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4.出発

取り敢えず、これにて完結。

長らくお付き合いくださりありがとうございました。


 ツカサやウィリアムたちが混乱しているのを他所に、私たちは意外とのんびりとした生活を送っていた。

 洞窟だけど。


 でも洞窟生活は窓がないくらいでさして不便もない。大体、こちらに来て暫くは洞窟暮らしだった訳だし。あの頃はもっといろいろ足りてなかったし。


 今はさ。家財道具一式持ち込んでるからね。

 食材もたっぷり。

 台所周りがちょっと不便か。流しとかないもんね。窯は石を積んだやつだし。


 でも、みんなで分担すれば、大変なことなんて一つもなかった。

 むしろアウトドア系は私よりみんなの方が手際がいいくらいだもの。

 適材適所を通り越して、私が役に立ってない。


 とは言え。


「これからどうしようね…」


 大変ではなくとも、ずっと洞窟暮らしを続けるのもどうかなって思うんだよね。


 今はいいけど、その内食材、得に調味料や日用品なんかが足りなくなるだろう。

 そうなると、最終的にはどこかの町に買い出しに行かないといけない訳で。


「どうするんだ?」

「…まあ…他の国に行くのがベストなかって」


 この国にいる以上、どこの町に出ても油断はできない。

 あの二人に見つかったら、今度はどんな手を使って襲撃されるか解ったもんじゃない。

 襲撃もイヤだけど、ツカサと敵対するのもイヤだし、逃亡生活もイヤだ。


 私たち、別に悪いことしてないもん。


 なら、この国から出てしまえばいいんだよね。

 いくらなんでも、他所の国で出会すこともないでしょ。


「で、どこ行くんだ?」

「どこがいいと思う? ここに比べたら、どの国もマシだとは思うけど」

「だよねー」

「エルウィンダは? ラルガは前に行ったんでしょ?」


 前って言っても、私たちが初めて会った時のことだけどね。

 生き残りの子供たち連れて、一旦逃げたんだっけ?


 その子たちに会いに行くかどうかも含めて聞いたら、ラルガは難しい顔で首を横に振った。


「まだ行かない方がいいだろうな」

「そうなの?」

「一度、こっそり見に行ったことはあるんだよ。チビどもはようやく馴染んできた感じだった。俺たちが行って掻き回すのもな」

「あー」


 難しい問題だよね。

 ようやく馴染んだところに、私と言うかラルガたちが来たら、気持ちが落ち着かなくなっちゃうだろうし。


 ラトリたちは、もう馴染むを通り越して家族みたいなものだもん。

 そういうのを見たら、余計に割りきれないものが出てくるかも。


「じゃあ、エルウィンダは外すとして、次の候補はエルメイルかな。海幸が気になる」

「海!」


 海に食い付いてきたのは子供たちだ。


「海、見たい!」

「決まりだね」


 海を見に行く。を主目的として、向かう先はエルメイルになった。


 言い出した私に不満はない。


 海、楽しみだよぬ。

 魚、貝、海草。

 うはー。食べたいものばっかり。


「エルメイルに行くとして、一度エルウインダに抜けた方がいいだろうな」


 ラルガが腕を組んで言った。


「えっと…?」


 地理が解らなくて私たちは首を傾げる。

 ラルガは薬の報告書の裏にざっくりとした地形を書き出した。


「俺も詳しくはないんだけど…今って言うか、迷いの森がこの辺りとするだろ…」


 右下に迷いの森、右側端っこで迷いの森よりちょっと上が子供たちを預けた村、その辺りからエルウインダになる。それを左側に移動してエルメイル。らしい。


「言っておくけど、大体こんな感じってだけだぞ」

「だよね。ざっくり過ぎるもん」


 これはあれだ。日本地図を書くときに、四角、横に長い楕円、ちょっと小さい横楕円、左側に縦楕円。で終わるやつ。


「俺だって、村に来る商人から聞いただけだからな」

「うんうん。で、この辺りから抜けて、この辺の国境沿いをエルメイルに?」

「まあ、そうなるな」


 すっごいざくっとした方針だけど、現況これ以上は詰められそうにない。情報が足りない。

 判らない人間が何人集まっても、判らないままなんだよね。


「エルウインダでじっくり決めるしかないな」

「サブマスみたいに話の解る人に会えると良いね」


 それが一番重要だけど、それさえも全く確定要素のない話なのがね。

 なんと言うかね。


「まあ、とりあえず方針が決まりました! 私たちはエルメイルに行きまーす!」

「了解!」


 全員で万歳。反対意見はなし。

 満場一致です。


「それじゃあ最後の難関に挑もうかな」

「難関?」


 フォリたちが揃って首を傾げているを背に、入り口に向かって歩く。

 洞窟の外へ向かい、


「軍曹!」


 私はアシダカ軍曹を呼んだ。

 アシダカ軍曹は数秒で姿を現す。本当、いつも速いよね。


 何か用? な感じで体を揺らすアシダカ軍曹を見上げる。


「軍曹、私たちエルメイルに行こうと思う。エルガイアにいる限り、油断出来ないしね。なので、近いうちにこの迷いの森を出るよ。今までありがとう」


 要点だけを一気に言うと、アシダカ軍曹は雷が落ちたみたいにガーンって感じに仰け反った。

 そして、次の瞬間にはもの凄い勢いで、ジタジタバタバタし始めた、


 そんなの駄目、絶対駄目!


 非難轟々、なのが何となく解る。

 うん、今私もの凄く罵られている、ような気がする。


「…でも、軍曹は森から出たらまずいでしょ? 下手に森の外で目撃されたら、討伐隊組まれるよ。でなくても、軍隊が来るよ」


 森から近い場所は隠れられる。迷いの森にわざわざ自分から足を踏み入れる者は少ない。

 けど、これから向かうエルメイルに迷いの森は近接していない。

 そうなると隠れる場所はないわけで。目撃されたらヤバいわけで アシダカ軍曹を人類の敵にするわけにはいかないじゃない。


 従魔で押す線も捨てきれないけど、アシダカ軍曹みたいなガーディアン種が従魔ってどこまで通用するんだろう?

 しない気がするんだよね。


「だって軍曹、目立つんだもん。そこんところを何とか出来たら…何とか出来ない?」


 ジタジタするアシダカ軍曹に問題を丸投げすると、バタバタと一通り暴れたのち、森のどこかに走り去ってしまった。


「怒っちゃったかなあ?」


 洞窟の壁に張り付いているひぃちゃんを見ると、我関せずと微動だにしない。


「別に怒っていない、と」


 アシダカ軍曹が怒っているなら、ひぃちゃんにも何らかの動きがありそうだけど、何の反応もないから大丈夫かな?


「とりあえず、準備はしておこうか」


◇◆◇


 出発の朝が来た。

 準備中は万端、って言うかみんな仕舞っちゃっただけ。とは言え、旅の間のご飯の準備だとか、服装の準備だとかで、三日を使った。


 アシダカ軍曹はあれから姿を見せない。

 けど、ひぃちゃんもふぅちゃんもアルもいつもと様子が変わらないから、心配することはないのかなあ?


 ひぃちゃんとふぅちゃんは肩掛け鞄に潜り込んで残るつもりはかけらもなさそうだ。

 だから余裕なの?


 ともあれ、みんなで森を抜けてエルウインダ側に出る。アシダカ軍曹はいないけど、ひぃちゃんたちとアルがいたら下手な魔物は襲って来ない。

かなり安全な道程だ。迷いの森なのに。


「あの丘を越えればエルウインダだ」

「ふうん」


 ラルガが指差す、そんなに高くもない丘に向かって一歩を踏み出そうとした私たちの目の前に、アシダカ軍曹が立ち塞がるように姿を現した。


 まさか、ここに来て進路妨害?


「軍曹?」


 アシダカ軍曹は、森を指し示す。

 振り替えると、アシダカ軍曹がもう一体。

 ん? 色が銀色じゃない…訳じゃなく銀色分が少ない。

 大きさはほぼアシダカ軍曹と同じ。


「えっと、軍曹の友達?」


 聞くとアシダカ軍曹もどきは左前肢を元気よくあげた。


 アシダカ軍曹はどうして友達を連れて来たんだろう?


 首を傾げていると、アシダカ軍曹は馬が嘶くみたいに前肢を高々をあげ、地面に下ろすと共にぎゅぎゅぎゅっと体を丸めた。


 丸めたまま、体が縮んでいく?


「えっ軍曹、小さくなってるよ? 質量の法則は…どこ?」


 唖然としているうちに、アシダカ軍曹はバスケットボールくらいの大きさになってしまった。

 銀色のバスケットボールは、ざかざかと私によじ登り頭の天辺で止まった。


「軍曹…小さくなれたんだ…でも、頭にバスケットボールは重いよ…」


 頭の上のバスケットボールは結構首にくる。まさか、定位置にはしないでしょうね?


「軍曹、付いてくんだな…もしかして、こっちは代わりの森の主か?」


 ラルガの呟きに、アシダカ軍曹もどきはびよんさびよん跳ねて猛アピールしている。


「なるほどぉ。今まで姿を現さなかったのは代わりを決めてたのね」


 仮にも迷いの森の主の代替わりだ。それなりの個体でなければ任せられないだろう。

 その辺りの選定とか行ったのかな。


「それに…多分、軍曹は一段上の何かになった気がする…」


 ラルガは神妙な顔で呟いた。


「いちだん、うえ?」


 なんだろうそれ。

 ガーディアン種の上ってこと?

 もっと違う何か?

 何かって、なに?


「と、ともかく。アシダカ軍曹じゃない……伍長? が次の森の主なんだよね?」


 伍長…軍曹の次って伍長でいいんだっけ…は胸? を張って見せる。

 そして、私の目の前に左前肢を伸ばしだしだしと猛アピールしてきた。


 これはまさか…


「指輪? でも、伍長は…」


 従魔じゃないじゃん。主じゃん。

 躊躇していると、一層のだしだしアピール。

 じ、地面に穴が開いてるんだけど。


「えっと主だから…」


 ペリドットの指輪を出そうとしたら、アシダカ軍曹に止められた。

 そうですか。あれはアシダカ軍曹専用ですか。

 仕方がないのでセブンストーンの指輪。

 ひぃちゃんたちとアルとお揃いの。

 伍長はそれで構わないらしい。

 左前肢にはめると、見るからにご機嫌になった。


「じゃあ…後の心配もなさそうだから、出発しようか?」

「りょーかーい!」


 ラトリたちの元気のよい返事を合図に私たちはエルウィンダに向かって歩き出した。


 伍長は迷いの森の端で、いつまでも私たちを見送ってくれた。


 とりあえずの目的地は、エルメイル。

 みんなでわいわいガチャガチャ行くのは楽しそうだね。



おわり




取り敢えず、完結ですが、ポチポチ継ぎ足して行けたらいいなと、思ってます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かった~!!!!!でもこれで完結とかヒドイ!まぁここまでも(執筆期間的に)長かったから、途中まで読んで内容忘れちゃって何度も読み返すことになったのもヒドかった。コレ書く人が書いたら300…
[一言] アシダカ軍曹、だいすきですよ!
[一言] ひとまずお疲れさまです! ぼちぼち待ってますね!
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