表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/381

114話

トーマ達がコンドアの街の屋敷でセラエーノに出会っていた頃。

カテドラル、トーマ達の拠点内。

その拠点では八霧が一人、拠点内で家計簿のようなものを付けていた。


この拠点の維持に必要な金額と、僕達のギルドの維持費。

合わせて、数か月分をリルフェアさんに計上する。


細かいものを合わせると結構な値段になるけど。

リルフェアさんから言わせると、少ない方だという。


「ふぅ・・・これで一通り見たかな」


机の上に積まれた大量の箱。

その中の物を確認して、家計簿にメモしていた。


中身はポーションや固形の携帯食料。

緊急時の物資として外注したものだ。

質はそこまで悪くなく、十分実用できそうだ。


「お疲れ様ですな、八霧様」


「ああ、スケ」


スケルトンのスケが隣に一回り大柄なスケルトン、カクと一緒に真後ろに立っていた。

手には木箱を持っており、その木箱にはポーションと書かれている。


「八霧殿、主人に言われてポーションを運んできたのだが」


「じゃあ、広間の端に置いて。後で確認するよ」


「了解です」


二人のスケルトンが、木箱を下ろす。


「ああ、それと・・・イグニス様が呼んでましたよ」


「イグニスさんが?」


なんだろうか?


――――――――――――――――――――


呼んでいた、との事なので。

イグニスさんがいると思われる訓練場に足を運んだ。


「八霧殿」


軽装で刃の潰れた剣を振るっていたイグニスさん。

そこそこ訓練していたのか、額には汗が光っている。


「イグニスさん、何か御用ですか?」


「用、というほどではないのだが。

 実はゼフィラスが前線に出向くことになった」


「戦況が悪くなった、という事ですか?」


「いや、膠着状態だ・・・しかし、ヘルザード帝国の後詰めの量が尋常じゃない」


後詰めか。

また国境沿いで一戦交えるつもりなのだろうか。


「エマ殿がいるから、今までは持ちこたえた部分もあるが。

 さすがに今回の後詰めの量を考えると、持ちこたえられそうにない」


「だから、ゼフィラスさんを?」


「ああ、苦肉の策だが」


確かに。

ここの警備が薄くなるだろうし。


「最悪、君の所から警備として何人か借りるかも知れない。

 それを伝えておこうと思ってな」


「なるほど、分かりました。

 事前に言ってくれればいくらでも協力します」


「有難い、助かるよ」


ニコリ、と笑うイグニスさん。

綺麗な人だよな、婚約者とかいないのが不思議なくらいだ。


「・・・しかし、行ってしまうのかゼフィラス」


少し、寂しそうな表情をするイグニスさん。

・・・これって、もしかして。

いや、止めておこう。

僕が口を挟む話じゃない。


拠点に帰る道すがら。

ボロボロのローブを着たスケルトンが目の前を歩いていた。


「おお、八霧」


「おはよう、ブロギンさん」


「ほっほっほ、おはよう。

 新薬の調子はどうじゃ?」


「毒の特効薬はまだ途中かな、精製には成功するけど、抽出量が少なくて―――」


拠点に帰るまで、他愛無い薬品の話をした。

そうだ、ゼフィラスさんが前線に行くのならいくらかポーションを都合しておこう。

前線だし、結構な量を渡した方がいいかな?


「―――何?ゼフィラスが前線に?」


「うん」


「そうかそうか、ヘルザードも必死じゃな。

 しかし・・・グスタフが混じっている可能性があるな」


「グスタフ・・・確か、竜族の将軍、だっけ?」


「そうじゃ、正確にはリザードマンの中でも選ばれた、

 限りなく竜に近いリザードマン、と言ったところじゃろう」


「強いんですか?」


「今、ヘルザードでゼフィラスと互角に戦えるのは奴だけじゃな」


なるほど、ヘルザード帝国の中でも指折りの戦士みたいだ。

ますますポーションを渡しておいた方がよさそうだな・・・うん。


――――――――――――――――――――


「ただいま」


ブロギンさんは、着くなり大釜の方へ歩き出した。

様子を見に来た、というのは本当らしい。


「お帰り、八霧」


エリサも拠点に戻ってきていた。

神威と一緒に紅茶を飲んでいた。


「どうだった?」


「あ、うーん・・・」


エリサと神威は、外である実験をしていた。


ネクロマンサーの力と神威のドールマスターの力を合わせたドール。

いわば、魂を持ったドールを作ろうとしていたのだが。


その成果は、机の傍に置かれていた。


「これ、トーマさん?」


の、鎧だ。

レプリカなのか、細部が甘く作られている。


「ん、トーマがモチーフ」


鎧かと思ったら、ゴーレムだった。


「量産型トーマを作る」


「はい?」


「そうすれば、警備する負担が少なる」


何を言っているんだ、神威・・・。


「あ、えっとね」


エリサが詳しく説明してくれる。


まず、神威の作ったゴーレムは命令は聞くけど。

命令以上の事が出来ない欠点がある。

それを改善するために、エリサの能力を利用しようと考えた。

これが今回の合作の経緯だ。


ネクロマンサーは、魂を操ることも可能だ。

ならば、ゴーレムに魂を宿せないかと試していたらしい。


「失敗?」


「ん、失敗」


「もう少しなんだけどね」


「最終的に、20体くらい自動警備マシーンとして置いておきたい」


その時は、見た目を変えて欲しいけど。

トーマさんの鎧がそこらじゅうを歩き回るのは心臓に悪い。


「そういえば、ゴーレムはLv差が出るの?」


ドールは、操った人数分、Lvが-2される。

オリビアやセニア、シスとフィナは完全に独立して行動しているので、

その制限は切れている、と神威は言ってたけど。


「ゴーレムは完全自立型。Lvは製造の出来で決まる」


「出来?じゃあ、神威のLvは関係ないの?」


「ん、ゴーレムは材質でLvが変わる。

 けど、命令するには自分以下のLvじゃないと」


なるほど、そう言う事か。

ゴーレムは作製時にLv制限はないけど。

操る際に自分以上のLvだと、命令を聞かないのだろう。


「あのゴーレムは?」


「Lv200」


「へ?」


200?

じゃあ、命令を聞かないんじゃ。


「だから、ネクロマンサーの能力を試してた」


「身体はLv200でも、中に入れる魂を私が構成すれば」


「いう事、聞くかもって」


「ははぁ、なるほど。面白いね」


理論通りなら、Lv関係なく言う事を聞くようになる。

でも、少し不安にもなる。


「・・・でもさ、暴走したら手に負えないと思うんだけど」


そう、暴走だ。

Lv200のゴーレム、しかも戦闘用に作られているとしたら。

僕でも苦戦するだろう。


「大丈夫、自爆装置はつけてる」


神威がそう言うと、赤いスイッチの付いたいかにも自爆装置と言う物を取り出した。


「製作者の良心」


「まあ、保険があるならいいんだけどさ」


しかし、鎧だけのゴーレムのようで。

中には何も入っていない。


いや、光る何かが鎧の中には入っているのだが。

これが恐らく、この鎧に付けようとした魂の残滓か何かだろう。


「・・・なるほど、中の魂の定着さえうまくいけば。

 でも、この状態だと存分に身体を動かせないんじゃない?」


「?」


何故、という感じで僕を見る神威。


「ゴーレムの身体のLvと、エリサの生み出した魂のLvが離れすぎてる。

 つまり、小さい力で大きいものを動かそうとしている状態だね」


「つまり?」


「ブースターか何か入れないと、きちんと動かない」


この場合は増幅器、と言ったところだろうか。

コンバーターか何かあれがいいんだけど。

うーん・・・僕は薬専門だし、そう言う事は詳しくないな。


「神威、ドールの強化もしてるって言ってたよね?」


「うん」


「なら、それを転用して、何かできないかな?」


「んー・・・」


口に人差し指を置いて考える神威。


「試してみる」


そう言うと、自分の部屋に入っていった。


・・・このゴーレムが完成すれば。

拠点の守りはほぼ完ぺきになりそうだな。


だけど、暴走する可能性も考えるべきだ。

安全装置があるとはいえ、兵器は安全に使ってこそ、だ。


読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ