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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
仲間探しの旅編ーセラエーノとコンドアの街ー
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104話

雨の盗賊団が暗躍している最中、オリビアは宿も取らずに食材を探していた。


傘を差しながら一日中街をさまようメイドは目立ったようで。


「そこのメイドさん、お話いいかな?」


「え?」


オリビアが振り返ると、傘を差した警備兵が立っていた。


「実は朝からずっと何かを探しているメイドがいるって報告があってね。

 雨の時期になると盗賊団も出るから、一応確認のつもりで」


「それはご苦労様です」


少し頭を下げるオリビア。


「やっぱり、盗賊団の人じゃないよね」


「ええ、私はカテドラルの騎士の従者です」


「聖堂騎士の?へぇー・・・こんな遠いところまで何をしに?」


「実は」


料理に必要な食材、茸の塩漬けについて聞いてみるが。

警備兵は腕を組んで唸っていた。


「この時期、手に入れるのは厳しいかもな。

 時期も外れてるし、保存は利くけどさっさと食べてしまう人が多いから」


「では、手に入りにくい、と?」


「ああ・・・そうだ、心当たりがあるからちょっと付いて来な」


そう言うと、警備兵は背を向けて歩き出した。

それについていくオリビア。


夜の商店街を歩く二人。

そのうちの一軒で足を止める警備兵。


「ここだ」


それは、古びた民家に見えるが。

看板が掛かっており、どうやら食品店らしい。


「ここの婆さんがコンドアで一番塩漬けを作っているんだが、あるかな」


扉をそのまま開けると、中を確認する警備兵。


「おお、いたいた。婆さん」


「むぅ?なんじゃ、ドギ坊」


「なんじゃ、じゃないぞ。客を連れてきたんだよ」


「客?」


オリビアが家の中を覗くと。

そこは駄菓子屋のような並びで食材が並ぶ店だった。


「おお、客か」


店の奥で椅子に座っていたお婆さんが腰をさすりながら立ち上がる。

近くに置いてあった眼鏡を取ると、こちらに歩いてきた。


「いらっしゃい、探し物は何かね」


「茸の塩漬けを頂きたいのですが」


「あー・・・そうだね」


並んでいる商品の一部を弄るお婆さん。


「悪いね、やっぱり切らしてるよ」


「そうですか・・・」


「何とかならないか、婆さん。

 この人、茸の塩漬けを探して首都から来てるんだぜ」


「ほほー、そりゃ遠くからご苦労だね。

 でも、切らしてるものは切らしてるからねぇ」


「どこか、別の場所にもありませんか?」


「そうだねぇ、この時期だから店にはもう置いてないと見ていい。

 そうなると、大量に買った人から分けてもらうしかないね」


買った客から分けてもらう、そう言う事だろう。


「町の外れに大きな屋敷があるから、行ってみるといいよ。

 そこのメイドさんが数日前に大量に買っていったからね」


「町の外れの屋敷ですね、分かりました」


オリビアは丁寧に一礼すると、その場を去っていった。

残された警備兵はその姿をぼーっと見ていた。


「綺麗な子だねぇ」


「ああ、とても綺麗な人だ。

 それに物腰も柔らかいし、いいとこのお嬢さんなんだろうなぁ」


「ドギ坊、アンタじゃ手の届かない子だよ、諦めな」


「そんなんじゃねえよ!!」


怒る警備兵を笑いながら見るお婆さん。

警備兵は、ばつが悪そうにその場を去っていくのだった。


――――――――――――――――――――


オリビアは傘を差しながら街の外れまで歩いた。

そこには、言われた通り大きな屋敷が立っていた。


「・・・ここが、話にあった」


雨の降る中、その屋敷の様子を伺う。

どうやら、人はいるようで屋敷の中には灯りが灯っていた。


「あら、どちら様でしょうか?」


紫の長い髪を後ろで束ねたメイド服姿の人物が目の前に立っていた。


「初めまして、オリビアと申します」


丁寧に一礼すると、あちら側も丁寧に一礼を返した。


「これはご丁寧に。私はこの屋敷のメイド長『カザレア』と申します」


「カザレア様、ですね。実はご相談があり―――」


「オリビア、何やってるんだ?」


オリビアが声のした方向に顔を向けると。

そこには、トーマが立っていた。


「トーマ様?」


「あら、お知り合いですか?」


――――――――――――――――――――


驚いた、オリビアがコンドアに来ているとは思わなかった。

さらに驚いていたのはセニアだ。

会うなり、オリビアに抱きついていた。


「姉さん!」


「どうしたの、甘えん坊ね」


そう聞きながらも頭を撫でている。

仲が良い、結構なことだ。


「茸の塩漬け、ですか」


「あるのか?」


オリビアが探していた物を聞いたメイド長カザレアは顎に手を当てていた。

そして、うーんと唸っている。


「実は購入したものは風味が弱く、数か月は熟成させないといけないので。

 私も無理を言って売っていただいた未熟品なのです」


「そうですか・・・」


「ですが、前に買った分で余っている物があるかも知れません。

 探してみますので、少しお待ちください」


カザレアは頭を下げると、そそくさと部屋を出て行った。


「トーマ様、いえ、ソウマ様と言った方がいいですか?」」


「俺達しかいないんだから、トーマで大丈夫だ」


「では、トーマ様。セニアが迷惑を掛けませんでしたか?」


「ね、姉さん!」


「いや、全然。むしろ役に立ってる方じゃないか?」


少なくとも足を引っ張ったという感覚は無い。

俺の言葉を聞くと、オリビアはほっとしたような顔をしていた。


「おいおい、妹を信頼したらどうだ、自慢の妹なんだろ?」


「それはそうですが、目の離れた隙に何をするかわかりませんからね。

 特に、トーマ様と少数で旅をしているんですから」


「俺と一緒だと、心配って事か?」


なんだ、俺が原因で何か起きるって事か?


「ええ、セニアは・・・いえ、私から言う話ではないですね、無粋です」


そう言って口を噤むオリビア。

無粋?


「ね、ねね、姉さん!」


「まあセニアの様子を見るに、進展は無さそうですし安心しました。

 ・・・同時に少しがっかりよ、セニア」


「えー!?」


「後で姉妹会議、いいわね?」


「は、はいぃ!」


・・・姉妹会議?


――――――――――――――――――――


私は、セニアの手を取り屋敷の一室に入った。

手を取られたセニアは少し怯えている目をしていたが。


部屋の中に誰もいない事を確認し、セニアに向き直る。


「セニア、せっかくトーマ様との旅だというのに、何も進展がないの?」


「え、えへへ・・・すみません」


しゅんとするセニアを見て、一つ小さくため息を漏らす。


「・・・」


セニアがトーマ様の事を好きだというのは知っている。

今回の旅が、その進展には絶好のチャンスだ。


なのに、何の進展もないとは。


「トーマ様は、自分からは絶対に手を出さないでしょうね。

 私を含め、ギルド全員を自分の子供のように可愛がってますから」


「うう」


「だからこそ、一歩踏み出さないといけなんですよ、セニア」


「知ってますけど!難しいんですよ・・・」


そう言ってしょんぼりとするセニア。

可愛い妹のそんな顔だ。

私は、出来るだけ優しい顔をして肩を叩いた。


「ドールと引け目を取ることはないんですよセニア。

 むしろ、そんな事で差別をするような人物に恋をしたんですか貴方は?」」


「ち、違います!」


「それなら、もっとぐいぐい行かないと」


「うー!」


むくれるセニア。

やっぱり可愛い妹だ。


「さて、妹に喝を入れたところで。

 私は茸の塩漬けを探す手伝いをしてきます」


「わ、私も手伝います!」


「トーマ様とラティリーズ様を二人っきりにしていいのですか?」


私の感覚だと、ラティリーズ様もトーマ様に・・・。

それに、妹を応援する身としてはセニアに幸せになって欲しい。


ラティリーズ様に不幸になって欲しいとは思わないけど。

・・・それでも、愛する妹に幸せになって欲しい。


「っは!」


気づいたらしく、部屋から飛び出るセニア。


「頑張りなさい、セニア」


読んで下さり、ありがとうございました。

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