101話
『黄金色のG』はヘルフレイム創設者の一人です。
『宵闇markⅡ』は初代ギルド長になります。
黄金色のGさんは、EOSでも極めて強力な魔法使いの一人だ。
プレイングスキルもそうだが、魔法に関する造詣も深い。
俺も、魔法に関してはGさんより詳しいとは言えない。
書斎に通された俺は、その書斎に掛かっていた肖像画を見て驚いた。
その顔、髪型に着ている服。
「Gさん・・・」
間違いない、間違えるはずが無い。
目の前の絵に描かれていた壮年の男性は。
間違い無くGさんだった。
「ジー・・・?」
「この英雄を俺は知ってる。
間違いない、アンタの言った英雄はGさんだ」
メイドの顔が驚きで染まった。
「2000年以上前の人物の事を、あなたは知っているんですか!?」
「俺も驚いてる、どうしてGさんが」
書斎に飾られた肖像画を触る。
その下には、ヘルフレイムの紋章が描かれた何かの仕掛けが施されていた。
確信した、この肖像画に描かれているのは間違いなくGさんだ。
「その仕掛けは誰も解けないものなんです。
恐らく肖像画の後ろに何かを隠していると思うんですけど」
紋章の下には、こう書いてある。
『ギルドとは何か』と。
「ギルドとは『家族』」
そう呟き、紋章の近くを調べる。
「家族、ですか」
「そうだ・・・俺とGさん、宵闇さんで作ったヘルフレイムの目指した場所だ」
紋章の後ろに隙間がある事を確認し、その後ろを指でなぞってみる。
すると、スイッチのようなものが指先に触れた。
紋章が二つに割れ、コンソールのようなものが現れた。
パソコンのキーボードとほぼ同じ構造だ。
異世界でなんて物を作ってるんだ、Gさん・・・。
「家族」
タイピングし、そう入力してエンターキーを押す。
入力から数秒後、肖像画が上にずれ始める。
埃と煙を立てながら、肖像画は天井の隙間に消えて行った。
「こいつは」
肖像画の後ろにあったのは、小さい隙間に入ったボロボロの本だった。
「日記・・・か?」
書斎の机に本を置き、表紙を捲る。
すると、目次と手書きで書かれていた。
その下には、こうも書かれていた。
『この本を読んでいるという事はヘルフレイムのメンバーの誰かだろう。
いやトーマ、お前さんだな?』
正解だ、流石Gさん。
やっぱり、Gさんもこの世界に転移していたって事か?
次のページを捲る。
――――――――――――――――――――
ここに転移して数日、後のギルドメンバー達のためにこの日記を書くことにする。
まず、事の始まりを説明しておこう。
私こと、『黄金色のG』は宵闇markⅡ(以下宵闇)の急な引退発表を受けて彼を問いただした。
すると彼はこういった、『別の世界に呼ばれる夢を見た』と。
トーマには黙っていたが、私と宵闇はリアルでも友人だったんだよ。
急な引退の話を受けて、彼に会いに行ったが・・・何処にもいなかった。
リアルで彼は失踪してしまっていた。
そこで、EOSで何かに巻き込まれたのではないかと調査もしていたんだが。
その結果、宵闇が異世界に行ったかもしれないという情報を得た。
まあ、その後も色々と不正に近い調べ方をしたので運営に見つかって、
アカウントを止められたのは・・・トーマ、お前も知っているだろう?
アカウント停止を食らうだけの事をしただけのことはあった。
EOSのデータに不正アクセスした結果、やはり宵闇は全く違う世界に飛ばされたらしい。
そのログも残っていた、会社からすれば秘匿したい事実だろうな。
なにせ、プレイヤーの失踪に関わっていると思われるだろうし。
話がそれたな、EOSの会社の事はどうでもいい。
むしろ、現在置かれている状況の方が大事、そうだろう?
結論から言おう、宵闇はこの世界にいる。
いや、私が来た時には既に死んでいた。
六災竜と戦い、その傷が原因で長生きできなかったらしい。
だが、彼の子供がいることが分かった。
驚いたことに彼は竜と結婚したらしいぞ、トーマ。
それに、魔剣士だったはずの宵闇が『竜騎士』と呼ばれているんだ。
そう言えば、私がこっちに来る前に噂されていた竜騎士は実装されたか?
されていたらお前はなってるだろうな・・・。
まあ、そんなこんなで私は彼の子供に教育を施している。
彼には会えなかったが、彼の血を継ぐ子供に会えたことは嬉しかった。
トーマ、もしお前がこっちに来たのなら。
リウ・ジィの子孫を守ってくれ。
その子孫こそ、宵闇の―――。
ボロボロになった本で解読できたのはここまでだった。
――――――――――――――――――――
「リウ・ジィの子孫が、宵闇さんの子供?」
本を閉じる。
頭が混乱しそうになっている。
じゃあ、ラティは宵闇さんの子孫になるのか?
いや、リウ・ジィの話であった最後まで一緒に戦った竜騎士。
その正体が、宵闇さんだったのか・・・?
「あの、全然読めないんですけど・・・なんて書いてあったんですか?」
「・・・読めない?」
解読スキルの付いた指輪を外すと、それは日本語で書いてあった。
なるほど、読めない訳だ。
教えない方がいいだろう、これは・・・ゼロームを根幹から揺るがす事実だ。
神様が、異世界の人間とのハーフだというんだからな。
この事実は、俺の胸に伏せておこう。
いや、ラティやリルフェアには言っておくべきか。
「ただの日記だ」
そう言い、日記を懐に入れた。
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未だ頭は混乱していたが、ほっとしていた部分もあった。
頭のどこかでは、宵闇さんはヘルフレイムに愛想をつかして、
辞めたのではないかと思っていたからだ。
だが・・・この異世界に呼ばれ、飛ばされる前に引退した。
けじめをつけたという事か。
「だが、そうなると・・・ラティを守るという今の状態は」
Gさんが残していた日記に書いてあった、子孫を守ってくれ。
それに合致する結果になる。
「そうか、ラティの家系とヘルフレイムは。
切っても切れない何かの縁で繋がっているのかもな」
この世界の一片を垣間見た気がした。
部屋に戻って、ベッドに横になるとすぐに睡魔に襲われた。
うとうとと、していると。
「トーマ様、いますか?」
「うん・・・?ラティか?」
眠気がおさまり、ドアを叩いたラティを出迎える。
ドアを開くと、目の前には。
寝間着姿のラティが立っていた。
「どうした?」
「その、これなんですけど」
ラティが手に持っていたそれは、ミスリルの鎖帷子だった。
「何か特別な、物なんじゃ?」
「特別・・・か」
「なんだか、懐かしい感覚に襲われるんです。
とても」
元々は宵闇さんのものだ。
そして、今目の前にいるのは宵闇さんの子孫。
懐かしい、そうか、そうだよな。
ラティにも教えておこう。
「その感覚は間違いじゃないさ、部屋に入ってくれ」
「は、はい」
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「―――というわけだ」
「私がその方の子孫、ですか?」
宵闇さんの血は、今目の前に残っている。
俺達が慕った、宵闇さんの血は確かにここにある。
「ゼロームを根幹から揺るがすような話だろう?
黙っておいた方がいいとも思ったんだが、当人には教えておくべきかと思ってな」
「・・・では、私とトーマ様は」
俺はベッドに座り、ラティは椅子に座っていたのだが。
椅子から立ち上がると、俺の隣に腰かけてきた。
「運命的な出会いをしたという事ですね」
「え?あ、ああ・・・そう、なるか?」
別の世界のギルド長が残した子孫と、そのギルドに所属していた男が。
数千年後に出会うんだ・・・まあ、確かに運命的ではあるか。
「私の御先祖様のお話、聞かせてもらえますか?」
「ああ、いいぞ・・・そうだな」
宵闇さんとのエピソードは色々ある。
まず何から話そうか・・・。
読んで下さり、ありがとうございました。




