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信頼は笑いから

 二人の少女を見つけてから、しばらくしたのちに連絡していた警軍けいぐんがきて、素早く野盗たちをを連れて行った。


 実はあの野盗たちはかなりの手練てだれがあつまっている、大きく危険な組織で、モンドが倒した奴らの中にはいくらかの懸賞金けんしょうきんがかけられていた幹部クラスもおり、モンドはお金いくらかもらった。


 また、おそわれた旅車りょしゃの持ち主も違法行為をおこなっていたいた悪徳あくとく商会で、違法商品は全て押収おうしゅうされたが、になる残ったものは旅車りょしゃふくめ本来は証拠品になるのだが、シュヴは自分たちの旅車りょしゃが無いと言うとお礼もかねてモンドたちの物となった。


 この悪徳商会の連中は襲われた時に逃げたため、今どこにいるかわからないらしい。


 また、あの二人に関しては、警軍けんぐんの行方不明者リストにもなく身元みもとも特定できなかった。


 仕方しかたが無いので、モンドとシュヴが引き取ることになった。


 そうこうしているうちに、太陽はしずみかけ赤と黒のコントラストが美しい時間となった。


「なぁシュヴ、あの二人なんだと思う? 」


 モンドがシュヴに目を向けながら、そんな事を聞く。


「あの二人は耳が長かったろ、あれはエルフという種族の特徴だ」


 シュヴもモンドの方に目を向けながら、そう答えた。


「エルフってあのエルフ? 」


 モンドが不思議そうな顔をしてそう言うと


「ああ、そのエルフだ、お前の世界のイメージとだいたい同じで、見た目が美しく、長く生き、森に住む、あのエルフだ」


 シュヴはうなずきながらそう返した。


「この世界って奴隷制どれいせいとかあんのか? 」


 モンドあ渋い顔をする。


「今はない、でも昔はあった、エルフは特に奴隷として売られていたからな、その名残なごりで今でもこうやってエルフは非合法の組織によって人身売買されることはけっこうあるな」


 シュヴがそう答える


「そう……か」


 モンドはなんとなく悲しい気分になりそう口にした


「ま、売り出される前に助かったんだ、よかったんじゃねーの、あとオレは飯の準備をしなきゃいけないから、モンド、少しあいつらの様子を見てきてくれねーか? 」


 シュヴはモンドにそう言うと台所だいどころにむかい姿を消した。


 モンドはなんとなく、あの二人が気になっていたので、シュヴに言われたとおり様子を見にくことにした。




 


 「あ~、お二人さんはどこから来たのかな? お名前は? 」


 二人の様子を見に来たモンドは、そこはかとなくひきつった笑顔で話しかける。


「…………」


 二人とも、無言のままだった。


「……と、とりあえず、ご飯を食べるところにでも行こっか」


 困ったような顔で、モンドはそう言うと


 こくん。


 二人ともうなずいた。


 まぁ、あれだけ怖い目にっているし仕方がないかな。


 モンドはそう思いつつ、旅車りょしゃの中にある居間いまのようなところへ向かうと


 二人はそのあとをついてきた。


 




 

 今日の晩ごはんはシュヴが旅車りょしゃの中にあるもので作った野菜スープとそなえ置きパンという簡素なものだけだった。


 この世界ではこれが一般的な食事らしい。


 二人はなかなか食べようとしなかったので


「毒なんか入っていないぜ」


 と言いふたりの分のパンと野菜スープを少しだけ食べると


 安心したのか空腹に負けたのかはわからないが


 いきおいよく食べ始めた。


 モンドのシュヴも一日何も食べていないので、お腹が減っており


 二人に負けないぐらいの勢いで食べ始めた。


 しばらくして食べ終わると


「あ、あの」


 金髪で色白の背が高くない方の女の子がそう声を発した。


 やっと何か言う気になってくれたのと思い、モンドは


「うん、なんだ? 」


 と言い話を聞く態度を見せた、シュヴも無言ではあったがそんな感じだ。


「わ、私の名前はスレイ・オルキデと言います、そしてこの子はイブ・スイィネフォと言います! 」

 

 拳を握り締めながら、背が高くない方の女の子が言う

 

「イブ・スイィネフォです」


 銀髪で色黒の背が高い方の少女が続いて言った。


 スレイという名前の少女は少し間をおいて、さらに言葉を続ける。


「おいしい、食事をくださってありがとうございます! 」


 スレという少女は頭を下げると


 イブという名前の少女は続けて


「あ、ありがとうございます! 」


 頭を下げる。


「あの私たち、いっぱい働きます、なんでもします、ですからてないでください! お願いします! 」


 スレイが言うと、イブは続けて


「お願いします! 」


 そう言った。


 二人ふたりの、そのすがるような姿にモンドはあわれみのようなものを感じた


「いや~、そこまで気を使わなくていいよ、仕事は全部コイツがやればいいんだし」


 モンドは、そう言ってシュヴの青い頭をつかんだ


「は? お前さぁオレ一人に押し付ける気かよ! 」


 シュヴはモンドの手ははらのけながら、そう返す


「もぉちろん」


 モンドがおどけるように言うと


「スレイ、イヴ、お前たちは何もしなくていい、オレにはこのバカをきっちり働かせる使命があるんだ」


 シュヴはモンドの方を見ながらそう言う


「おいおい、冗談きつぜハニー」


 モンドは首を横に振りながらそう言う


「なぁ~にがハニーだ、一体いつお前の妻にオレはなったんだよ! 」


 シュヴがそう言いながらモンドの鼻を強くつまむ


「いで、いで、いで、いだい、ゴメン、ゴメン」


 モンドがそう謝ると


「まったく」


 シュヴはそう言いながらモンドの鼻から手を離す。


 すると


 クス


 イブとスレイが少しだけ笑った。


「あ、ごめんなさい! 」


 スレイがそう言い


 イブとスレイは怯えた顔つきになった。


「お、やっと笑ってくれたな~、いや~芸人冥利げいにんみょうりきるよ~」


 やわらかい雰囲気ふんいきをかもし出しながらモンドが言うと


「一体いつから芸人になったんだ? それに芸人は笑わせるもので、笑われるお前とは大違いだぞ、芸人さんに謝れ! 」


 シュヴは大きめの声でそう言い


「このバカは、少しというよりだいぶ頭が悪いから気なんかひとつも使わなくていいぞ」


 そう、モンドを指さして言葉を続けた


「ついでに、このクソガキにも気を使わなくていいぞ」


 モンドが、イブとスレイに向かって優しげに笑いながらそう言うと


「ま、冗談はおいといてオレにもモンドにも本当に気なんか使わなくていいぞ」


 シュヴが真面目な顔でそう言う


「俺なんて気を使われちゃうと気を使っちゃうタイプの人だから逆に気を使わない方が嬉しいぐらいだから。」


 モンドが続けて軽い口調で言うと


「あ、ありがとうございます! 」


 スレイがそう言ったあと


「ありがとうございます! 」

 

 イブがそう続けた。 


 モンドとシュヴには


 その言葉は本当の意味で自分たちに心を開いたように聞こえた。

 

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