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3 第一冒険者遭遇

とりあえず、てきとー感満載。


 豚テキも美味しいけど、毎日は飽きるよね。でもゴマドレがあるなら豚しゃぶもいいんじゃない?


 ってことで、豚テキ肉がなくなったので豚しゃぶに挑戦する。


 お湯は冑で沸かせばいいしね。なんかすごいシュールな表現…


 と言うわけで、早速チャレンジ。


 ゴマドレはちょっと薄めにしておく。濃い味付けはアシダカ軍曹にも良くないと思うもん。ご飯はお弁当のご飯を食べている。


 沸いたお湯にめんつゆを少しだけ入れる。うちはこれにカレー粉を入れるんだよね。臭み消し的な意味で。

 まあ、ないから仕様がないよね。


 アシダカ軍曹にブロック肉を薄ーく切ってもらい、沸いたお湯にしゃぶしゃぶ。


 ひと山しゃぶしゃぶしてから、ゴマドレに和える。


「これも美味しーい!」


 ゴマドレも裏切らない。黄金のゴマドレ、最高!


 アシダカ軍曹もゴロゴロ転がりびよんびよん跳んで、謎ダンス。

 びよんびよんが増えてるから、相当気に入ったってことだよね。


「豚しゃぶも美味しいね」


 声をかけると、アシダカ軍曹は謎ダンスで応えた。

 これで野菜があったら言うことないんだけどね。野菜ジュースだけじゃ物足りないよ。しゃきしゃきの野菜が食べたい。お弁当のポテサラは毎日食べてると飽きるし。


 とりあえず、肉を茹でることもなんとかできるので、食の幅が一気に広がった。

 煮込むこともできたら良いのだけど、冑は煮込みにはどうにも向かない。残念だ。って言うか、深皿がないと汁物は辛い。


 でもまあ、焼くと茹でるができるのだから、よしとすべきか。


 鍋、欲しいなあ。

 すごい、切実。

 いや、それよりも包丁とか食器とかさ。

 椅子とかテーブルとかベッドとか…文化的な生活が…したい。


 そうして。

 肉とかスナックパックとかお弁当とかを食べながら、気付けば一ヶ月くらいは経っていた。

 もうそんなに経つのかあ。

 食の心配がないと、気持ちにも余裕が出るよね。

 夜は川の近くの洞窟をアシダカ軍曹が見つけてくれたので、そこで休んでいる。

 敷物は狼の毛皮を使っているので、地面に直に寝転がるよりは痛くない。時々、アシダカ軍曹にもたれたりしてる。

 さすがに最初は抵抗あったけど、アシダカ軍曹 の産毛はふかふかで上等なソファなもたれかかっている気分。ほのかに温かいから良く眠れる。

 蜘蛛がふかふかで温かいのが正しいのかどうかは、もう追求しない。

 ここのアシダカ軍曹はそう言うもの! でいいじゃん、もう。


 いろいろうっちゃったので、あらゆることに慣れるの早かった。常識を手放したら、何とかなるもんだよ、うん。


 始めの頃は、もしかして私って非常食? なんてちょっとだけ警戒したりもしたけど、アシダカ軍曹と私の力の差を考えれば警戒するだけ無駄だと言うことに気付いた。


 逃げたとしても、抵抗したとしても、アシダカ軍曹が本気になれば瞬殺よ瞬殺。

 さくっと一撃。

 もう、警戒するのもバカらしくなったよ。


 今のところ、アシダカ軍曹が私に危害を加える気配は皆無だし。

 美味しいものを食べると、転がって謎なダンスを踊るの平常運転。

 最近、微笑ましい気分になるくらいだ。


 それでも、森暮らしで大変なのは、やっぱりお風呂がないことだよね。


 まあ、洗濯は洗剤も柔軟剤もあるからなんとかなる。洗髪もなんとかなる。体も洗える。冑でちまちまお湯を沸かして、濯ぐことはできた。

 超面倒くさいけど! でも、アシダカ軍曹が風で乾かしてくれるのは便利!

 羞恥心とか、とっくに捨てたわ! お風呂問題の前では、そんなものは邪魔でしかない。一応、十分くらいは悩んだよ。

 でも、アシダカ軍曹は人間じゃないから、ノーカンってことで。

 いいのだ。自分で決めたんだから。


 歯磨きは、セカンドバッグに先月治療が終わった歯医者でもらった試供品の歯ブラシが入っていたから問題ない。っていうか私のセカンドバッグ、いろんなもの放り込み過ぎ! 


 衛生面がカバー出来たのは本当に有り難かった。


 問題なのが、化粧品。ファンデーションや口紅、リップクリームはショルダーバッグに入ってるけど、化粧水なんか持ち歩かないのよー。

 どうしよう、このままでは顔がカピカピになっちゃう!

 って絶叫したら、出てきたよ。街頭でもらった試供品が。化粧水と乳液と小さな石鹸の入った小さなパックがが。

 まさか、化粧品までセカンドバッグに入れっぱなしだったとは。

 確かこれ、半年前にもらったやつ…封を切ってないから大丈夫か。


 これで、基礎化粧の問題も解決ですよ。初めてのメーカーだけど、敏感肌用って書いてあるから、問題ないでしょ。

 使っても空間収納で復活するしね。


 空間収納ありがたい。っていうか、何でもセカンドバッグに入れっぱなしな、ズボラな自分を今日ばかりは誉めよう!


 着替えは、こちらに落ちた時が冬だったのが幸いした。

 私、寒がりで重ね着一杯してたのよね。

 ダウンコートの下はカーディガンでしょカットソーでしょ、インナーは半袖と六分袖でしょ、レギパンの下は五分丈のスパッツでしょ。

 少なくとも替えの下着は何とかなったのよね。

 これが夏ならヤバかった。洗濯したら、乾くまで下着なしとか、考えるだけでイヤー!


 その心配だけはない。


 寒がりの自分GJ!


 こんな感じなので、一ヶ月くらいは割りと余裕で過ごせたのよね。


 衣食住、難は少々あれど、充分目を瞑れるものだった。


 結構、私ってば運がいいんだなあ。


 なんてことを考えながら、本日は猪肉の生姜焼きもどきを作ってます。


 野菜ジュースのアップルハニージンジャーと言うのがですね。結構、生姜風味が強いんですよ。何も考えずに一気飲みしたら、噎せるくらいには。


 すんごい体に良さそうなんだけどね。


 で、思った訳ですよ。

 これとめんつゆで生姜焼きのタレはできないかと。


 そのままだと味が薄いので、鉄板皿を加工してもらい、ちょっと深みを作ってもらった。

 それで、双方混ぜたものを煮詰めたら、それっぽいものができたのよ。


 厳密に言えばいろいろ違うけど、生姜焼きもどきとしては何とか及第点を出せそうなので、早速作ってみることにした。


 例によって、猪肉はアシダカ軍曹に薄くスライスしてもらい、タレをまぶしてから鉄板で焼く。

 焦げた醤油の香りがたまらーん!


 ヤバい、普通に美味しい気がする。


 鉄板の上でじゅわじゅわ音をたてる肉を、じっと見つめる。

 アシダカ軍曹も鉄板を覗き込んでは謎のダンスを踊っている。


 そろそろ焼けるかなー。


「何か、いい匂いがする!」

「待て、コークス。幻かも知れん。油断はするな」

「もー俺、幻でもいい。腹一杯食べる幻見て死にたい」

「私も…」

「フィッツ、ジュエル! 落ち着け!」


 なにやら騒がしくなったと思ったら、薮から人が雪崩れ込んだ。


 えっと、話の内容からして、最初に来た細マッチョなお兄さんがコークス。次に弓を背負ったのがフィッツで女の子がジュエル。最後に駆け込んできた槍を手にしたマッチョなおじさんが…誰?


「え、誰…?」

「精霊?」

「え、私精霊じゃないよ。普通の人間だよ…多分?」

「多分ってどゆこと?」

「…フォレストブラックスパイダー…」


 おじさんだけがアシダカ軍曹に気付いて真っ青になった。


 フォレストブラックスパイダーって、長い名前だけど、アシダカ軍曹のことだよね。

 アシダカ軍曹、黒くないよ。むしろ銀色だよ?


「フォレスト…」

「ブラック…」

「スパイダー…」


 おじさんの言葉に、三人はようやくアシダカ軍曹の存在に気付いた。慌てて各々武器を構える。

 ちょ、遅いよ。


 アシダカ軍曹も八本の内の、前四本の足をワキワキして威嚇を始めた。


「こんなでかいフォレストブラックスパイダーがいるなんて…」


 おじさんも武器を構えるが、顔色は悪いままだ。


 うーん、ここで戦闘とか始められるとマジで困るんですけど。

 私、戦闘力皆無たから。


「ちょっと、喧嘩とか止めてくれる? 軍曹も威嚇しないで。話が進まないから」


 とりあえず、双方の臨戦態勢を止めにかかる。

 私がたしなめると、アシダカ軍曹は、ワキワキしていた前足を二本下ろした。


 おじさんたちは、武器を手にしているものの、少し力を抜いた。


「君は…」

「あ、ごめん。ちょっと待って」


 おじさんが話しかけるのを止めて、鉄板の肉を皿に移動する。

 このままじゃ、焦げて食べられなくなっちゃうからね。


 割り箸でせっせと肉を皿に移していると、おじさんたちの視線がアシダカ軍曹から肉に釘付けになった。


 一通り移し終えたところで、コークスとフィッツががばりとその場に土下座した。おお、ジャンピング土下座、初めて見た。膝は痛くないのかな。


「もう、我慢できない!」

「その肉を、食べさせてください!」

「私たち、もう一週間何も食べていないの!」

「えええー」


 ジュエルも膝まづいて懇願してきて、突然のことに私はドン引きだ。


「うちの若い者が済まない。俺はウィリアム、このパーティーのリーダーだ。ジュエルが言った通り、我々は一週間何も食べていないんだ。その肉を売っては貰えないだろうか?」

「売る…?」


 お金かあ。

 後々、必要な気はする。何せ私は一文なしだし。日本円ならばいくらか持ってるけど、こっちじゃ使えないよね。

 考え込んでいたら、ウィリアムが言葉を続けた。


「いきなり現れて、無礼なことを言っているのは詫びる。一人、銀貨二枚を払う、何とか考えては貰えないだろうか」


 銀貨二枚って、どれくらいの価値?


「え、リーダー。二枚って…」

「馬鹿、これを逃したら、もう後はないんだぞ。二枚くらいなんだ」

「そうよ。迷いの森で食べ物を手に入れられる最後のチャンスかも知れないのよ!」


 コークスが渋ったら、フィッツとジュエルがすかさず集中攻撃を仕掛けた。

 だったらお前は食べるなとまで言われて、コークスは半泣きだ。


 この感じからすると、銀貨一枚は千円よりは上か。二枚でニ千円なら、こんな森の中での食料調達するのに高いってことはないよね。

 富士山で食べるカレーは平地より高いけど、輸送費とかいろいろ込みだもん。

 じゃあ二枚で五千円だとする。これだとちょっと躊躇するなあ。でも、緊急時なら仕方がないと思えなくもない。

 二枚で一万円、うん。間違いなく躊躇する。さすがに緊急時でもきっつい。私個人の感覚だけど。

 とりあえず五千円超え、一万円以下くらいに思っておくか。

 幅が広いな。中とって、七千五百円。これでいいや。

 七千五百円かける四人で三万円。

 おお、結構な金額。


 臨時収入としては問題ないよね。


 返事をしようとしたら、アシダカ軍曹に止められた。





作者のバッグの中もこんなもんです。

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