曇り空の歌唱会
イブと同じ顔をした、少女がいきなり剣で斬りつけてきた。
イブとスレイはかろうじて避けると
イブは円と特殊文字を描き
「炎吹! 」
そう叫ぶと
描いた円から、灼熱の炎が吹き荒れる
イブに似た少女は動かない
「勝った! 」
勝利を確信したイブがそう言ってガッツポーズをすると
「……ふ」
イブに似た少女は、小さく嘲るように笑うと、白い濃い煙のようなものが出てきた
灼熱の炎を飲み込み、消した。
「な……」
イブとスレイは目を見開きながら驚愕する。
「いきなりすいません、ボクはイブ・スイィネフォと言いますが、これでは混乱すると思うので『オンブル』て呼んでね、そしてこっちがスレイ・オルキデ、まあ『ルール』とでも呼んどいて」
イブと同じ顔を持つ少女オンブルがにこやかに自己紹介をすると
「……」
スレイと同じ顔を持つルールは軽く会釈をする。
「ボクたちはこの顔と同じく、あなたたちと同じ能力を持っているんだ、でもここでひとつ疑問に思うよね? そう、あなたたちに魔法を消すなんて奇怪な能力はないとね、それは半分正解だよ、あなたたちにこの能力は無い、でも今は無いだけで、この能力を持てる潜在能力はあるんだ、わかりやすく言うと、ボクたちは今はまだ目覚めていないあなたたちの能力が使えるというわけさ、ふふスレイ……おっと違ったルールちゃんの能力を見せてやりなよ。」
オンブルが長々と話したあと、ルールはコクンと頷いたあと
「ソワールオーブ・トゥルビヨン・カオクラル・ドマジュリニュ」
声を重ねる特殊技法である二声で詠唱を行う
イブとスレイは自分たちに多大な才能があること、そしてその才能が使える者と戦うことに混乱し、固まっていたが、ルールの詠唱を聞いて慌てて逃げる
「シブル・ヌヴォグロット・エヴァヌイスマン・アレアン・アンフェア」
ルールは詠唱を終え、最後に
「『天蝕壊槍』」
と自分が発動した『重詩詠』の名前を言うと
イブとスレイ、二人の死の組曲を奏でるバイオリンの弦のように、大量の濁った紫の線が急襲する
紫の線、万物を貫く槍はあたりにある物に破壊の限りを尽くす。
二人はシャチの襲われるペンギンのように逃げ惑いなんとか回避する。
「ぐ……」
イブは円と特殊文字を描き
「『粘焔』」
そう言うと、円から水の様な炎をルールにむけて吐き出す
『粘焔』、粘り気のある炎、一度付着したらそこに残り続ける火炎であり巻いたあとも火が残り続け、その火を消そうとはたいたら、はたいた物に火がつくのはもちろん、より広範囲に燃え盛る、わかりやすくいえば燃える水といったものだ、今使えるイブの最強最悪の魔法であったが。
オンブルはまた白い煙を出し飲み込み、火炎を消滅させる
「冥土の土産に教えてあげるよ、さっきまでの白いものはボクの星質、『曇り空』星を隠す雲は星から恵みである魔法を消しちゃうんだ」
オンブルがそう言っている間に
「プレザンクラァール・エテルネルファン・ノワル・サルマレー・ピュルガトワール・デストリュクシオン・アネアンティッスマン」
ルールは詠唱を歌い終え
「『染界涜焰』」
最後にそう言うと、世界を黒色に塗りつぶすペンキが二人の眼前に押し寄せた。
イブは手を前につき出す
オンブルとルールはただの悪あがきに見えたが、実はそうではない
「ボクにも使えるようにやっとなった」
そうイブが言った瞬間
『曇り空』の白が『染界涜焰』の黒を全て洗い落とす
「な……に?!」
オンブルとルールは目を見開きながら驚愕する。
「驚くことはないでしょう、あなたの能力は私たちの能力、しょせん潜在能力なんてきっかけがあれば目覚めるもの、あなたたちはそのきっかけになってくれたってわけ」
スレイが喋り、オンブルとルールの二人が集中している間に、イブがルールに剣で斬りかかる。
「ぐっ……」
ルールは肩を少し切られた、痛みにかを歪め、わずかに苦悶の声を漏らす
それを見たオンブルは焦るように、円と特殊文字を描き
「『粘焔』」
そう言って、燃える水を噴き出させるが、イブの曇り空がかき消す
その間にスレイが
「ピュピル・デルニル・マンソンジュ・ ブリュイヤルパレ・ユマン・ヴェリテ・アン・ドア・エスピエーグル」
と二声で詠唱を行い
「『虚工欺建』」
『重詩詠』の名前を言う
特に何も変わった事が起きないと感じたオンブルはそのままスレイを真っ二つにするが
何の手応えもなく、陽炎のようにスレイは消えた
「ぐ……」
さっきのは幻覚だと知った、オンブルはスレイを探すのに夢中になっていたので、イブが後ろから静かに迫っていることを気付くのが遅れてしまった
「……つ! 」
背中に浅い切り傷ができたオンブルは顔をしかめる
「ヴォワ・ラクテ・ナジェ・ノワルシェーヌ・アレスタシオン・オスサン・クルアム・グラセ・シランス・ドルミール『死縛無想』」
スレイが数多の異色の鎖を出し、オンブルの全てを封じ込めようとする
オンブルは『曇り空』で鎖を溶かすが、イブがまた後ろに迫っていることに気づけなかった。
「シジエム・マルスジュピター・ブランドラポー・エクリディアグラム・アルム・ブレシュル・エネミ・デテステ・モル・デファンスブークリエアシエ・ダンジェー・セキュリテ・グベルツアー・デュール『拒壁交破』」
ルールがイブの刃から盾をはりオンブルを守る。
オンブルはルールの隣に立つ。
イブもスレイの隣に立つ
「「プレザンクラァール・エテルネルファン・ノワル・サルマレー・ピュルガトワール・デストリュクシオン・アネアンティッスマン」」
スレイとルールは同時に歌い
「「『染界涜焰』」」
同時に世界を汚す
その二人えお補助するようにイブとオンブルは『曇り空』の白い雲で敵の魔法をかき消す
白と黒の螺旋がぶつかり合う
「二人の力は互角! 勝負はつかない! 共倒れだな! 」
オンブルは挑発するように吐き捨てるが
「それはどうかな? 互角なら、あなたたち二人が負ける」
スレイがそう言った途端、イブとスレイの対極の色彩の螺旋が押し始める。
「な……なぜ!?」
オンブルは狼狽し
ルールは焦る
それが引き金となり一気に二人は押さえ込まれ
オンブルとルールの二人は螺旋に飲まれ塵芥すら残さず消えてしまった。
「ふう……」
スレイはホっと一息つく
「ねえ……なんで、互角なら勝てたの? 」
イブは気になったことを聞いてみると
「それは、あの二人の方が多く力を使い、多く傷を負ったからよ」
スレイがそう言うと
「ああ、なるほど! スレイちゃんは頭がいいね」
イブは今までの戦闘を思い出しながら、そう言った
「ほかの人を探そう」
そう、スレイが提案すると
「うん」
イブは頷いて、賛成の意志を示した。




