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不死なるプレイヤーズギルド  作者: 笑石
本編……?
120/134

第117話 呪いの竜戦士

恐るべき三日連続更新


あらすじ

天体魔法・地波壇を探しにきたプレイヤー一行は、フゥムスと呼ばれる謎のスキンヘッド男とお茶をする事にした。



 天体魔法『地波壇チハタン

 かつて、ヒズミさんが天体魔法使いと呼ばれる超越者をぶっ殺して掠め取った……世界アルプラに『大地』を『生み出す』魔法だ。


 世界を構成する界力ファルナ、そしてそれに『方向』を与えた《アストラル》。

 そこから『現象化』した《マギア》と『顕在化』する《天体魔法》。


 雑に説明すると、界力ファルナから大地そのものを創り出す力こそ、地波壇チハタンである。



 *



 突然だが、今俺の目の前には不死なるプレイヤーズギルドことぷち子が立っていた。緑の短い髪に生意気な面と死んだ目が特徴のクソガキだ。およそ何を考えているのか分からない瞳で俺を見つめ、その後身体を大きく風船の様に膨らませた。


 膨らんだ身体を切り離す様に地面にとあるものを残して、またぷち子はガキンチョの姿に戻る。


 とあるものとは、鈍く銀色に光る金属製のでかい卵形をした……機竜と呼ばれる、機械で竜を模した兵器の胴体部分だった。

 かつて俺が大金はたいて購入し、迷宮都市の奴らにバラバラにされたやつだ。


「ほぅ……これを?」


 ぷち子の頭を雑に撫でながら俺は頷いた。

 あぁ、さっき言った通りに頼む。


 俺のお願いを受けて、フゥムスは機竜の残骸に触れる。直後に異変があった。まるで粘土の様に残骸は形を変えていく。

 地波壇チハタンは大地を司る天体魔法……! その力を以ってすれば機竜の金属製ボディを自由自在に変形させる事が可能なのだ……!


 そして、出来上がったのは一抱えもある金属の塊だ。俺は持ち上げてみる。中は空洞になっていて、頭がすっぽり収まる様な形をしていた。


「む……。なるほど、これは龍華の『龍血計画』の……凄まじい、執念が込められている。既に破壊されていた様だが……搭乗者にはとてつもない精神汚染があっただろう」


 フゥムスが俺の抱える塊を見ながら、少し眉を顰めてそう言った。なるほど。俺は合点が言ったと頷いた。俺もあの時精神汚染を受けていた、というわけか。確かに俺らしくない、野蛮な振る舞いだったな……。


「え? いや、いつも通りだろ……」


 当時俺が機竜に乗って暴れているのを見ていた無限が小声で何かを言っている。


「しかし、何という、存在だ。異邦者、としても異質すぎる」


 身体をブルリと震わせ、フゥムスはぷち子から一歩距離を取る。今までの一連の流れから、フゥムスという男はかつてのヒズミさんの様な、この世界における超越者たる化け物である事が察せられる。

 そんな男が、膝くらいの身長しかないガキンチョを恐れている。そしてその畏怖の視線を向けられた当化け物は、相変わらず何を考えているのかわからない顔でボケッと突っ立っている。


「まま。あち、こいつほちい」


 突然、ぷち子がフゥムスを指差して俺の方を見つめながらそう言ってきた。肉食系女子かな? 将来有望だな……。あまりにシンプルな発言に俺は慄いた。

 その言葉に俺よりも慄いたのがフゥムスだ。ビクッと身体を震わせて戦闘態勢をとった。待て待てフゥムスさんや。俺は両手を広げて間に入った。

 きっと誤解があります。こいつは生まれて間もなくてね……言葉が辿々しいのも仕方がないこと、もしかしたら一目惚れなのかもしれない。俺はそう言ってぷち子に目線を合わせる様にしゃがみ込み向かい合った。

 な? ぷち子。あのおじさん殺気立ってるから、もう少し上手く言葉を使おうな?


 俺の言葉に、ぷち子は考え込んだ。掲示板を使い、プレイヤー達の言葉を学習して言い直す。


「あいつを、ぷれいやーにする」


 ……? え? ぷち子ちゃんあなたってば、そんな感じのモンスターなの?

 ドン引きしているのは俺だけではなく、言われた当人であるフゥムスに横のヒズミさんも顔が引き攣っている。一方、無限はよく分かってないしレッドはいつも通りだった。


「ふっ……。やはり、ペペロンチーノをアルプラ人と融合させたのは、その一貫だったわけか」


 腕を組み鼻を鳴らすレッドがうんうんと頷いている。たしかに俺は以前、何故か現地人の体内に宿った事があるが……まさかそれが伏線だったなんて、でも結局どういうことなのか分からない。


「え……あれってそういう意図あったの……マジモンの侵略者じゃん……」


 すごい、あのヒズミさんですらドン引きだよ。つまりあれか? 不死なるプレイヤーズギルドって、この世界から見たら侵略者……? いや、界力ファルナ吸収特化能力持ってた時点で今更なのか……。

 俺は顕現した辺りでも同じ事を考えた気がするが背筋が凍る思いをした。


「たしかに、何でぺぺが現地人に寄生してんだろうとは思ってたんだよ。グリーンパスタ辺りが何かしたのかと思ってたけど……」

「ぐりーんぱすたが、やってみたら、っていってた」


 無限の呟きにぷち子が表情を変えずに顔だけを向けて反応する。不気味だったのか無限はちょっと身構えてた。

 しかし、ぷち子の言う通りならば……。俺はぷち子を諭す事にする。

 あのな? ぷち子。グリーンパスタとかいうイカレ野郎の言うことは聞くな? あいつだけはマジで何考えてるか分かんないから。


 一般的なプレイヤーや、βテスター達と比べて……それこそレッドと比べても、グリーンパスタという奴は理外の思考回路をしている。

 そんな奴はぷち子の教育によろしくない為に俺はそう教えているのだが、しかしぷち子はよくわからないと首をかしげた。


「あちは、なら、なんのためにいきる?」


 哲学的思考に目覚めた小学生のガキかな? 

 めんどくさいのでママ権限を使うことにして俺はぷち子を高い高いして満面の笑みを浮かべた。

 うるせぇッ! ガキは小難しいこと考えず黙って暢気に生きてりゃ良いんだよッ!


「じゃあ、ばいばい」


 と言ってぷち子は俺の影に溶けて消えていった。場を沈黙が支配する。息を大きく吐いたフゥムスが尻餅をついて、ようやく空気が弛緩した。


「……恐ろしい、アレほどの化け物は、見た事がない」

「全盛期はあんなモンじゃなかった、まぁ直には見てないが……あのドイルやハイリス……レックスが居たとしても、勝てないだろう」


 ヒィッ! とフゥムスが引き攣った音を出す。ビビりすぎだろ。


「ドイル、ハイリス、レックス……彼らですらどうしようもない存在など、『規格外』だ。そして、死を求める私にとって、アレの求めることは最も恐ろしい……」


 そんなに死にたいなら自殺すれば? 俺の純粋な疑問に、フゥムスは諦めにも似た笑みを浮かべて答える。


「高まり過ぎた『界力ファルナ』は、この世界の存在を永遠に近付ける。それは《神》の視線を集める事であり、原因でもあるのだが……私は、すでにその一線を超えてしまっている」

「コイツは私らより数世代後の人間でな。つまり数百年歳なわけだが……神からの恩寵を受ける加護者は、その与えられた力によって自ら世界から去ることを許されない」


 ヒズミさんの補足説明を聞いて俺は抱えていた金属の塊を持ち上げた。

 それで、これを被るとどうなる? 俺の抱えた金属の塊……要はヘルメットなのだが。バイクのフルフェイスタイプに似ている。


「被ると、おそらく宿っていた執念が着用者に『力』を与えるだろう。私も昔は高みを目指して研鑽していた。故に加護も有り難く、そして超越者と自称できるほどにまで辿り着いた。しかし、そこにあったのは、ただ小さな満足感と疲労感。……向いていなかったのだろう」


 へぇ〜。がくりと項垂れるフゥムスを横目に俺はヘルメットを掲げた。なるほどなぁ……。



 *



 という話なんだが……。

 俺は今までの経緯を説明した。


「え? いやつまりどういうこと……?」


 俺は迷宮都市のとある喫茶店に来ていた。そこの店員であり、全身に白い羽毛を生やした鳥人間が俺の前で困った声を出す。何故か、首から上には金属でできたバイクのフルフェイスヘルメットみたいなのを被っている。

 まぁそれは置いといて話を続ける。


 ああ……長い人生で虚無に襲われたフゥムスは一切の食事を絶って、表舞台に顔を出さないよう大きく力を扱うことを止めたらしい。それも全て、目立たないようにして神からの関心を失わせようとな。

 今のフゥムスは霞を食べて生きながらえる仙人みたいになっているらしい……断食しても身体が勝手に周囲から……。


「いや、そうじゃなくて、これ」


 俺の話を遮って鳥人間は自分の首から上を指差す。俺は一度頷いて、真剣な顔を浮かべながら珈琲を飲んだ。

 そうだ……言うなれば神からの寵愛を受けし加護者は、神の視線を受け続ける限り死すら許されないと……まぁでも研鑽しまくってすげえ強くなったやつが急に山籠りして仙人みたいになったら、なんかこうカッコよく感じちゃうわな、神様もさ。

 なんか今までの見聞きした感じ、神様からしたらこの世界って娯楽みたいなモンなんだよなぁ……で、推しキャラがいたとしたら多分そいつが加護者なんだよ。そして神に愛された存在だけが突出した力を持つ事になる。

 でもそうなると、無限に界力ファルナが湧き出て強くなれる迷宮都市が謎なんだよな……あれ? ヒズミさん達が作ったんだったかな……。


「いや違うって! 何言ってんの!?」


 ん? あぁ……悪りぃ悪りぃ……。お前にこのレベルの話は難しかったかな 笑

 ちなみに迷宮には多くの試練や魔物が湧き出てくるのだが、それらを突破、克服及び討伐する事によって界力ファルナは高まる。

 まぁそれは迷宮に限らず、この世界全体の法則みたいなものだ。ただ迷宮にはその『機会』が外よりも数多くある。


「関係ない話をするのはわざとか!? これ脱げないんだけど!」


 ヘルメットを脱ぐためにビヨーンと首を伸ばしながら鳥人間が騒ぐ。どうやら皮膚とくっついて取れなくなってしまったらしい。


「なんでお前の持ってくるモン全部こんなんなんだよッ!」

「ならむーちゃんはなんで被ったんですか……?」


 巨乳の少女店員が呆れ顔で引いている。

 俺は腹を抱えた。


「笑ってんじゃねぇよ!」


 怒りを露わに鳥人間が吠えたその時! 彼の頭部が輝き出す! 首の付け根から銀の蒸気が噴き出して、鳥人間の姿が完全に隠れてしまう。

 ゴホゴホと俺達がむせてしばらく、やがて蒸気が晴れるとそこには……。


「これが……俺……?」


 全身を金属の独特な光沢が包み込む。まるで鱗のように多層構造となった金属装甲に、まるで竜を模した様な頭部。鳥人間はかつての姿を失って、今や竜人……いや、機械の鱗を持つ事から機竜人と呼ぶべきか……つまりもはや何者なのかわからなくなっていた。

 頭部で赤く輝くモノアイが左右にウィンウィン動く。頭部は竜を模したと表現したが何故か眼球? というか眼っぽい光は一つしかなく、黒く四角い眼窩の中を動き回っていて人間味は無い……。


 ガションっ! 右腕部の装甲が隆起して変形する。手首から先を覆い尽くし、まるで大砲の様な形になるとそこから放たれた光弾が俺を貫いた。

 俺の身体に焼け焦げた風穴が空く。射程は調整していたのか俺以外に被害はなく、いや何故俺を撃ったんだ?


 ガ! ガション! 次に機竜人の脚部装甲が変形した。足裏のブースターから魔力光を噴き出し、機竜人の身体が宙に浮く。

 そして、そのまま急加速して窓を突き破って外へ飛んでいった。店内の俺達は皆で窓の外を確認すると、残光を残しながら機竜人は空を縦横無尽に駆け回る。


 誰かが呟いた。


「カッケェ……」




TIPS

呪装同士が干渉し合って精神汚染もなんかいい感じに拮抗しているらしい。

ちなみに機竜の破片はあと六つあり、それらは呪装『堕天』シリーズとして迷宮都市に出回っているとか。

一つだけでも深刻な精神汚染効果がある為、七つ全てを集めた場合の影響は計り知れない……。



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― 新着の感想 ―
[一言] ヒズミさん全盛期時に喧嘩売れば容易く死ねたのでは?割と近くにいたわけだし…もしやそれも自殺判定になっちゃうの?
[一言] むーちゃんは一体どこを目指してんだ(困惑)
[一言] もう特撮ヒーローなんよ
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