商店街デート?
俺は肩を落としながらエリカの後ろを歩いていた。本気で財宝があると思っているらしく、とても上機嫌な足取りで目的地に向っている。まあ、俺自身目的地を知らされていない。
「エリカ……目的地は何処なんだ。それぐらいは教えてくれ」
「目的地?……あ!商店街!この島で一番大きいから。人に聞き込みが出来るしね」
「お前、今考えただろ!たく、こんな事になるんだったら浜辺に居る時、話しかけなければ良かったぜ」
「それは、赤い糸?だよ」
「赤い糸よりもどす黒い糸だと思うぞ」
「ひっどーい!絶対に財宝見つけてビックリさせてやるんだから!」
「そうなればいいな。うん。うん」
そんなたわいも無い話をしながら商店街まで歩いて行った。
商店街に着くと肉屋、魚屋、八百屋が見えた。人もまばらだがちらほら見つけることが出来た。だが、一つ疑問が出てきた。それをいつの間にか隣にいるエリカに聞いてみた。
「なあ、ゲーセンとかカラオケとかそういう娯楽施設や日用品の店とか無いのか?」
「あるけどもう少し先に行かないと見えてこないかな」
「そこで聞き込みをするのか?」
「え?今日は適当に来ただけだけど。何か用事があったりするの?」
「お前が財宝の事を聞き込みするって言ったんだろが!」
「そんな声を高く言ったら周囲の人に見られるでしょ?実際、皆振り向いてきたし」
「お前のせいだろうが!」
確かに周囲の皆が振り向いてきたが、俺のせいで無い。断じてだ!そんな俺らを見ていた八百屋のおじさんがエリカに声を掛けてきた。
「お、エリカちゃん!今日も買い物かい?偉いねぇ。特別サービスって事で安くするよ~。今旬の野菜、ナス、ピーマン、さやいんげんなんかたくさんあるから買って行ってね~」
「このナスおいしそう。マーボナスにするとおいしそうね。丁度しょうがもあるし。ピーマンはモヤシとたまねぎを一緒に炒めて野菜炒めにして、さやいんげんはおひたしにすると良さそう。それと……」
「料理の解説している所悪いが他にやる事は無いのか?」
「え?野菜を買いに来たんだけど……」
「…………」
絶句してしまい、心がガラスのように砕け散ってしまった。もうやめてくれ……。
そこに俺の肩にエリカが優しく手を置いた。
「人生は何があるか分からないから人生なのよ。ね?」
「ね?じゃねーよ!」
「あれ?大将とエリカさんじゃないか」
「澄川……何故お前がここにいる」
店の奥から澄川拓也が現れた。さっきの声を聞きつてこちらに顔を出してきたのかもしれない。
「何故ってここは俺んちが経営している八百屋だからだよ。エリカさんは頻繁に買いに来てくれるんだよ。つうか看板で気付かないか?普通」
急いで俺は上にある店の看板を見た。『八百屋 澄川』。何てこったい。
「澄川君と良太君って仲良かったんだね。驚いてしまいました」
「逆にエリカさんと知り合いだった方が驚きですよ。それで大将達はデート?あまり見せ付けないでくれよな」
「気付いちゃった?結構前から付き合っていたの。そう、私と良太君が幼稚園の時……」
「俺達は付き合ったり、デートしたりしてねえ!さらに、本当みたいにするのやめろ!」
「大将、そんなに慌てるなって。嘘だよ、嘘」
「そうよ。顔赤くして可愛いんだから」
「お前ら絶対許さん!絶対だぞ」
「それで何を買いに来たの?」
「うん。ナスと……」
さらっと先ほどの会話を無かった事にしようとしている二人だった。心の中で暑く燃えておりそれが沈静化した時にはエリカの買い物が終わっていた。
「良太君。買い物が終わったから帰るよ?大丈夫?」
「ああ、ちょっと心の中が荒ぶっていた。じゃあな、澄川」
「大将、エリカさんと居過ぎて帰りが遅くならないように気おつけろよ」
「私が途中で帰してあげるから大丈夫よ」
「お前ら、いい加減にしろ!」
この後、二人の頭に軽く(澄川は全力だが)チョップした。
澄川と分かれた後、二人で並びながら帰っていた。俺はエリカが先ほど買った野菜や果物、いつの間にか肉屋なども入っている袋を持たされ、いや持っていた。言ってしまうと少し重い。
「今日はありがとね。買い物何かに付き合わせちゃって」
「ほんとだ」
「そんな、大丈夫って言ってもらえると嬉しいな」
「難聴なんじゃないか?耳鼻科に言ったほうがいいぞ」
「私がフォロー入れてあげたのに、そんなんじゃ駄目だぞ?」
「フォローとか入らないと思うがな」
「でも、実際もう少し人数集めてからやらない?」
「財宝の事か?確かに人数多い方が良いに決まっているが、それで良いのか・」
「良太君が私と二人きりが良いのならやめるけど?」
「よし、誰か入れるか」
「少しは考えてよ、もお。でも入れる人は良太君が決めて?」
「何でだ?」
エリカは俺から袋を取り上げると身を翻して左の角を曲がった。そして後ろを向いて言った。
「良太君なら面白い人材を見つけてくれると思ったからだよ」
夕日に照らされながら笑顔でそう呟いた。
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