する・・・個人という存在のドール」
――――――――――――――――――――
興奮気味の神威を遠くから見守っていた。
自分の悲願が叶ったんだ、興奮もするだろう。
・・・二人っきりにしておくか。
「・・・7号が感情を持ったんだね」
「ああ、俺も驚いたが」
「これで、僕たちが異世界に来たというのは・・・ほぼ当たりかな」
「ああ・・・そうだな」
EOSでは有り得ないだろう。
それに、彼女の行動、とてもAIだとは思えないものだ。
・・・つまり、ここはゲームの世界じゃない。
現実に近い、何処かだ。
だとすれば、帰る方法があるのか?
八霧、神威・・・他の皆を返す方法が。
「・・・まあ、考えても仕方がない・・・今は皆の無事を祈るだけか・・・」
「?」
何のことかと、八霧は俺を見る。
「腹が減った、そう言ったんだよ」
誤魔化すためにそう言った。
「あ・・・うん、そうだね」
――――――――――――――――――――
神威は7号の身体を調べていた。
だが、感情が生まれた理由は分からなかったようで、首を傾げていた。
しかし、別のあるものを見つけた。
「あ・・・怪我の跡」
あの竜人の男に斬られた跡が、くっきり残っていた。
「はい・・・敵に斬られて」
傷跡をなぞる神威。
そして、ある疑問を7号に投げた。
「・・・油断して切られた?傷が真っすぐ付いてる」
そうだ、俺もそう思った。
切り口が真っすぐに肩口から下腹部までまっすぐに伸びている。
一切、回避行動をとらなかったとした思えない。
「初めて見る、スキルだったので・・・対処を考えていたら」
そのまま、斬られた・・・か。
そして、痛々しい真っすぐな傷が残った。
「大丈夫・・・?」
「はい・・・トーマ様に助けられたので」
「ああ、危ないところだったな・・・」
あの竜頭の男。
7号を痛めつけたあいつ。
あの時は7号を助けようと、急いでいたから・・・見逃しただけだ。
今度会ったら、ただでは置かない。
「でも・・・どうして、私を助けてくれたんですか?」
ドールは消耗品、そう言いたいのだろうか。
だが、俺や・・・神威の考えは違う。
「・・・お前もギルドの一員。助けて当然だろ」
俺にとってはギルドの一員、神威にとっては家族だ。
そう言い切った俺を、丸い目をして見る八霧と神威。
そして、微笑む。
「変わってないな、トーマさんは」
「うん、全然変わってない」
嬉しそうにそう笑って言う。
・・・俺、喜ぶようなことを言ったか?
仲間を助けるのは当然の行為・・・だよな?
「あ、あの・・・私もギルドの一員なんですか?」
「当然だ」
そう言って、7号の頭を撫でた。
その様子を見ていた神威は、俺の傍によると。
「む・・・私も」
そういって、頭を差し出してきた。
撫でろと?
・・・まあ、撫でてやろう。
「・・・んぅ」
撫でると、くすぐったそうに声を漏らしていた。
・・・しかし、本当に似てるなこの二人。
まあ、7号は神威そっくりに作られたということもあるんだろうが。
「ありがとう、トーマ・・・7号を助けてくれて」
「なに、ギルドメンバーを助けるのは当然だろう?」
・・・。
「あー・・・取り込み中悪いが、転移魔法の準備ができた。
移動してもらいたいのだが・・・?」
横を見ると、聖堂騎士の一人が立っていた。
その先には、転移ゲートのようなものが開いている。
「そうか、じゃあ・・・行くか?」
撫でるのを止め、二人の頭に手を置く。
二人は俺を見上げると。
「うん」
「ん」
そして、八霧も。
「行こう、トーマさん」
四人で、その転移ゲートへ入る。
この先に、何が待ち受けてるのだろうか?
読んで下さり、ありがとうございました。




