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集団転移!ーギルドメンバーごと転移したLvカンスト竜騎士-  作者: 倉秋
仲間探しの旅編ーセラエーノとコンドアの街ー
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102話

それからラティに色々な話をした。

宵闇さんと一緒にクエストを受けた事。

天然ボケをかまして、Gさんが呆れた事。

熱血漢で、優しいエピソード。


「ふふ・・・好きだったんですね」


「そうだな、友人として好きだったよ。

 気持ちのいい男だったからな」


「でも、安心しました。ご先祖様がそんなお方で」


「ショックとかは無かったか?」


「いえ、今は今ですし、過去は過去です。

 私の家系の過去がどうであれ、今には関係無い・・・とは言い切れませんが」


この事実をネタにして、政治的に揺さぶりを掛けてくる奴もいるかも知れない。

そういう意味では口外は避けた方がいい事実だろう。


「でも、自分の家系の過去が知れて、少し嬉しいです。

 それに、リウ・ジィ様も幸せだったと思いますし」


「幸せ?」


「もし、宵闇さんと言う方が私の思う通りのお方なら、

 絶対にリウ・ジィ様を幸せにした、そう思いますけど」


「ああ、そうだな・・・そうだろうさ」


建前や嘘で結婚をするような人じゃない。

子供まで出来たという事は、宵闇さんは・・・そしてリウ・ジィは。

幸せだったのだろうさ。


「トーマ様も、いずれ、け、結婚するんですよね?」


「いずれ・・・まあ、そうだな。機会があれば」


いつまでも独り身、と言うのも寂しいだろう。

こっちの世界で家庭を作って、死んでいくのだろうけどな。


「その、わ、私と―――」


その瞬間、悲鳴が屋敷に響いた。


「え!?」


「なんだ!?」


その声は、あのメイドとは違う、誰かの声だった。


急いで、声の響いた玄関近くまで向かう。

その中には、寝間着姿のセニアもいた。


「あ、トーマ様!」


「何があったんだ?」


「それが」


玄関先を指さすセニア。

そこには、悲鳴を上げたらしきメイドと、倒れている女性がいた。


「う、うぅ・・・」


呻き声を上げて、ずぶ濡れになっている女性が横たわっている。


「す、すす、すみません!扉を開けた瞬間に、彼女が倒れてきて、それで」


悲鳴を上げた、と。

メイドが女性を揺さぶるが反応が返ってこない。

額に手を当てると。


「熱い・・・!風邪ひいてるみたいです!」


「なら、寝かせた方がいいんじゃないか?」


「は、はい、そうですね!」


メイドが女性を立たせようとするが、無理そうだ。


「俺が部屋まで運ぼう」


女性を担ぎ上げる。


「部屋は?」


――――――――――――――――――――――


空いている部屋に女性を寝かせる。

ベッドに横になると、苦しそうに寝息を立て始めた。


「誰なんでしょうか」


「・・・こいつは」


前髪で顔が見えなかったが、その前髪を退けてみると。


「ドリーじゃないか」


前髪に邪魔されて見えなかったエルフの耳と、その顔が見える。

御前試合に出場した、唯一のエルフ族だ。

ブロギンに負けて、確か武者修行に出てたはずだな。


「今は寝かせておいた方がいいか」


「そうですね・・・」


起こさないように、ゆっくりと部屋を出た。


「ドリー、さんですか?」


「ああ、ちょっとした知り合いだ。

 だが、何でこんなところに?」


「さあ・・・」


首を傾げるメイド。

そっちの知り合いでもないとなると、何をしに来たんだ・・・?

俺達と一緒で、泊まれなくてここに来た可能性もあるが。


「寝てる場合じゃないわー!!」


先ほど出てきた部屋から飛び出してくるドリー。


「はぅ・・・」


そしてその場にぶっ倒れた。


「おいおい」


「た、食べ物・・・」


「食べ物?」


――――――――――――――――――――


食卓に並んだ料理を片っ端から平らげていくドリー。

遠慮なんて言葉は彼女に存在し無さそうだな。


「はぐ・・・もぐ!んぐぐ!」


「あ、あの、まだまだありますので、そんなに急いで食べなくても」


「んぐ!だって美味しいんだもん!」


先ほどまで赤かった顔は元通りになり、

元気がなさそうだった耳もピンと立っている。


「・・・常識が無くて悪いが、エルフっていうのは飯を食うと風邪が治るのか?」


メイドにそう聞くが。


「いえ、そんな話は聞いた事が」


だよな。

俺もそう思う。


「ぷはぁ・・・ご馳走様!」


パンっと、手を合わせるとドリーは満足そうに微笑んだ。


「久しぶりだな、ドリー」


「へ?」


俺の顔を見てくるが。

誰だっけ、と言う顔だ。


「これを見ても分からないか?」


銀色の兜を見せる。


「あ、ああ!トーマさんか!」


ポン、と手を打つとドリーはにっこりした。


「お知り合いですか?」


「まあな」


知り合い、というほどの仲ではないが。


「って、そうじゃなかった!伝えたい事があってきたんだった!」


そう言うと、ドリーはメイドに目線を向けた。


「ここ、盗賊団に狙われてるよ!!」


ドリーの上げた一言で、メイドの顔が凍った。


「本当、ですか?」


「うん」


「どこで知ったんだ?」


「えーと、私、武者修行で各地の依頼を受けてたんだけど。

 その依頼者の一人が盗賊団の幹部だったらしくて」


「幹部?」


「うん、『雨の盗賊団』って言ってたよ。

 それで、盗賊団の用心棒はお断りだって言ったら、命を狙われてさ」


「それで、死んだんですか?」


お約束だが、そう聞くなセニア。


「そうそう、バッサリ斬られてさーっておい!」


おお、見事なノリ突込みだ。

芸人の才能があるぞ、ドリー。


「まあ、命からがら逃げてきたわけで。

 そのまま逃げるのも気が引けたから、奴らの狙いをばらそうかなって」


それでここに来たのか。


「雨の中で走ったから、倒れたのか?」


「うん、疲れもあったし、この土砂降りで身体が冷えちゃって」


今目の前にいる彼女は、元気いっぱいだが。


「飯を食って風邪が治るなら誰も苦労しないがな・・・」


「健康体ですから」


無い胸を反らすドリー。


「それで、いつ決行するのか分かってるのか?」


「うん、明日の夜、いや、夕暮れ時を狙うって言ってた」


「逢魔が時って奴か」


一番油断しやすい時間だとも聞く。


「ねえ、私を雇ってよ、あいつらにやり返さないと気が済まなくてさ」


「?」


長袖の腕を捲るドリー。

その腕には、切り傷が出来ていた。


「嫁入り前の大事な身体を傷つけたんだ、許さないよ」


「じゃあ、何で武者修行してるんだ?」


余計に怪我をしやすい事をしているように見えるが。


「不意打ちで出来た傷なんて、不名誉!

 やられっぱなしで終わるのも癪!」


「だそうだ・・・どうだ、メイドさん」


「ま、まあ。警備の人が増えるのは喜ばしい事ですけど。

 それに、御前試合出場者なんですよね?」


「うん、そうだよ。まあ、ここにいるトーマは優勝―――むぐっ」


ドリーの口を押さえる。


「ソウマさん?」


「あ、ああ何でもない。ちょっと来い」


ドリーを引きずり、廊下まで出る。


「っぷは!なんなの!?」


「俺の事は黙っててくれ」


「え?なんで?」


部屋に残っているラティを見る。


「あの子、誰か知ってるか?」


「へ?」


ドリーがまじまじとラティを見る。

黒髪だが、その容姿と風貌、にじみ出てる高貴さ。


「もしかして・・・ラティリーズ様?」


「その通り、お忍びの旅だ」


「・・・うわぁ」


目が輝くドリー。

なんだ?


「いいねいいね!そう言うの!

 わくわくするよね!」


「あ、ああ・・・?」


「黙ってるよ、もちろん!へえー、箱入りの姫様の冒険か」


箱入りの姫様、か。

確かに、ドリーの言う通りだろう。


だが、ラティは確実に学び、成長している。

経験は裏切らないものだ。


読んで下さり、ありがとうございました。

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