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無職は転生してフリーターに進化した!  作者: 鋏と電灯
終章〜揺らめく世界〜
52/53

VS最強

 シュヴは、目を閉じ眠っているモンドの姿を確認する。


「はっ! 探す手間がはぶけたな……いますぐモンドを起こしてこちらに渡すなら、見逃してもいいんだぜ」


 シュヴが挑発的にそう言うと


「ああ、返してやってもいいさ……あんたたちにそれが、できるならねぇええ!! 」


 そう言ったサキュバスの体はドロドロに溶けはじめ、そのままモンドの口の中に入り込む。


 サキュバスを全て飲み込んだモンドは、ゆっくり目を開けドアからゆったりと外に出る。


「…………」


 シュヴ、イブ、スレイ、リリトの四人に異様な緊張感が走る。


 ゆったり歩いていたモンドの足が急に止まった後


 突然、前のめりになり、高速で突撃する。


 モンドは、一番打たれ弱いスレイに思いっきり拳を叩きつけようとするが


 イブがスレイを庇うように立ち、モンドの拳を受け止める。


 モンドはブツブツと聞き取りづらい大きさの声で何か言う


 イブが耳を澄ますと


「……屈強くっきょうなるめぐみを『強力歌フォルティトゥド』」


 とモンドの声が聞こえたので、イブはとっさにモンドの拳を離し後ろに少し飛ぶ。


 モンドはそのまま拳を床に振り落とすと、とんでもない轟音を響かせ床を破壊する。


 そのままその場にいた全員が床の破壊に巻き込まれ落下する。


 モンドは落下する間に

 

ひじりよ、鈍足どんそくなる私に俊敏しゅんびんなるめぐみを『速敏歌デヌンジャショ』」


 よどみ無く滑らかに、機械的に唱え、魔法を発動させる。


 そのまま、音速を軽く超え、亜光速にすら到達するスピードで圧倒的な膂力りょりょくでイブの体を粉砕しようと蹴り飛ばそうとするが


 白い煙、イブの星質ジェニーである『曇り空(グルムリグ)』に触れてしまい、全ての魔法の効果が消え、ただの蹴りを放ってしまう


 近くにいたシュヴはそのまま、モンドの脚をつかみモンドを投げ飛ばし、地面に叩きつける。


 脚が変な方向にが曲がってしまっても、モンドは顔色一つ変えず『速敏歌デヌンジャショ』の魔法で早さを上げた後、ほぼ零秒で


ひじりよ、きずついた私にいやしのめぐみを『治療歌クラジョ』」


 唱え、脚を治す。


 その瞬間、竜人の形態になったリリトが硬く禍々しいうろこに包まれた拳で殴りつけようとしたが


 モンドがもはや瞬間移動レベルの速さで避け最後に『強力歌フォルティトゥド』をで力を上げる。


 イブは仲間の周りに『曇り空(グルムリグ)』を立ち込めさせる。


 シュヴたちは様々な感情が込められた目で、モンドは無感情な目で


 お互いに見つめ合っていると


「ヒーっヒッヒッヒッヒッヒ……素晴らしいねええこの体は、まったく負ける気がしないよ」


 サキュバスの声が聞こえてきた


「てめえ……」


 勝手に人の心笑いながらを操るサキュバスに、反吐が出そうなほどの嫌悪感と、出た反吐が燃え盛りそうなるくらいの怒りの激情を込め睨みつける


「ヒッヒッヒッヒッヒ、そんなに睨んでどうしたんだい? あんたらはこの男をワシが無条件で、無理やり操っていると思うだろう? お生憎だがワシにそんな力はないよ」


 常人なら失禁してしまうほどのシュヴの眼光をまったく意に介さず、サキュバスは嫌味ったらしくそう言った。


「じゃあ、ご主人様が望んでこんな事をしているって言うの!? 」


 イブが怒気を含んだ声を出す


「そううだね~、それは少し違うかね~」


 サキュバスはシワまみれの醜い顔を、さらに醜く歪めわら


「なめてんのか」


 殺意を漏らしながらリリトがそう言うと


「ウヘ~、くわばら、くわばら」


 サキュバスがわざとらしく怯える演技をした後


「教えてやるよ、ワシの能力『後ろを見る(プローシロエ)』は人の夢に取り付き過去の未練を刺激し、夢の中に閉じ込め操るというもの、つまりこの男には未練があるという事だよ、なんなら直接聞いてみるかい? 」


 サキュバスがそう言うと、モンドは奇怪きっかいな動きし、変な声を出した後


「……俺はいいんだろうか……現実から逃げ出して……なにも出来ない弱い自分をひた隠しにして……強いふりばかりして……なんの努力もせずてにいれた力で努力した人間に偉そうに振舞う……でも……でも、ついやってしまうし、とても心地いいんだ……俺は……俺はダメなやつなんだ、いつまでも現実世界でのことを未練がましくグダグダと……シュヴもイブもスレイもリリトも強いモンド・ムッボシが好きなんだ、弱い六星文道むつぼしもんどうなんかみんな嫌いなんだ、貰い物の力で偉ぶる嫌な奴なんだ……奴隷という立場だったイブとスレイにも恩を売って、いいようにこき使う、でもそんな弱い自分が大嫌いなのに……変わりたくない……そう思っているんだ……俺は」


 苦しそうに嘔吐する様にポツリポツリとモンドは言葉を吐くと、また無感情な顔に戻ってしまった


「イーヒッヒッヒッヒッヒッヒ! こ~んなくだらないことでウジウジとほんと嫌だね~、まあクズはしょせんクズってことだね、力以外取り柄なんて何一つないのに、その力すら貰いもの、そしてそれを恥もせずでかい顔で振り回し、立場の弱い女を囲い王様きどり、他人を見下すしか能のないやつの癖に態度だけは一人前で善人ぶるロクデナシだよ! まったくもって最低最悪だねこの男は!! 」


 モンドをサキュバスは機関銃のごとく罵倒する


「ぷっ……あっはっはっはっはっは! 」


 シュヴは吹き出し出したあと、大声で笑う


「何がおかしい」


 サキュバスのドスの聞いた声が響く


「いやなに、お前の言っていることがまったくもって的外れで、ついな……」


 シュヴは不敵に笑うと


「はっ! そうかい、威勢だけは立派だね! でもお前たちにこの男を倒せるのかい? 無理だね! 心でも! 実力でも! あんたらはこの男を倒せない! 」


 サキュバスの咆哮がシュヴたち四人の鼓膜を揺らす。


「そうだな……もし、モンドが自分の意思でオレたちに戦いを挑んだのなら勝てないかもしれない……でも今は絶対に勝てる! なぜなら、なんの心も宿っていない操り人形に、オレたちのモンドを取り戻したいという想いを止めることはできないからだ! 」


 宣言するようにシュヴじゃ大声を張り上げる。


「ふん! あんたらにこの男を傷つけることはできるのかい? 」


 嫌味な笑みを浮かべるサキュバスに


「ああ、それなら大丈夫だ、動けなくなるほどボコった後、ギュッと抱きしめる、それが今のオレにできる最大の愛用表現だからだ」


 シュヴが自信満々に言うと


「操られているから仕方がなく……ではなく、拳を交え語り合うことも大切です」


 イブがそう言ったあと


「だから、私たちは全力で望んで戦う」


 スレイが続けてそう言う


「覚悟してねモンド、女の子は好きな人の為なら、いくらでも強くなれるから」


 リリトが最後にしめる


「はっ! おもしろい、全員まとめてぶっ殺してやるよ」


 サキュバスのしゃがれた声が響くと


 シュヴたちとモンドがかまえる音がした。

 

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