バカとハサミは使いよう。
砂漠のように広大なグランドで二匹の黒い竜がその大きく、屈強な肉体をぶつけ合う、けたたましく耳障りな音が響く。
「ぐ……力は互角」
二匹の黒竜の内の一人であるリリト・スグブスは一度ぶつかり合うだけで相手の力量を瞬時に測る。
「そうだねリリト」
もう一匹の方のリリトと全く同じ姿をした黒竜、サンドルはリリトと同じ声で語りかける。
このままでは埒が明かない、そう考えたリリトは大きく息を吸い込む。
このまま、自分が早く、『欲深き黒い獄焔』を吐き出せばその分有利になる、とリリトは考えたが、サンドルはリリトの方に轟音を立て猛突進してくる
「な……!? 」
『欲深き黒い獄焔』は間に合わず、リリトはサンブルの大木の様に太い腕で鼻先を容赦なく殴りつけられる。
「グプッ」
情けない声を出し、その巨体を地面に叩きつけるリリトにサンブルは踏みつけ攻撃を行おうとする。
リリトは転がりながら何とか回避し、その勢いを利用して起き上がる。
「ひとつ言い忘れたけど~、リリトとあたしは力は同じだけど頭の出来は違うよ」
サンブルが嫌味にニヤケながらそう言う、そしてそのまま背中に生えた大きな翼で砂塵を巻き上げながら、大空へと羽ばたく。
リリトも空に羽ばたこうと力むと
「甘いよ! 」
サンブルはそのまま、落下しリリトにヒップドロップをくらわせる
そのまま、リリトは押しつぶされてしまう。
リリトはサンブルに完全に動きを読まれるどころか誘導すらされてしまっている。
フラフラになりながら立ち上がったリリトをサンブルは殴りつける。
「ブベラ!? 」
サンブルの情けない声が聞こえる
偶然、殴り付けられた時、リリトの先に大量の突起がついている尻尾がサンブルの目にクリティカルヒットしたのだ。
「うう……うう」
サンブルは痛みに震え、後ずさる。
もし、リリトならそのまま追撃していただろう、なまじ知性があるばかりにサンブルは痛みや恐怖に敏感になってしまったのだ。
もちろんリリトはその好きを逃さない、そのままサンブルの鼻の穴に鋭い爪をねじり込む
「ぐぎゃあ!」
サンブルはそのまま顔を手で覆う
その好きに大きく息を吸い、『欲深き黒い獄焔』を吐き出し、サンブルを灰も残さず黒い炎で焼き尽くす。
「やっつけた……」
リリトそのまま人間の形態となり、モンドやほかの仲間を探すためその場を後にする。
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シュヴ、イブ、スレイ、リリトの四人は自分と同じ顔の少女を倒し、しばらく彷徨いていると、全員同じタイミングで写真部の部室と扉に書かれた部屋で出会う。
「無事だったかみんな!? 」
シュヴは歓喜の声を上げる
「はい! 」
イブが元気よく返す
「シュヴさんこそ……無事で何よりです」
スレイはやわらかい笑みを浮かべる。
「いや~、大変だったよ~」
リリトはため息混じりに言う
「いや本当にみんな無事で良かった、あとは……モンドだけか」
再開の喜びもほどほどに、シュヴほそう言うと
「手がかりは相変わらず無しですし……」
落ち込むようにイブが言うと
「まあ、とりあえず、大きく迂回してしまいましたがようやくスタートラインに立てました」
スレイは前向きにそう言う
「とりあえずサキュバスとかいうおばあちゃん魔物を捕まえて、モンドを居場所を教えてもらえればいいんじゃない? 」
そう軽くリリトが言うと
「そうは言ってもな~、そのサキュバスのヒントのも皆無だしな~」
困った顔をした、シュヴは腕を組み首を曲げると
「ヒイーッヒッヒッヒッヒ、その心配はない! 」
しゃがれた声の老婆、サキュバスが現れた。
「な……てめ! 」
シュヴがそう言った瞬間
リリトは全力でサキュバスの顔面めがけて、拳を走らせるが、なんの手応えもない。
「ヒッヒッヒッヒ……無駄だよ、ワシにはどんな攻撃も通じないよ」
サキュバスは嫌らしく嗤う
「チッ! 不愉快なババアだ……モンドを出しやがれ! 」
シュヴは女とは思えないドスの聞いた低い地鳴りの様な声を出す。
「フン! ババア呼ばわりされて出す義理はないね! と言いたいところだけど……生憎あんたらに攻撃手段がない様にこっちにも攻撃手段がない……たった一つを除いてね」
サキュバスは不快そうに愉快そうに指を鳴らすと
突然、空間が歪みドアが現れる
「ヴォワ・ラクテ・ナジェ・」
スレイはサキュバスが逃げると思い『死縛無想』で捕らえようと早口で詠唱する。
「そんな慌てなくてもいいぞ」
サキュバスがそう言うと、ドアが不快な音を立てながらゆっくりと開く
「クルアム・グラセ・……っっ!?」
スレイはドアの中にあるものを見てつい詠唱を止めてしまう
シュヴ、イブ、リリトの三人も息を飲み目を見開く
「さあ……あんたらが、あれだけ会いたがっていた奴だよ、思う存分再開を喜ぶ事だね」
ドアの中では、モンドはスウスウ心地良さそうな息で眠っていた。




