もう一つのアウロス
{ゲームオブマスター作られし異世界}
2038年7月27日午前2時30分。
アウロスオンライン{GM}接続。
翌日2038年29日深夜0時00分。
ログアウト権利拒否。
「ん?」
全体チャット覧に意味不明な文字化け。
数秒後、赤い文字で数度のコード番号出現。
エラーコード確認。
エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
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エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
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エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
エラーコード確認 エラーコード確認。
「エラーコード?」
仮想現実世界アウロス。
アウロス社が作り上げた自作ゲーム作成ツールアウロを利用し
作り上げられたMMORPGゲーム。
アウロとはアウロス社が2034年6月に販売を開始した自作ゲーム開発ツールだ。
仮想現実世界を自由にクリエイト出来ることから人気に火が付き、気づけば全世界で
広く知られるツールとなった。
ネット上に落ちている画像を再現ツールに取り込むことで仮想現実に挿入し、魔物や登場人物として扱うことができる。
このツールの素晴らしいところは挿入した画像を自動で仮想現実使用に変換してくれることだ。ただ薄っぺらい龍の絵を書き、挿入すると仮想現実ではまるで本当に生きているかのうような化物が空を羽ばたくのだ。
それはゲーマーたちにとっては本当に夢の様なツールだった。
そしてある者によって作られたゲーム。
『アウロスオンライン』
作成日時2036年5月、2038現在までに多くの拡張パックが更新され
ライトユーザーからヘビーユーザーまで様々な人間が遊ぶ人気のオンラインゲームである。
アウロス社では毎月人気自作ゲームのランキングが発表されているが常に一位を
維持し続けるこのゲームは今や知らぬ者がいないほどに有名となっていた。
しかし、作者についての情報は一切公開されておらず、様々な仮設がネットの掲示板や人の口からささやかれ情報は拡散し続けている。もっとも有力な情報としてはアウロス社自身が作成したというものだ。しかし、アウロス社はそれを全面否定している。
しばらくして複数人の自称製作者だと言う連中が現れたりしたが、マスターキーを
所持していなかったため、アウロス社では認められず、すぐにそれらの連中はいなくなった。
マスターキーとはゲーム作者だけに許されるゲーム改変キーのことだ。
大型アップデートやアップデートをする際、それが必ず必要となってくる。
それを所有しているものが本物の作者であり、無いものはニセモノということになるのだ。
2038年7月27日大型アップデート開始のお知らせ。
2038年7月28日午後18時20分終了。
多くのプレイヤーがその日、アウロスオンラインに接続した。
8ヶ月ぶりの大型アップデートを待ちわびた者達が一斉にログインを開始する。
レベリング255の開放。
破壊級魔族の追加、
破壊神級炎竜王の追加
邪神級、ノアの追加
別次元異空間の追加。
9大陸の出現モンスター大量追加。
新職業ナイトメアロード追加
新職業ホーリロード追加。
新職業エンカウントマスター追加
新職業廃人追加
新職業ギャンブラー追加
新職業バーサーカー追加
各種アバター追加。
???
???
???
アプデート内容が更新される。
数多くのプレイヤーが新職業を選択し作成を開始。
多くのプレイヤーが始まりの街に集まっていく。
その光景を遥か天空から眺める者たちがいた。
すべての地形を監視し、世界を統治する存在。
『ゲームマスター』
この世界を作った理由。
昔そんなことを聞かれた。
『暇だったから」
今も理由は変わっていない。
変化の無い日常に飽々していた。
現実から逃げるように今俺はこの世界を管理している。
課金システムで老後まで何もしなくても住むぐらいの蓄えは貯めることができた。
後はのんびりこの世界を管理するだけ、当然終はくるだろうが、今はここがリアルで
現実が違う世界のように思える。
その日、ゲームマスターの権限を行使し、大型アップデート無事完了した
三雲・蒼夜は仮想世界の中でクッキーをかじりながら外界を見渡していた。
目元には深い隈が浮き彫りになり、長い長髪は背中半分を覆い隠している。
死神のような黒い服とだらしなく伸びきった前髭。
典型的な引きこもり体質の人間像そのものである。
しかし、この世界に限り、それは無視される。
いくら見た目が弱そうなガリガリ君であろうと、巨漢であろうと
この世界では見た目よりもその人物のステータスですべてが決まる。
蒼夜という男はこの世界では神にひとしき力を持っている。
資金MAX、強化値最大、地形変更、空間変更、登場人物の作成や
魔物の作成、ゲームマスターに与えられたすべてを利用出来る。
例えば特殊コード覧を開いて魔法を選択するとこのゲームに存在する
すべての魔法が表示され、発動することが可能だ。
武器の覧モンスターの覧も同様であり、すべてを管理できた。
「アップデートは無事完了~次は期間限定イベントの実装だ」
蒼夜は小さくつぶやくと、目を深く閉じた。
暗闇が数秒続き、瞬間、暗闇の中で複数のコードが出現する。
ゲーム内でいうチャットの覧だ。
そのチャット覧にイベント内容を記載し、GMチャットを発言。
「イベント内容通知」
『新規キャラクターに限り経験値二倍イベント実装。
地域全体での三日間ドロップ率二倍キャンペーン実装。
街の周囲にいるモンスターが期間限定でモモコに変身。
モモコクエスト実装。モモコの綿毛を100個集めるとモモコの卵、モモコの結晶石
回復ポーション20セット、強化成功率アップ15%25%50%90%の証、モモコの餌
どれかが入手可能。反復クエストなのでどんどん集めましょう』
通知を行って5時間弱の時間が流れた頃。
「さて、今日はこのぐらいにして落ちるか」
そう思い、ログアウト画面を開き、ログアウトのボタンを指先でタッチした。
2038年29日深夜0時00分。
ログアウト権利拒否。
「ん?」
ログアウト権利拒否と表示され、さらに、
エラーコード確認
エラーコード確認
エラーコード確認
エラーコード確認。
エラーコード確認
エラーコード確認。
エラーコード確認
エラーコード確認。
エラーコード確認
エラーコード確認。
エラーコード確認
エラーコード確認
「なんだコレ……バグか」
表示された無数のエラーコード番号。
ログアウト拒否なんて笑えないバグだ。
もう一度ログアウトをしようと試みるが、ログアウトしようとするとログアウト画面が、ノイズの入ったテレビのようにザラザラと音を立ててボタンじたいをタッチさせてくれない。
「やばいやつかコレ……」
ゲームを作って2年、様々なバグと遭遇してきたが、これは初めてだった。
「そういえば」
蒼夜は思い出したかのようにして、チャット画面を覗き込んだ。
ゲーム作成ツールアウロには隠しコマンドが存在する。
それを入力すると強制的にゲームから精神を切り離し、現実の世界に戻ることが可能
なのだ。それを、蒼夜は入力した。
………
………………
数秒後、チャット覧に文字が表示される。
「アウロス接続開始」
「接続?」
遮断しようとしたのに再び接続を始めた。
ますます意味がわからない。
通常は入力後すぐに意識は切り離され、現実に引き戻される。
しかし、戻るどころか、再び接続を開始したのだ。
そもそも接続している状態でさらに接続とは一体どいうことのだろうか。
蒼夜が首をかしげていると、更に文字が自動で入力され始めた。
「アウロスワールド、総人口X000参加者X000X人承認」
「アウロスワールド接続完了、現時点を持って、すべてのプレイヤーの転送を開始する」
「転送開始まで残り30秒」
目の前の文字を見て、蒼夜は再び首をかしげる。
「こんなシステムおれは導入してないぞ? それに転送ってなんだ?」
ますます意味がわからなくなる。
困惑していると、どこからか、声が降ってきた。
それは若い男の声だった。
「ここがこの世界の創造主たる人間の住処か」
声は背後から聞こえてきた。
「え?」
とっさに蒼夜はそう口をに出した。
この場所はすべてから遮断された空間。
GMだけが入ることの出来る特殊な空間だ。
そこに自分以外の他者が入り込むことなど出来るはずがない。
そもそもポータルが存在しないため、ここへたどり着くことなどできないのだ。
蒼夜はすぐに声の上がった方向へ体を翻した。
「……あんた誰だ?」
銀色の長い髪、目鼻は整い、若さも感じられる。
漫画やアニメの主人公で登場しそうな美少年。
黒色のコートを身にまとい、耳元にはヘッドホンが突けられている。
身長は170センチぐらいで、目を合わせれば老若男女関係なく惚れてしまいそうになるような絶世の美少年。そんな男が前にいる。
侵入不可能な空間に佇んでいる。
男は再び口を開いた。
「僕が誰かだって? うーん、そうだな。この世界をコピーしちゃう神様ってとこかな」
(何を言っているんだ? こいつ)
内心ではそうつぶやきながら、態度に示さずに呟いた。
「コピー?」
男は笑いながら一歩一歩近づいてくる。
「そうさ~僕はこのアウロスオンラインという世界がひどく気にってしまったんだよ。
いまあるこの世界は現実ではない。それは知っている。森も海も空も、これは現実ではない仮想の世界。味は感じることは出来るが実際は単なる錯覚。腹いっぱい食べても
太ることなく、現実では何一つ満たされていないこと、全て知っている。だから僕は
この世界をもう一つ作ってしまおうと思ったんだ。なーに簡単さ、僕にとって容易いことだからね~」
(突然何を言ってんだこいつ? 世界をコピーする? つまり俺が作った世界をまた
アウロで模造して作るってことか? データとか盗み出して、つうことはこいつハッカーか? ハッカーだからこの場所にも侵入できたってことなのか)
「ハッカー? あはは馬鹿だな~そんな単位の話をしているわけじゃないんだよ」
「え?」
(考えた事を読まれた? いやいや、まてまて、そんなこと普通のやつに出来るのか?いや、そもそもこいつはハッカーだからそれももしかしたら可能なのかも)
「だから僕はハッカーじゃないよ? そもそも人間でもないしね」
首を左右に振りながらそう言って男は微笑んだ。
クスクスと小馬鹿にするように。
「人間じゃない? じゃーあんた何者なんだよ」
「僕は君たちの世界をつくりだした神。それもこの幾万、幾数の世界を作った
創造主、想像神だ。だから君の世界を僕にください」
「創造主? 何言ってのあんた? 正気ですか?」
「信じてないね? まぁーそんなことどうでもいいことだから別に気にしないけどさ」
信じるも何も、突然入ってきて、突然俺は創造主でこの世界をコピーします。
なんってこと言われてもまったくもって意味が不明だ。
そんなことよりも重要なことが一つある。
蒼夜はそのこと創造主と名乗る男に説いてみた。
「ログアウト出来ないのはあんたの仕業か?」
すると男は笑う。
「もちろん僕さ、この世界に存在するプレイヤーはすべて、僕が現実世界と接続を遮断した」
「どうしてそんなことをする?」
「プレイヤーがいてこそのアウロスオンライン。だから参加者は公平にあの世界に送ってあげるのさ」
「あの世界に送る? またそんな粗末な嘘を、あんたはただ参加者をこの世界にとどめておきたいだけなんだろ? でもその努力も無駄さ、いずれ世間が気づいてこのサーバーのロックを解除してくれるに決まっている」
「解除も何も君らプレイヤーはすべて第二のアウロス、この世界と全く同じ歴史を刻んだ異世界。NPCは生きた人となり、魔物は生きるべくして狩りをする。空があり海があり
自然が存在する。あらゆることが現実となった世界。そんな世界に君達はゆくことになるのだ。もう多くのプレイヤーが異世界へと転送された。無論現実世界の肉体を異世界に飛ばし、この世界で作られた容姿はすべて現実世界のものと差し替えられる。
だが安心してくれ、そのほかの要素は君たち自身に引き継ぐようにしておいた。
ファイターならファイターのスキルが使えるし、魔法使いなら魔法を扱うことができる。レベルもこのゲームにログインした時と同じ状態で初められるようにしておいた。
ただ、君は別、例外。君は創造主だけど、創造主という職業を作っていなかった。
だから僕が君のために特別に用意してあげたよ。君の職業は……あ、そうかもう時間か、仕方ないか、君が最後だ」
「は?」
そう男が言った瞬間、視界が一瞬白い光に包まれる。
同時に足元に赤い光が輝いた。
「なんだよこれ」
「転送陣、まぁー召喚魔法ってところかな? まぁー怪我とかはしないから安心して
それと、これからいく世界は現実だから刺されたり、致命傷おったりすると死んじゃうからね~そこんところは気をつけて~んじゃー君とのはこれでお別れだ。バイバイ~
創造主君~君があの世界でどんなふうに生きるのか楽しみに眺めてるよ~」
そう言って男が手を降ったその瞬間、視界が完全に暗闇に包まれた。
数秒後、目を開くと、
見慣れた光景が飛び込んできた。
そこは、始まりの街ラナクゥル。
目の前に大きな噴水が、
街のあちこちには街を統治するギルド、獅子の証の紋章が飾られている。
「始まりの街なのか?」
そうつぶやくと、周囲で声が上がった。
「ふざっけんな! お前があの時このまちに残ろうって言わなければ
俺たちは連中と一緒に西の大国に行くことができたんだぞ? 俺たち
だけでこの街をぬけ出すなんて無理だ。どうすんだよ!」
「人のせいにすんじゃねー! 俺はこのまちに残ったほうが安全だと
思ったんだよ! そもそも俺たちみたいなLV1の廃人がこのさき生きていけると
思うのかよ?絶対無理だぜ? こんなクソ職業なんで選んじまったんだよ……
クソ!」
「うっせぇ~! 俺なんかエンカウントマスターだぞ? 意味不明な職業すぎて
使い方全然わかんねーよ!」
という言い争いに似た喧嘩が街の中央で行われていた。
しばらくすると殴り合いに発展し、両者ともに同じタイミングで倒れこんだ。
その姿を傍観しながら、俺は彼らに近寄ってみる。
「なぁーあんたら、こんなところで何喧嘩してんだ? いや、そもそもPKなんてして
何が楽しんだよ」
街の中でダメージを与えられるのは決闘か、PKだけだ。
「PK? 笑わせるな、この世界にPKだぁー決闘だ、そんなシステムがあると思うか?
俺たちはあの日、違う世界に転送されちまったんだよ……あれからもう15日が立つ……もういやだ……こんな街出ってってやる!」
「早まるんじゃねー出ってたら死ぬぞ?」
「構うもんか、こんなところで生きながらえても何も嬉しくねーよ」
そう言って一人の男が中央広場から外門に続く道へと足をひこづりながら進みだした。
それを必死に止めようとするもう一人の男。
「ばかやろーそんな体で出て行ってモンスターにでも出会ったら簡単に殺されちまうぞ」
「俺はもういいんだよ! 死んでも、へ、死ぬなんて怖かねぇーもういやだ。俺はこの
街を出るんだ!」
「おい!」
もう一人の男も後を追うようにして門の方へと姿を消した。
「んー見た感じ、俺の作ったゲームそのものだが、本当にこれは現実なのか」
試しに頬をつまんでみる。
「痛い……痛覚システムなんて導入してないぞ? それになんだこれ……
片目を閉じると変な枠が出るぞ。えっとなになに……」
片目が閉じられると4つの選択欄が現れた。
一番上に説明書。
二番目にステータス
三番目にイベントリー
四番目にスキル
っと書かれた選択肢が現れた。
「何だよコレ、まるでゲーム・・・ つうかコレやっぱゲームの中じゃないのかよ?」
そう言って一番目の説明書を確認する。
一通り目を通して、大体の内容を理解した。
1この世界では命は一回限り。
2この世界ではNPCの殺傷は実際の殺人と同様であること。
3この世界では職業以外の例えば魔法使いが剣の修行をした場合した分だけ剣の扱いがうまくなることが可能。
4 ……………
5 …・
「これが本当なら、ここはあいつが言ってたもう一つの世界ってことになるが……
つうか、俺の職業意味不明なんだが……何だよ創造主って、それにLV1って
どんな創造主だよ!」
その日から彼の果てのない旅が始まった。