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無職は転生してフリーターに進化した!  作者: 鋏と電灯
第三章〜後ろを振り返って〜
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ソードダンス&ソングバトル

 モンドたちが出て行った少し後のこと、サティルス村の切り株の上に一人の少女が座っていた。


 その少女は、瞳と髪が黒く、派手な露出の多い服で身をつつみ、体に幾何学的な模様が彩られていた。


 その少女の名前はシェール・アルワーフ


 心を読む星質ジェニーである『星心の耳(インフィルトラトル)』を持つ、サティルス村の巫女だ。


 シェールはある男に想いを馳せる


 その男はある日突然にこの村にやってきた、たった一人あてもなく彷徨っているそうに見えた、その男の心は決していいと言えるものではなった、でもなんだかとても暖かく大きい心に見えた私は男に勇気を出して話しかけてみた。


 私は、緊張してきたのか、いきなり失礼な物言いしてしまった、でもその男は怒ったりせず、私に気を使うような心になった、その男は大いなる力を持っていた、その気になればこの世界を壊せるほどの、私たちなんて気に入らないの一言で殲滅しても許されるほどの、でも男は私たちを傷つけたくないと思っていた


 私はその時その男、モンド・ムッボシのことを信頼してしまった。


 私のことを話してみるとモンドは私に対して不快感を抱かなかった。


 私はモンドとずっと一緒に居たいと思ったけど、この地にとどまれないモンドとこの地から離れられない私では無理な話だった。


 私はこの淡い恋心にも似た気持ちは一日だけの夢の思い出として、私の記憶の部屋の片隅に大切にしまっておくことにした。


 シェールはそんなことを考えたあと、家に帰るため切り株から腰を上げた。


 その瞬間、大きな爆音が鳴り響いた


 モンドたちの旅車りょしゃより大きな旅車りょしゃが村を囲う壁を破壊しながら侵入してきたのだ。


 シェールは驚きのあまり声も出せず、目を剥いて、旅車りょしゃを見つめる。


 その旅車りょしゃの後の大きな扉が開いたかと思うと、一斉に大勢のガラの悪い男たちが、雨上がりの時、巣穴から出てくるありのごとく散乱する


 男たちは素早く行動し、金目のもの、人を、強引に引きずり出し、村に火をつける、侵入者のけたたましい笑い声と、村人の痛々しい悲鳴と炎熱の光が村を支配する


 もちろん、そのような狼藉ろうぜきを見逃すシェールではない


「『フラガラッハ』!」


 シェールがそう言葉を発すると、唐突に手のあたりが光ったあと、一本の細い剣が握られていた


 そして、その剣で村を襲った男の一人を浅く切りつけると


 その男は糸の切れた人形のように倒れ込んでしまった


「……!?」


 男たちは凍りついたように動かない


 その隙に、ひと振り、ふた振り、剣をふるい、男たちが切られると同時に倒れ込む


 そうやって、半分ぐらいの人数を物言わぬ存在にすると


「ほう、なかなかやるね君」


 旅車りょしゃからさっきまでの連中とはあきらかに風格の違う、中年の細身の男が出てきた


 あいつは……ヤバイ!!


 シェールは直感でそう感じた瞬間に


 「ひじりよ、鈍足どんそくなる私に俊敏しゅんびんなるめぐみを『速敏歌デヌンジャショ』」


 ととなえ速さを上げ、その細身の中年の男のもとへ常人なら気づくことすらできないとどの、弓から放たれた矢より疾く駆け、剣を突き立てようとする


 しかし


 男は剣が触れる一瞬まえ立ち位置を90°回すというワンアクションで回避した後、三日月のように大きく反り返った湾刀わんとうでシェールの首を狙う


 シェールは突撃のため、前のめりの体制になっており、ギロチンのごとく迫り来る湾刀は必中必殺の一撃となる、のが本来の姿だがシェーレは後ろに大きく力をかけ、バック転のように跳び、回避と同時に男の湾刀を持つ手を蹴り上げ、武器落としを狙う


 男はシェールの狙いに気付き即座に湾刀をシェールの蹴りの射程圏内から外す


 武器落としは不発に終わったが、距離をとり回避は出来た。


 お互いに損害を与えることはできず、引き分けという形で取り合えずひと勝負が終わった。


「すごいね、君、さすがの僕もあらかじめ『速敏歌デヌンジャショ』を唱えていなかったら、今ので負けていたよ、ついでだから自己紹介するよ、僕の名前は『ホデル・フィッケーン』よろしくね」


 ホデルは落ち着いた、さわやかな笑顔を浮かべながらそう言うが、シェールが『星心の耳(インフィルトラトル)』を使わなくともわかるぐらい、殺気と性格の悪さがにじみ出ており隠しきれていない。


 シェールは言葉を交わす気はないと言わんばかりに、第二戦を始めるため距離を詰める。


 やれやれ困ったな……


 そんな顔をしながらホデルはシェーレの剣の突きに合わせて湾刀を打ち付ける、剣は軌道を変え何もない空間を突く


 お互いに隙ができた状態だがホデルは急所である脇がガラ空きの状態で、そこにめがけシェールは拳で攻撃する


 ホデルはシェールの拳による攻撃を、腕でガードする


 この攻防の間にお互いの体のバランスは整えられる


 今度はホデルの方が湾刀による、横なぎの先制攻撃を仕掛ける


 シェールは剣で湾刀の攻撃を防ぐと、お互いに後ろに跳び距離をあける


 このままでは……まずい


 一見、互角ごかくのように見えるこの戦いだが、ホデルは最低限の動きしかしていない一方、シェールは少しだが激しめに動いている、そしてさらに純粋なスピード勝負ではシェールの方が負けており、『星心の耳(インフィルトラトル)』で動きを先読みして追いすがっている状態である


 つまり、シェールの方が体力が尽きる可能性が高いということだ。


 シェールは状況を打開するするため、後ろに大きく下がり


 円と特殊文字を書き『三然さんぜん魔法』を使おうとする


 今、シェールが考えるホデルの行動パターンは二つある


 一つ目に、この隙を逃さまいと、こちらに接近し武器による攻撃を仕掛ける


 この行動をとれば、シェールは三然さんぜん魔法をやめ、そのままいさみ足で近づくホデルは隙だらけ、そのまま切り伏せればいい、もちろん慎重に近づくと今度は遅すぎて三然さんぜん魔法が発動してしまいホデルは魔法に飲まれてしまう。


 二つ目はこちらの魔法に魔法で対抗する


 この行動が普通に考えれば一番妥当だ、なぜならシェールよりホデルの方が魔法を早く発動させることができるからだ。


 今、シェールが発動させようとしているのは収束させた水を高速で発射させる『水槍アーグアランラ』突破力が非常に高い魔法だ。


 ホデルがシェールの『水槍アーグアランラ』から身を守るには、同じ『水槍アーグアランラ』か集中防御の『盾無歌スクテュム』しか無い


 しかし、その二つを発動したが最後シェールのある切り札がホデルを襲う


 ホデルは『盾無歌スクテュム』を使い身を守ろうと考える


 シェールの、『星心の耳(インフィルトラトル)』はその思考を見逃さない


 ホデルのあと出しにも関わらずシェールの『水槍アーグアランラ』とホデルの『盾無歌スクテュム』は同時に発動する


 壁に大量の収束させた水が強い力で打ち付けられる、その轟音は耳が痛くなるほどだ。


 しかし、しばらくしたあとホデルはシェールの方から『水槍アーグアランラ』とは違う、濁った紫色の線が大量にこちらに襲来することに気づく


 その紫の線こそがシェールの切り札


 『六芒星の秘術エグザグラムソルセルリー』でも『星質ジェニー』でもない


 最後にして最強にして最少人数しか扱えない魔法『重詩詠トゥーブルポエジリル』の一つである万物を貫く槍を発射する『天蝕壊槍ぺネトラシオン』だ。


 『重詩詠トゥーブルポエジリル』は『二声ドゥヴォワ』と言う違う言葉を同時に出すという特殊な技術を持って呪文を詠唱すると発動する魔法でその力は極めて強力だ


 しかし、何事も万能ではない、『重詩詠トゥーブルポエジリル』の詠唱は少し長いのと二声ドゥヴォワは集中力がかなり必要でほかの行動が鈍くなるという弱点がある。


 シェールが使った『天蝕壊槍ぺネトラシオン』の詠唱は


ソワールオーブ・(宵と暁の狭間に)トゥルビヨン・(在ると揺れ動く)カオクラル・(混濁色の)ドマジュリニュ(災線よ眼前)シブル・(の怨敵)ヌヴォグロット・(を洞窟にし)エヴァヌイスマン・(無明にして無動なる)アレアン・アンフェア(意思亡き者にせよ)


 となっており


 一対一の勝負では少し長い


 シェールはそのため、まずは『水槍アーグアランラ』で気をひき、魔法の打ち合いに持っていき、そして打ち合っている間の大きな音で詠唱をかくし、奇襲のように使った。


 現に『天蝕壊槍ぺネトラシオン』の奇襲を受けたホデルは慌てふためき、転がるように回避している。


 さすがにホデルは素早く一発も当たらなかったものの、湾刀は落とし、隙だらけの状態だ、このまま高速で接近し、剣を逆手に持ち替えホデルの体に突き刺そうとする


 ホデルはシェールの剣を持っている方の腕を掴み拘束する


 シェールの『星心の耳(インフィルトラトル)』はホデルの(とりあえず一安心)を察知する


 しかし、安心こそ最大の油断、シェールはニヤリと笑いながら、もう片方の手を光らせると同じ剣が握られていた


 シェールは最大に効果的な瞬間のためにあえて一本で戦っていた、一本の武器しかないという無意識にある思い込みが必中の一撃を作る


 しかし、この体勢では傷つけるのが精一杯だろうが、そんなことはシェーレの役書えきしょ魔法である『フラガラッハ』の前では関係ない


 『フラガラッハ』は『死神殺しボークスミェルチウビチ』といわれわずかに傷つけただけで、傷つけられた者は三日三晩のあいだ決して起きることがなくなる、不殺の剣なのだ。


 コレで勝ちだ!


 シェールがそう確信した瞬間


「シュトッペン」


 ホデルがそうささやくと


 シェールの確勝の一撃が空を切り


 シェールの背中に衝撃が走る


「……?!!?」


 シェールは驚きと混乱のあまり声が出ない


 なぜなら


 さっきまで、シェールの目の前にいたホデルが、シェールの後ろをとり、短剣でシェールの背中を刺していたからだ


 鋭い痛みと熱い感覚がシェールの脳みそを刺激する


「ふふ、安心こそ最大の油断だよ」


 ニヤケヅラでホデルがそう言うが


 肺にまで達した傷のせいで、呼吸がうまくできず、混乱と痛みと息苦しさに支配されたシェールは何も言い返せない


「それにしても君強いね、僕が直接これからずっと可愛がってあげるよ」


 イヤラシイホデルの顔を見ながら


 これから待つ、おぞましく、暗い未来がシェールの脳内で浮かび上がり


 絶望の中、その目を閉じようとした


 その、瞬間


「聖よ、傷ついたなんじに癒しの恵みを『治療歌クラジョ』」


 という声が聞こえると


 シェールの体から痛みと息苦しさが消えた


 声の主を見てみると


 さっきまで想いを馳せていた


 モンド・ムッボシだった。

 

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