|神の頭髪《シュヴ・ディユー》
シュヴ・ディユーは、自分と同じ顔の違う存在と対峙する
「お前は何もんだ? 」
シュヴは自分と同じ顔が自分と違う表情をする、その姿に何とも言えない奇妙奇天烈な嫌悪感に似た違和感を感じながら、問いかけると
「オレの名前は、お前と同じシュヴ・ディユーだぜ、まあ、それじゃあわかりづらいからレーヴと呼んでくれ」
レーヴと名乗った少女は、シュヴと同じ声、同じ仕草で自己紹介をする
「そうか、悪いがモンドの為にも、そこをどいてくれねーか? 」
穏やかな声でシュヴがそう言うと
「本当にモンドの為を思うなら、お前こそ今すぐここから立ち去るべきじゃないか? 」
まるで鏡合わせのように同じ雰囲気で、しかし決して交わらない平行線の会話
「そうか……」
静かに穏やかにシュヴがつぶやいた瞬間、レーヴの目からシュヴが前触れもなく消え去った
少しの時の間を置くと
レーヴの目に鋭利なナイフが握られた腕が映り、迫り来る
「なら、消えろ」
静かだが、絶対の殺意に満ちた声をシュヴは放つ
「言っただろ? オレはシュヴ・ディユーだと」
レーヴが静かに穏やかにつぶやくと、今度はレーヴがシュヴの目から消えた
「?!」
のんびりとシュヴが驚いていると
「消えろ」
まるで鏡のように同じ能力、同じ戦法、同じ言葉でシュヴの命を小さなしかし殺意にあふれた武器で刈り取ろうとするが、その一撃は空を斬るに終わった。
まさか見ためや仕草、口調だけでなく、オレの星質である夢幻の住人まで同じだとわな、しかしそうなるとお互いが攻撃をさっちした瞬間に逃げる、持久戦になるな。
シュヴが存在を消している間に、考えていると
「今はいないシュヴさんに一つ絶望をやるよ、オレはお前とほとんどが同じだが、ひとつだけ違う所がある、それはなオレの魔力は減らないということだ、おまえなら今ごろこの勝負は魔力が先に尽きた方が負ける持久戦だと考えているだろう、それは正解ださすがはオレのオリジナルだ、なら魔力が尽きないオレはこの勝負には決して負けることはない、ゆっくりとお前が刻まれていく姿を楽しむとするよ」
レーヴが余裕に満ちた声で、何もない空間に向かって話しかける
「く……!」
持久戦で勝ち目が無いのなら、早期決戦で決めればいいと、ナイフをレーヴの体にに向かって突き進める体勢でシュヴは実体を戻す。
シュヴの足にいきなり強い衝撃が走り、転びそうになる。
「あせりすぎだ」
冷徹にそう言った、レーヴはシュヴに足払いをしていたのだ
そのままレーヴはナイフをシュヴの首にめがけて走らせる。
シュヴはなんとか夢幻の住人で逃げ切るが、この調子だとレーヴの言う通りになってしまう、そう考えたシュヴは
「仕方がない……」
そう言って、覚悟をきめ、最後の手段、切り札を使う事にする
シュヴの切り札、『神装:Heretic・Crown』、その力は現実に存在するどんな力でも無い、完全に異端の力であり、限りなく神の領域に近いものであり、絶対的で圧倒的なものだ、しかし使ったら最後、この力の代償である死から逃れることはできない。
しかし、このまま自分のコピーにむざむざと殺られるぐらいなら、この力を使い相打ちに持っていく、決意したシュヴはためらいなく、『神装:Heretic・Crown』を発動させる。
シュヴの周りに太陽すら霞む光と、夜すら飲み込む闇が、集結し、融合し、形作られる、どんどんとシュヴの形が、不快感を模様をすために作られた様な音を立て、得体の知れない『なにか』になっていく、そして混沌を洗い流すと
この世の全ての色を持つ肌を少したりとも露出ぜず、顔の部分に目とも宝石ともつかない物が八個はめ込まれた、宇宙色の六本の翼を生やした鎧をまとった、シュヴの姿が見えた。
「ほう随分と変わった姿だな……」
レーヴがそう言うが
「『神剣:Executioner』」
シュヴはレーヴの言葉に何一つ反応せず、虚空から完全なる黒色の剣を出す
「ハッ! お前にもできることはオレにもできるんだよ」
レーヴが声を荒らげ、力を込めるが
何も起こらない。
「な……? どういう……? 」
レーヴは出来るはずのことが出来ないので狼狽する。
「見た目や心、能力は真似できても真実は真似出来なかったようだな」
シュヴは何の感情もない声でそう言う
「なら! 」
レーヴは夢幻の住人で自身の存在を消す
この無敵の状態ならどんな攻撃でもきかない、あの姿が保てなくなるまでずっと待てば済む話だ、なぜならオレは永遠に無敵になれる存在なのだから。
レーヴがそんなことを考えている間にシュヴは剣を振り下ろす
その剣は空とレーヴを斬り捨てた
「が……な……ぜ? 」
肩から腰にかけて斬撃が入ったレーヴは血と臓物をまき散らしながら悪臭を放ち、わけもわからぬままそう言ってドチャと音を立て、倒れた。
「『神剣:Executioner』は神羅万象、世界の道理すら越えて、斬撃を浴びせる剣たとえ夢幻の住人でも逃げ切れない……」
シュヴが何も言えず何も感じれず何も考えることもできなくなった、自分の分身レーヴにそう言うと、鎧がどんどん剥がれ落ちはじめる。
「とうとう時間か……覚悟を決めたとは言え、死ぬのはいい気分じゃないな、みんなオレがいなくなってもやっていけるかな……」
静かにそう言ったシュヴは糸の切れた人形のように倒れゆっくりと目を閉じた。
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悠久か八千代か一生か星霜か一日か一時か刹那か一瞬か零か、一体どれほどの時間が経ったかわからない
シュヴは息をして、目をゆっくりと開け、立ち上がった
「……? 」
自分の身に何が起こったかわからないシュヴは様々な思考を巡らせる
「おそらく、ここは夢の世界だったから、現実の存在のオレは死ななかった……と考えるしかないな」
とりあえずそう言ったが、奇跡という単語が頭から離れない
「まあ、とりあえず、ほかのやつを探すか……」
なんにせよ、生き残った喜びを噛み締め、シュヴはその場を後にした。




