創造の力
プロローグ的な回です。
「いろんな世界を作ってみたけど、やっぱり世界づくりは楽しいなー。私の力をもってしても予想通りにならないところがまた、いいよね」
ここは創造神が管理している領域の一角にある、様々な世界が置かれている場所。
神々の間で最近、世界づくりが流行っているのだ。
がっつり関与する神もいれば、この創造神のようにあまり関与せず自由にさせて、変化を楽しむ神もいる。
「この世界は作ってからそこそこ経つけど、割と自然豊かな世界になったね。ちょっとだけ魔力の濃度を上げて様子を……ん? あー、この杖、少し古くなっていたか。創造の力を封じ込めた部分に亀裂が走っているな。若干かけらが落ちた気がするけど……ま、いっか」
世界の微調整をするのに、自身が直に力を使うと加減が難しいため作っていた、調整用の創造の杖が、経年劣化と負荷に耐えきれず破損していた。
創造の力のかけらが、調整しようとしていた世界に若干落ちてしまったのだが、創造神からすると微々たるものであるため、特に対処せず放置することにした。
なんとも適当な創造神であった。
これは、そんな創造神が気まぐれで作った、とある世界の物語である。
「今日もたいくつねぇ」
森の精霊は暇を持て余していた。
小さな森の中で生まれた森の精霊は、生まれた森から出ると力を失い消えてしまうため、行動範囲が森の中に限られている。
生まれた当初は森の隅々まで探索し、小さな発見に心を躍らせていたのだが、なんせ小さな森なのですぐに飽きてしまった。
すぐにと言っても数百年は経っているのだが。
「生まれたところに不満があるわけじゃないけど、なんかこう、面白いことないのん?」
森の精霊が湖の縁で寝転がり、ぼんやり空を眺めていると、空の彼方に一瞬光るものが見えた。
「ん? なんぞや?」
目を凝らして良く見ると、小さな石のようなものが、空からこちらに向かって落ちてきていた。
どんどん落ちてくる小さな石のようなもの。
森の精霊はとりあえず受け止めようと両手を伸ばした。
落ちてくる小石を額に直撃させ、若干恥ずかしい思いをした森の精霊は、拾った小石を手に取って眺めていた。
「キラキラして綺麗だけど、これは一体何なん?」
しばらく眺めていると、小石は一瞬強く光り、手の中に溶けていった。
「あ、溶けた……おぉっ!?」
もう何も乗っていない手を見つめていると、体の中からじんわりと力が溢れてきた。
同時に小石が創造神の持つ創造の力の欠片であること、自身に創造の力が備わったという情報が頭の中に流れてきた。
「なんだかすごいことになったのよ!」
急な自身の変化にはしゃぐ森の精霊。
なぜこんなものが空から落ちてきたのか気になるが、それ以上に体の中から湧き出る力に心を躍らせた。
「今なら、何でもできそうな気がするのよ!」
精霊は自身の生まれた場所から離れると力を失って消えてしまう。
では、生まれた場所から離れても力を失わなければ?
「何でもできるなら……いろんなところを見て回りたい、やん?」