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19 ちょっと休憩

ちょいと短め。


 馬車は草原から森へと入る。

 ガタゴトはなおひどくなった。


「うわ、酔いそう。私、あんまり酔わないタイプだけど」


 三半規管が丈夫なのか、乗り物酔いはあまりしない。だから、この馬車の旅もお尻が痛いこと以外は耐えられた。

 しかし、この揺れはひどい。


 酔いやすい人は、最初の数メートルでリバースしてるよね。


 私も、この馬車の中で本とか読んだら、酔うかも。


 周囲はなんだか薄暗い。

 迷いの森の外輪にある森だ。草原と比べたら日も差さないしね。鬱蒼とまではいかない。

 この辺りはまだ、魔物の遭遇率は低いらしい。

 そんな森の中でのお昼休憩は、結構ハラハラする。


 遭遇率低いって言ったってさ。


「ゼロじゃないのね」

「別に迷いの森は出入り自由だからね」

「でも、迷いの森の魔物は、あまり外には出ないのよね」


 迷いの森の魔物は強い。

 餌を獲るなら、ガンガン森の外に出て来そうなものだけど、そこまで頻繁ではないらしい。

 なんでだろう。


「一説には、迷いの森の魔物は、森の魔素を吸収していると言うことです」

「魔素で腹が膨れるらしいっすよ」

「でも、襲ってくるよね? 割りと食べる気満々で」


 何度か襲われたことがある狼たちは縄張り的な要素はなかったよ。絶対、なかったよ?


「まー、あれじゃないっすか?」

「あれって?」


 あれそれこれ言うなー。

 

「たまにはデザートも食べたいっすよね」

「デザート…」


 ブライスはにかりと笑った。


 何か微妙に含みのある言い方だなあ。


 これは、ひぃちゃんたちにあげたお菓子とか、野菜ジュースのことを遠回しに言ってるのかも。


 ひぃちゃんたちのびよんびよんと謎ダンスは、ブライスたちからも見えただろうしね。

 面と向かって聞いては来なかったけど、何か言いたそうではあったもんね。


 二人にお菓子類をあげるのは、ちょっと躊躇われる。

 異世界のお菓子だもん。誰彼構わずあげちゃマズイことくらい私にだってわかる。


 ウィリアムたちは、今さらっていうのもあるし、世話にもなっているから信頼もしてる。

 実際に、町でお菓子のことなんて一言も言わなかったしね。


 っていうか、うっかり流したけど、私は狼にとってのデザート?


「魔素を吸収しているから、迷いの森の魔物は桁違いなのか」


 ウィリアムがしみじみと呟いた。


 考えて見れば、アシダカ軍曹たちだって、私の持ち込み食料にはがっつくけど、それ以外はどうでも良い感じだったわ。

 今はお腹空いてないのかなー? くらいしか考えてなかったけど。


「でなくても、魔物は魔素の濃いところの方が強いっすよ」

「迷いの森の魔素は…」

「勿論、深くなればなるほど濃いですよ」

「深い場所…」


 どの辺だろう?


「ウィリアムたちと会った場所は?」

「どーだろー? ほどほど?」

「中の下くらい、じゃないかな?」

「中の下…基準が解らない…」

「魔素が濃いと、息をするのも辛いのよ」

「あ、そんな感じ?」


 空気も濃すぎると、息がしにくいんだよね。


「魔素が濃いと息苦しい? そんなの感じたことないなあ」

「グンソウがその辺りは気をつけてくれたんじゃないだろうか」

「確かに、軍曹はいろいろと気を遣ってくれたような?」


 きっと、魔素の濃い場所も避けてくれたんじゃないかな。


「本当、頼りになるわー」

「百人力、どころじゃないしねー」

「あの…」


 ウィリアムたちと和気藹々と話していたら、クレアが躊躇いがちに口を開いた。


「先ほどから、話題になっているグンソウと言う方は…」

「俺も気になったっす。何かすごい人なんすね」

「あー…」


 私たちは互いの顔を見合せた後、視線をすいーっと逸らした。


「うん、軍曹は凄いよ。詳しい話は、目的地に到着してからにしよう?」


 今ここで話を進めたら、紹介しないといけない流れになりそうな気がする。

 そうなったら、空気の読めるアシダカ軍曹は来ちゃう気がする。


 それは、今は止めておいた方が良い気がするのー。


 主にクレアとブライスの精神の安定のために。


 ウィリアムたちは、今さらきっと気にしないだろうけど。


「と、とりあえず、出発するか。今からなら、夕刻前には着くだろうからな」


 不自然に話を流し、ウィリアムは馭者台にに上った。


 クレアとブライスはそんなウィリアムと私たちを胡乱そうに見ていたが、追及はしなかった。




次か、その次辺りで一部完、を予定してます。…うん、その予定て

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