愛
シュヴたちとモンド周りの空気がジリジリとざわつく。
突然にリリトがモンドの元へ空気を切り裂き、ソニックムーブが発生しあたり更地にする程の速度で突進する。
リリトが突進の勢いを上乗せした、イカれているほどのパワーを持った攻撃をモンドに向かって放つ。
しかしモンドはその攻撃を真正面から、素手で受け止める。
モンドの背に強烈な衝撃が発生し地面を激しく抉り揺さぶる。
「ぐ……」
拳を簡単に受け止められ、怪力で握り締められている、リリトは苦悶の声を上げる
その隙に、『神装:Heretic・Crown』となったシュヴが『神剣:|Executioner』をその場で振りおろし空と、そして空間を越えてモンドの首を切り落とそうとする。
いくら『不死身』の星質で不死とはいえ、再生能力や体の機能はそのまま、首を切り落とせば声を発することもできず、体を動かすことも出来ないので、こちら側を攻撃する手段はなくなるし、脳に血液が回らなくなり気絶する、しかも『神剣:|Executioner』は一度狙いを定めたら、たとえ光速を超えた速度で逃げようとも、因果律を操作して防御しようとも、必ず命中する、さらにイブの『曇り空』の領域内であるここならばモンドの魔法は全て無効化される。
シュヴがそう考えていると、モンドは掴んでいるリリトを地面に叩きつけると、瞬時に建物が崩壊したことで剥き出しになった鉄の棒、鉄筋を引き抜き投げつける。
小型の隕石ぐらいなら直撃しても僅かなダメージも与えられないほどの防御力をほこる『神装:Heretic・Crown』ですら高速で投げつけられたことにより燃え出し、光りの槍とかした鉄筋のダメージを防ぎ切ることができず、シュヴは口から鉄臭い血を吐き出してしまう。
「グギ! 」
シュヴは腹部に与えられた衝撃とダメージと痛みで変な声が出ながら
摩擦熱でほぼ燃え尽き残りカスぐらいしか当たらなかったのにこのダメージ、だが時間は稼げた
いつの間にやら白い煙は消え、はっきりとした姿をモンド前にしたスレイがはっきりと
「『天蝕壊槍』!! 」
叫ぶと、もはや人の手では数えられないほどの、無数の紫色の絶対の槍が隙間なく亜光速で伸びる
モンドは『天蝕壊槍』を避けるため後ろに飛びながら『飛天歌』を使い空に飛び立ちながら逃げる。
それでも隙間なく全方向に伸びる槍から逃れることは容易ではない、少しの時間で果てしない距離を移動すると、ようやく紫色で埋め尽くされた世界に別の色が見え始める。
モンドが『天蝕壊槍』の線の間を縫うように動くと、今度は黒い炎、リリトの『欲深き黒い獄焔』が迫り来る。
モンドは『盾無歌』で黒い炎を遮る、『盾無歌』はすぐに焼かれてしまうがそれを上回る勢いで『盾無歌』を貼り直しながら真っ直ぐ直線に移動すると、当然出てきた白い煙が『盾無歌』を消してしまう、その隙間から漏れ出た黒い炎がモンドの体を『治療歌』すら間に合わないほどの速度で焼き尽くす。
その少し後モンド喉に衝撃がはしる、シュヴの剣が喉を裂いたのだ、そして黒い炎が消えると、シュヴが右足を、リリトが左足を、イブが右腕を、スレイが左腕を、叩き折った。
皮膚が焼かれ肉や骨や臓物が剥き出しになり、首と四肢があらぬ方向に曲がった、かなりグロテスクな状態になったモンドをシュヴ、イブ、スレイ、リリトが僅かなためらいもなく抱きしめる。
空白で真っ黒なモンドの意識にドク……ドク……と心臓の鼓動の音が、彩られる。
そしてさらに声が聞こえた
「ご主人様、覚えていますか? ボクたちが闇から救い出されて、まだ震えていたころ、ご主人様は自分を道化にしてボクたちに笑顔をくれました、そのときこの人は力だけの人じゃない、そう思ったんです」
イブの声が聞こえる。
「私は、ご主人様の為に何かするのが大好きです、喜んでくれるだけで胸がいっぱいになります、だからこれからも一緒にいさせてください! 」
スレイの声が聞こえる。
「あたしはさ、力自慢だから、モンドが弱っちくなっても、絶対に守ってみせるよ」
リリトの声が聞こえる。
「オレはお前の事をスゲエって少し思っていたんだ、だってこんなに強大な力を持ってもお前はそれを振りかざし、欲望の赴くまま、他人を傷つける事はしなかった、いやむしろいろんな人を助けてきた、たしかに力を得た過程は褒められたものではないかも知れない間違っていたのかもしれない、でも力の使い方は素晴らしかったし、正しかった、オレはそう思うぜ」
シュヴの声が聞こえる
「ヴ……」
モンドの微かな声を聞くと
シュヴ、イブ、スレイ、リリト、の四人は頷き
モンドの傷を治すと
「ヴオエエエエ!! 」
モンドはサキュバスを吐き出した
「グ、こんなクズみたいな男に……! 」
サキュバスが忌々しそうな目でモンドたちを睨みつけると
「たしかに俺はクズかもな……でもみんなの想いはクズなんかじゃ決してないぜ」
モンドはそう言って、サキュバスに軽くデコピンすると
「ギエエエエエエエエ!!!!! 」
サキュバスは悲鳴を轟かせながら、空へと消えていった。
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モンドが眠りから目を覚ますと
「あ! 起きたー!! 」
リリトが大粒の涙をこぼし、抱きついてくる
「おはようございます……朝ごはんの支度をしますね」
スレイが泣きながら笑う
「ご主人ざば……」
イブは完全に崩れた顔になる
「おはよう……ずいぶん手間かけさせやがって……」
シュヴが顔を背けながらそう言う
「ああ、おはよう……、なあ二ついいか、まず一つみんなのこと殴ったりして悪かった……、そして二つ目、もう少し手加減してくれても良かったんじゃないの? 」
モンドがいつもの調子で話すと
…………
少しの沈黙の後
「いや~、流石に本気でやらないと、勝てないし」
涙がすっかり引いたリリトは冷ややかに返した
「ご主人様……」
スレイが残念な物を見る目になる
「ど……道化になって、ボクたちの罪悪感を軽くしてくれてるだけだから……」
イブが苦しそうにそう言うと
「不死なんだし、痛くもないから別にいいだろ、というか助けてもらった感謝なしかい! 」
シュヴがモンドを小突くと
「ちょっ、やめろよ~」
モンドが笑いながらそう言うと
その場にいる全員が笑った
こうして『風吹くままに』は完全に日常を取り戻した。
これから色々なことがあるだろう、それは出会いかも知れない、それは冒険かも知れない、それは競争かもしれない、それは危機かもしれない。
でも、旅の仲間がいればどんな時でも笑って乗り越えられる。
風の吹くまま、気の向くまま、今日も大陸を駆け回る。




