興味
俺は疲れた肩を手でほぐしながら帰っていた。まあ、当然隣にはエリカが居るわけだが、いつもと違って俺の方に向かって睨み続けてきている。正直言って怖い。はあ、と溜息を1回つくとその事を聞いてみた。
「エリカ。お前いつまで塀を睨みつけているんだよ。確かに犬のションベンがかかっているが、しょうがないじゃないか。それでさっきから俺に向かって睨んでいるように見えてくるんだよ」
「あんたを睨んでいるのよ!!」
「何だって!?」
「良太君!私の言う事はあまり聞かないくせに……たしかに生徒会長や副会長は美人さんだけど……だからってあんなにデレデレしちゃって」
「お前は何言っているか分からんが、そんなものは興味はない。いや、確かに興味あるかと言われればあるかもしれないな」
「やっぱり!」
「でも、勉強の事で興味があるんだ」
「え?」
エリカはキョトンとしていた。何言っているんだこいつは、と言いたそうな顔をしていたので、疲れた素振りを見せながら事情を話した。
「言ってなかったかもしれないが、俺は生まれた時から一般の人と比べると記憶力が良く、なんでもそつなくこなす器用人なんだよ。ナルシストに聞こえるかもしれないが、減に誰にも運動や勉強に負けた事は無い。勉強は大学レベルは余裕で、数検、漢検、英検の1級を持っていて英語、ギリシャ語、ドイツ語、ロシア語を話せる。他にも覚えろって言われればすぐにでも覚えてやるよ。運動は、陸上系から球技まで何でもできるぞ。テニスにいたっては、始めて1時間でテニス部員全員倒した事あるぜ」
「た、確かに良太君て今回のテストで相当良かったよね。3位との差が100点も離れていたし……」
「そうでもない。エリカはちなみに何点なんだ?」
「302点。でも、良太君は凄いよ。私が見込んだだけはあるね。それで、なんですれみさんに興味持ったの?」
「俺よりも点数が上。しかも1問間違い。勉強してもそうそうできることじゃない」
そうなのだ。彼女は、たった1問しか間違えていない。今回の問題は相当難しいと思う。努力。それをすれば何でもできる世の中じゃない。確かに目標には近づけられるかもしれないが、ただそれだけなのだ。その先にたどり着きたければ、それなりの才能が必要だ。すみれにはその才能がある。俺は、その才能に興味を持ち始めた。
「すみれは自分の中の才能を見つけて、そして努力し常に大きくしている。そうそうできるものじゃない……俺と違ってな」
「え?」
「俺は、目標がないと自分を見失っちゃうんだよ。生きてきた中で全て一番。前には何もない草原みたいなものだった。自分の力で乗り越えたい人、尊敬できる人、そんな相手がいないんだよ。俺を見ると皆怯えて、俺の後ろにつきたがる奴しかいない。だが、この高校に来て初めて道が出来たかもしれないな」
「ふふっ。確かにこの高校は普通だけど普通じゃないかもね。ここにも1人いるしね」
「エリカに言われたくないな。初めて会ったばかりの人に財宝集めしましょう、なんて言う馬鹿はお前しかいないぞ」
「聞こえませ~ん。財宝はあるんだから!そして見つけたらいろんなの買うの!」
「聞こえてんじゃねーかよ。つうかその時は山分けだぞ」
「えー?」
「えーじゃねぇ!!」
その後二人が別れる時まで、笑い合っていた。
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