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第16話 いろんなプレイヤーズ

番外編的お話、ペペロンチーノ以外のプレイヤーを描写する回



 ○現・攻略組


 1.レッド

 プレイヤーのスキル解放状況はどれくらいだろうか


 2.名無し

 プレイヤー全体の十%にも満たないだろうな、掲示板や直接会った奴からの予想だが


 3.怪力ハングライダー

 ほとんどが何一つスキルを持っていないと言うことか?


 4.名無し

 そういうこと


 5.レッド

 やはり、とにかく不死生観を解放させるしかないか


 6.名無し

 待て待て、それの解放は後戻りが効かない。ペペロンチーノに影響を受けすぎだ。


 7.ぽてぽち

 そう、それは思ってた。不死生観はいつでも取れるスキルだし、ないからこそ取得可能なスキルがあるかも


 8.レッド

 それなんだが、プレイヤーには無限大の可能性があると明記されている。つまりだ、取れないスキルは理論上無いはず。もし、邪魔なスキルがあるなら、それを消す方法もあるはずだ。


 9.怪力ハングライダー

 なるほど、ところで魔法に関してはどうなんだ?


 10.ぽてぽち

 今のところ、一人しか確認出来てない


 11.レッド

 いや、二人だ。俺も使える。


 12.ぽてぽち

 えー?早すぎでしょー。コツ教えてよ。わけわかんない


 13.レッド

 そうだな。知識でなく経験の方がいい。やはり本場で習うのが早い。アルカディアに来い。


 13.ぽてぽち

 うーん、私は聖公国住みだからなぁ。国出るのって大変。


 14.怪力ハングライダー

 それな、ゲームみたいにワープとはいかない。


 15.名無し

 私もようやく弟子入りが叶った所だ。


 16.怪力ハングライダー

 お、やったな。剣術スキル、楽しみにしてるぜ


 17.レッド

 剣術スキルも、やはり師事しないと難しいかな。また俺にも手解きしてくれ




 ○迷宮探索組


 224.名無し

 うーむ、やっぱり俺達のステータス低すぎ。


 225.名無し

 レベルでいうと、30はいったんだけどな。まぁ、低階層でチクチク貯めてだけど


 226.名無し

 ゴブリンなら数匹いても倒せる様なった


 227.名無し

 俺なんてオークもいけるよ


 228.名無し

 俺は荷物持ちだから特に何もしてない


 229.ななし

 >>228 メンバーは?


 230.名無し

 剣士と槍使いと、あと神官がいる。回復魔法しゅごい


 231.レオンぬ

 バランスいいじゃん、


 232.パオンヌ

 いやいや、一人要らないでしょ、荷物持ちて


 233.名無し

 いや最初は頑張ってたんだけど、怪我とかして痛い痛い騒いでたらいつのまにか後方配置に……追い出されそう


 234.名無し

 パーティ組む?5階層まででのんびりその日稼ぎだけど


 235.名無し

 良いよねそういうの。現地人と組むと大変。


 236.名無し

 俺達とは違って色んなものを背負ってますから



 ○ホームレスプレイヤー


 755.名無しの家無し

 森暮らし何年だろうか


 756.家無し名無し

 みんなどうやって定住しているんだろう


 757.名無し

 毎日が虚しい……


 758.名無し

 哀しくなるスレだ。ちな聖公国住み。


 759.家無し名無し

 俺も行っていい?


 780.名無し

 聖公国なら、教会に泣きついたら泊めてくれるよ


 781.迷宮暮らしの名無し

 迷宮都市こいよ。とりあえず誰でも稼げるってならここだぜ。


 782.名無しってぃ

 痛いのいや……


 783.名無しの家無し

 それ。闘うの怖い


 784.家無し名無し

 薬草拾いみたいな素材採集系ある?



 ○一般的プレイヤー


 725.名無し

 こっちに来ても仕事でストレス溜まるのは変わらんね


 726.名無し

 うむ


 727.名無し

 冒険しようぜ冒険


 728.名無し

 ファンタジーも慣れると、あれだね。不便しか感じない


 729.名無し

 寝る前に掲示板見るのが楽しみなんだが


 730.名無し

 外見は良くなったし最高だろ!まぁ、コミュ障は変わらないが


 731.名無し

 もっとカッコいいキャラメするべきだった……


 732.名無し

 今度商人として迷宮都市に行くよ


 733.名無し

 最近はなんかおっさんに養ってもらってる。無償の優しさには勝てなかったよ……。


 734.名無し

 字面がやばいな。女キャラか?


 735.名無し

 うん。しかも俺はロリキャラ。


 736.ペペロンチーノ

 てめー、龍華住みだろ


 737.名無し

 >>732 まじで?途中にどこ寄るか教えて


 738.名無し

 げっ、ペペロンチーノ見てる


 739.名無し

 アルカディアの、ルメールって町だよ


 740.ペペロンチーノ

 なんだ。もしかしてパトロン作ってる奴って結構いるのか?


 741.名無し

 ええい!お前は攻略組だろ!ここから出て行け!


 742.ペペロンチーノ

 んだとぉ?俺は人畜無害なプレイヤーだぞ、スレタイの『羊さん的プレイヤー』にも合ってるだろうがっ!


 743.名無し

 ほら、みんな出てこなくなったじゃん


 744.名無し

 戦闘力は羊以下なんだけどなぁ



 ○冒険好きプレイヤー


 888.益荒男

 今日は竜山脈を目指し歩く


 889.ケンタリー

 写真貼り付ける機能みたいなの欲しいよな


 890.名無し

 確かに。この前、高い位置から見下ろした平原のなんと雄大なことか。共有したい。


 891.黒介

 やっぱりファンタジーは違うな。魔力の関係なのか、幻想的な風景が多い。なんで朝の川がキラキラ光るのやら


 892.スピリット

 あちらじゃ、こんな自由にできなかったしな


 893.ダークネオン

 しがらみからの解放。夜の草原、これが本当の我だと、魂が告げている。


 894.バイクマン

 バイク欲しい、ないのかな?プァーと走りたい


 895.黒猫参

 僕のとこのキャラバンで自転車みたいなのならあったけど、どこで手に入れたんだったかな


 896.益荒男

 むむっ、いきなり地竜達の洗礼。やむなく撤退。


 897.ほっけ

 おい、まっすー。逃げるの早すぎ、置いてくなよ。




 *


 ぱちりと、目を開ける。朝起きる前にちょろっと掲示板を覗く、それが僕の趣味だった。僕達プレイヤーがこの世界に閉じ込められてから約二年。未だに、帰る目処は立っていない。

 生きていく為には先立つものがいる。つまりはお金だ。僕は部屋を出て下に降りて行った。テーブルや椅子がたくさん置かれた食堂で、少し身体が横に大きな壮年の女性が料理を作っている。相変わらず朝が早い人だ。


「おう!起きたか!ほら!賄い食って頑張れ!」


「おはようございます!ありがとうございます」


 僕が寝泊まりしているのは職場の二階部分だ。住み込みで働かせてもらっていて、なんと賄いまで出るとても良心的な所なのだ。たとえお給金がスズメの涙だろうと、寝床とご飯が出る事がどれだけ素晴らしい事か。プレイヤーの中には家の無い人も少なくない。


 床の掃除をしたり、テーブルを拭いたりと開店準備を進めていると、まだ開いていないのに何人かの客が入ってくる。


「ちーす、出来次第くれー」


 三人組の男の人だ。身体の急所を守る鎧を着て、それぞれが武器を持ちながら席に着く。


「いらっしゃいませ!おはようございます!」


 僕は元気よく挨拶をした。僕の挨拶は気持ちが良いといつも褒められる。今も、大柄な男の人が豪快に笑いながら手を上げて答えてくれた。


「おうケースケ!お前もそろそろ迷宮もぐっか?」


 か、勘弁してください……。声を細々にそう言うと、三人共が大きく笑う。


「おいおい、男たるもの勇ましくならなきゃダメだぞ!」

「そんなんじゃ女捕まえらんねーぞー」

「まぁ、とりあえず身長伸ばして筋肉つけねぇとな!その細っこい腕じゃあ、すぐやられちまう!」


 こんな言われようだが、別にこれはいじめられているわけではない。ただのいつものじゃれあいだ。逆に僕は、毎朝この人達とこのやり取りが出来ることにホッとしているくらいだ。


 時間が経つと、どんどんと客は増えていき、ご飯を食べ終わると武器を担いで何処かへ行く。ここは迷宮都市、ただそう名付けられただけの街。

 毎日何人もの探索者が迷宮に潜り、魔物を倒し財宝を手に戻ってくる。もちろん、そのまま帰ってこない者も少なくない。深い階層ほど、珍しく貴重な財宝が手に入る。元の世界のゲームのダンジョンと同じだ。深くなればなるほど魔物も強くなっていく。

 だが、この世界の人達は死んでも生き返らない。その事を、毎朝見ていた人がしばらく来なくなると痛感する。

 ただ行きつけの店を変えただけならば良いのだが、街の中で見かけなくなる。そしてそれは、この街にとって普通の光景なのだ。


 この世界は僕達の世界より命が軽い。その中でもこの街はとびきり軽い。


「客足も落ち着いてきたね」


 この店の店主……僕は女将と呼んでいる人が厨房から出てきてそう言った。この店は迷宮から帰って来なくなった旦那さんを思って開いた店らしい。安くて量が多いと、探索初心者を始め中級者くらいまでにそこそこ人気がある。味は普通だが……。いやいや贅沢は言うべきではない。

 一人で切り盛りしていたが、初めて迷宮に挑んで怪我をして泣き喚いていた僕を拾ってくれた。恩人である。


「女将さんも休憩されては?」


 じゃあそうさせてもらおうかい、と椅子にどかっと座る。僕はせっせとテーブルを拭いたり食器を片付けて洗ったりとしていると、そのうち昼が近付いてきた。無言で女将さんが賄いを作ってくれて、それを一緒に食べる。


「ケースケ、あんたはまた迷宮に潜るのかい?」

「いや、怖いんで、できれば潜りたくないです」

「……そうかい」


 命が軽いこの世界。僕達は例外だ。死なない、いや。死んでも生き返る。らしい。


 らしいというのも、僕は一度も死んだ事がないからだ。掲示板とかでは、それはもうとても気持ちが悪い感覚だという。二度と味わいたくないと。だが、それを一定回数こなすと『不死生観』というスキルが解放されて、死が全く怖くなくなるとか。


 でも……、僕は思う。初めて迷宮に挑んで、狼に似た魔物に腕を噛まれた。あの痛みは本物だった。それまではゲームを遊ぶ様な気分で調子に乗っていた。死ぬ以前の問題だ。あんな痛い思いをそもそもしたくない。


 攻略組と呼ばれる人達は、その痛みすら操る事ができるみたいだが……その条件が極限の痛みを何度も味わう様な事らしい。頭おかしいと思う。


 迷宮に潜るプレイヤーは多い。単純に、何の後ろ盾が無い僕達プレイヤーでも稼ぎやすいからだ。迷宮ギルドと呼ばれる団体に所属して、迷宮から様々な素材を持ち帰れば良いだけのプレイヤーにとっても分かりやすい仕様になっている。

 どうやら、迷宮産のあらゆるものがこの世界では重宝されているらしく、中には人生三回分の金がたった一つの財宝で手に入るとか何とか。


 プレイヤー全体で見て、迷宮都市に来ているプレイヤーの比率は高い。

 迷宮ダンジョンの最奥層に辿り着いた者は願いが叶うとか、別の世界に繋がっているとか噂があって、元の世界への帰還の可能性が一番高いと言われているからだ。

 帰還組、と呼ばれる元の世界への帰還を目指すプレイヤー達が最も注目しているのが、この迷宮なのだ。


 でも、僕の様に探索から脱落した者も多い。未だに潜り続けているプレイヤーでもほとんどがスキルを何一つ解放出来ていないのだ。僕の様な弱小プレイヤーには、迷宮探索は荷が重すぎる。平和な国でのびのびと育って来たのだ、急にこんな魔物との殺し合いの世界に飛び込めるわけがなかった。


 かと言って、どこか別の所へ行って稼ぐなんて事も出来る気がしない。プレイヤーの中には旅商人と一緒に行商をしていたり、魔物を狩ってその素材で資金を稼ぎ旅をしている人とかがいて、そうやってこの世界を満喫している人達が少し、羨ましい。


 ガヤガヤと賑やかな夜の食堂を見て、思う。


 今日はどこそこまで潜ったとか、こんな魔物を倒した。俺はこんな財宝を手に入れた、とか。迷宮の色んな話を皆がしている。


 自分は物語の主人公になれなくても、主人公の様な冒険譚がいっぱい聞ける。そんな生活を、僕は割と気に入っていた。そりゃ、漫画のキャラみたいに魔物を切っては捨てみたいな事したいけどさ。


「おいケースケぇ!こっちに酒もってきてくれぇ!」

「こっちも頼むー!」

「おーい!こっちは追加で肉くれ肉ー!今日は奮発するゼェ!」


「はーい!ちょっとまって下さい!」


 元の世界には帰りたい。けど、今はこの世界が楽しくないわけじゃない。願わくば、いつまでも平和に暮らしていきたいと、僕は切に思った。

 

 最近の疑問は、スキルを一番解放している団体である攻略組が何故元の世界に帰りたがらないのだろう?という事だ。


 掲示板で質問してみると


 あいつらはリアルで引きこもりだったんじゃね


 だから元の世界に未練がないんだよ


 とかひどい事ばかり言われていた。そうなのかな、僕は彼らも……この世界を純粋に楽しんでいるんじゃないかと思っていたんだけど。いつか、この街に来た時に会う機会があれば聞いてみよう。



 *



 俺は益荒男。突然ファンタジーな世界に飛ばされたプレイヤーという存在だ。いや、ゲームに閉じ込められたという方が正しいのか?未だにプレイヤーの間でも議論になる。

 まぁそれは良い。俺は今、目の前の景色を堪能しているのだ。少し小高い丘から見える巨大な山々が長大に連なる山脈、通称『竜山脈』。文字通り竜が住まう山々だ。遠目に空を鳥でない生き物が飛んでいるのが確認出来る、ファンタジーの代表的生物……ドラゴン。この世界では竜と呼ばれている。


 俺は石に片足を乗せ、その足に肘を乗せてニヒルに笑う。口元に加えた細長い蔓が伸びた葉っぱが揺れる。


「俺の冒険心がくすぐられるぜ」


 ガヤガヤと周りの観光客達が記念撮影を行なっている、俺はそれに映らない様に横にそれた。


「はぁ、何してんの?」


 そう言ってため息を吐くのは、女子高生くらいの女だ。髪は赤色で、スタイルの良い身体を動きやすい地味な色合いの服装に包んでいる。丸い鍔の帽子を弄りながら呆れ気味だ。


「ほっけか、何をしてるというが、何も。俺はいつも通りだ」


 俺は腕組みをしてそう言う。ほっけはジトッと俺を見てから地図を広げた。


「ところで本当に行くの?」


 地図と目の前の景色をすり合わせしながらほっけが聞いてくる、もちろんだと即答する。やれやれ、怖気ついているのか。中身は男の癖に。

 そう、こいつもプレイヤー。名はほっけ。元の世界の俺の友達だ、男のな。

 一緒にゲームを始めたらそのまま閉じ込められてしまった、最初はこんな外見だから見つけるのに大層苦労したのを覚えている。

 俺達は高校生、せっかく受験や勉強から解き放たれてファンタジーな世界に来たのだ。旅をするしかないと二人旅に出て、今に至る。


「うーむ、とりあえずこう行くか。ほら!カッコつけてないで早く行くよ!」


 ふん、何だかんだでお前もドラゴンを見るのが楽しみなんだろう?俺は手を引っ張るほっけのなすがままについて行く。しょうがない奴だ。俺はほっけの尻を見ながら思う。


 濃い茶色の髪に、アゴヒゲ。吊り上がった眉に少し垂れた瞳。身長は高く筋肉も程良く付いている。それが俺のキャラ、益荒男だ。鏡を見るたびにカッコいいと惚れ惚れする。


 竜山に向かい歩く、何かが向こうから走ってくる。俺は剣を抜いた。ほっけの前に立ち構える。


「ほっけ、俺の後ろにいろ」

「あんたすぐカッコつけるね」


 地響きが響き砂埃が近付いてきた。デカいトカゲだ、地竜……ってやつか?大きさは車くらいだ、俺は一気に駆け出して剣を振るう。弾かれて引っ掛けられて俺は吹っ飛んでその辺の地面を転がった。


「まっすー!」


 ほっけからの心配の声が聞こえる、五体満足を確認。身体中痛いが致命的なダメージではない。起き上がると、地竜の突進を避けたほっけがこちらに向かってきていた。

 俺は弓を構える、ほっけも振り返り追いかけてきていた地竜に担いでいた槍の切っ先を向けた。キリリ、弦を引きしぼり矢を放った。ぺよん、と音が鳴り矢が弧を描いて地竜の腕あたりに当たって弾かれた。


「相変わらず下手だね!」


 ほっけは俺をバカにしながら地竜を横に避けて槍を突き出した。カツンと音がして槍が弾かれる。腕に引っ掛けられてほっけが吹っ飛んだ。

 ちぃ……俺は舌打ちをした。こちらに向かって走ってくる地竜。俺は石を拾って投げつけるがもはや気にもとめていない。俺はとりあえず距離を取るためダッシュで走る。


「おい!まっす!逃げるなぁー!」


 何か後ろから聞こえてくるが心外な、これは戦略的撤退というやつだ。息を切らしながらしばらく走ると、いつのまにか地竜は居なくなっていた。休憩しながら掲示板に書き込み。ハッ!ほっけ!


「ハッ!じゃないよ。あいつもう興味なくしたのか私にすら目を向けずどっかに行ったよ」


 ふん、他愛ない。どかっと大きな石に座り込む。まぁなんだ、中々強かったな。


「人を置いて逃げたくせに……」


 ジトリと睨みつけてくるほっけ。俺は顔を逸らして口笛を吹いた。ふむ、とりあえず今日の所はここまでだな。俺は立ち上がる。


「帰るぞ」

「怖くなったんだろ……」


 違うぞ、怪我をしたから念の為にだな。しかしほっけのジト目はしばらく続く、身体が小刻みに揺れている。貧乏ゆすりか?いや、俺も揺れている。

 ほっけが異変を感じてキョロキョロしだした。俺は動じない、地震だ。俺がさっきまで座っていた石が地面からせり上がってくる。


「ぎゃあー!」


 ほっけが叫ぶ、石でなく竜だった。起き上がって地面に足を置くだけで地響きが響き俺とほっけの身体が浮く。


『あーよく寝たー』


 石の様な身体を持つ竜がズシンズシンと地響きを立てながら何処かへ歩いていった。俺は腕組みをしながらほっけに言う。


「あの程度にビビるとは、情けない」


「自分が地面に横になってんの気付いてんの?」


 おっと、どうやら俺は地面と平行に立っていたらしい。立ち上がろうとするが膝がプルプルする、むむ?昨日のトレーニングによる筋肉痛か?ほっけは俺を無視して岩竜の背中を見つめて言った。


「いやー、すごいな。あんなのがゴロゴロいるのか」


 そうだな、この世界でしかできない経験だ。現実より不便だしぶっちゃけ帰りたいが。さぁ、とりあえず今日はこれくらいで、また明日から探検に行こうか。



 *



 様々なプレイヤーが、それぞれの考えを持ってこの世界を自由に生きている。


『プレイヤーには無限大の可能性がある』


 彼らは何も教えてもらえず、何も分からずこの世界に放り込まれた。この世界に来て初めて視界に入ったこの言葉だけが、彼らをこの世界に送り込んだ何者かからのメッセージだ。



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