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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
仲間探しの旅編ーセラエーノとコンドアの街ー
112/381

112話

屋敷の扉にメイドが手を掛ける。

その後ろ、メインホールで待つのは俺とカロ、背後にはセニアとセラエーノだ。


ラティはいざという時のための回復役として、屋敷の主人モーズと共に待機。

メイド達も避難のために、同じ部屋に待機して貰っている。


「・・・なんだ、この気配は」


カロはいつも見せないような、怯えたような顔をしている。

確かに扉の先にいる人物の気配、存在。

この世界では感じた事の無い強者のものだ。


メイドが途中まで扉を開けると。

外側から手が伸びてきて、中途半端に開いた扉を押した。


「ひ・・・!」


怖気づいたメイドが、近くの部屋へと逃げて行く。

その様子を気にするでもなく、扉を押した人物はゆっくりと屋敷へ進入してきた。


「あらぁ」


間違いない、竜。

リルフェアに似た端整な顔立ちと青白い髪色。

雨除けのローブの下には黒いドレスを着ている。


その女性に続くようにローブを着た騎士風の女性が隣に立つ。

雰囲気からして、その女性の護衛のようだが。

・・・何故か、俺に対して殺気を出しているようだ。


「お初にお目にかかります、ティアマと申しますわ」


恭しく一礼する女性ティアマ。

だが、その丁寧な礼に不安を覚える。


「・・・トーマだ」


「あら、ご丁寧にどうも」


名乗られたら返すのが当然だろう。

しかし、俺の横にいたカロは別の反応を見せていた。


「っ」


カロの手が、刀の柄に伸びる。

本能でそうしたのか、カロの身体は居合斬りの体勢に入っていた。


「無礼者が!!」


ティアマの隣にいた女性が、カロに斬りかかる。


「!!」


女性を捉え、居合斬りを放つカロ。

一閃、刀が空間を裂く。


だが、女性はそれを真正面から受け止めていた。

自身の握る細身の剣で。


「!」


「なるほど、ゼロームでも名のある使い手と見るわ」


「っち」


カロは舌打ちすると、止められたまま身体を回転させる。

その回転の勢いを使い、真横に二の太刀を浴びせる。


「甘い!」


再度細身の剣で受け止めると、カロの身体を蹴る女性。


「ぐ・・・!」


蹴りの勢いが強く、後ろへと仰け反るカロ。


「出来るな」


「あなたこそ、私の衣服を斬った人は久しぶりよ」


よく見れば、肩口の部分が少し切れて、ヒラヒラとたなびいていた。


「でも、私以下ね」


剣を構える女性。

だが。


「セイラ?勝手なこと・・・しないで頂戴!」


ふっ、とティアマの身体が揺れると。

一瞬でセイラの身体が上空へと打ち上げられた。


(速い)


ティアマの蹴りを見て、俺は素直にそう思った。


間違いない、この世界で一番速い動きを見た。

ゼフィラスや、御前試合で出会った人物の比ではない。


「が・・・!?」


べしゃり、と地面に落ちるセイラの身体。

余程の打撃だったのか、地面に落ちたせいだろうか。

よろよろと立ち上がると片膝をついた。


「もうし、わけ、ありません、ティアマ様」


「戦いに来たわけじゃないわ、ごめんなさいねぇ、竜騎士さん」


「竜騎士・・・やっぱり俺が狙いか」


「ふふ、そうね」


怪しく微笑むティアマ。


「争いに来たわけじゃない、そうだよな?」


「ええ、殺し合いをしに来たわけじゃないわ。

 ただ、お姉ちゃんが竜騎士を手に入れたって聞いたから気になって、ね」


・・・なるほど。

この世界では竜騎士というのは特別らしいし。

気になったというのには納得できる。


「二人きりで話せないかしら、竜騎士さん」


「・・・」


無言でセラエーノとセニアを見る。

・・・罠という可能性もある。

だが、戦うつもりもないといったのだ、信頼してみるか。


「ねぇ」


考えていた間に、目と鼻の先にまで近づいていたティアマの身体。

俺の胸板に細く綺麗な手を置くと、頭を付けて胸にこすりつけてきた。


「どうかしら?」


「と、トーマ様!!」


声を上げたのはセニアだった。


「あなた、どういうつもりなんですか!?

 トーマ様を、どうする気で―――」


ティアマの指が、セニアに向いた。

まずい。

そう思い、向けた指を掴む俺。


ティアマの指先から細い何かが発射されたと思うと。

セニアの隣にあった鋼鉄製の鎧が粉々に砕け散った。


「・・・戦わない、そうじゃないのか?」


「邪魔をされれば、争いも辞さないわ」


・・・。

セニアを見る。


ティアマの能力に圧倒されたか。

それとも、向けられた殺気に当てられたのか。

へなへなと、その場に座り込んでしまった。


「・・・分かった、話そう。

 部屋は、あそこでいいか?」


指差した先は、屋敷の応接間。

勝手に借りるが、今はそうは言ってられない。

この女・・・本気を出したらこの屋敷なんて一瞬で消せる。


――――――――――――――――――――


トーマとティアマが応接間に消えていく。

カロは、未だに片膝をついているセイラに声を掛けた。


「大丈夫かセイラ・・・殿?」


カロがそう言って、痛そうに顔を歪めるセイラに声を掛ける。


「っく、話しかけるな・・・今、私は至福をかみしめているのだ。

 ああ、ティアマ様・・・もっと、お情けを」


「う」


さすがのカロも引いていた。

痛がっているように見えた顔が、快感で歪んだ顔に変わった・・・。


「いるよねー、こういう心酔しきっている人って」


呆れたような声を出したのは、セラエーノだった。


「心酔・・・か?」


「うん、その人に何をされたって嬉しいっていう人。

 痛いことだって、酷いことだって、全部肯定的に取っちゃうんだよね」


ビクビクと体を震わせているセイラ。


「ヤバい人間にしか見えないけどね」


それに同意するように、頷くカロ。

その横で、セニアは不安そうに応接間を眺めていた。


「・・・セニア、なるようにしかならないから。

 トーマさんに任せて、今は待つだけよ」


「そう、ですけど」


それでも不安そうに応接間を見るセニアの頭を撫でるセラエーノ。


「セラエーノ、さん?」


「大丈夫、トーマさんなら悪いようにはならないはずだよ」


そう言いながら、セラエーノの目線は違う場所に向いていた。


「むしろ、ラティリーズさんを含めた、このゼロームの行き先の方が不安ね」


敵対関係にある国の国王がこんな場所にまで来ている。

それの意味することは。


「・・・なんだか、物凄い波乱が起きそうね」


「波乱、ですか」


「うん、何かは分からないけど」


それも、今応接間で話し合われているのだろうか?


―――――――――――――――――――――


「何?」


「だから、仲間にならない?いい話だと思うんだけどぉ?」


「俺に、リルフェアとラティを裏切れって、そう言いたいのか?」


「ええ」


ぶった切った。

悪びれも無く、俺の反論にそう言い返した。


「そう言われて、裏切る馬鹿がいると思うか?」


「ええ、そうでしょうねぇ・・・人間は義理や情なんて、

 下らないもので縛られてるからね」


「・・・それを捨てたら、人間は下の下の存在だ」


腕を組み、俺は対面に座るティアマにそう返した。


「じゃあ、単刀直入に言うわ。

 お姉―――リルフェアを殺されたくなかったら、私の竜騎士になりなさい」


「殺され・・・?

 いや、カテドラルには鉄壁の魔法防御と、

 聖堂騎士による警備がされている、そう簡単にリルフェアは殺せないぞ」


「ふふ、お馬鹿さんかしら?

 転移魔法が阻害されるのは、魔法による防御があるからよ。

 でも・・・おかしくないかしら?カテドラル内でも魔法が使えるのよ?」


「・・・」


何が言いたい、と返そうとしたが。

その言葉に引っかかりを覚えた。


確かに、魔法は使える状態だ。

もちろん、使用に制限は掛かっているが、魔法自体は行使できる。

それに、転移が阻害されるのは侵入者のみ。

きちんと許可を取っていれば、直接転移も・・・。


許可?

・・・いや、まさか。


「元騎士団長も、転移魔法は登録しているのよ?

 まあ、退団する際にその登録も消去されているでしょうけど、でもね」


ぐい、と顔を近づけるティアマ。

目の前にティアマの顔が近づく。


「転移魔法は応用次第でどうにでもなるのよ、竜騎士さん」


読んで下さり、ありがとうございました。

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